ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

還元水素水のはなし

2016-04-30 10:10:48 | 健康・医療
最近水素水が美容と健康に良いといろいろ話題になっています。一種の健康飲料ということになりますが、本当に効果があるのか考えてみました。

水素というのは我々にとっては、色々な還元反応に使う軽い気体です。酸素と混合して火をつけると、かなりの爆発力を示しますが、水素それ自身はそれほど反応性が高いものではありません。

特徴としては分子が非常に小さく、どんなものでも通ってしまう性質があり、昔の水素の風船はすぐにしぼんでしまいます。水溶性は非常に低く、2ppmも溶けないと言われています。具体的な数値としては、1リットルの水に2㎎溶けている程度です。気体の中でも水溶性は低い方で、酸素はこの十倍以上溶かすことができます。

このように少量しか溶けないのですが、昔からこの水素水は洗浄用に使われていました。単なる純水よりもこの水素水のほうが洗浄力が高まり、液晶や半導体に使われているようです。これがどういう作用なのかわかりませんが、こういう低濃度でも効果が出るということは、飲んでも何か働くのかもしれません。

水素水の宣伝では、活性酸素を消すということが強調されています。確かに活性酸素と言われているものは非常に反応性が高く、水素と接触すると瞬時に反応するものです。これが体内でも起きるかというと、かなり微妙な点があります。化学反応というのは、あくまでも分子どうしが衝突して生じ、分子は引き寄せる力などありませんので、あくまで偶然にぶつかって始めて反応するわけです。

生体内では活性酸素が悪さをするとされていますが、その寿命は非常に短いはずです。また水素水を飲んだ場合、水素は若干油にも溶けますので、体内に吸収はされると思われます。しかし人間の体内の色々な組織は、水素分子の大きさからみると穴だらけであり、すぐに出てしまいそうな気もします。これは具体的なデータがありませんので、私の推測ですが、たぶん身体全体の組織にいきわたる前に排出されそうな気がします。

ただし実際の水素水を用いた臨床実験も最近行われており、例えば透析患者の慢性炎症や酸化ストレスを軽減すると報告されています。また高LDL血症の患者に1日900mlの水素水を飲ませたところ、LDLの減少と脂質代謝異常の改善がみられたとしています。但しこういった実験は、水素水メーカ指導のケースが多いようで、どこまで信頼できるかはやや問題かもしれません。

以上のように結論としては、水素は体内に入って悪さをすることは有りませんので、効くと思って飲むと何か良い傾向が出るかもしれません。

結核の薬が認知症の予防薬に

2016-04-29 10:40:28 | 
大阪市立大学などの共同研究グループが、結核やハンセン病の治療薬であるリファンピシンに認知症の予防効果があることを発見しました。

この記事自身はかなり前に出たのですが、認知症に関しては色々な予防効果の話が出ており、あまり注目していませんでした。しかし読み直してみるとなかなか面白い部分もあり、リファンピシンは私にも若干の思い出がありますので、取り上げてみました。

認知症にはアルツハイマー型や前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などがあり、アミロイドベータなど複数の原因タンパク質が特定されています。これらのタンパク質が脳内で「オリゴマー」と呼ばれる集合体を形成して神経細胞を死滅させて発症するとされていますが、詳しい仕組みはよく分かっていないようです。

研究グループは、認知症の予防薬候補を見つけるため、オリゴマーを蓄積しやすいサルの細胞に5種類の薬剤を個別に加えたところ、リファンピシンがオリゴマー蓄積を最も強く抑えることを見出しました。さらにリファンピシンを、アルツハイマー病のモデルマウスに1日1回、1カ月間投与すると、脳内のオリゴマーが目立って減少したようです。位置や空間の記憶実験では、通常のマウスとほぼ同程度の記憶力を持つまでに改善したとされています。

厚生労働省研究班によると、認知症患者は2012年に約462万人。64歳以下の若年性認知症も約3万8千人に上るとされています。我々団塊の世代が75歳以上となる25年には認知症患者は約700万人を上回るとの推計も出ているようです。

