他のいろいろな本をつまみ食いしている間に読了に随分時間がかかってしまった。本書の要諦は、世界で広がった「反革命」的政策がことごとくミルトン・フリードマンとその弟子シカゴ・ボーイズによってもたらされた「参事便乗型資本(市場至上)主義」というべきもの。
南米チリのピノチェト政権をはじめとして、イギリス・サッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、南アフリカ、ソ連からロシアへ、そして9・11後のアメリカ、同じくカトリーナに襲われたアメリカ、イラク、スマトラ沖津波に見舞われた国々、そしてイスラエル…。著者のナオミ・クラインが取り上げる様相は世界中のあらゆるところで、起こった、現に起こっているウルトラ新自由主義の弊害である。
たとえば、ハリケーンカトリーナで家を失った低所得層地域は早くも開発の波が襲った。まるでハリケーンが来ることを予測したかのように、災害後のインフラ整備を大手企業が契約していたこと。低所得層はもとの地域にも戻れず、郊外から通う車も持たないため、失業したり、他の地域に引っ越したり。
ハリケーンのような自然災害より儲かるのが戦争。戦争は、戦時の部分と戦後の時期で企業が絶え間なく儲かる仕組みになっている。イラク戦争では、アメリカ正規軍とは別に戦争の民営化がすすんだことは周知の事実。民間が雇った「警備員」らが、戦死したり、負傷しても国家の損害とはならないし、そもそもそのような危険な任務=高給につられた私兵に補償などない。「民間の警備員」によるイラク市民らへの尊重意識などかけらもなく、さまざまな形での殺戮が繰り返された。もっとも、アブグレイブ刑務所で非人道的扱いは米軍がもたらしたものであるが。
戦後復興の名の下に投入された建設事業などは米資本=それが、戦争勃発前からより「成長する」と見込まれたベクテルやハリバートンなど株価が上がっていた企業群が完全に上前をはね、現地イラク人の復興や再生になんの支援にもなっていないこと。さらに、ブッシュ政権でイラク戦争を決定した政権中枢の者たちがもともとグローバル大手企業のCEOなど幹部であったことも明らかにしている。これほどまで、人命、人権を無視した国家政策が世界規模でなされるためには、アメリカの政治を少数の巨大資本が牛耳っているという事実が大きい。そしてアメリカという国がそのような構造の中で世界に君臨してきたことの証でもある。
さらに遡ること南米チリのピノチェト軍事政権では、アジェンデ社会主義政権を倒し軍事クーデターの素地を作ったのが、シカゴ・ボーイズであったこと、チリやその他南米諸国で「行方不明」となった民主化勢力、反体制側の人々がすさまじい拷問・処刑にあっていたこと、そしてそれら拷問が、国家の役割は警察と強制的契約だけであとはすべて市場に任せればよいとする極端な市場主義を支えるために開発された精神医学者の実験を背景にしていることまでも明らかにした。
アメリカ大統領選では、まだ共和党候補者ロムニー氏=小さな政府 VS 民主党オバマ大統領=大きな政府の対決構図は有効のようである。特に、共和党陣営はオバマ氏の健康保険法を国民の自由を奪うものとすさまじい攻撃を繰り返しており、共和党副大統領候補のライアン下院議員は市場至上主義の申し子、超がつく新自由主義者である。日本でも郵政改革、古くは国鉄改革で多くの労働者が首をきられ、特に、郵政改革をはじめとする規制緩和策では小泉=竹中路線による新自由主義路線、不安定雇用層の拡大を招いた。さすがに、日本では拷問・処刑は日常ではないと思うが、自殺者3万2000人のこの国は、もう立派な「惨事」国であり、3・11東日本大震災や野田政権が推し進めるTPPなど、グローバル企業が「便乗」する素地は十分に整っていると見る。
輪をかけて、支持率急落の民主党に代わって、橋下徹大阪市長ひきいる維新の会が次期国政で大きく議席を獲得しそうな勢いである。橋下氏は議員を現在の半分に、さらに維新の会では国会議員はそもそも100人でよいとの声もあり、現在の議員の資質の議論が、国政の役割を放棄した小さな政府論に邁進していることは明らかであり、新自由主義路線は当分治まりそうにない。
ナオミ・クラインの綿密、膨大な情報収集・分析に最後までまさに「目が離せない」現代史展開である。「ショック・ドクトリン」を他山の石としない自覚と意識、そして運動を作り出す力が私たちに問われている。
