ごっとさんのブログ

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医療ビッグデータの解析から見えてくるもの

2021-05-18 10:21:26 | 健康・医療
コロナの感染拡大が続き、医療現場のひっ迫や一部では既に医療崩壊が起き始めているという観測もあるようです。

医療のビッグデータを解析して医療現場の現状を把握するという動きもありますが、当然時間がかかるため現状を反映するまでには至っていないようです。

東京大学の研究グループが昨年度のデータを解析し、医療崩壊についての研究結果が発表されました。ここでは多くの病院から入院データを集めている企業と協力して、全国272の大規模病院の傾向を観察しており、これで全国の入院患者数の14%程度になるようです。

全体の入院患者数は、2020年3~5月の過去3年の平均と比べて、約40%減少していました。入院理由別では、気管支炎や肺炎、胃腸炎で顕著に減少していました。

これはマスクや手洗いなどの感染予防対策や、外出自粛で人込みを避けたことなどによって、新型コロナ以外の感染症が減少した可能性を示唆しています。また外傷の減少は、緊急事態宣言で外に出る機会が減り、事故に遭う確率が減ったことを反映していると思われます。

一方で鼠径ヘルニアや虫垂炎、食物アレルギーなど、緊急の手術や処置が必要な疾患の減少は目立っていません。特に虫垂炎はポピュラーな病気ですが、放置すると死に至ることのある重篤な疾患です。

これらの入院が減っていないということは、受診控えもしくは入院制限が本当に大事な治療にはあまり影響を及ぼさなかった可能性を示しています。入院中の死亡数も変化はありませんでした。

新型コロナウイルス感染症流行の第1波の時には、すぐに治療が必要な患者が治療されないという意味での、「医療崩壊」はなかった可能性が高いと考えられるようです。これとは違う資料ですが、今シーズンはインフルエンザが非常に少なかったというデータもあります。

やや面白い方向ですが、調剤レセプトベースで実際の処方動向を把握分析する医療情報総合研究所のデータです。

2021年1月のインフルエンザ患者数は、16年から20年の直近5年間の1月平均と比較して1000分の1に留まっています。インフルエンザ患者数は例年1月に急増し、2月にピークを迎えますが、今シーズンは20年12月より21年1月の方が患者数は少なかったことが確認されています。

この研究所のデータによると16年以降の1月のインフルエンザ患者数は、16年2万7129人、17年8万5539人、18年12万6445人、19年15万402人、20年5万1997人に対して、2021年はわずかに87人となっています。

これを見ると我々が行ってきた感染対策が、インフルエンザに対しては効果が充分にあったことになります。コロナに対してもこれ以上の厳しい対策が必要なのかやや疑問のような気もします。