ごっとさんのブログ

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「老化細胞」が蓄積する仕組みを解明

2022-11-30 10:40:24 | 健康・医療
すべての細胞は増殖を繰り返すと、分裂できなくなってきますがこれを「老化細胞」と呼んでいます。

老化細胞はアポトーシスなどの仕組みや、免疫細胞による攻撃で排除されますが、これが除かれず残ってしまうと色々の悪影響が出るとされ、現在注目されています。

東京大学医科学研究所などの研究チームは、この脂肪肝や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす一因とされる老化細胞が、加齢に伴って肝臓などの臓器にたまる仕組みを明らかにしたと発表しました。

老化細胞を取り除くはずの免疫機能が、特定のタンパク質の増加により妨げられた結果蓄積するようです。研究チームは肝炎になったマウスに薬剤を投与し、老化細胞の蓄積を妨げることで症状の改善を確認しています。

前述のように臓器内の一部の細胞は、増殖が止まって老化細胞となります。それが蓄積すると炎症を起こす物質を出し続けるため、病気につながると考えられていますが、加齢に伴って蓄積する理由は分かっていませんでした。

そこで研究チームは、不要な細胞を攻撃して取り除くはずの免疫機能が、老化細胞の蓄積の際には働いていないことに着目しました。マウスから取り出した老化細胞と、ヒトの細胞から人工的に作った老化細胞を使い、免疫細胞からの攻撃を避ける物質の有無を調べました。

その結果それぞれの老化細胞の1割弱には、表面に「PD-L1」と呼ばれるタンパク質があることが分かりました。このタンパク質は免疫細胞のタンパク質「PD-1」と結びつくと免疫の働きにブレーキをかけてしまうので、老化細胞が除去されにくくなる可能性があるとしています。

マウスの肺や肝臓、腎臓で調べてみると、PD-L1のある老化細胞の量は、老齢マウスが若いマウスより10倍程度増加していました。しかしここで見出したタンパク質がPD-L1というのは、やや面白みに欠けるような気がします。

すでにガン細胞が免疫から逃れる仕組みがこのPD-1であることが分かっており、それに対処する薬剤も開発されています。つまりガン細胞と老化細胞が免疫システムから逃れる仕組みが同じであるというのは、もともと両者が正常細胞が変化したものである以上、当然のような気がします。

研究チームは開発されたこのガン細胞用の薬剤を加齢マウスに使ったところ、肺や肝臓、腎臓の老化細胞がそれぞれ3分の1になり、筋力の回復や肝機能の改善を確認しました。

実際の実験ではガン細胞よりこの老化細胞の方が扱いやすい可能性もありますので、ガン用のオプジーボなどよりはるかに安価なPD-L1の阻害剤を探索する助けになる可能性はありそうな気がします。

今回の結果は、老化細胞がガン細胞と同じメカニズムで、免疫細胞の攻撃を避けているというのは興味があります。

酵素や微生物の有機合成への応用 昔ばなし

2022-11-29 10:33:26 | その他
昔ある人に私が30年も有機化学の研究をしていたことを話したとき、それで何が分かったかを聞かれました。

なかなか難しい質問でしたが、「生命の不思議さと面白さ」が分かったと答えました。生命は本当に面白いもので、複雑な有機化学反応を駆使して生命を維持しています。

私が大学で講義をするとき、最初の学生への質問が「なぜ腕は曲がるのか」でした。割と多い回答が筋肉が収縮するからでしたが、これは正しいのですが実は答えになっていません。

私の質問はどうやって筋肉が収縮するのかなのですが、3年生ではこれに答えられる学生はいませんでした。筋肉はタンパク質でできており、タンパク質はアミノ酸が多数つながっています。

そのアミノ酸の中にはセリンやスレオニンといった水酸基(OH)を持ったものが含まれており、それがリン酸化されるとそのタンパク質は凝集する、つまり筋肉は収縮するのです。また同時に外側の筋肉では逆の脱リン酸化がおこり、筋肉が延びその結果スムーズに腕が曲がることになります。

腕を曲げるという信号が(無意識でも)適切な場所に届くと、リアーゼと呼ばれる酵素とリガーゼと呼ばれる酵素が協奏的に働き、瞬時にリン酸化と脱リン酸化が起こることによって行動できることになります。

たとえ何もしていなくとも、呼吸することで酸素を取り込み(これは無機化学です)、これをエネルギー源として例えば前述のリン酸化の供与体としても使われるATP(アデノシン三リン酸)を作ったりして、行動の準備をしています。

