ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

リオオープンテニス 決着

2017-02-28 10:22:58 | テニス
先週からブラジルのリオオープン(ATP500)が開催され、錦織も第1シードとして出場しました。

錦織は前週のアルゼンチンオープンの決勝まで行きましたので、全く休む暇がなく次の大会に出場ということで、体調面でやや心配していました。錦織の第1試合は大会2日目となりましたが、移動などを考えるとぎりぎりに間に合うという日程でした。

この大会はATP500ですので、BS朝日が放映してくれますので、ライブではないのですがゆっくりと見ることができました。この大会はシード選手でも1回戦免除ということがありませんので、錦織は地元ブラジルの69位の選手と当りました。

このクラスの選手に負けることは無いだろうと思っていましたが、前大会の決勝戦のテニスは明らかにおかしかったので、それを引きずっていないかが若干不安材料でした。

試合が始まると不安が的中し、明らかにストロークが短く、相手に打ち込まれるパターンが続いていました。それでも何とか頑張って4-4のタイまで行ったのですが、次のサーブでミスが続き、なんとダブルフォルトでこのゲームを落とし、4-6でこのセットを取られてしまいました。

それでもこれはよくあるパターンで、先行されても次のセットから錦織らしさが出て挽回するということが多いのですが、今回はその良さが出てきません。たぶん本人が一番イラついていたようで、錦織にしては珍しくラケットをたたきつけて壊すなどという行動も出てきました。結局このままずるずると進み、3-6で2セットも取られまさかのストレート負けになってしまいました。

この錦織の症状はかなり深刻で、次の3月6日からの大会までに修正できるか心配です。1回戦で負けたので次まではかなり時間が空きますので、しっかり調整してほしいものです。しかしこの大会はクレーコートだからというわけではないでしょうが、何と1回戦で8人いるシード選手のうち5人が負けてしまうという大波乱となりました。

当然ですがその後BS朝日の中継はなく、注目選手もほとんどいないため、ざっと結果を見る程度でした。しかし昨日の決勝は中継しましたので、見ていましたが第2シードのティエムとスペインのカレノブスタというほとんど知らない選手との戦いになりました。

ティエムはオーストリアの若手(23歳)で昨年もシーズン序盤に大活躍して、ランキングも8位と錦織を脅かす位置にいます。ですからティエムが圧倒的に有利と思っていたのですが、決勝戦らしく接戦で始まりました。1セットはタイブレークなるかと思っていたのですが、最後にティエムが頑張り7-5で取りました。2セット目はこの流れのまま6-4でティエムが取りあっさりと優勝しました。

ティエムの動きを見ているとそれほど脅威になるとは思えないのですが、後ろから若手が迫っており錦織の奮起を望みたいところです。

24時間働き続けるアリ達

2017-02-27 10:41:19 | 自然
先日ビジネス関係のニュースを見ていたところ、タイトルのように24時間働き続けるアリという記事を見ました。

何かビジネスに関連する内容かと思いましたが、完全に科学に分類されるようなものでした。アリやハチのように社会性を持った昆虫は、よく人間社会と対比されたりしますがこれはアリの特性を述べたものでした。

働きアリは卵や幼虫などの脆弱なものと同居させると、本来の活動リズムをなくし24時間働き通しになることを東京大学や国立情報学研究所の研究グループが明らかにしました。
ヒトを含めた地球上のほぼすべての生物は体内時計を持っていますが、これは光などの環境要因の影響を受けやすく、子やほかの固体などの社会的な要因にも影響されることが知られていました。

アリをはじめとする社会性昆虫では、幼虫などはエサを取ったり病原菌から身を守ることのできない弱い存在ですが、こういった家族や仕事といった社会環境をアリがどの程度認識し、働き方や時間などをどう決めているかよく分からなかったようです。

私は子供のころこのアリの巣を観察しようとして、小さな水槽に土を入れ、その中にかなり多くのアリを入れて巣を作らせたことがありました。巣は作り始めたのですが水槽に接したところまでいかず、全く見えないのであきらめた記憶があります。アリの巣の中の動きを観察できれば、面白そうな気がしますが実際はかなり難しいようです。

この研究グループは、アリに卵・幼虫・蛹という異なる成長段階があることに注目して、沖縄産のトゲオオハリアリを用いて実験を行いました。働きアリの活動時間がどう変化するかを、動画とコンピュータ解析で自動的に個体の位置を取得する自動追尾システムを開発したようです。

