最近デング熱が話題になっていますが、この病気はウイルス性の感染症で蚊が媒介しています。現在、この対策として蚊の駆除が行われていますが、ここではもう50年前の殺虫剤の話です。
これはDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)と呼ばれた殺虫剤で、1939年に殺虫活性が発見されました。DDTは蚊やハエ、ノミ、ダニといった衛生害虫に対して、非常に強い殺虫活性を示し、哺乳類には何の作用も示さないという優れた薬でした。さらに特徴として、非常に安価に製造できました。たぶん薬の中でこれほど安く大量に合成できるものは、前にも後にも出ていないと思われます。
蚊が媒介する重要な感染症として、マラリアがあります。マラリアは日本では、海外旅行で感染した人が少し発病する程度で、全く問題にされていませんが、熱帯地方では現在でも死亡者数が最も多い病気です。第二次大戦前後の熱帯地方は、貧乏な国が多く高価な殺虫剤など使えないため、多数の感染者が出ていました。この状況に安価なDDTが大きく貢献しました。
日本でもDDTの恩恵を受けてきました。戦後、日本のような敗戦国は衛生状態が悪くなりますので、いわゆる疫病と呼ばれる伝染病が蔓延することが多くなります。しかしアメリカから入ったDDTが大量に散布されたため、媒介する衛生害虫が駆除され疫病の発生が抑えられたのです。戦後の写真で、小学生などの頭にDDTをふりかけ、真っ白になったものを見た記憶があります。このようなひどい使い方をしても、全く人間には被害が出なかったようです。
効果が高く安価であることより、世界的に大量に使用されましたが、散布法などの規制が何もなかったため、かなり雑な使われ方がされたようです。
その結果、1962年有名な環境問題研究者から地球がDDTに汚染されているとの提起がなされました。そして地球上のいろいろなところで、DDTを探すというブームが起き、なんと南極の氷の中からもDDTが検出されたのです。ついに1968年WHOがDDTの使用を禁止しました。
問題は、”禁止された”イコール”危険な薬”という認識が世論として広まったことです。前述のように、DDTは毒性は全くなく、分解速度も土壌中で2週間、海水中でも1か月半程度で、問題はありません。マラリアの感染については、スリランカでの調査がありますが、DDTの散布前は年間250万人だったものが、散布中は数百人まで低下し、散布中止後5年で元に戻ったとの報告があります。
これを受けて、2006年になりWHOがマラリア流行地でのDDTの使用を推奨しました。それでも危険な薬物の使用反対運動まで起こったようです。
以上のように、いったんケチがついた薬は復活することはないよう気がします。
これはDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)と呼ばれた殺虫剤で、1939年に殺虫活性が発見されました。DDTは蚊やハエ、ノミ、ダニといった衛生害虫に対して、非常に強い殺虫活性を示し、哺乳類には何の作用も示さないという優れた薬でした。さらに特徴として、非常に安価に製造できました。たぶん薬の中でこれほど安く大量に合成できるものは、前にも後にも出ていないと思われます。
蚊が媒介する重要な感染症として、マラリアがあります。マラリアは日本では、海外旅行で感染した人が少し発病する程度で、全く問題にされていませんが、熱帯地方では現在でも死亡者数が最も多い病気です。第二次大戦前後の熱帯地方は、貧乏な国が多く高価な殺虫剤など使えないため、多数の感染者が出ていました。この状況に安価なDDTが大きく貢献しました。
日本でもDDTの恩恵を受けてきました。戦後、日本のような敗戦国は衛生状態が悪くなりますので、いわゆる疫病と呼ばれる伝染病が蔓延することが多くなります。しかしアメリカから入ったDDTが大量に散布されたため、媒介する衛生害虫が駆除され疫病の発生が抑えられたのです。戦後の写真で、小学生などの頭にDDTをふりかけ、真っ白になったものを見た記憶があります。このようなひどい使い方をしても、全く人間には被害が出なかったようです。
効果が高く安価であることより、世界的に大量に使用されましたが、散布法などの規制が何もなかったため、かなり雑な使われ方がされたようです。
その結果、1962年有名な環境問題研究者から地球がDDTに汚染されているとの提起がなされました。そして地球上のいろいろなところで、DDTを探すというブームが起き、なんと南極の氷の中からもDDTが検出されたのです。ついに1968年WHOがDDTの使用を禁止しました。
問題は、”禁止された”イコール”危険な薬”という認識が世論として広まったことです。前述のように、DDTは毒性は全くなく、分解速度も土壌中で2週間、海水中でも1か月半程度で、問題はありません。マラリアの感染については、スリランカでの調査がありますが、DDTの散布前は年間250万人だったものが、散布中は数百人まで低下し、散布中止後5年で元に戻ったとの報告があります。
これを受けて、2006年になりWHOがマラリア流行地でのDDTの使用を推奨しました。それでも危険な薬物の使用反対運動まで起こったようです。
以上のように、いったんケチがついた薬は復活することはないよう気がします。