kenroのミニコミ

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イタリア美術紀行3 ヴェネチア

2009-01-25 | 美術
ヴェネチアを訪れたのは、もちろん世界遺産の水上都市を見たかったからでもあるが、ペギー・グッゲンハイム美術館を訪れたかったからである。グッゲンハイム美術館はニューヨークの本館(?)を訪れ、その建物のユニークさと収蔵品のすばらしさに感嘆したものだが、ビルバオ(スペイン)のグッゲンハイムは建築は斬新で面白いが、常設展がなく、すこしがっかりした覚えがあって(もちろん、ちょうどしていた企画展がイヴ・クラインでよかったが)、常設の多いというヴェネチアを見たかったからである。
ペギー・グッゲンハイム美術館は、緑に囲まれた邸宅を改造したもので、運河に相対する様も、中庭もとても素敵だ。ただとても小規模なので(閉館1時間前に行ったら、「1時間前だがオーケーか?」と訊かれたので「大きいのか?」と訊いたら「piccolo(小さい)」と言って受付の人が笑っていた。たしかに小さいし、通路に作品も架けてあって見づらいことは部分はある。しかし、モランディやマリーニなどイタリアの近代絵画(彫刻)がどっさり。キリコやフォンタナもある。ルネサンスばかりと思っていたが、近代美術も豊かななのだイタリアは。

アカデミア美術館は、ジョヴァンニ・ベッリーニを擁してヴェネチア派の百花繚乱というところ。ヴェネチア派勢揃いということでティントレット、ティツィアーノ、ヴェロネーゼがぞろぞろ。ベッリーニの「聖母子」、ティントレットの「ダナエ」、ヴェロネーゼの「ラヴィのキリスト」など見とれるものばかり。ジョルジョーネの「嵐」は、女性がなぜか下半身には何も着けずに、赤子に乳をやっているそばで羊飼い?がその様子を見るでもなく佇んでいる不思議な構図。ベッリーニの「ピエタ」は聖母とイエスの姿そのものよりも、後景がまるで建設途上のショッピングモールさながらで、その異形?に惹かれた。
基本的にルネサンス、マニエリスム以降の風景画はあまり興味が沸かないのだが、日本に帰ってから「ウィーン美術史美術館展 静物画の秘密」を見て、ルネサンスの大胆さから、細かな筆運びで完成させる風景画の妙技もあながち無視するものでもないものだと感じたのがカナレットであった。
ただ、おそらく、細密画のような神経質さを見せる風景画ももともとはルネサンス以降のより正確さを極める過程の結果だと考えれば納得がいく。その納得の証はやはりベッリーニである(ローマ編で述べる予定)。
ミケランジェロやラファエロだけではない。ルネサンス美術紀行ははじまったばかりである。そしてその端緒の一つとして訪れるべきアカデミア美術館である。(ティントレット「奴隷の奇蹟」)
コメント
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