ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

新型コロナで起きる免疫暴走の引き金物質を発見

2020-09-30 10:26:34 | 健康・医療
大阪大学の研究グループは、新型コロナ感染症の早期に起き、重症化を招く免疫反応の暴走「サイトカインストーム」の引き金となる物質を発見したと発表しました。

血液凝固を促進する「PAI-1」というタンパク質で、これが増えたコロナの患者は、肺などに血栓ができて重症化していました。この成果は新たな治療法開発につながると期待されています。

新型コロナの患者では、生理活性物質のサイトカインのひとつ「インターロイキン6(IL-6)」が血中に増加し、このIL-6が血管からPAI-1を放出します。血栓が形成されてサイトカインストームに至り、重症化する仕組みを解明しました。

新型コロナでは肺でひどい炎症が起こり、多臓器不全に至って死亡する例も多いようです。その過程で免疫機構で重要な役目をするサイトカインが制御不能になって、過剰な免疫反応といえるサイトカインストームが起きることも分かってきました。

コロナ感染でもすべての感染者に起きるわけではなく、高齢者や基礎疾患がある人に起こる例が多いとされていますが、詳しいメカニズムは未解明でした。

研究グループは、サイトカインストームが起きた91人の血液を健康な人と比較しました。その結果サイトカインストームが起きた人は、健康な人と比べてPAI-1が増えていることが判明しました。

患者のPAI-1レベルは、細菌性敗血症や重症のやけどの患者に匹敵する高さでした。また重症の新型コロナ患者のPAI-1の量を調べたところ、その量も全身の炎症程度を示す数値もいずれも上がっていることが分かりました。

PAI-1は血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在するタンパク質で、血管内皮が損傷したり、血小板が壊れたりして血中に放出されます。血中量が増えると血栓の成長が促されます。

研究グループは、増えたPAI-1により肺など多くの臓器で血栓ができ、血管から生体維持に重要な液性成分を漏出させて、肺炎を重症化させると判断しています。また研究グループは、血管内皮細胞をIL-6で刺激する実験を行い、PAI-1の増加を確認しています。

この現象はIL-6の働きをブロックする抗体医薬品である「アクテムラ」によって抑えられました。このことからグループは、新型コロナでもIL-6が上昇する早期にアクテムラを投与すれば、PAI-1の産生を抑えることができ、これが有効な治療法になると予測されるとしています。

ただしこのアクテムラの薬価は分かりませんが、一般に抗体薬は高価であることが多く、患者数の多い新型コロナに使用可能かは難しい選択のような気がします。

ガン死亡者数はなぜ増加するのか

2020-09-29 10:26:16 | その他
最近ガンでなくなる人が増えているという報道や、周囲でガンでなくなる人が増えたという感じがしています。

ところがガン治療は非常に進歩して、最近はガンになっても亡くなることが減ったというニュースもあるようです。まず日本での実際のデータを見て、死亡者数はどうなっているのか検証します。

なおここで出す数字はグラフから読み取ったものですので、あまり正確ではありません。このグラフを見ると1960年からガン死亡者数はずっと増加しており、特に1990年の24万人から2018年の37万人と急激に増加しているように見えます。

これをもってガン治療が進歩していないとはいえないようです。例えば5年生存率を見ると、1995年あたりは肝臓ガン、肺ガンは20%程度だったものが、2010年には共に30%を超えています。

つまりガン治療は確実に進歩しているにもかかわらず、ガンでの死亡者数は増加していることになります。この要因は当然のことながら高齢化です。年齢別のガン罹患率を見ると、男性は45歳あたりから急激に増加し、女性は35歳あたりから増加しています。

女性には乳ガンなど女性特有のガンの発症が早いためと思われますが、若中年はほとんどかかっていません。特に70代になると男女ともに増加の度合いが高くなっています。

ガンは身体の細胞に含まれる遺伝子に徐々に傷がついていき、それが蓄積して起こりますので、長く生きるほどガンが発生する確率は高まることになります。ある説によると、80歳を超えるとガンがない人はほとんどいないという程です。

ガン治療のレベルを推し量るときに使われるのは、ガンの死亡者数ではなく、年齢調整死亡率というものを利用します。これは年齢構成の変化を調整して、同じような年齢構成とした場合にどのくらいの死亡率かというのを見るものです。

