kenroのミニコミ

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イタリア美術紀行4 ローマ1

2009-02-01 | 美術
イタリア美術紀行 4 ローマ1
バチカンは別に取り上げることにして、今回それ以外で訪れたところを。
まず、ローマ在住のライター岩田砂和子さんがブログで書いていて(All About Italia http://allabout.co.jp/travel/travelitaly/closeup/CU20081110A/)見つけたスクデリーエ・デル・クイリナーレへ。大統領官邸の離れで一般のガイドブックには載っていない美術館。そして、岩田さんによると電話予約しないと入れないそうで、ホテルから前日電話して行ってみた。岩田さんがオススメしていた理由はちょうど、ヴェネツィア派の巨匠ジョバンニ・ベッリーニの絵画展が開催されていたから。それも会期は1月11日まで。ベッリーニと言えば、日本ではそれほど知られてはいないが、ティツアーノ、ティントレットなどの巨星がベッリーニから学んだと言われるほどの技量の持ち主。ベッリーニの技量の証は肖像画、歴史画であるにもかかわらずその細密性にある。そして今回はバチカンをはじめルーヴルなど世界中から集められて展示されているし、それも戦後初の本格的回顧展という。ミケランジェロやラファエロらの陰に隠れて(いるわけではないが)、テレビや一般的な美術本では取り上げられることも少ないが、その正確かつ柔らかい筆致は驚嘆すべきもの。大きな図録しか販売していなかったので、買わなかったがやっぱり買って帰ればよかったと後悔している。 


前回ローマを訪れたとき行かなかった美術館の一つが、ベルベリーニ宮にある国立絵画館。とても小さく、もちろん観光客も見かけない、はっきり言って職員もだれてやる気なさそう…。だが、ここでグイド・レーニのチェンチに会うとは。
ベアトリス・チェンチは、16世紀末実在の人で、父親に性暴行を受けたため、その父親を殺したかどで処刑された薄幸の少女。ローマを騒がしたこの事件は絵画の格好の題材になったに違いない。グイド・レーニは17世紀に活躍した画家で、カラヴァッジョより30年ほど前活躍した。そしてこのチェンチこそがフェルメールの傑作「真珠の耳飾りの少女」の原題となったのであるから。
後期ルネサンス、マニエリスムへ、イタリア以外の地がルネサンスを追随していた時にイタリアはもう先にすすんでいた。その象徴がいわばバロックを先取りした形でグイド・レーニが現れた。もちろん、ルネサンスと比されるだけの劇的な構図を編み出したのはカラヴァッジョである。が、古典に画題をとりながらもなおかつ現実的な表象に成功したのは、チェンチのグイド・レーニなのである。
バロック絵画をもそろえる国立絵画館にはカラヴァッジョの傑作「ホロフェルネスの首をかき切るユーディット」もある。不思議にエロティックなユーディットに惹かれてしまう本作も訪れる価値のある逸品だ。国立絵画館も侮りがたし。(ホロフェルネスの首をかき切るユーディット)
コメント
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