ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

健康寿命を延ばすのに「薬漬け」は必要なのか

2023-07-31 10:38:56 | 
日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳となっていますが、健康寿命は男性72歳、女性75歳で、男性は9年間、女性は12年間も自立して生活できない時期があるという事になっています。

ただし平均寿命は統計から得られた正確な数字ですが、健康寿命は現在健康かどうかというアンケートに基づいたいわば全く当てにならない数字です。

私の友人や知人はほとんどがこの健康寿命を超えていますが、皆自立して生活しています。確かに色々病気になり回復したり(脳卒中やガンなど)していますので、薬の服用をしているとは思いますが皆元気に麻雀をしたり飲み会を楽しんでいます。

ただ一般的にいわれていることは、75歳以上の64%は5種類以上の薬を常用しており、高齢者の多くは長生きのため薬が手放せないものなっているようです。しかし現代の薬物療法中心の医療は果たして国民の健康維持に役立っているのでしょうか。

薬の売り上げを飛躍的に伸ばすには、予防薬を開発すればよいという話しがあります。治療薬は病気になった人が対象であり、治れば中止となります。しかし予防薬の対象者は不特定多数となり、副作用でもない限り原則中止基準がありません。

これはいわゆる生活習慣病治療薬は、予防薬的な使われ方をされています。つまり将来重篤な疾患を防ぐために、降圧剤や脂質改善薬を飲んでいるわけです。

その次に出てきたのが「従来の基準値を下げる」という手段です。たとえば昭和50年代の正常血圧の基準値は140未満で、高血圧と診断されるのは160以上でした。それが今では135以上になったら気を付けろと言われるようになり、テレビのCMでも同様なことが毎日のように流されています。

この血圧が危険というのなら、壮年期を過ぎれば多くの人たちが薬を飲まなければならないことになります。そもそも働き盛りの就労者から、壮年・老年期、さらに後期高齢者までほぼ同じ基準で考えるというのはおかしな話といえるでしょう。

近年医師の在り方という点も大きく変わってきています。2018年から新専門医制度が発足し、新基準での医師の育成が試みられています。この目的はこれまで学会ごとに異なっていた認定基準を統一して、誰にでも分かりやすい制度設計として質の担保を図るものです。

しかし常に受動的立場で標準医療を実践するために育成された医師に、多重疾患・障害を持つ複雑な病態の患者の治療が適切にできるのでしょうか。

この辺りも取りあえず薬を処方して様子を見るだけという、ますます薬の過剰投与の一因になっているような気もします。

現在は残念ながらますます薬の過剰投与の傾向が進んでいるような気がします。どうすれば本当に必要な薬の見分けができるのか、難しい問題といえるようです。

人工知能が作ったフェイクニュースは人を騙しやすい

2023-07-30 10:32:06 | その他
最近Chat GPTを簡単な検索エンジンのように使っていますが、若干人の作った文章と違っているという印象を持っています。

生成AIを利用して作った健康などに関するニセ情報(フェイクニュース)を流したら、ユーザーはその真偽を正しく見抜けるかの実験をチューリッヒ大学が実施しました。

この論文によるとAIの大規模言語モデルGPT-3で作った情報は、正しい情報にしろ誤った情報にしろ、人が作った情報よりも信じられやすいという結果となっています。

実験では2022年10月にオンラインで867名の参加者を集め、「提示するツイートに含まれる情報は正しいか間違っているか」、「ツイートを作成したのは人間かAIか」とそれぞれ真偽を判定してもらいました。

判定に使ったツイートのテーマは、「気候変動」「ワクチンの安全性」「進化論」「マスクの安全性」「ワクチンと自閉症」など毎日のように誤ったツイートが広がっている11種類を選んでいます。

実験ではGPT-3を使って「正しい情報」と「誤った情報」が含まれるツイート文を10本ずつ生成させました。人間が作成したツイートもツイッター上で収集したうえで、実験参加者にそれぞれ真偽を判定させました。

AIが作成した正・誤と人間が書いた正・誤の4パターンのツイートを実験参加者に読ませ、内容の正誤と作成者が人間またはAIのどちらかを判定しました。ツイートの真偽を回答するまでにかかった時間を比較すると、誤った内容よりも正確な情報の判定に時間がかかりました。

またツイートの内容の真偽に関わらず、人間のツイートの方がAIが作成したツイートよりも判断に時間がかかっていました。この結果から、人間にとって「誤った情報の評価」よりも「正確な情報の評価」の方が判断する上で難しい傾向があることが分かりました。

