ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
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身体の恒常性を担う「皮膚の驚愕のシステム」

2023-11-30 10:38:37 | 健康・医療
皮膚は身体の表面を覆いいつも見ている部分ですが、あまりありがたみを感じていません。

しかし皮膚は人体最大にして最強の臓器で、身体の内外を分けるだけでなく、「あつい・いたい」といった感覚を伝える「感覚器」でもあります。また皮膚はさまざまな機能を持ったスーパー臓器ですが、とりわけ重要なのが体内環境を保護するバリア機能です。

人間は皮膚なくして生きながらえることはできません。皮膚が失われると身体から水分が失われて、身体を維持する生理的な機能が損なわれ、短時間で死に至ります。これはヒトに限ったはなしではありません。

リンゴなどの果物を考えても、皮さえついていれば長い間みずみずしさを失いませんが、皮をむいたとたん瞬く間に干からびていきます。そればかりか表面にカビが生えたり、腐敗が進行し細胞構造が壊れていきます。

皮膚は外界と常時接触している「臓器」です。外界にはウイルスや細菌、真菌などの病原体や人体に有害な化学物質が無数に存在します。太陽からは有害な紫外線が降り注ぎ、予期せぬトラブルで外傷などの物理的ダメージを受けることもあります。

こうした外界からのダメージを一手に引き受け、「生体防御の要」として働いているのが皮膚という臓器です。厚さ0.2ミリの薄い皮が外界と体内とに厳格に隔て、生態環境を守っています。そして最前線で大活躍しているのが、表皮の一番外側にある角層です。

表皮組織の10分の1の厚さしかない角層ですが、その厚さからは想像もつかないような強力な「バリア機能」が備わっています。バリア機能には2つの重要な役割があり、ひとつは外部からのウイルスや細菌、大気汚染物質などの異物の侵入を防ぐことです。

もうひとつは外部の空気環境を内部の液性環境と隔てるとともに、肌内部からの水分蒸発を最小限に抑えて乾燥させないようにすることです。皮膚の最外層をなす角層の防御能力は絶大で、外来抗原や細菌などをブロックする際に約90%の役割を果たすとされています。

また皮脂腺により分泌される中性脂肪は、皮膚の表面に住み着いている常在菌の産生する酵素によって脂肪酸とグリセリンに分解されます。この脂肪酸は弱酸性で細菌やウイルスにダメージを与えるため、皮膚に付着する病原体への最初のバリアとなります。

表皮の角層は、表皮組織の一番下にある基底層で作られた表皮角化細胞が分裂しながら徐々に押し上げられて形成されたものです。

このように皮膚がバリア機能を果たしていることをあまり意識していませんが、ヒトが恒常性を維持する上でも非常に重要な役割を果たしているようです。

毒蛇ハブの毒の酵素で認知症原因物質を分解

2023-11-29 09:50:28 | 
最近アルツハイマー病の原因物質を除去する薬が承認され、新し治療法として期待が持たれています。

東北大学の研究グループが、毒蛇のハブが持つ毒素から精製したタンパク質分解酵素が、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドベータを分解することを発見しました。

人間のある種の酵素がアミロイドベータを分解することは知られていましたが、生物の毒素も効果的だと分かったのは初めてです。これはアルツハイマー病の新たな治療法の開発につながることが期待されます。

東北大学の研究グループは、ハブ毒から金属イオンとタンパク質との相互作用を利用し、蛇毒メタロプロテアーゼというタンパク質分解酵素を分離・精製しました。ハブは2018年に九州大学などのグループが全ゲノム解読に成功しています。

ハブ毒は11種類のメタロプロテアーゼを含む多くの成分によって構成され、「タンパク質のカクテル」といわれています。メタロプロテアーゼの働きによって、ハブに嚙まれた人は内出血や血液凝固を起こすことが分かっています。

研究グループは、人間の体内の酵素がアミロイドベータを分解していることに着目し、この酵素と構造が似ていて共通の祖先から進化したと考えられる、9種類の蛇毒メタロプロテアーゼを取り出しました。

9種類の蛇毒メタロプロテアーゼが混ざった「カクテル」を、アミロイドベータを分泌する細胞に作用させました。その結果アミロイドベータだけを切断して、無害なアミノ酸が結合したペプチドに分解する様子が観察されました。

ヒト培養細胞からのアミロイドベータの産生が大幅に低下したことも確認されました。9種類の蛇毒メタロプロテアーゼはカクテルのため、効果を発揮した種類が特定できていません。今後どの成分が効いたのかを検証していきたいとしています。