これを用いて働きアリの活動量、活動時間を定量化することで調べました。その結果このアリはもともと昼行性なのに、卵や幼虫を世話する働きアリは24時間活動し続けるようになる一方で、蛹を世話する働きアリは昼間のみ活動性であることが明らかになりました。

今回の実験は、1匹のアリを1匹の幼虫とペアにするものでしたが、同研究グループは今後自動追尾システムを活用・発展させることで、さまざまな個体と仕事が混在する実際のコロニーに近い状況で、働きアリがどのように分担し時間と労力を割り振っているのかを調べる方針といいます。

今回のアリの結果自体はそれほど興味深いものではありませんが、多数のアリを識別して追尾するシステムは色々な研究に使用できる素晴らしいものと感じました。

北の将軍様の兄VXガスで殺害か

2017-02-26 10:43:41 | 化学
北朝鮮の金正恩の兄さんがマレーシアで暗殺されたというニュースが、報道番組その他で大きく取り上げられています。

最近この殺害に使用された毒物が、VXガスらしいということもわかってきたようです。日本のマスコミはこの事件を大きく取り上げていますが、北朝鮮で重要なポジションにある訳ではなく、それほど重要な事項とは思えません。

確かにマレーシアの空港という公の場で、工作員が殺害したということはスパイ小説のような面白さはあります。しかしこれはどんなに追及したところで、北の政府の関与の有無ですら明らかになることは無く、単に推測の積み重ねができるだけのような気がします。

私としてはここで使用されたVXガスの方に興味があります。このブログでは私の専門についてはあまり書いていませんが、有機合成を仕事としていると毒物に詳しくなければいけません。

通常の天然に存在する毒だけではなく、化学兵器として使われた毒物については、その構造式や作用機序、発症する症状、その対処法を知っておかなければいけません。もちろん我々は毒物を目的としているわけではなく、病気に有用な薬の合成を目指しているわけです。

この良い薬を作るために、色々な構造活性相間といったものや、研究者個人のアイデアのもとに新しい化合物を設計し、合成していきます。これは全く新規な化合物であり、いわば世界で初めて合成する物質となるわけです。ですからその化合物が出来上がるまでどんな性質を持ったものかは分かりませんし、予測も困難となります。

また薬というものはターゲットとなる受容体や酵素に結合させるわけですので、少し構造が異なると全く別の酵素などに結合する可能性があります。例えば今回のVXのようにコリンエステラーゼという酵素を阻害してしまうと、強い神経毒になってしまいます。合成した化合物は必ず微生物を用いた簡易毒性試験を行いますが、稀ではありますが非常に強い毒性が出てしまうことがある訳です。

これを回避するために、既存の毒物の構造をしらべ、類似した部分構造にならないよう気を付けないといけません。特に化学兵器で使われるような物質はそれほど特別な構造ではなく、いわばありふれた部分構造を持っています。これを完全に排除することは難しいのですが、原料の段階でのチェックなど色々なところでこういったことを避ける工夫をしているわけです。

またVXガス(本体は液体です)は非常に皮膚吸収が良いのが特徴ですが、この辺りのことはまた何かの機会に書くかもしれません。

プレミアムフライデーは定着するか

2017-02-25 10:41:11 | 時事
経済産業省が旗振り役となっている、月末の金曜日に早く退社するというプレミアムフライデーが始まりました。

これは働き方改革を進める政府の動きの一環かもしれませんし、早く退社することにより、個人消費を促すという経済対策のようです。金曜日に早く帰ることができれば、土日にかけて旅行に行ったりする場合は便利ですし、それなりの効果が期待できるような気もします。

ただ本来この時間にすべき仕事がなくなるわけではないので、どこかにこのしわ寄せが出るのかもしれません。それでもこういった就業時間の短縮というのは、悪くはない取り組みのような気がします。

私が入社したころですのでもう半世紀も前のことですが、当時から終業時間の短縮というのが大きな課題でした。このころはまだ土曜日はいわゆる「半ドン」として午前中勤務になっていました。私などはこの日は麻雀の日で、午後から麻雀をすることが多かったので、かなり無駄な日という気はしましたが、それなりに楽しんでいました。

