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急増する粗悪学術誌に複数の共通点

2024-11-15 10:31:28 | 文化
私は現役のころはずっと研究者として過ごしてきましたので、学術誌にはいくつか投稿してきました。

私は企業研究者ですので優先するのは特許という事になり、おそらく200件以上出願していると思います。学術誌への投稿は、いわば企業がこんな研究をしているという宣伝のようなものですので、私も30件ぐらい投稿したような気がします。

学術誌には「ネイチャー」「サイエンス」といった超1流誌から2流の各学会が発行しているようなものまでありますが、私が現役のころはタイトルのような粗悪学術誌はありませんでした。

学会が出しているものとしては、例えば「日本化学会誌」のようなもので日本語と英語の2種類が出ていることが多かったような記憶があります。学術誌には必ず「査読」という専門家による評価・検定が入りますが、これで許可が出ないと掲載されません。

私も後半はこの査読を頼まれましたが、これが非常に時間のかかるものです。幸い私の勤務していた研究所は、こういったいわば公務の様なものを優先して良いという了解がありましたが、年2,3件は本当に大変でした。

内容が既存の物とどこが違うかや、引用文献が正しいかなど1週間ぐらいかかっていました。基本的には許可するという方針でしたが、それでも2,3件は拒絶(掲載不可)の判断をしたことがあります。こういった査読者からのコメントに従って書き直し、やっと掲載されるというのが通常の学術誌です。

さて現在は掲載料を目的にずさんな審査で論文を掲載する粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が約1万7000誌もあるという事が文部科学省科学技術・学術政策研究所から発表されました。ハゲタカ誌は、インターネット上で無料閲覧できる学術誌に紛れ込む形で急増しているようです。

問題点として、第三者による査読が不十分、無許可で著名な研究者を編集委員として記載していることなどが指摘されています。著者が数万から十数万円程度の料金を払えばそのまま論文が掲載されるケースもあり、簡単に研究業績を得る手段として世界中で広がり、日本の研究者の利用も後を絶たないようです。

また研究者が、それと知らず投稿してしまうこともあります。ハゲタカ誌は、デジタル保存のためのポリシーがないという共通点が72%に見られました。

健全な学術誌の場合、論文にまとめた研究成果やデータを他の研究者が長期間にわたって利用することを想定し、論文の内容に関するデータを適切に保存するなどの決まりがあります。

他にも、論文が未掲載またはアーカイブ論文がない52%、サイトに査読方針が明記されていない45%、サイトに出版社の住所を明記していない38%、などの特徴が見られたとしています。

なぜ最近このようなハゲタカ誌が増えてきたのか分かりませんが、研究の質が低下したためではないと考えたい気がします。


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