このATP再生系も数段階の酵素反応になっています。こういった生体内の酵素反応の例を挙げるときりがないのですが、常に体内では無数といえる酵素反応が生じているわけです。

この酵素反応の特徴としては、まず当然ですが水系(水が溶媒となります)で反応が進行し、非常に薄い濃度で速やかに反応が進行します。さらに大部分の酵素は、必要なときに合成され反応が終われば分解されてしまうのです。

これは酵素だけではなく、生体物質例えば情報伝達物質やホルモンなども、必要に応じて合成され目的が達成されればすぐに分解されてしまいます。つまり生体内は多くの化合物が、合成され分解されるという酵素反応が常に行われているわけです。

前置きが長くなってしまいましたが、この優れた酵素反応を人間が行う有機化学反応に応用できないかということを考えたわけです。

その利用で最も注目したことが、立体選択的反応ですがこれも説明すると長くなりますので次回に続きます。

十二指腸潰瘍の主な原因はピロリ菌、その症状

2022-11-28 10:34:27 | 健康・医療
私は若いころみぞおちのあたりが痛んだり、食欲が亡くなったりしていましたが歳をとってからの方がそういった症状が亡くなりました。どうも私は胃腸関係は結構丈夫にできているのかもしれません。

指を横にそろえて12本並べた長さ(約25センチ)ということが名前の由来とされる十二指腸は、胃から送られてきた食べ物に膵液や胆汁などを混ぜ小腸に送ります。食べ物の消化に欠かせない重要な臓器ですが、胃酸の刺激などで粘膜が傷つき潰瘍ができることがあります。

十二指腸は胃の出口にある幽門から繋がり、膵臓を囲むように「C」の形をしています。十二指腸潰瘍の代表的な症状は腹痛で、空腹時や早朝、夜間にみぞおち周辺が痛みます。

再発を繰り返すと患部がすぼまって食べ物の通りが悪くなり、胃もたれや吐き気、食欲不振などが現れます。長く放置していると出血し、筋肉の層が薄いため穴が開くこともあります。大量に出血した時は吐血したり、コールタールのような黒い便が出たりします。

この場合緊急手術が必要になることもありますが、一方で症状が全くない人もいます。主な原因はピロリ菌の感染で、十二指腸の粘膜に慢性の炎症が生じ、胃酸の刺激で潰瘍ができやすくなります。

ピロリ菌は胃の防御機能が成熟していない幼少期に、口から入って感染するとされています。薬の副作用でも発症し、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、胃酸から粘膜を保護する物質を生成させにくくする働きもあり、潰瘍をできやすくします。

現在はピロリ菌由来の潰瘍が減る一方、非ステロイド性抗炎症薬が原因の潰瘍は増えており、そのほか原因不明の突発性もあるようです。確実な診断のためには、内視鏡検査が必要です。潰瘍の状態から活動性や深さを評価し、ピロリ菌感染の有無も判断します。

プロトンポンプ阻害薬という胃酸の分泌を抑える薬を6〜8週間内服することで、ほとんどの潰瘍は治癒します。ピロリ菌の感染を伴う場合は除菌治療を行いますが、除菌に成功すると再発はほぼなくなります。

抗炎症薬が原因の場合は、可能であれば服薬を中止しますが、それが難しい時は胃酸の分泌を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬で改善を目指します。

内視鏡検査で出血を確認した時は血管をクリップで挟んだり、血管を収縮させる薬を注入したりして止血を行う治療を行うこともあるようです。十二指腸潰瘍はそれほど重い病気とは言えませんが、やはり放置すると大変な治療となります。

どんな病気もそうですがやはり早期対応が重要ですので、ちょっとした症状でも長引くようであれば医療機関への受診が重要といえます。

生命とは何かを考える「極限環境微生物」

2022-11-27 10:34:05 | 自然
私は生命の起源に興味を持っていますが、残念ながら私が生きている間には明確な回答は出そうにありません。

このブログでも生命の起源の謎に迫るような記事をいくつか紹介していますが、まだまだ謎は深まるばかりといえそうです。最近生命とは何かを考えさせられるような、「極限環境」に生育する微生物が見つかっています。

具体的には数百度にもなる熱水が噴き出す深海の熱水噴出孔や、逆に極寒の南極の氷床下、さらに乾燥した砂漠など普通の生物なら到底生きられないような環境です。

海洋研究開発機構の研究チームが、1億150万年前の地層から栄養がほとんどない環境で生きる微生物を発見したと発表しました。研究が始まったのは12年前で、研究チームは日本から8000キロ離れた南太平洋のある海域に、微生物を探す航海に出ました。

