ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

加熱式タバコが歯周病を悪化させる?

2017-11-30 10:44:53 | 煙草
私も使用しているアイコスに代表される加熱式タバコに切り替えてから、歯茎が痛くなったという声が出てきているといいます。

加熱式タバコは紙巻きたばこに比べれば、圧倒的に有害物質が少ないはずなのに、なぜ歯茎が痛むのか不思議なところです。

加熱式タバコは「次世代タバコ」とも称され、その代表格であるアイコスは未だに品薄状態が続くほど、その人気は依然として高いようです。メリットは副流煙がほとんどなく、周囲への臭いも気になりにくく、有害物質も9割ほど低減できるとされています。

このアイコスに加えてブルームテック(日本たばこ)やグローなどと言う機種も製品化されており、主要たばこメーカーによる次世代タバコ競争が過熱しています。こうした加熱式タバコは、タバコの葉を燃焼させないことから、有害物質であるタールがほとんど出ないのが特徴です。

これは私も実感しており、タバコを吸うとフィルターがかなり黄色くなりますが、アイコスだと全く色が付きません。タールには発ガン物質も含まれ、人体に影響を及ぼす化合物が約200種類も含まれているといわれています。これが10分の1程度であるのが加熱式タバコのセールスポイントでもあるわけです。

それにもかかわらず歯科治療の現場では、アイコスを吸い始めたことで歯科医院に来る患者が増加しているようです。これを考察するために、喫煙と歯周病の関係をまとめてみます。

タバコが歯周病の主要なリスクファクターであることは確かで、ほとんどの喫煙者は歯周病を患っており、原因としてはタールとニコチンといわれています。具体的には、喫煙によってタールが口の中の粘膜に吸収されると、唾液の分泌量が減少し、歯周病の原因である歯垢や歯石が歯に付着しやすくなります。このタールとニコチンの相乗作用で歯周病となるわけです。

ところがこのタールには有害作用がある一方で、抗炎症作用や抗ウイルス作用を持つ成分でもあるようです。これによって歯周病によって生ずる歯茎の痛みや腫れといった症状が、タールの作用によって抑えられているといいます。ですから歯周病が重度に進行してもその症状が表面化していないだけのようです。

つまり通常の煙草からアイコスに代えたことにより歯茎が痛くなるのは、タールの抗炎症作用がなくなったためであり、アイコスによって歯周病が引き起こされたのではありません。このタバコのタールに抗炎症作用があるというのは知りませんでしたが、やはり色々な成分の入っているタールには少しは役に立つこともあるのかもしれません。

幸い私はアイコスに代えても歯茎が痛くなったりはしていません。


多発性骨髄腫、免疫力高めて治療

2017-11-29 10:39:07 | 健康・医療
血液がんの一種、多発性骨髄腫を患者の免疫力を高めて治療する技術を開発したと、大阪大学の研究グループが発表しました。

多発性骨髄腫は、正常な血液細胞を作れなくなる病気で、国内の患者数は高齢者を中心に約1万8000人とされています。近年は新薬の登場で生存期間は延びていますが、再発しやすいのが課題となっています。

現在免疫療法であるCAR-T細胞療法が、極めて強力な新規治療法として注目を集めています。この治療法を開発するためには、ガン細胞には発現しているが、正常細胞には発現していない目印となる「ガン特異抗原」が必要となります。

研究グループは、骨髄腫細胞では正常血液細胞と異なり、インテグリンβ7というタンパク質の多くが常時活性化した状態にあり、活性型構造を取った時にのみ露出する抗原が、骨髄腫特異的抗原となりうることを発見しました。

さらにそれを標的としたCAR-T細胞が骨髄腫に対して著名な抗腫瘍効果を持つことを示しました。今回の成果として、タンパク質自体がガン特異的でなくとも、タンパク質の特異的な「かたち」がガンの治療標的となり得るという新たな知見を示しました。

つまりインテグリンというタンパク質は、正常な血液細胞にも存在しています。しかし正常細胞では大部分が不活性型の構造をとっているのに対し、骨髄腫細胞では活性型として発現しており、その立体構造は大きく違っているのです。

