ファッションやブランドになんの興味、造詣もないので「最後の晩餐」(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会)がなければ一生行くことがなかったかもしれないミラノ。けれど来てよかった。「最後の晩餐」はもちろんすばらしいが(前稿)、小さな美術館も見応えがあったからだ。
ポルディ・ペッツォーリ美術館はミラノの貴族ペッツォーリの邸宅を彼の集めたコレクションと共にそのまま美術館としたもの。規模は小さいが、ロンドンはウォレス・コレクションと並ぶヨーロッパ屈指のプライベート・コレクションだそうである(美術館説明)。収蔵作品はもちろんルネサンスを中心に、マンテーニャの「聖母子」、ベッリーニ「ピエタ」、ピエロ・デラ・フランチェスカ「聖ニコラス」、ポッライウォーロ「若い貴婦人の肖像」など。そして本館で最も有名なのがボッティチェリ「(書物の)聖母(子)」。どれも繊細かつ鮮やか。前期ルネサンスの作品が多いためか、その雰囲気は静かだが力強い。特にボッティチェリはすぐそれと分かり、かつ書物を前にしてマリアと幼子イエスが視線を交わす様が美しい。時代をさがって、ティエポロやカナレットの作品もあるが、個人的にはルネサンス期のほうが好もしい。
「貴族の趣味の良さが味わえる」とガイドブックにあるが、趣味の良さとはそれら収集品を集めた(もちろん小作人などの上前をはねた結果といえばそれまでであるが)ことではなく、後世にそれを惜しみなく開放したり、寄付することで味わえるものであるだろう。
ブレラ絵画館は、ヴェネチア派などを主体に有名作品がずらり。マンテーニャの「死せるキリスト」は短縮法を示すため(すなはち画家の技量を示すため)に描かれたとものとされるが(『ルネサンス美術館』)、その圧倒的な迫力は実物を見てとしか言いようがない。
見とれる作品は多い。ベッリーニの「聖母子」、カルパッチョの作品群(日本語でどう表現するのか不明)、マンテーニャの大きな板絵、扉絵もたくさんある。
ティツィアーノ、ヴェロネーゼそしてティントレット。ヴェネチア派の大仰な構図がこれでもかと押し寄せてくる。しかし、そのどれもが状態よく、じっくり見ていたい逸品揃いであった。が、ブレラを訪れたのはその日の最後で疲れていた上で、とても寒かった。イタリアの美術館はだいたいエアコンが効いていないところが多いようで、美術館の係員も屋外と同じ格好をしていた。
ブレラは「絵画館」というだけあって、ルネサンス期以降の作品、カラヴァッジョ、ファン・ダイク、ヨールダンスなど17世紀以降の画家の作品も多い。そして、驚いた。モランディやマリーニなど20世紀の作品の充実ぶり。はたと気がついた。モランディもマリーニもイタリアの現代作家。イタリア20世紀美術も豊かであることを実感したひとときであった。
(「死せるキリスト」Webより転載)
ポルディ・ペッツォーリ美術館はミラノの貴族ペッツォーリの邸宅を彼の集めたコレクションと共にそのまま美術館としたもの。規模は小さいが、ロンドンはウォレス・コレクションと並ぶヨーロッパ屈指のプライベート・コレクションだそうである(美術館説明)。収蔵作品はもちろんルネサンスを中心に、マンテーニャの「聖母子」、ベッリーニ「ピエタ」、ピエロ・デラ・フランチェスカ「聖ニコラス」、ポッライウォーロ「若い貴婦人の肖像」など。そして本館で最も有名なのがボッティチェリ「(書物の)聖母(子)」。どれも繊細かつ鮮やか。前期ルネサンスの作品が多いためか、その雰囲気は静かだが力強い。特にボッティチェリはすぐそれと分かり、かつ書物を前にしてマリアと幼子イエスが視線を交わす様が美しい。時代をさがって、ティエポロやカナレットの作品もあるが、個人的にはルネサンス期のほうが好もしい。
「貴族の趣味の良さが味わえる」とガイドブックにあるが、趣味の良さとはそれら収集品を集めた(もちろん小作人などの上前をはねた結果といえばそれまでであるが)ことではなく、後世にそれを惜しみなく開放したり、寄付することで味わえるものであるだろう。
ブレラ絵画館は、ヴェネチア派などを主体に有名作品がずらり。マンテーニャの「死せるキリスト」は短縮法を示すため(すなはち画家の技量を示すため)に描かれたとものとされるが(『ルネサンス美術館』)、その圧倒的な迫力は実物を見てとしか言いようがない。
見とれる作品は多い。ベッリーニの「聖母子」、カルパッチョの作品群(日本語でどう表現するのか不明)、マンテーニャの大きな板絵、扉絵もたくさんある。
ティツィアーノ、ヴェロネーゼそしてティントレット。ヴェネチア派の大仰な構図がこれでもかと押し寄せてくる。しかし、そのどれもが状態よく、じっくり見ていたい逸品揃いであった。が、ブレラを訪れたのはその日の最後で疲れていた上で、とても寒かった。イタリアの美術館はだいたいエアコンが効いていないところが多いようで、美術館の係員も屋外と同じ格好をしていた。
ブレラは「絵画館」というだけあって、ルネサンス期以降の作品、カラヴァッジョ、ファン・ダイク、ヨールダンスなど17世紀以降の画家の作品も多い。そして、驚いた。モランディやマリーニなど20世紀の作品の充実ぶり。はたと気がついた。モランディもマリーニもイタリアの現代作家。イタリア20世紀美術も豊かであることを実感したひとときであった。
(「死せるキリスト」Webより転載)