それが隔週は土曜日が休みになり、その後完全な週休2日と進んでいったわけです。ただ私の会社の場合はそれほど単純にはできない事情がありました。社内の工場は3交代勤務となっており、日勤部門は時間短縮ができますが、交代勤務と差が出てしまうわけです。そこで土曜日を休みにする代わり、平日の勤務時間を15分とか20分長くするという方策が取られました。

そのため勤務時間が9時から5時40分などという変な時間となっていました。この変な勤務時間はその後退職するまで変わりませんでしたので、勤務時間短縮という動きが止まってしまったような気もします。こういった経緯はあるものの、今では週休2日が社会的にも定着しています。

また私がそのあとで勤務した研究所も、水曜日がノー残業デーとして定時退社を進めるという取り組みがありました。これも発足当時はかなり早く帰る人も多かったのですが、すぐに有名無実となり普通の日と変わらなくなったようです。それでもこの日は早く帰るのに出やすい日となっているようで、それなりに機能しているのかもしれません。

今回のプレミアムフライデーは勤務時間を短くするという、ノー残業デーとはかなり趣が異なりますので、官公庁や一部の大企業程度しか実行されないような気もします。たぶん導入されても一部の人が利用する程度だとは思いますが、こういった日を設けること自体は悪くないと思っています。

この制度を実施できる企業と無理な企業など格差が出るのはやむを得ませんし、長時間労働の改善にはつながりませんが、早く帰宅可能な日があるというのは、何となく夢があるような気もします。

狙った臓器での金属触媒反応を実現

2017-02-24 10:44:00 | 化学
最近理化学研究所の研究グループから、体内の疾患部位で薬を作るという面白い試みが発表されました。

これは私の専門に近い研究で、私も現役のころ体の中に入ってから有効な薬となって、効力を発揮する薬剤の研究をやっていました。

主に狙っていたのは、良い効果がある薬でも、腸管吸収がないつまり飲むことができず注射しか投与方法がないという物がかなりあります。こういう薬は病院にいかないといけないという制約がありますので、これを飲み薬に代えてやれば、患者も使いやすい薬となるわけです。

こういった薬の腸からの吸収の妨げになるような部分を、化学修飾という手法で一部の構造を変化させます。そうすると腸から吸収するようになるのですが、一般に薬の効力がなくなってしまいます。しかし体内の血液中や肝臓には分解酵素に分類される酵素がいろいろありますので、体内に入ってから化学修飾した部分が外れて、元の薬の構造になればよいわけです。

こういった生体内で分解されて活性が出るような手法を、プロドラッグと呼んでおり、何種類か成功例も出ています。実際には腸管吸収や分解酵素量は種差が大きく、動物実験でうまくいっても人にまで使えるようにするのは、かなり難しい課題でした。

これはあくまで生体が持っている酵素を使って、薬を変換するものですが、今回の理研の研究はもう一歩進んだものでした。

有機化学では色々な金属、例えばルテニウムやパラジウムなどが、色々な反応の触媒となる、つまり反応を促進させる効果があることが知られています。この金属を目的とする臓器に運び、そこで反応を起こさせようという物です。

この研究で用いた金属は3価の金で、これを「糖鎖クラスター」と呼ばれる血清タンパクであるアルブミンに金を結合させ、糖鎖を選択することで親和性のある臓器にこの金触媒を届けようという実験です。また反応の基質となる物質として、プロパギルエステルに蛍光物質を結合させたものを使用しました。この金触媒があると、プロパギルエステルはアミン類と反応してアミド化反応が生じ蛍光を発するようになっています。

まず糖鎖の末端にシアル酸という糖を付けたもので、“金の運び屋”を合成し、ヌードマウスに静脈注射しました。このシアル酸は肝臓と親和性があり、30分以内に肝臓表面に金触媒が植えつけられました。続いて反応の基質であるプロパギルエステルを静脈注射すると、肝臓のリジンなどのアミノ基と反応してアミド化が進行し、肝臓部分に蛍光が発生しました。

同様に腸と親和性のあるガラクトースの糖鎖を用い同じ操作をすると、腸に蛍光が認められました。今回は比較的単純な反応ですが、例えばガン細胞に金属触媒を植え付け、抗ガン剤を活性化することなどができれば、部位特異的な作用が期待できるとしています。