ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
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痛んだ臓器は交換して120歳まで生きる

2020-12-31 10:27:22 | 健康・医療
ヒトはどこまで生きられるのかという問題は、生物学的には120歳という説があるようです。

医療がもっと進歩し、臓器交換が出るようになればこの「人生120年時代」が来るという記事が「プレジデント」に掲載されていました。

実際は100歳を超えている人はどんどん増加しているものの、110歳以上は非常に少なくこの辺りにいわば壁が存在するようです。

平均寿命の推移を見ていくと、江戸から明治時代にかけても30代後半程度といわれています。これが50歳を超えたのは戦後のことで、厚生省によると1947年の平均寿命は男性50.1歳、女性54.0歳と初めて50歳を上回りました。

その後平均寿命は延び続け、1971年には男女ともに70歳を超え、2018年にWHO(世界保健機構)が発表した世界の平均寿命ランキングでは、日本は男女の平均寿命で世界1位(84.2歳)というトップクラスの長寿国になりました。

こうした長寿時代を実現した背景にあるのが医療の進歩です。結核や肺炎でまず助からなかったという時代に比べ、人間は「病気で死ななくなった」といえるようです。現在ではガンですら治る病気になりつつあります。

最近ではガン細胞だけを狙い撃ちにする「分子標的薬」や免疫細胞を活性化しガン細胞を攻撃できるようにする「免疫チェックポイント阻害剤」などが続々登場しています。まだ膵臓ガンや胆管ガンなど現在の医療をもってしても克服が難しいガンも存在していますが、近い将来は治癒するガンになると考えられます。

こうした長寿社会になると加齢によっていろいろな臓器が痛んでくるという問題が出てきます。これも老朽化してきた臓器を新しい人工臓器に置き換える「臓器代替技術」が出てきました。

臓器代替というと心臓を人工心臓に置き換えるといったイメージがありますが、実は医療現場では既に部分的な臓器の交換が行われています。例えば水晶体を人工レンズに交換する白内障の手術は立派な臓器交換といえます。

また損傷した角膜にiPS細胞から作ったシート状の角膜細胞を移植する治療も臨床応用に近づいています。また心臓弁膜症で大動脈弁を人工弁に入れ替える手術も臓器交換のひとつです。

腎臓に関しても、携帯型の透析治療装置が実現する日は近いと考えられ、こうなると立派な人工腎臓への臓器交換となるでしょう。臓器代替技術というと大げさに聞こえますが、既に部分的には「痛んだら交換する」時代になってきているのは事実です。

私は自分の臓器が痛んだら交換などせずに終わりたいと考えていましたが、白内障になったら手術しようと思っています。

この様に臓器交換の技術というのは、知らないうちに広まっているのかもしれませんが、これで「120年時代」にはならい様な気もします。

歳をとるほど脳が活性化する

2020-12-30 10:21:03 | 自然
年を取れば物覚えが悪くなり、頭の働きが鈍くなるのは仕方がないという既成概念を覆し、ヒトの脳には加齢に抗する底力があることが近年の脳研究で明らかになってきました。

脳は高齢になっても可塑性(自分とその周辺の状況に応じて変化する能力)を維持し、誰もが加齢に従って認知力の低下を体験するとは限らず、中年以後に高まる能力もあるようです。

研究者に加齢と脳の関係を再考させるきっかけとなったのは、約5000人を対象に加齢による脳のさまざまな変化を半世紀以上も追跡調査してきたワシントン大学の「シアトル縦断研究」です。

認知力を測る6種のテスト中4種で、高齢者の成績は20代よりもよくなりました。記憶力と認知のスピードには加齢に伴う低下がみられましたが、言語力、空間推論力、単純計算力と抽象推論力は向上していました。

この研究は加齢による記憶力の低下は個人差が大きいことも明らかにしました。fMRIやSPECT(シンチグラフィー)といった造影診断法を利用しての研究も進み、脳は加齢に対抗するメカニズムがあることも証明されました。

トロント大学によれば、高齢者はひとつの作業の達成に向けて、若年層が使わない脳の部位も活性化させているようです。

例えば記憶処理を主に担う側頭葉内側部が加齢により不活性化するに従い、高齢者は前頭前皮質背側側部も記憶処理に動員し、注意力といった認知機能の増強に前頭葉と頭頂葉の両方を活用しています。

高齢者は若年層より物の見方が前向きになることも、南カリフォルニア大学の研究者が証明しています。高齢になると情動反応を司る偏桃体がネガティブな刺激に反応しにくくなるようです。

