ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

心筋梗塞が少ない日本人の食材

2024-06-30 10:30:51 | 健康・医療
私も含めてある程度歳をとると、ピンピンコロリを願う人がほとんどとなるようです。しかし実際に死期が近付いてくると、たとえ寝たきりでも1日でも長く生きたいと思うようです。

ピンピンコロリのためには、心筋梗塞などが良いと感じますが、日本人は外人と比べて心筋梗塞が少ないというデータがあるようです。

日本人が動脈硬化を起こしにくい原因のひとつと考えられてきたのが、善玉HDLが多いことです。日本人とアメリカの白人の血中脂質の濃度を比較した論文によると、悪玉LDLと中性脂肪の数値はほとんど同じくらいでしたが、白人の善玉HDL値は日本人より10%低くなっていました。

善玉HDLは余ったコレステロールだけでなく、酸化LDLも引き抜いて肝臓に運んでくれます。この他に悪玉LDLを酸化されにくくする作用や、血管の内側の細胞を守る作用も報告されており、心筋梗塞に関しては悪玉LDLが多いことより、善玉HDLが少ないことがの方が問題と考えられています。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、食の欧米化にもかかわらず、日本人のHDLは減っていないのです。日本人の動脈硬化が進みにくい原因とされるものがもう一つあり、それが魚です。

日本人の悪玉LDLには不飽和脂肪酸でも、動脈硬化をむしろ防ぐEPAやDHAが多く含まれていることが明らかになりました。EPAが注目されるきっかけになったのは、1970年代にグリーンランドで行われた調査です。

アザラシや魚を多く食べるグリーンランドの先住民には心臓病が少なく、その後の研究で同じ傾向が日本人にも認められたのです。EPAとDHAは魚、特にアジ、イワシ、サンマ、サバなどの背中の青い魚に豊富に含まれています。

このうちEPAは中性脂肪の合成を抑え、その分解を促すことで体内の中性脂肪を減らします。DHAは中性脂肪だけでなく悪玉LDLを減らしますが、善玉HDLは減らしません。

中性脂肪は悪玉LDLを小粒にして酸化されやすくしているので、こうして中性脂肪が減れば動脈硬化が起きにくくなるわけです。日本人は伝統的に魚を多く食べてきたので、悪玉LDLにはリノール酸とアラキドン酸からEPAとDHAに変わり、動脈硬化を防いでくれていると考えられます。

日本人4万人を対象にしたコホート研究では、EPAとDHAの摂取量が多いグループは、少ないグループと比べて心筋梗塞に代表される心臓病の発症率が40%も低くなっていました。

厚生労働省は、EPAとDHAが動脈硬化を防ぐだけでなく、糖尿病、乳ガン、大腸ガン、肝臓ガン、認知症の一部などの発症を下げる可能性があるとして、EPAとDHAを合わせて1日1グラム摂取するよう勧めています。

このように魚という食材が良いようですので、私はあまり好きではありませんが、積極的に摂取したいと考えています。

肥満症のクスリ2種類登場、その違いは

2024-06-29 10:34:07 | 
私は2月に新型コロナに感染し、間質性肺炎を発症して10日間入院しました。

その後後遺症もなく元気になったのですが、かなり瘦せてしまった体重がなかなか戻りません。それほどひどくはないようですが、ベルトの孔が2つぐらい小さくなってしまいました。

太っている人が体重を落とすのは大変なようですが、私のようなやせ型が太ることも思ったより大変なことです。さて肥満に加えて関係する病気などをかかえている状態を肥満症と呼んでいます。今年に入り、肥満の治療や予防のための薬が2種類発売されました。

運動や食事の改善と併せて使うことで、体重を効果的に減らせるようになると期待されています。肥満は脂肪細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態で、肥満の度合いを示すBMIが25以上を肥満、35以上を高度肥満と日本肥満学会は定義しています。

国の2019年の調査では、男性の33%、女性の22%が肥満となっています。肥満の中でも、肥満に関係する病気などを併発している、または内臓に脂肪が一定以上蓄積している場合に肥満症と診断されます。

併発する病気には、2型糖尿病や高血圧の他、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わるものがあります。肥満症の治療は、減量によって併発する病気の状態を改善することが基本となります。

まず運動やバランスの良い食事といった生活習慣の改善を進めますが、効果が十分に出ない場合に薬物治療を検討します。これまでの治療薬は、BNIが35以上など対象が限られていました。こうした中今年2月に治療薬の「ウゴービ」が発売されました。