そこでこの活性型インテグリンとのみ結合するようなT細胞を作ってやれば、目的とする骨髄腫細胞だけを攻撃することが可能となるわけです。

具体的な治療方法としては、患者のT細胞を取り出し、これを遺伝子操作によってインテグリンを認識するように改変し、体外で培養したものを患者に戻すという方法です。

マウスの実験では、治療した12匹すべてで骨髄細胞腫が消滅し、生き残りました。またサルでも実験して安全性を確かめています。現在、医師主導治験(AMED革新的ガン医療実用化研究事業)の準備が進められています。

この方法について免疫学の専門家は、「動物実験の成績はよく、有望であるが、正常な組織に全く影響がないか分かっていないので、治験で安全性を注意深く確かめてほしい」とコメントしています。

治療にはかなり大変な操作が必要なようですが、新たな免疫療法として進展してほしい気がします。

トクホと機能性表示食品

2017-11-28 10:38:10 | 時事
健康への効能を商品でうたえる制度として25年前に始まった特定機能食品(トクホ)に陰りが見えてきたようです。

その一方で2015年4月にスタートした機能性表示食品の届け出数が急増しています。健康食品大手のファンケルでも、機能性の商品で認められる表示の範囲はトクホよりずっと広く魅力的としています。同社ではトクホ3商品を販売していましたが、いずれも販売を終了しています。

「機能性」の届け出件数は2015年度に302件、昨年12月までに588件と倍増しているようです。

1991年に制度が導入されたトクホは、健康ブームに乗りヒット商品もいくつか出ました。しかし昨年9月、販売中のトクホ6商品の有効成分が表示より大幅に少ないことなどが発覚しました。これを機に国が実施した調査で、トクホの許可・承認件数のうち実際に販売されているのは3割にも満たない366商品ということが分かりました。

売れ行きの良くない商品の販売中止や、「機能性」への切り替えも影響しているとみています。企業がトクホから「機能性」にシフトする背景に、効能をうたうための手続きのハードルの違いがあるようです。

トクホでは国が効果や安全性を厳しく審査し、ヒトでの試験が必要となっています。これには費用が億単位に及ぶこともあり、申請から許可まで1年~数年かかるのが一般的なようです。これは医薬品の治験よりは簡単なようですが、やはりヒトを使って実験するというのは、それなりに時間や手間、費用がかさんでしまうものです。

ところが「機能性」では、ヒトの試験は必要なく、過去の学術論文などで有効性を示すことが可能です。しかも審査時間も短く、2週間で届け出が完了したものもあったようです。このように簡単に機能性表示食品となることは、若干問題があるような気もします。

効果を自分で調べる必要がなく、過去の論文でよいというのは本当に効能があるのか疑わしい気もします。論文の真偽を疑うわけではありませんが、研究の場合は有効率が低くても投稿できますし、再現性に乏しい場合もあるからです。

このようにトクホは厳しいのに「機能性」は単なる届け出制なのは、経済界からの要望を受け、政府が規制緩和を進めて作った制度のためのようです。

実際は届け出済み商品を国が調査したところ、成分の過不足や、企業が提出した分析法では成分が入っているか確認でないものまで出てきたようです。現在の機能性表示食品は、企業の自己申告制ですので玉石混交と言えるのかもしれません。

トクホの信頼回復も必要ですし、機能性も本当に意味あるものにするには、国の見直しが必要のような気がします。

iPS細胞で認知症薬探索

2017-11-27 10:26:33 | 
アルツハイマー型認知症の患者から作ったiPS細胞を使い、発症の原因物質を減らす薬の組み合わせを見つけたと京都大学などの研究グループが発表しました。

これはiPS細胞を創薬に応用する新しい成果で、既存の3種類の薬を同時に使うと効果があることが分かりました。

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞で「アミロイドβ」というタンパク質が作られ、過剰にたまることが主な原因とされています。症状を緩和する薬はあるもののアミロイドそのものを減らす薬は研究段階で実用化されていません。

研究グループは、患者の皮膚からiPS細胞を作って増やし、脳の神経細胞に変化させて培養しました。この細胞を使って既存の1258種類の薬を使用して、アミロイドを減らす薬を探索しました。

