ごっとさんのブログ

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肥満が現代人に多いことを「進化医学」が説明

2023-06-30 10:32:33 | 健康・医療
現代の病気などを人間の進化の過程によって解析する「進化医学」という分野があるようです。

例えばこのブログでも取り上げている尿酸は、痛風の原因になるだけでなく、抗酸化作用という有益な働きもあります。こういった作用から考えると、高尿酸血症は老化の原因である活性酸素から身体を守るために進化した結果かもしれません。

このように病気や健康を進化の観点から考える医学を「進化医学」や「ダーウイン医学」と呼んでいます。それほど新しい考え方というわけではありませんが、肥満や塩分の取りすぎについて進化医学での説明を紹介します。

肥満は単に食糧の摂取によりエネルギー量と、運動などの消費エネルギーのバランスが悪いためと思っています。ただしこれは個人によって食料の吸収率や活動の消費率が大きく異なっており、その辺りは遺伝子によって決まっていると思っています。

ですから肥満の原因は体質(遺伝)によるところが多く、必ずしも食べ過ぎではないというのが私の考えです。肥満は糖尿病をはじめとして、多くの病気のリスク因子となっています。

世界保健機構(WHO)の推計によると、全世界で肥満のために年間400万人以上もの人が亡くなっているようです。野生動物には肥満の個体はいないのに、なぜ人間は肥満になり、肥満を防ぐ体の仕組みがあっても良いような気もします。

なぜ現代人が肥満しやすいかを進化医学では、かつて人間が進化してきた環境と現代社会が大きく異なるためと説明しています。人間が農耕を始めたのは1万年前ぐらいで、それまでの数百万年は主に狩猟や採取に頼って食べ物を得てきました。

人間はほとんどの期間、肥満するほどの食べ物を得ることができない環境で進化してきたのです。狩りに成功しても、次はいつ食べ物が手に入るか分かりません。肥満を防ぐよりも食べ物があるときにたくさん食べ、エネルギーを脂肪に変えて蓄え、飢餓に備える方が生存に有利でした。

現代社会では食べ物はいつでも手に入り、脂肪にして体に蓄える必要はありません。「食べ物がある時には食べるだけ食べて、脂肪として蓄える」という本能に赴くまま食べると肥満になってしまいます。

生物学的な傾向は変わりませんので、その結果現代人には肥満が多くなってしまったのです。こういった考え方から、味覚の好みと塩分摂取量も説明ができ、現代社会では塩分過剰の食事により高血圧などの原因になるとしています。

ここでは肥満を取り上げましたが、それほど目新しい考え方ではありませんが、進化医学によって多くのいわゆる「現代病」の説明がつくとしています。

だからあきらめろという訳ではありませんが、進化上やむを得ない部分は多いようです。

進行ガンの全身悪化に関わるタンパク質を発見

2023-06-29 10:32:17 | 健康・医療
私が現役でガンの研究をしていたころですのでもう40年近く前のことですが、「ガン悪液質」という状態が問題となっていました。

この悪液質になると症状が急激に悪化し、死に至るケースが多く、この原因がよく分かりませんでした。その後悪液質という言葉をあまり見なくなりましたので、こういった概念がなくなったのかと思っていました。

ところが実際はガン悪液質の研究は、多くの生理現象がからんだ複雑な障害であり、解析手法も確立していなかったため遅れていたにすぎなかったようです。

理化学研究所の研究グループは、ショウジョウバエを使った実験モデルで、ガン細胞が出す「ネトリン」というタンパク質が関わっていることを突き止めました。ガン悪液質と呼ばれる筋肉や脂肪の減少といった全身症状は、進行ガン患者の80%以上に認められ予後に悪影響を及ぼします。

悪液質の存在は古くから「カケキシア」という用語の翻訳で、明治時代に訳され現在も使われているようです。研究グループは、複雑な生理的異常を個体レベルで解析するのに適したショウジョウバエを実験モデルに選びました。

次にヒトのガン遺伝子である「Ras遺伝子」に着目し、ハエの幼虫の将来眼になる組織にこの遺伝子を発現させて、ガンの実験モデルを作りました。成虫の目に生じたガン細胞は転移や増殖はしなかったのに、数日以内に80%以上のショウジョウバエが死亡しました。

この事から研究グループは、全身に悪影響を与えるのはガン細胞そのものではなく、ガン細胞が分泌する物質という仮説を立てました。詳しい解析を続けた結果、悪影響を与える20種類の物質候補が浮かびました。