また40歳を過ぎたころからネガティブな記憶よりポジティブな記憶の方が増え、その傾向は80代まで続きます。

高齢者の頭の使い方が変化する理由のひとつは、脳の一部の機能低下を補うためですが、それだけではなく同じ結論に達するのに様々な脳の部位を使うので、より深い洞察が伴い「知恵脳」になると考えられています。

こういう点から国や企業のリーダーには高齢者の方がふさわしいともいえるようです。若いころと変わらない「脳力」を持つ高齢者は多く、脳には優れた可能性があり脳の備蓄、維持、補償がうまくできていれば、70代、80代になっても優れた脳力を保てます。

さらに「瞑想」することにより、脳の劣化防止だけでなく、灰白質を増加させる効果もあるとしています。こういった研究もあるのですが、今回のアメリカ大統領候補のように、70代しかいないというのは問題のような気がします。

「夢を操る」方法はあるのか

2020-12-29 10:29:33 | 自然
私はほとんど夢を見ません。正確には夢を覚えていないというべきかもしれません。

かみさんは逆によく覚えており、起きた後で変な夢について話してくれます。私も夜中に面白い夢で目が覚め、かみさんに話そうと思って寝たら、起きたときは話そうと思ったことしか覚えておらず、夢の内容は全く分からないという経験があります。

夢に関して心理療法の専門家が解説していましたが、夢のような話しになるかもしれません。睡眠中の脳は、起きている間にうまく処理できなかった情報や感情を整理し、記憶を定着・適正化します。

そうして怒りや悲しみの感情を鎮静させているようです。その過程において、情報をカテゴリー分けしたり過去の記憶にアクセスしたりするときに、脳内で再生している映像が夢なのです。

基本的には脳が情報として記憶していない部分は夢に出てきません。記憶の中には自分で意識していない「サブリミナル記憶」も含まれるため、意外な事象が夢に出てくることもあります。

脳が処理しようとしていた事柄との関連や類似(時代、集団、場面など)が引き金となって記憶にない人や事象が引っ張り出されることもあるようです。脳が正常に機能している人なら、睡眠時間の長さにもよりますが、1日に平均して3〜5つの夢を見ます。

夢を見ている時は起きているときと比べて、記憶を固定する神経伝達物質があまり出ていないため、夢の記憶を覚えておくのは難しいとされています。レム睡眠の時は「体は休んでいるが脳は働いている状態」で、この時に夢を見ています。

しかしレム睡眠時に見た夢も、その後のノンレム睡眠が来ると忘れてしまいます。起きる直前にレム睡眠で、その時見ている夢を起床後も覚えていることがある程度です。

夢を覚えていないのは、夢に邪魔されないほどよく眠れたことを意味し、脳内の情報処理がスムーズに行われたと考えられます。

見たい夢を見ることは難しいのですが、夢の素材は自分の記憶と考えると、寝る前に見たい夢のイメージを膨らませたり、関連する事柄について思いめぐらせるのは効果があるかもしれません。

夢は自分の見聞きしたもので構成されるので、他者からの「お告げ」のようなメッセージ性はなく、自分が自分に当てたメッセージと表現するのが正しいようです。いわゆる「予知夢」については古くから研究されていますが、現在ではほぼ否定されています。

その他「夢占い」で深層心理を探ることは、心理学的にはあまり有効とはいえないようです。結局夢は個人の記憶の断片がつなぎ合わさったものですので、その中に何か意味があることは全くないという「夢の無い」話になってしまいました。

科学は男性的か女性的か

2020-12-28 10:42:23 | その他
科学の分野は年々細分化が進んでいますが、東京大学が科学のイメージについて男性的か女性的に感じるかのアンケートを実施した結果が「朝日新聞」に掲載されました。

研究グループは昨年6月、物理、化学、機械工学、情報科学、生物など6分野について、20~60代の男女791人にオンラインでアンケートを実施しました。

男性的な印象が強い場合は5、女性的な印象が強い場合は1として5段階で選んでもらったところ、6分野すべてで平均が3を上回り、男性的な印象を持っていることが分かりました。男性的な印象が最も強かったのは機械工学で3.88で、最も低い生物でも3.13と中央値の3を超えていました。

また物理で「電磁場」や「相対性理論」、機械工学で「ものづくり」「ロケット」など、分野ごとにキーワードを79個を選んで印象を尋ねたところ、生物の「生命」などを除く74個が3を超え男性的な印象でした。