その海域は陸地から遠く離れ、周囲に南太平洋還流という海流が流れているために、陸地からの栄養が届きにくく、微生物のエサになる有機物が極端に少ない極限環境にあります。

この海域の水深およそ5000メートルの海底を掘削し、恐竜がいた白亜紀の地層のサンプルを採取しました。すると大きさ1000分の1ミリほどの微生物がごくわずかながら確認されました。周囲の地層から微生物は移動することも無く、確かに1億年以上そこにいたと考えられました。

これが本当に生きているのかを確かめるために、エサを与えて実際に食べるかどうかを調べる実験を行いました。エサとして与えたのは、自然界にほとんど存在しない「炭素13」という同位体を含むアミノ酸などです。

特殊な装置で解析したところ、エサの目印である炭素13が確かに微生物の体に取り込まれていることが確認されました。またエサを与えたのち微生物がどのくらい増殖したかを計測してみると、60日後にはその数が1万倍にも増えていることが確認されました。

微生物には「寿命」という概念はなく、分裂するまでの時間を「世代時間」とよんで寿命のようなものとして扱っています。大腸菌の場合、分裂に適した環境下では世代時間は30分ほどとなっています。

栄養がほとんどない極限環境で見つかったこの微生物は、エネルギーが足りず分裂することができないものの、かろうじて自身の細胞を維持することができたために、1億年以上の世代時間を生き続けることができたようです。

なぜそれほど栄養が少ない場所で微生物が生きられたのかはまだ明らかになっていませんが、研究チームは仮死状態や冬眠状態のように、消費するエネルギーの量を極端に減らすなど何らかのメカニズムが働いているのではないかと考えています。

このように1億年という長い時間をエネルギーの供給無しに生き続けたということは、「生命とは」を改めて考えさせられる現象といえるようです。

吸入型薬剤の正しい効果的な使い方

2022-11-26 10:35:56 | 
私は月に1回近所のクリニックに行き、吸入型の喘息予防及び肺気腫治療用の薬を処方してもらっています。

そもそもの発端は十数年前ですが、咳がひどく呼吸器科の病院を受診しました。そこで色々と検査を受けたのですが、診断は気管支喘息でした。

私の周りには母や従妹が喘息の持病があり、発作に苦しむ様子を見てきましたが、それほどひどい発作になったことはありませんがそんなものかと吸入を続けていました。

その後近所のクリニックに代わり色々再検査をしたところ、CTで肺がやや膨らんでおり、肺気腫の初期という診断を受けました。このブログでも書いているように私は50年以上喫煙を続けていますので、肺気腫になる可能性は高そうです。

この様な喘息や肺気腫である症状は特にないのですが(咳はすっかり治まっています)、これからも喫煙を続けるためにはこういった予防的な吸入薬も良いのかと思って、クリニックでの処方を続けています。

なお喘息については、発作どころかひどい咳が出ることもありませんので、喘息という診断が間違っていたのではないかと思っています。

肺気腫は肺の気管支の末端にある肺胞という組織が壊れることで呼吸に支障をきたすことが特徴で、高齢かつ長期間喫煙歴がある人に多く、治療には吸入薬を使うケースが多いようです。

私はまさにこのケースに当てはまりますが、肺気腫の原因は60歳から8年ほど勤務した研究所で、ある特殊な溶剤を多量に吸入してしまう実験をしていましたので、この溶剤が原因ではないかと思っています。

さて吸入薬のはなしですが、肺の炎症の大部分は、気管支の太いところよりも細いところ、つまり末端で起こります。そのため成分をいかに肺の奥まで届かせるかが重要なポイントになります。

吸入薬にはクスリの形状の違いによって「パウダー型」と「エアロゾル型」に分類されます。パウダー型はその名の通りクスリの成分が粉状になっていて、吸入する人の息を吸う力によってクスリが気管支に入っていきます。

エアロゾル型はクスリの成分が液体で、ガスの力で霧状になって噴出されます。パウダー型は吸入のタイミングを考える必要がないのですが、気管支の末端まで届けるためにはかなり強い力で息を吸わないといけません。

その点エアロゾル型は霧状で出るメリットはありますが、タイミングが難しいのが欠点となっているようです。

高齢者になるとこういった問題が出ており、吸入薬を使っていても効果を発揮する部位に届かなることが多いとされています。現在は吸入補助具なども出ているようですが、自分の吸入薬の特徴をしっかり理解して、ちゃんと吸えるようにしたいものです。