国内では約30年ぶりの新薬の登場となり、食欲を抑えたり満腹感を高めたりして減量をする効果があります。日本人も参加した臨床試験では、ウゴービを1年3か月使った群は体重が13%減り、偽薬のの群の2%減よりも大きく減りました。

高血圧を合併している等の使用条件があり、医師に処方してもらい週1回腹部などに注射で投与します。肥満症を予防する薬「アライ」も4月に発売されました。脂肪の吸収を抑える働きがあり、国内の臨床試験では内臓脂肪と腹囲を減らす効果が見られました。

処方箋は必要としませんが、薬剤師が直接販売する要指導医薬品に位置づけられています。購入には腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上などの条件があります。近年美容やダイエットを目的に、ウゴービと同じ成分の糖尿病治療薬が使われる事案が起きました。

ウゴービには低血糖や急性膵炎、アライにも副作用のリスクがあります。専門家はそれぞれ肥満症の専門医や薬剤師の指導の下で適切に使うことが重要と指摘しています。


日本人にとっては意味がない健康法

2024-06-28 10:35:24 | 健康・医療
私は基本的には海外での結果であっても、人種差などはあまりなく日本人にも当てはまるだろうと思っています。

確かに同じ日本人であっても個人差は大きく、効果が出やすい人や出にくい人は存在しますが、全く効果がないとは言い切れないような気がします。

ここでは人種によって体質が異なり、体質が違えば病気のなりやすさや発症の仕方も変わります。見落とされがちであった体の人種差の視点から、日本人に有効な健康法を紹介します。健康法にも人種差の問題があります。

メディアは欧米で流行している健康法を競って紹介しますが、日本人は欧米人とは異なる遺伝子を受け継ぎ、異なる環境要因のもとで生きてきました。欧米人に有効な健康法が日本人にも効果があるとは限らず、むしろ有害なことすらあるのです。

無酸素運動は、大きな負荷をかけて瞬間的に力を入れるダンベル体操やスクワット、腕立て伏せなどの運動を繰り返すトレーニングで、筋肉が付くと基礎代謝量が増えることが分っています。

無酸素運動をしっかり行うと、その後約48時間にわたって基礎代謝が高い状態が続くことから、筋力トレーニングで痩せ体質になるといわれるようになりました。しかし問題は、日本人は欧米人と違って簡単に筋肉が付かないことです。

筋肉の詳しい状況は省略しますが、筋力トレーニングを続けられる人であっても、筋力トレーニングだけで基礎代謝を十分に高めるのは難しいでしょう。7か国が参加したコホート研究から、地中海沿岸地域は心臓病による死亡率が低いことが明らかになりました。

この研究をきっかけに、この地域で暮らす人々が伝統的に接種してきたオリーブ油の健康効果に注目が集まっています。オリーブ油には、動脈硬化を促すリノール酸がごく少量しか入っておらず、代わりにオレイン酸が豊富です。

その後の研究で、このオレイン酸が心臓病の発生を抑えるらしいことが分り、この説を裏付けるデータが発表されました。このようにダイエットや便秘解消に効くとしてオリーブ油を飲むよう勧める人がいるほどです。

日本人は欧米人と比べて内臓脂肪が付きやすいので、脂肪を摂取すればすぐ体について血糖値が上がり、血圧が上がり動脈硬化が進みます。オリーブ油の健康効果を示す文献はいくつも出ていますが、接種すればするほど良いわけではないので、気を付ける必要があるようです。

動脈硬化を防ぐには油そのものの使用を控えるのが第一位です。さらにオレイン酸は肝臓で合成できるので、意識して摂取しなくても健康が損なわれることはないようです。

結局健康に良いといわれるオリーブ油でも、過剰に摂取しないことが重要なのかもしれません。

オンラインの囲碁教室に認知機能の低下抑制

2024-06-27 10:32:56 | 文化
このブログでも定例囲碁会のことを書いたりしていますが、囲碁は手軽な趣味としてずっと続けていこうと思っています。

私は特に勉強的なことはしていませんが、日曜日のNHKの囲碁トーナメントを、NHK+を使ってゆっくり見ています。NHK+で見ると途中止めて考えたり、見直すことができるので、かなり勉強になるような気がしています。

後はタブレットやPCに対戦囲碁ソフトを入れてありますので、時々対局しますがやはり人との対局の方が面白いような気がしています。

東京都健康長寿医療センターのグループが、囲碁が高齢者の健康に与える有効性について研究を開始しました。タブレットを用いてインターネット上で囲碁を学ぶ、オンライン囲碁教室プログラムによる検証を開始しました。