同じ年齢構成なるように補正する計算方法はよくわかりませんが、これは古くから行われていますので、それなりに信頼性がある手法と思われます。この年齢調整死亡率を見ると、男女の合計は1960年代から1995年までほぼ一定に近いグラフとなり、1995年から徐々に減少しています。

これにより1995年あたりからガン治療法が進歩してきたといえるようです。こういった年齢調整後の数値というのはよく使われていますが、私はややこじつけになっている気がします。

つまりガン死亡者数が増えるのは高齢化のせいであるというのは確かかもしれません。しかし本当にガンの良い治療法が進歩しているのであれば、高齢者のガンも治るはずであり、年齢調整すれば減少しているというのは単なるこじつけのような気がします。

こういった統計数値に関しては、正しい見方というのは非常に難しいような気がします。その解釈は人が行っていますので、都合よくやっている感じは残ってしまいます。

ブログ開設から6年経過

2020-09-28 10:24:24 | その他
このブログを開設したのが2014年9月ですので、丸6年が経過し7年目に入っています。

この編集画面にはいろいろなデータが入っていますが、開設から2212日経過し、記事数も2184件となっていました。予想外に長く続いているような、いつのまにか年月が過ぎていったような気がしています。

このブログは企業からの退職や大学での講義をやめてすぐに始めましたので、この年月は私が引退してからの時間ということになります。

このブログを書こうと思ったのは、以前にも触れましたが大学の講義からきています。青山学院大学と東海大学の共に3年生を対象にやっていました。これも9年も続けたのですが、毎年ほぼ同じ内容で、主題は「ドラックデザイン」という非常に専門色の強い分野でした。

どうやって効く薬をデザインしていくのかというのは、面白い分野なのですが、3年生にはやや難しすぎたような気がしました。そこでトピックスとして健康の話し(病気のはなし)や自然の面白さを3件程度入れて、いわば休み時間を作ったわけです。

終わりのころ学生に聞いたところ、トピックスは面白かったが本題はよくわからなかったという、教える側にとってはやや残念な意見でした。この時の資料はパワーポイントで作成し、大学別に年度順に保存してありますが、おそらく開くとはなさそうです。

そこでこのトピックスをブログに書いてみようということから、始めたものです。こういった内容は100件程度だったのですが、その他に時事問題やテニスのはなし、薬や化学のはなしなどを入れていくうちに2000件を超えてしまいました。

カテゴリーとしてはやはり「健康・医療」が最も多く541件、続いて「自然」が248件、「テニス」が240件、「時事」226件となっています。

このブログネタは、ヤフーの科学ニュースなどのネットから主に探していますが、新型コロナが出始めたころから、科学・医学関係の記事が新型コロナ関連ばかりになってしまいました。

それまでは難しい病気の新しい治療法や、新薬の開発、病気のメカニズムの解明といったニュースがある程度の頻度で取り上げられていたのですが、ほとんどなくなってしまいました。そこであまり面白くないのですが、病気の症状や病態の解説的なはなしを取り上げています。

そのためなのかこのブログのアクセス数が、500程度だったものが最近300程度に減少してしまいました。私にはどういった人たちがこのブログを見ているのか全く分かりませんが、少しでも興味を引くようなテーマを探して、もうしばらくは頑張るつもりでいます。

怒りっぽい人は病に好かれる

2020-09-27 10:24:20 | その他
自律神経の研究から、病気が寄り付かずいくつになっても元気な「病に嫌われる人」と自ら病気を引き寄せてしまう「病に好かれる人」では、普段の思考や感情のパターンが大きく異なるようです。

病に好かれる人がとらわれやすい感情が「怒り」であり、これをうまくコントロールする術を心得ている人が病に嫌われるとしています。

「怒る」というと、ほとんどの人はそれほど怒るタイプではないと思うかもしれません。怒りとは誰からも分かるくらい激怒することだけを意味するわけではありません。

満員電車で人にぶつかられてムカムカしたり、レジの会計で待たされてイライラしたりといったことも、小さな怒りです。怒りはその程度が大きくても小さくても、自律神経を乱してしまいます。怒ることをカッとするといいますが、この瞬間に交感神経が活発になるのです。

怒りを感じているときは、目が充血したり顔が赤くなったり、額に汗をかいたりします。これらはすべて交感神経が、急激に高まっているときにおこる反応です。交感神経が活性化すると、心拍数が増えて血管が収縮し、血圧が上がって血流は悪くなり、細胞に血液が行きわたらなくなってしまいます。