このリファンピシンがハンセン病治療薬として使用されていますが、ハンセン病患者は認知症の発症が少ないことから、この薬に注目したようです。こういった流れの研究は昔からあり、結核患者にがんが少ないといった知見から、丸山ワクチンが開発されています。

リファンピシンは、マクロライド系抗生物質の仲間で、放線菌が作るリファマイシンという化合物から変換されたものです。リファマイシンはある種の菌に対してはよく効くのですが、腸管の吸収性が悪く、作用時間が短いという欠点を持っていました。そこでリファマイシンを化学的に修飾して、この欠点をなくそうとしてできたものがリファンピシンです。

当時の第一製薬の私の知人がこの研究をしており、私もリファマイシンをもらって少し研究したりしていました。今回の研究ではリファンピシンは認知症予防にも効果があるとしていますが、こういった抗生物質を予防薬として健康な人に投与するのは、やや問題があるような気がします。

エコノミークラス症候群のはなし

2016-04-28 11:00:40 | 健康・医療
エコノミークラス症候群について時々耳にしますが、熊本地震の避難している人がこれによってなくなったと報道されています。

エコノミークラス症候群とは奇妙な名前ですが、最近はエコノミークラスだけではなく、座る座席に関係なく発症するようですので、ロングフライト症候群とも呼ばれているようです。

エコノミークラスでは、中の座席になってしまうと隣の人に立ってもらわないと出られないため、必要な時にしか席を立つことがないようです。私の海外出張は常にビジネスクラスでしたので、どこの席で有ろうと周りの人に迷惑をかけることなく通路に出たりしていました。

今考えると本当に良い時期に勤務していたと思います。当時の海外出張はビジネスクラスが当然でしたが、確か私の最後の海外出張のころは、ビジネスをエコノミーに代えれば2人出張できるということで、エコノミーになっていました。私もこれは正しい判断と思いますが、私はそのころは研究所の長老入りをしていましたので、頼んでビジネスにして貰いました。

本題のエコノミークラス症候群ですが、長時間座ったままの同じ姿勢でいると、太ももやふくらはぎが座席に圧迫されたままになります。そうすると下肢の深部静脈に、血栓ができることがあるようです。これはトイレに行かないよう水分補給をせずに、体の水分が不足すると起きやすいとされています。

エコノミークラスでは、こういった血栓ができやすい状況になっています。この血栓が動いたとき、血流にのって動き出し、心臓が詰まると心筋梗塞となり、脳が詰まると脳梗塞となるわけです。一番多いのは肺動脈が詰まってしまうケースで、これが典型的なエコノミークラス症候群の発症です。この時の症状は突然の呼吸困難や胸の痛みで、動き出してすぐ発症することが多いようです。

治療にはワルファリンなどの抗血液凝固剤の投与や、TPAなどの血栓溶解剤が使われるようですが、死亡率10%程度とかなり怖い病気といえます。この予防法もいろいろ言われていますが、要は血流を滞らせないように、ゆったりした服装にするとかベルトを緩めておくなどのようです。座席にじっとしていないというのは当然ですが、なかなか難しいかもしれません。

その他こまめに水分を補給することや、アルコールは利尿作用があるので控えるなどと言われています。私ももう一度海外旅行などしてみたいのですが、エコノミークラス症候群はともかく、あの長時間の飛行(しかも禁煙です)に耐えられるかと思うと、どうも出かけるのをためらってしまいます。

大学入試改革 記述式導入

2016-04-27 10:47:26 | 時事
大学入試改革の議論が進んでいるようですが、2020年度からの改革の骨子がまとまったようです。

やはり少子化や大学進学率の上昇など、色々な環境変化に対応した大学入試が必要なのかもしれません。現在でもAO入試などが行われていますが、あまりよくわかりませんので調べてみました。AOはアドミッションズオフィスの略で、日本語では入試事務局という意味のようです。これでは全くわかりませんが、どうも導入の際参考にした海外の入試事務局が、学生のヘッドハンティングのようなことをやっていることから、この名前が付いたようです。