この研究は湖山医療福祉グループの介護施設の協力により実施されました。この囲碁を選択した理由として、研究グループは次のように述べています。高齢になり認知機能が低下した場合に、新しいことを学んで知的な刺激を得ることが良いことは過去の研究から分かっています。

その上で囲碁はまずルールがシンプルです。将棋やチェスなら駒の動き、麻雀なら牌をそろえるとか最初に覚えることが多いと、認知症をすでに発症したあるいは認知機能が低下した人が新たに始めるのはハードルが高くなります。

一方オセロのような誰でも知っているゲームだと学習のプロセスがありません。シンプルさと学習の負荷のバランスが良く、最も良い効果が得られるのが囲碁としています。

囲碁の経験がない高齢者、認知症患者向けに囲碁教室のプログラムを組んで一定期間実施したところ、新たに囲碁の学習に取り組んだことで認知機能、注意力、ワーキングメモリ―などの脳の機能が維持できる、あるいは向上するという結果が出ました。

この取り組みはコロナ禍でリモート囲碁教室になってしまいましたが、問題なく継続しているようです。対面での囲碁教室は1時間でしたが、オンラインは30分となりました。ルールの講義が10分、練習問題が10分、オンライン対局が10分となっています。

全15回で約4か月間、日本棋院の棋士に講師を頼み、入門用の碁盤を使って対局できるようになることを目指しています。

この様な方法で、高齢者で認知症の可能性がある人が本当に囲碁を打てるようになるかは怪しい気がしますが、囲碁が脳のために良いのであれば、私ももう少し囲碁に取り組んでみようかとも思っています。

この研究でここまでの検証では、認知機能と精神的健康状態が維持できるという結果が出ているようです。

競争に負けるミジンコは休眠卵で生き残る

2024-06-26 10:31:20 | 自然
動物性プランクトンであるミジンコは面白い生き残り戦略を持っているようです。

東北大学などの研究グループが、異なるミジンコが共存している場合、飼育下では負けて絶滅する側の集団が、休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっていることを明らかにしました。

9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることが分りました。ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトンで、日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種です。

オスとメスが交尾して子供ができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続けます。水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子を持つ卵を育房に産み、脱皮時にクローンである子供が外に出ます。

子供は約1週間で成熟して卵を産むようになります。温度が低く餌となる植物プランクトンが取れない冬は、体外に産み出した乾燥にも耐えることができる休眠卵が湖沼の底に沈んだまま春を待ちます。

東北大学の研究グループは、山形県にある広さ約19ヘクタール、最深部約8メートルの畑谷大沼に、見た目や住む場所、食べる餌はほぼ同じだが遺伝子型は異なるミジンコ2集団(JPN1とJPN2)がいることに気づきました。

研究グループは2009年から2018年まで1カ月に1度調査に通い、2集団の個体数を記録しました。調査時にはミジンコを捕まえて1匹ごとにDNAを取り出して遺伝子配列を読み取り、JNP1かJNP2を特定しました。

それぞれの個体密度と割合を求めると、おおむねJNP1の方がJNP2より多くなっていました。室内で水層に同じ数のJNP1とJNP2を入れて育てる実験をすると、JNP1が競争に勝って数を増やし、JNP2は絶滅することから2集団ではJNP1が競争優位集団でJNP2は劣位集団となります。

室内飼育だとJNP2は絶滅しますが、野外では毎年生き残っています。これは休眠卵の数自体が多いためではないかと考え、湖底にある休眠卵を数えると差はありませんでした。

個体数はJNP2の方が少ないのにもかかわらず、休眠卵数に差がないのは、JNP2の個体あたりの休眠卵数が多いことを示しています。

JNP1とJNP2をべつべつの水槽に入れて高密度で飼育してから、この飼育水を用意して実験を行うと、JNP1を高密度で育てた飼育水に入れられたJNP2は即座に休眠卵を産み始めました。一方JNP1では同様の環境で休眠卵の増加はみられませんでした。

野外観察と室内実験の結果から、競争では劣位なJNP2集団が優位なJNP1集団と長期にわたって共存しているのは、JNP2が競争者の増加を察知し、排除される前に休眠卵を産むことで翌年以後の個体群を形成できるからだと分かりました。

この休眠卵を用いた自然の生き残り戦略は、なかなか優れたものと感じました。