急激な血圧の上昇や心拍数の増加は、脳梗塞や脳出血、心臓発作を起こすリスクを高めます。怒っているときは消化管の働きも悪くなるので、腸内環境も乱れてしまいます。怒りなど何らかの原因で急激に自律神経が乱れると、そのあと3時間は乱れたままになることも分かっています。

病に嫌われるには、なるべく怒らない方がいいというのが理想ですが、怒りは人間の自然な感情ですし、怒りがきっかけで真実を見極めることができることもあり、やる気やモチベーションにつながることもあります。

大事なのは、小さな怒りをいかに大きな怒りに結びつけないか、小さな怒りのうちにいかに解消するかです。簡単にできる怒りのコントロール術がおすすめのようです。ひとつが怒りを感じたときに、ゆっくりと水を1杯飲むことです。

一気に飲むのではなく、体中に水がじわじわとしみわたって行くのを想像しながらゆっくりと飲むのが良いようです。ほかに簡単な方法では、手首をトントンと軽くたたというのも効果的なようです。

手首の外側、つまり手の甲側の方をもう一方の手の薬指と中指でトントンと軽くリズミカルにたたくのです。こうすると副交感神経が優位になって、怒りや苛立ちが収まるようです。

私はたぶんそれほど怒りやすい方ではないだろうと思っていますが、あまり細かいことにこだわらず、おおらかに過ごすことが、病に嫌われる生き方なのかもしれません。

変態とは、不思議な昆虫たち

2020-09-26 10:31:29 | 自然
子供と大人で全く姿が違う生物の代表例といえば、チョウがあげられます。

イモムシが翅のある美しい姿に変身します。「完全変態」と呼ばれるこの劇的な形態の変化を経験するのはチョウだけではありません。

ミツバチ、甲虫、ハエ、蛾など既知の昆虫のうち75%が完全変態を行い、卵、幼虫、さなぎ、成虫の4つの段階を通じて成長します。私の家では夏の風物詩として、セミのさなぎから成虫に脱皮するのを見ながら酒を飲むということがありました。

私の庭には毎年多くのセミが卵を産むようで、セミの時期になると木の枝や壁などに多くのセミの抜け殻がついていました。その時期に庭を探索すると、脱皮前のさなぎを2匹ぐらい見つけることができました。

これを和室の障子に止まらせ、時々様子を見て、背中が割れ始めると(夜8時から9時ぐらいが多いです)、酒とつまみをもってその前に座り、脱皮を見ながら酒を飲むというものです。

これは自然の神秘といえるもので、硬いさなぎからほとんど白い成虫が少しずつ出てきます。大体1時間ぐらいで脱皮が終わりますが、出てきた白いセミ(アブラゼミです)は羽根も縮んでいますが、こんなものがよくさなぎに入っていたと思われるぐらい大きくなっています。

その後2,3時間で羽根も伸び、色もアブラゼミの茶色に代わります。これが楽しい夏の夜だったのですが、2年ほど前庭にもぐらが出没しました。特に被害はなかったのですが、このセミの幼虫がほとんど食べられてしまったようで、さなぎを見ることが無くなってしまいました。

これも自然の営みのひとつですので、あきらめていますがかなり残念なことでした。さてすべての昆虫が卵として生まれ、孵化して幼虫になります。

幼虫にはイモムシ状のものもいれば、テントウムシの幼虫のように小さな昆虫に見えるものもいます。幼虫の主な役割は、成長と脱皮で、脱皮から次の脱皮までの間の段階は「齢」とよばれ、多いものだと5回も脱皮する昆虫もいます。

終齢の幼虫が脱皮すると、完全変態を行う昆虫はさなぎになります。蛾のように糸を出して硬い繭を作り、その中に閉じこもるさなぎもいます。そして最後の段階が、さなぎから脱皮・羽化して成虫となります。

一般に成虫は長生きせず、多くの昆虫は成虫期には何も食べないようです。貴重な時間を交尾相手を探すことに注ぎ込んでいます。このような変態は究極の成功戦略といえます。

幼虫と成虫は異なるものを食べ、たとえばチョウは幼虫の時にすべての発育変化を成し遂げるため、栄養豊富な葉を大量に食べ、成虫は花の蜜を少し飲むだけで済んでしまいます。このように変態によって「競合の無い場」を作り出したといえます。

昆虫というと成虫だけを思い浮かべますが、変態の各段階で最も適した形態を身につけた、非常に興味ある生物といえるような気がします。