また情報の正確性にかかわらずGPT-3が生成した情報のほうが、人間が作った情報よりも短時間で効率的に認識されていることも分かりました。

論文ではこの背景を、GPT-3は人間が書いたテキストと比べて、読みやすく理解しやすいテキストを生成できるため、情報伝達の効率が高い可能性があることを示唆しているとしています。

こういったことからタイトルのように「人工知能が作ったフェイクニュースは人を騙しやすい」という結論になったようです。

ただ私は日本語では異なった結果になる可能性が高いと思っています。日本語の微妙な丁寧語や尊敬語をAIが完全に理解できていないと感じています。

日本語の複雑性が良いか悪いかは別な問題ですが、AIが人間より良い文章を書くには時間がかかるでしょう。

高齢者はやや太めの人の方が長生きをする

2023-07-29 10:34:31 | 健康・医療
年を取ると代謝が下がり体が重くなりがちで、若いころに比べて体重が増えダイエットをする人が増加するといわれています。

私は若いころから体重の変化が全くなく、むしろ年を取ってから体重を増やしたいと思っていますが、これもまた難しいことのようです。ここでは高齢者医療の現場で多くの患者を診療してきた医師の、晩年を幸福に過ごすための知恵を紹介します。

まず前述のダイエットに関しては、中高年までで十分で極端に太っている人を除けば、高齢者はダイエットをする必要はないとしています。ダイエットが流行った要因のひとつは、十数年前から盛んにいわれるようになった「メタボを避けろ」というスローガンにあるようです。

メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積によって、肥満症や高血圧、糖尿病などの病気を引き起こしやすくなることを意味します。2008年からは、メタボかどうかを診断する特定健康検査や特定保健指導がスタートしました。

しかし日本のメタボ対策は、高齢者医療の現場を全く知らない学者や官僚たちが主導した「誤った施策」にすぎません。まじめにメタボ指導に従って痩せてしまうと、逆に寿命を縮める結果を招いてしまうことを統計データが示しています。

かつて宮城県で5万人を対象に大規模調査が行われ、その結果やせ型の人の方が、やや太めの人よりも6〜8年早く死ぬことが明らかになっています。一方で少々ふっくらとしたタイプの人が、最も長生きをしているという事が分かりました。

この調査結果は、私たちの実感とも一致しているのではないでしょうか。身の周りの元気な70代、80代の人は、やせ型というよりはふくよかなタイプが多いと思います。

無理にダイエットに励むことで、サルコペニアやフレイルのリスクも高まってしまいますから、健康にはマイナスなのです。なぜ学者や官僚たちは誤った指導をするかというと、アメリカに対して「右に倣え」をしているだけなのです。

アメリカと日本では死因が大きく異なるにもかかわらず、死因のトップが虚血性心疾患というアメリカの医学常識を、そのまま日本の施策としているのです。

東京都医師会は「高齢期のBMIは中年期以前とは異なり、少し高めの方が栄養状態や総死亡率の統計からみてもちょうど良いことが分かってきました。「メタボ対策」からしっかり食べて栄養状態を保つ「フレイル予防」に考え直してみましょう」と発信しています。

さらにこの医師は、70代になったら禁煙する必要がないという面白い意見を述べています。これは65歳以上では喫煙者と非喫煙者の生存曲線を調べたところ、生存率がほぼ変わらないという結果からきているようです。

何十年もタバコを吸ってきているのに、肺ガンにも心筋梗塞にもなっていない人は、タバコに強い何らかの因子を持っている可能性が高いとしています。

タバコの吸い殻にどのくらい「毒性」があるのか

2023-07-28 10:36:18 | 煙草
私は基本的に歩きタバコはしませんので、いわゆるポイ捨てをすることはないのですが、道端に吸い殻が落ちていることを見かけることはあります。

かなり前になりますが、京都の私立水族館で、屋外に置いていた水層の魚がほぼ死んでしまい、水層内にタバコの吸い殻が出てきたという記事が報道されました。

また海水浴場に行くと、よくタバコの吸い殻があるようですが、これはほとんどが繁華街などの街中でポイ捨てされ、それが排水溝から河川を経て海にたどり着き浜辺に漂着した物のようです。

こうしたタバコの吸い殻にどの程度毒性があるかの研究が行われています。イランやドイツなどの研究グループが、ペルシャ湾のハゼに対し、タバコの吸い殻を浸した水溶液がどんな影響を及ぼすかを調べました。