この方法論については理解できるのですが、若干疑問点もあります。患者の皮膚細胞をiPSにするということは、いわば初期化してしまうわけですので、それから分化させた神経細胞になぜアミロイドがたまってくるのかが分かりません。

アミロイドというのは脳細胞だけで作られるわけではないのですが、遺伝子異常が原因であればアミロイドを作りやすいことは有るかもしれません。認知症に遺伝子が関連しているという報告もあるようですが、ある特定の遺伝子を持っていると発症率が高くなるという程度で、遺伝子は直接関与していないような気がします。

何か特別の操作によってこの神経細胞にアミロイドがたまるように工夫したのかもしれません。

この神経細胞での探索の結果、パーキンソン病と喘息、てんかんの3種類の薬を同時に加えると最も効果あったといいます。

患者9人のiPS細胞から作った神経細胞で試し、48時間後に調べると、アミロイドの量が3~4割減少し、8割減った細胞もあったようです。

このようにアミロイドを減少させる薬剤が見つかったことは、アルツハイマーの根本治療につながる成果と言えますが、基本的な問題をどうするかが残っています。こういったアミロイドをターゲットにした薬はいくつか臨床試験に入っていますが、いずれも良い効果は出ていません。

これはアミロイドの蓄積が10年あるいは20年前から始まっており、症状が出た段階ではすでに神経が痛んでおりアミロイドを減らしても認知症自体は改善しないためのようです。この辺りをどう克服していくか今後の展開に期待しています。

今回はあくまで試験管内での結果ですので、これからの課題は多いと思いますが、iPS細胞の創薬への応用は確実に進んでいるようです。


幅広い医療「総合診療医」

2017-11-26 10:41:38 | 健康・医療
総合診療医はジェネラリストとも言われ、臓器の問題を高度な技術で診ていく臓器(各器官)専門委ではなく、個人を全体的に見る専門医です。臓器専門医に対しては横断的総合医とでも呼べばよいのかもしれません。

総合診療の基本は、コミュニケーションを重視した患者中心のチーム医療と、科学的根拠に基づいた安全で質に高い医療の提供に凝縮できるといわれています。

こういった総合診療医の解説を見ますと、NHKの「ドクターG」という番組を思い出します。最近まで放映されていましたが、総合診療医が患者の症状から診断した病気を、3人の若手研修医が推理していくというものです。

患者の診察の様子と簡単な検査から研修医がそれぞれ診断名を出し、それを元にカンファレンスを行いさらに問診などを進めていくというストーリーですが、患者の主訴は胸が痛いなど簡単なものが多く、研修医はなかなか正しい診断にたどり着きません。

軽そうな症状が重大な病気であったり、あまり聞いたこともない全く別な部位の病気であったりと、病名にたどり着くまでには多くの診察や検査が必要となります。この研修医とのカンファレンスはかなり専門的な部分も多く、医学ミステリーとしても面白く見ていました。この番組は今中断していますが、早い再開を期待しています。

総合診療医の話に戻りますが、医療技術が高度化し専門分化が進む大病院の中で、多くの健康問題を抱える患者の対応が求められています。こういった患者を包括的に診て統合する専門医や教育機能を持つ専門家が必要となっています。

臓器別の専門医は、修練を通じて身に着けた高度技術で病巣、病変に立ち向かいますが、総合診療医は患者にとって身近な相談相手として、あるいは情報伝達者、患者の代弁者として機能するところにあるといえます。

総合診療医が診察をして診断をつけ、一般的な病気は総合診療医が診療を行い、専門性の高い病気は専門医を紹介するわけです。

例えば熱の原因がはっきりしないなど、一つの専門科の知識だけでは対応が難しく、トータルに診ないと診断がつかない場合も多いようです。こういったときに対応する総合診療医の役割は重要になってきています。

こういった点で私の身近なクリニックは、問題が多い気がします。患者も多く一人にあまり時間がかけられないこともありますが、3分診療では隠れた病気を見つけることはできそうもありません。自宅の近辺で総合診療医がいる病院を探しておくくらいはした方が良いような気がしています。