こうした印象は男性より女性の方が強く持つ傾向がありました。この結果から科学の分野に進む女性が少ないのは、イメージが障壁のひとつになっているとしていますが、私はあまり賛同できません。

女性研究者はある程度いるものの、女性の大学教官は圧倒的に少なくなっています。これは日本の研究環境が悪いというより、科学研究の持つ基本的な問題のような気がします。

大学の教員は教育者である前に、研究者でなければいけません。どんなに優れた教育者であっても、良い研究成果を出さなければ評価されません。どんなに独創的な研究であっても、世界中で誰もやっていないということはまずありません。

つまり研究というのは競争であり、時間との戦いでもあるわけです。これはどんな分野でも同じだと思いますが、私のやっていた薬化学では本当に厳しく、良い効果のある化合物を作っても、他社が類似の化合物を出してしまったら開発することはできないのです。

そのためどうしても長時間労働となってしまいます。どんなに優れた研究者でも、8時間の実験では12時間やっている人に負けてしまうというのが科学研究といえるような気がします。

私は企業研究所ですのでそれほど酷くはなかったのですが、知人の大学の研究室などは、9時10時は当たり前で日付が変わるまで実験をしていたようです。このような状況で女性が男性と同じようにするのはかなり難しいような気がします。

科学の進展は非常に速いので、例えば妊娠や出産などで半年も現場から離れてしまうと、それを取り戻すには非常に努力が必要となります。

こういった研究自身が持つ難しさが、女性の活躍を阻んでいるような気がします。研究環境が劣悪であることも確かですので、この辺りの整備が必要なことはもちろんです。

免疫学から見た新型コロナウイルスの正体

2020-12-27 09:52:41 | 自然
このところ連日新型コロナ感染者や重症者数が過去最高と報道されていますが、急激に感染拡大が起きているというよりは、高止まりが続いているといった方がよいのかもしれません。

私も含め多くの国民は自粛、感染対策を行っていますが、インフルエンザは抑えられているものの、コロナを抑えるところまで行っていないようです。「サイエンスポータル」にこの新型コロナの免疫学から見たまとめの記事が掲載されていました。

新型コロナウイルスは直径が0.1マイクロメートルと非常に小さく、ウイルス粒子の内部にはRNAが折りたたまれて入っています。ウイルスの表面にはSタンパク質あるいはスパイクタンパク質と呼ばれる釘のような構造が、1つのウイルスから100本ぐらい突き出ています。

このスパイクタンパク質がヒトの細胞の上にあるACE2というタンパク質と結合します。このACE2は肺の上皮細胞に多量に存在し、個人差はあるものの口の中、鼻の中の粘膜にも上皮細胞にも存在します。

ウイルスが細胞の中に入るための時間はわずか10分くらいで、細胞内でウイルスが増殖するには10時間ほどかかります。ウイルスが細胞の中に入ると1000個ほどに増えるので、1000個のウイルスが感染したとすると、100万個のウイルスが10時間後に出てくることになります。

これに対抗するためにヒトの身体は2段構えの防御システムを持っており、それが自然免疫と獲得免疫です。

病原体が侵入しようとすると、少なくとも3つの障壁、バリアがあります。最初の2つの障壁は自然免疫で、まず皮膚や粘膜に存在する殺菌物質が病原体の侵入を防ごうとし、物理的、化学的バリアと呼ばれるものです。

しかしそのバリアに穴が開いていると、ウイルスはさらにその内側の層に入ってきます。そこでは白血球の一部である食細胞が病原体を待っていて、病原体を食べるあるいは殺菌物質を作って殺すというのが自然免疫です。

この反応は早いのですが、免疫記憶は持っていません。この自然免疫を突破した病原体に対して、白血球の中の2種類のリンパ球、B細胞とT細胞が主体となって抗体などを作り、ウイルスを排除するというのが獲得免疫です。

獲得免疫は反応が遅いものの、一度であったものを覚えているので、再び同じウイルスが入ってくると強く働いて排除します。ウイルスは100個か200個ぐらい来ても、ヒトはこのような免疫の仕組みを使って撃退することができるとしています。

この記事ではより詳しい免疫の仕組みを解説していますので、興味のあるかたは「サイエンスポータル」をお読みください。

このような良い免疫の仕組みがありますので、新型コロナに感染したとしても風邪薬で症状を抑え、獲得免疫が働くのを待っていようと考えています。