その結果喫煙後の吸い殻が最も毒性が強く、低濃度の水溶液でも血液中のヘモグロビンが減ったり白血球数が大きく増えるなど、ハゼを殺す危険性があることが分かりました。

イタリアなどの研究グル-プが、地中海のムール貝に対するタバコの吸い殻の影響を調べたところ、タバコ由来の化学物質(多環芳香族炭化水素など)や重金属の体内蓄積、免疫系の変化、抗酸化反応や神経毒性反応などの増加といった変化が観察されました。

またムール貝にはニコチンを代謝する酵素がないため、ニコチンを吸収しても代謝されず、神経毒性が悪影響を及ぼすと考えられています。タバコの吸い殻による生態系の影響については、最近多くの研究が出てきています。

海の夜光虫の発光が減ったり、貝類の細胞の自死が増えたり、ゴカイのDNA損傷が増加し、成体が変化して穴を掘らなくなるなどの悪影響が報告されています。

1本のタバコの吸い殻が環境中にポイ捨てされると、1リットル当たり2.5ミリグラムのニコチン濃度になるようです。ニコチンは毒性も強く、成人の経口致死量は40〜60ミリグラムとされていますので、吸い殻1本でも小さな生物にとっては生死にかかわる濃度になることが考えられます。

この様にポイ捨てはかなりの危険行為であることは確かです。私は喫煙者のマナーはかなり良くなっていると思いますが、ポイ捨てがなくならない原因は、屋外の灰皿が全くないことではないでしょうか。

現在はほとんどすべての飲食店が禁煙となっており、食後の一服は夢となっています。特に酒類も提供する店の店外に灰皿を設置しても良いのではないでしょうか。

現在の禁煙運動下では、店外に灰皿を設置することは路上喫煙を推奨する行為となるのかもしれませんが、屋外に灰皿やごみ箱が全くない状況は異常といえるのかもしれません。

タバコのフィルターがプラスチック繊維ですので、これをなくすべきというようなおかしな禁煙活動は、喫煙者の減少にはつながらないと思っています。

「薬が効いた」は本当なのか

2023-07-27 10:31:14 | 
このブログでも何回か述べていますが、プラセボ(偽薬)によって病気を治すことが究極の医療ではないかと思っています。

最近では新型コロナにイベルメクチンは効果が無いという臨床試験結果が出ています。しかし臨床現場では、「新型コロナに罹ってイベルメクチンを飲んだらよく効いた」と実感した患者も多いようです。

ただし病気は薬を使わなくても自然に治癒することがあり、新型コロナのようなウイルス感染はそういった病気といえます。私はこういった場合でも、プラセボ効果によってより効果が出てくると考えていますが、なかなか医師は納得しないようです。

薬を使った後に症状が改善したら、薬のおかげと考えたくなりますが、薬とは無関係に自然に良くなっただけというのが多くの医師の見解です。こういった薬の効果については、患者の実感だけではなく医師の実感も良く間違うようです。

ひとつの例として、「ダーゼン」という痰切れをよくして呼吸器症状を改善させるという薬がありました。これは年間に数十億円という売り上げがあったそうです。「ダーゼンを飲んだら呼吸器症状が良くなった」という体験をした患者も医師も大勢いました。

ところが製薬会社が再評価したところ、偽薬と比較して差が認められませんでした。再評価で効果を示せなかったため、ダーゼンは発売中止になりました。再評価されなければ年間数十億円という医療費が今も無駄に使われていたことでしょう。

再評価で効果を示さなかった薬は他にもありますが、臨床の現場では効果が実感されていたからこそ使われ続けたのです。「何も効かなければ、とっくに消えてなくなっているはず」という論法は間違っています。

医学の歴史において、効果のない治療が行われ続けた例は非常に多いのです。そうした教訓から、現在では「根拠に基づいた医療(EBM)」が言われているのです。

臨床試験の経験だけに基づくと間違う恐れが大きいですが、臨床試験において二重盲検やランダム化といった手間をかけることでそうした間違いを減らすことができます。

プラセボ効果や誤判定といったバイアスを避けるため、患者と医師の両方が偽薬か実薬かを分からないようにするのが二重盲検です。「飲んだら効いた」という人を何千人と集めても、バイアスは避けられません。

現在はこのEBMの概念の教育が進んでいるようですが、本当に必要なのでしょうか。大事なことは、「飲んだら効いた」ということで、患者が本当にそう思っているのなら、たとえそれがプラセボであっても良いのではないかと思っています。

臨床試験や再評価でどんなに良い結果が出ても、実際の患者が「よく効く」と感じなければ何の意味もないと感じています。やはり現役の医師にプラセボ効果の重要性を教える必要がありそうです。