この研究はまだ基礎段階ですので、今後動物実験などで実際に脳内のアミロイドベータが減少するかなどの実験が必要ですが、期待が持てる成果といえるのかもしれません。ただし蛇毒の毒素ですので、どんな副作用があるかなどの詳しい検証も必要でしょう。

ハブ毒は研究室内でDNAを増幅するPCR法や人工遺伝子によって作り出すことができるので、この研究が進めばアルツハイマー病の治療薬に応用できる可能性はあるようです。

「加熱式タバコ」に新たな健康リスク

2023-11-28 10:31:56 | 煙草
最近は私も含めて紙巻きタバコから、加熱式タバコに替える喫煙者が増加しているようです。

タバコ会社の研究によれば、加熱式タバコはかなり害が減少しているとしていますが、世の中の禁煙信奉者にはこれが気に食わないようで、加熱式タバコの欠点を大きく報道しています。

私のような喫煙者にしてみれば、「健康」という点で加熱式タバコにメリットがあるのなら(紙巻きタバコに比較して)それを発表してもよさそうな気がしますが、禁煙につながらないことは徹底的に否定するのでしょう。

喫煙は心臓や血管の病気、心血管疾患に関係があり、血管の内側を傷つけ、高血圧を引き起こします。さらにアテローム性動脈硬化症、心不全、心房細動、脳卒中、腹部大動脈瘤などのリスクを高めるとされています。

慶応大学などの研究グループが、大規模なコホート調査を使い、加熱式タバコの健康リスクを調べた論文を発表しました。研究グループは、研究対象である集団の代謝物を網羅的に調べ、喫煙習慣と血液中の代謝物の関連性を分析しました。

それによると喫煙者は非喫煙者とは異なる代謝物の特徴があり、加熱式タバコの喫煙者は紙巻きたばこの喫煙者に近い代謝物の特徴を持っていることが分かりました。

代謝のネットワークとパスウエイを解析するソフトを使って分析したところ、喫煙に関係するグルタミン酸の代謝経路の変化によって、血管の内側の機能不全やアテローム性動脈硬化症を引き起こす危険性がああることが示されました。

研究グループは、加熱式タバコもグルタミン酸の代謝経路に影響を及ぼすため、加熱式タバコも心血管疾患のリスクに関係しているのではないかと考えています。

また中国の上海交通大学の研究グループが2021年に発表した論文は、ニコチンがアテローム性動脈硬化症を悪化させると指摘しています。

テキサス大学の研究グループが、加熱式タバコや電子タバコなどの新型タバコについて網羅的に調べた2022年のレビュー論文によると、これらの新型タバコからの有害な化学物質に血栓症を引き起こす危険性があるとしています。

さらに2023年に発表されたイタリアの研究グループの論文は、加熱式タバコが心臓の組織を線維化させ、心房細動のリスクを高めることを示唆しています。

このように加熱式タバコの健康リスクは色々と報告されていますが、これはほとんどがニコチンの生理作用ではないかと思っています。加熱式タバコは、紙巻きタバコと同じようにニコチンが摂取できるため愛用されているのでしょう。

従ってニコチンに由来する健康リスクは出るのが当然であり、改めて指摘するようなことではないと考えています。ただ禁煙信奉者にとっては、良い攻撃材料となるのかもしれません。

アルツハイマー型認知症は腸内細菌通じて伝染する

2023-11-27 10:30:03 | 健康・医療
私にとって認知症は身近な病気であり、亡くなった私や女房の両親も発症してしまいました。最近では古くからの友人も数年前から認知症となっています。

このアルツハイマー型認知症について、アイルランドのUCCの研究チームが患者の糞便を健康なラットに移植すると伝染するという研究結果を発表しました。

日本における65歳以上の高齢者の割合は推計で3623万人で、総人口に占める割合は29.1%で過去最高となりました。2022年の国民生活基礎調査によると、介護保険制度で要介護者と認定された原因は「認知症」が16.6%と最も多くなっています。

アルツハイマー型認知症は、認知症の60〜70%を占める病気です。脳の神経細胞が早く減ってしまうことで脳が委縮し、徐々にもの忘れや時間や場所が分からなくなるなどし、患者の約半数が発症から2〜8年で寝たきりとなります。

アイルランドのUCCの研究チームは、アルツハイマー病の患者から採取した糞便を健康なラットに移植すると、ラットに認知症の兆候が現れたり、海馬の神経細胞が成長しなくなることを確認しました。