南米チリのピノチェト政権をはじめとして、イギリス・サッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、南アフリカ、ソ連からロシアへ、そして9・11後のアメリカ、同じくカトリーナに襲われたアメリカ、イラク、スマトラ沖津波に見舞われた国々、そしてイスラエル…。著者のナオミ・クラインが取り上げる様相は世界中のあらゆるところで、起こった、現に起こっているウルトラ新自由主義の弊害である。
たとえば、ハリケーンカトリーナで家を失った低所得層地域は早くも開発の波が襲った。まるでハリケーンが来ることを予測したかのように、災害後のインフラ整備を大手企業が契約していたこと。低所得層はもとの地域にも戻れず、郊外から通う車も持たないため、失業したり、他の地域に引っ越したり。
ハリケーンのような自然災害より儲かるのが戦争。戦争は、戦時の部分と戦後の時期で企業が絶え間なく儲かる仕組みになっている。イラク戦争では、アメリカ正規軍とは別に戦争の民営化がすすんだことは周知の事実。民間が雇った「警備員」らが、戦死したり、負傷しても国家の損害とはならないし、そもそもそのような危険な任務=高給につられた私兵に補償などない。「民間の警備員」によるイラク市民らへの尊重意識などかけらもなく、さまざまな形での殺戮が繰り返された。もっとも、アブグレイブ刑務所で非人道的扱いは米軍がもたらしたものであるが。
戦後復興の名の下に投入された建設事業などは米資本=それが、戦争勃発前からより「成長する」と見込まれたベクテルやハリバートンなど株価が上がっていた企業群が完全に上前をはね、現地イラク人の復興や再生になんの支援にもなっていないこと。さらに、ブッシュ政権でイラク戦争を決定した政権中枢の者たちがもともとグローバル大手企業のCEOなど幹部であったことも明らかにしている。これほどまで、人命、人権を無視した国家政策が世界規模でなされるためには、アメリカの政治を少数の巨大資本が牛耳っているという事実が大きい。そしてアメリカという国がそのような構造の中で世界に君臨してきたことの証でもある。
さらに遡ること南米チリのピノチェト軍事政権では、アジェンデ社会主義政権を倒し軍事クーデターの素地を作ったのが、シカゴ・ボーイズであったこと、チリやその他南米諸国で「行方不明」となった民主化勢力、反体制側の人々がすさまじい拷問・処刑にあっていたこと、そしてそれら拷問が、国家の役割は警察と強制的契約だけであとはすべて市場に任せればよいとする極端な市場主義を支えるために開発された精神医学者の実験を背景にしていることまでも明らかにした。
アメリカ大統領選では、まだ共和党候補者ロムニー氏=小さな政府 VS 民主党オバマ大統領=大きな政府の対決構図は有効のようである。特に、共和党陣営はオバマ氏の健康保険法を国民の自由を奪うものとすさまじい攻撃を繰り返しており、共和党副大統領候補のライアン下院議員は市場至上主義の申し子、超がつく新自由主義者である。日本でも郵政改革、古くは国鉄改革で多くの労働者が首をきられ、特に、郵政改革をはじめとする規制緩和策では小泉=竹中路線による新自由主義路線、不安定雇用層の拡大を招いた。さすがに、日本では拷問・処刑は日常ではないと思うが、自殺者3万2000人のこの国は、もう立派な「惨事」国であり、3・11東日本大震災や野田政権が推し進めるTPPなど、グローバル企業が「便乗」する素地は十分に整っていると見る。
輪をかけて、支持率急落の民主党に代わって、橋下徹大阪市長ひきいる維新の会が次期国政で大きく議席を獲得しそうな勢いである。橋下氏は議員を現在の半分に、さらに維新の会では国会議員はそもそも100人でよいとの声もあり、現在の議員の資質の議論が、国政の役割を放棄した小さな政府論に邁進していることは明らかであり、新自由主義路線は当分治まりそうにない。
ナオミ・クラインの綿密、膨大な情報収集・分析に最後までまさに「目が離せない」現代史展開である。「ショック・ドクトリン」を他山の石としない自覚と意識、そして運動を作り出す力が私たちに問われている。
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