これらすべてについて遺伝子発現を阻害して物質ができないようにする実験をつづけたところ、ガン細胞が分泌するネトリンの発現を抑えると、個体の生存率が著しく上昇しました。ネトリンは神経回路の形成に関わる物質として知られています。

研究グループはネトリンだけを蛍光タンパク質で可視化すると、ネトリンは哺乳類の肝臓や脂肪に相当し代謝の維持に必要不可欠なショウジョウバエの脂肪体組織に作用して、カルニチンという物質の産生を抑制することを確かめました。

カルニチンは細胞内の脂肪酸をエネルギーに変えるという重要な働きをします。研究グループの一連の実験・解析結果から、ネトリンがカルニチン量を低下させエネルギー不足を起こして衰弱し、死につながることが明らかになりました。

ガンになったショウジョウバエに不足しているカルニチンや、カルニチンの働きで作られるアセチルCoAという物質を補うと、生存率が回復することも分かりました。

このようにガン悪液質の一端が明らかになりましたが、この結果から悪液質移行を抑える薬剤の開発にはまだまだ課題は多いのかもしれません。

日本人が知らない健康診断の「本当の話」

2023-06-28 10:33:00 | 健康・医療
私はこの時期になると毎年健康診断を受けていますが、自治体の補助で非常に安く受けられています。

私の結果はほとんどが基準値に入っていますし、異常になっても治療するつもりはありませんので、そろそろ受診もやめようかと思っています。専門家が健康診断について否定的な意見を述べていますので紹介します。

日本は使用者が労働者に健康診断を受けさせなければいけないという世界的には珍しい労働安全衛生法があり、事実上健康診断を受けなければいけなくなっています。40代以降はこの健診に「ひっかかる」、つまり検査データに異常な数値が出ることが増えてきます。

日本の健康診断の検査データは多くの場合、健康と考えられる人の平均をはさんで95%の範囲に収まる人を「正常」、高くても低くてもそれをはみ出した5%を「異常」と判定されるように作られています。

数値が異常だからといってそれが明らかに病気につながるかといえば、そのようなしっかりしたエビデンスのある検査はあまりありません。健康診断では50〜60項目に関する検査を行うのが一般的ですが、これらのうちエビデンスがあるものは血圧や血糖値などせいぜい5項目ぐらいです。

血圧や血糖値がすごく高い場合などは、その時点や将来にその人の健康状態に明らかに良くないことが起こる(確率論ですが)と認められるものの、それ以外の項目に関しては数値が良くても悪くてもほぼ当てになりません。

例えば健康診断でコレステロール値が高いと食生活の改善を求められる人は多いのですが、コレステロール値の上昇と健康の悪化を関係づけるエビデンスはというものは存在しないのです。

健康診断を受けた人が血圧や中性脂肪の数値に一喜一憂する理由は、それらが原因となって起こるといわれている動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な病気になることを恐れ、それを予防したいと思っているからでしょう。

しかし悪い数値が出てその後もほっていたのに心臓の血管が狭くならない人もいれば、正常値だったのに心筋梗塞で倒れる人もいるなど、健診の結果と実際の健康状態があまりリンクしていないのが日本の健診の実態です。

このリンクを長期の大規模調査で追跡した研究が日本ではほとんどあありません。疾病構造も食生活も違う海外のデータを無理に信じ込まされているにすぎません。ただしこの著者は、心臓ドッグと脳ドックは受ける価値があるとしています。

私は長年健康診断を受けていますが、本来以前と比較して数値が変わってきたかを比較するべきですが、基準値内に収まっていればそれで納得しています。当然医師もそんな見方をしていませんので、健康診断を受診する意味はほとんどないのかもしれません。

タバコを吸っていると早く「要介護」になる

2023-06-27 10:33:23 | 煙草
喫煙が色々な病気の要因になるということはいろいろ言われていますが、最近は特に目立つようになってきました。

例えば何かの病気の予防法を問われても、「禁煙」さえ言っておけば皆が納得する、いわば専門家の免罪符のようになっています。

厚生労働省が定める要介護状態の定義は、身体又は精神の障害があるため入浴、排せつ、食事などの日常生活における基本的な動作の全部または一部について、原則6か月にわたり継続して介護を要すると見込まれる状態のことです。

平均寿命は1947年(私が生まれた年ですが)には男性で50.06歳、女性で53.96歳でしたが、2021年には男性81.47歳、女性87.57歳と格段に伸びています。

一方健康寿命は2019年で男性72.68歳、女性で75.38歳となっており、健康寿命後の男性で8.73年、女性で12.06年が日常生活に制限が起こる、つまり要介護になったり寝たきり状態になる期間が生じることになるとしています。