つまり「アルツハイマー病が糞便を介して他の個体に伝染する」可能性を示しました。研究チームは、以前からアルツハイマー病の患者は健康な人に比べて有害な腸内細菌を多く持つという報告に注目し、腸内細菌叢を介したアルツハイマー病の伝染は起こるのかを確かめるために実験しました。

アルツハイマー病の患者69人とそうでない人64人から移植用の糞便と血液を採取しました。次に7日間抗菌薬を与えてもともとの細菌叢を死滅させた11週齢のオスのラット16匹ずつに対してこの糞便を溶かした液体を3日間経口投与して、ヒトの腸内細菌の移植を行いました。

その結果移植から10日以降に健康診断や記憶テストを行ったところ、患者の腸内細菌を移植したラットには、長期空間記憶の障害や新規認識記憶の著しい低下など認知症と思われる症状が認められました。さらに重症患者の腸の細菌を移植されたラット程、記憶障害が重度でした。

また神経細胞を特異的に染色するマーカーを使ったり、脳の切片を顕微鏡で観察したりすることで、患者の腸内細菌を移植したラットの脳では、海馬での新しい神経細胞の産出や成長が減っていることが観察されました。

この結果をもって糞便移植でアルツハイマー病の症状が「伝染する」という表現はおかしい気がします。この実験はアルツハイマー病が腸内細菌叢によって引き起こされる可能性を示したものと言えます。

腸内細菌叢は、簡単な感染などによって変わるものではありませんので、「伝染する」ことはないような気がします。またこの実験ではアルツハイマー病に似た症状が出たのであって、アルツハイマー病になったと断定できないような気がします。

それでも腸内細菌叢が脳に影響を与えるという事は、新しい知見と言えるのかもしれません。

日本人女性は地位が低いのに世界1長生きなのか

2023-11-26 10:34:16 | 時事
私の母は89歳で亡くなりましたが、友人のお母さんは102歳の長寿を全うしました。このように女性の平均寿命は世界1をキープしています。

しかし研究者によると。これほど女性の地位が低い国が長寿であることは世界の研究結果とは合わないようです。

WHO(世界保健機構)が発表した2023年版の世界保健統計によれば、日本人の平均寿命は世界トップの84.3歳で、男性の平均寿命は世界第2位の81.5歳、女性は世界第1位の86.9歳となっています。女性が男性に比べて長生きであることは、裕福な国にとっては世界的な傾向です。

その理由として、ホルモンの影響を始めとする生物学的な性差が指摘されています。しかしそれだけでは説明できないようです。貧困国では男女の平均寿命が近付くことが分かっています。

また男女の格差が大きいと限られた資源は男性優位に振り分けられ、女性は多くの健康リスクにさらされているという現状があるようです。WHOによれば、社会的地位・経済的水準の低い人ほど寿命が短く、病気の罹患率や死亡率が高い傾向にあるとしています。

男女格差を示す指標である日本のジェンダーギャップ指数(2023年)は、146か国中125位であり、過去最低の結果で先進国では最下位です。日本の男女間賃金差は世界各国に比べて大きくなっています。

背景には「男は働き、女は家庭」という根強い性別役割分業意識があることが指摘されています。それでも日本人女性が長寿であることの理由は、比較的教育水準が高く、健康行動がよく、肥満者の割合が極めて小さいことが挙げられます。

また女性は若い時から友人や地域住民、こどもの親同士など多様な人間関係を形成する機会が多く、人との社会的つながりを持つことが比較的得意です。海外の研究では、配偶者を失うことは男女とも健康へのリスクとなります。

しかし日本では男女に顕著な違いがみられることはよくあります。たとえば高齢者の一人暮らしは健康によくないといわれていますが、その影響がみられるのは男性に限られるようです。

これまでの研究によると、高齢男性の一人暮らしは精神健康を悪くする要因のひとつですが、女性ではその影響はみられません。夫と死別した高齢者の死亡リスクは、死別しなかった人より低いという研究結果も見られます。

この辺りが日本の特徴で、海外の研究者から見ると不思議なことと感じられるようです。このように日本人女性の平均寿命が長い理由を解析していますが、私はもっと単純に若い世代の女性の死亡率が低いためと考えています。

平均寿命に大きな影響を与えるのは若者の死亡率です。もちろん最近の長寿高齢者の増加はありますが、医療の充実により出産時に死亡することなどがなくなったことが大きいような気がしています。