AO入試というと、何か秀でたものがある人を探すようなイメージがありましたが、大学側の教えたい内容と、学生の学びたい内容がマッチするかを調べる入試というのが正しいようです。推薦入試が高校の推薦が必要なのに対し、こちらはいわば自己推薦入試なのかもしれません。

さて入試制度ですが、現在の大学入試センター試験に変わり、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入されます。相違点はセンター試験が選択肢から答えを選ぶマークシート方式でしたが、記述式で答える問題が加わるようです。この記述式問題はかなり前から、受験生の色々な面を見るうえで必要とされていましたが、採点をどうするかが問題でした。

今までが知識の詰め込みと言われていたのを改めて、受験生の考える力などを問うという点では良い変更かもしれません。採点は従来の1点刻みではなく、A~Eなどの段階別評価とするようですが、順位にどう反映させるのか、また同一順位の人数が非常に多くならないかなど、実際問題としては課題が多いような気がします。その他日程なども、マーク方式の試験日と記述式を分けるなどの案もあり、このあたりは今後も検討していくようです。

こういった新しい制度は、どうしても実施して見て問題点などが出てくることが多く、順次改善していくのですが、この開始時期に当たる受験生が不利にならないように、十分の準備を期待します。私自身の身の回りなどは、大学受験など当分無関係ですが、大学に若干関与していたこともあり、やや注意していました。

今回の改革案も、細かい部分など先送りされている感はありますが、大学入試制度というのは、その後の一生にかかわるかもしれない重要な問題です。2020年というと先のようですが、実はそれほど時間がある訳ではないので、速やかな対応を望んでいます。

iPS細胞から安全な心筋細胞作製

2016-04-26 10:44:20 | 健康・医療
慶応大学の研究グループが、iPS細胞から未分化細胞を含まない心筋細胞の作製に成功したという発表がありました。

その少し前にこちらは大阪大学の研究グループですが、「ハートシート」という組織培養した細胞を、心臓に移植する手法が子供も対象になったという報告も出ています。こちらは拡張型心筋症の子供が対象で、この病気は大きくなるにつれ心臓の働きが弱ってしまう病気です。この治療には心臓移植が必要ですが、国内ではドナー(提供者)が圧倒的に少なく、海外に行って移植を受けるしかないような状況です。

余談ですがこの○○ちゃんを救おうという感じで、寄付を集めているのを見たことがありますが、こういった手法で億単位の金が集まるというのは、やはり日本が豊かな証拠かもしれません。こういった子供たちの治療として、「ハートシート」の移植が考えられています。このシートは患者の脚の組織からとった細胞を、組織培養し何層ものシート状にしたものです。患者本人の細胞なので、拒絶反応も起こらず、心筋細胞ではないのですが、心臓の保護機能を発揮するとされています。

従来大人の心筋梗塞などで弱った心臓の保護として、このシートを張るという治療が行われていました。非常に手間暇のかかる治療法ですので、それほど多くの人に適用されてはいないようですが、今回18歳未満にも拡大されたわけです。

この手法をより効果的にするために、心筋細胞自身を移植するということが試みられています。それがiPS細胞から作った心筋細胞移植です。しかしこの手法にはいろいろ問題があり、その一つが分化させた心筋細胞中に、未分化細胞が混ざってしまうことでした。この未分化細胞は、そのままにしておくと、最悪の場合ガン化する可能性もあります。

今回慶応大学のグループは、この心筋細胞に分化させ培養するときに、心筋細胞特有な栄養源である乳酸を加える方法を開発しました。また未分化の細胞は、グルタミン酸を利用することから、培地からこのグルタミン酸を排除することによって、ほとんど心筋細胞だけの培養に成功したわけです。

まだハートシートのようなものにはなっていないようですが、これをどう臨床に使うようにするかが課題のようです。このような再生医療分野は、着々と前進しています。まだiPS細胞からの臨床試験は始まったばかりですが、あまり急がずじっくりと進めてほしい気がします。