この論調はよく見かけますが、健康寿命というのは全く意味のないものと思っています。算出方法も健康に関するアンケートであり、平均寿命と違って全く曖昧なものです。実際私の友人・知人はほとんどがこの健康寿命以上の年齢ですが、誰も要介護になっていません。

厚生労働省の要介護の人たちの年齢を見ても、80〜84歳が26.4%、85歳以上が59.8%となっています。要介護者は、ほとんどが平均寿命以上の人たちとなっています。つまり健康寿命や平均寿命と要介護は無関係といえるのです。

さて要介護状態になる原因としては、65歳から69歳の場合脳卒中などの脳血管疾患が4割を超え、次いで関節疾患、骨折・転倒、糖尿病などとなっています。これが80歳以上になると認知症が最も多く、ついで関節疾患、骨折・転倒などとなっています。

例として群馬県草津町の研究結果が出ています。2002年から2011年に高齢者検診を受診した65歳の男女1214人を対象にして、受診後平均8.1年を追跡した研究によれば、自立喪失(要介護状態372人と死亡103人)の原因は、フレイル(加齢によって心身が衰えた状態)、プレフレイル、認知機能低下、脳卒中、喫煙となっています。

特に男性と前期高齢者の場合、プレフレイルについで喫煙がリスク要因であり、死亡原因でも男性では喫煙が18%と高かったようです。ここでは喫煙は脳卒中などの脳血管疾患のリスクを高め、その結果要介護状態になる危険性を高めるとしています。

以上のように何となく要介護状態と喫煙を無理やり結び付けているような気がします。脳卒中の後遺症で要介護になるという事はありますが、前述のように実際は認知症に由来するものが大部分です。

禁煙運動を進めることは特に反対しませんが、おかしな情報を広めることは運動そのものの意義に関わってくるような気がします。

肥満は遺伝子でどれだけ決まるのか

2023-06-26 10:37:32 | 健康・医療
私は肥満がかなりの病気の原因となると考えていますが、肥満の60%程度は遺伝子によるものという説があります。

古くは双生児の研究で、肥満型の家庭に養子に出てもやせ型の家でも同じような体形になるという結果が出ています。つまり肥満には環境要因よりも遺伝的要因が大きいという研究です。

また肥満になりやすい遺伝的要素があることは、1949年に偶然発見されています。米ジャクソン研究所の研究者が、飼育している実験用マウスのうち特定の系統のものだけが異常に太りやすいことに気づきました。

それから45年後の1994年、「肥満遺伝子」という一つの遺伝子の変異がマウスを過食にして太らせていることが分かりました。さらにその後の研究により、肥満遺伝子がレプチンというホルモンを作らせていることが明らかになりました。

現在では脂肪細胞がレプチンを分泌し、血流に乗ったレプチンが脳に到達して受容体に結合すると、満腹感が生じ脂肪の燃焼を促すことが分かっています。そのためレプチンが不足しているマウスは満腹にならずのエサを食べ続け太ってしまいます。

このマウスのように1つの遺伝子の変異によって引き起こされる肥満症は、全体の病的な肥満の7%未満と推定されています。重症の肥満児のうち、肥満の原因となることが知られている単一遺伝子に異常があるのは約6%にすぎません。

より一般的なのは、機能にわずかな影響を及ぼす遺伝子変異であり、人口の1%以上にみられる「遺伝子多型」による肥満です。

肥満の遺伝的な原因を探るために、科学者は多くの人からDNAを抽出し、肥満症の人とそうでない人のDNAの全体を「ゲノムワイド関連解析」という手法によって比較し、DNAの変化が肥満とどの程度関連しているかを見積もっています。

たとえばフランスのナント大学は、肥満症の患者2900人と正常な体重の人5100人のゲノムの塩基配列を比較しています。その結果「FTO」という遺伝子に特定の変異を持つ人は肥満になるリスクが22%高いことが分かりました。

ヨーロッパの成人男性の6人に1人が持っているFTOの変異は、肥満になるリスクを70%も増加させることがこれまでの研究で示されています。この変異を持つ人は、血液中のグレリンというホルモンの濃度が高いことが分かっています。

この濃度が高い人は、食事をしてもすぐに空腹を感じます。こういった肥満に関連する遺伝子変異はすべてが悪者というわけではなく、肥満を防ぐことができる稀な変異も見つかっています。

このように肥満はかなりの部分が遺伝子変異によって決まってしまうようで、ある意味気の毒な状況といえるのかもしれません。