九州大学などの研究グループは、高血圧治療薬として承認されている薬に、心不全状態のマウスの心機能を改善する効果があることを確認しました。
既に安全性が確認されている薬で効果を明らかにしたことで、「ゼロからの創薬よりも費用や時間をかけずに治療薬開発につなげられ、メリットは大きい」としています。
心疾患による死者は年間約20万人で、日本人の死因の2位となっており、そのうち心不全は約4割を占めています。研究グループは心臓の収縮力を低下させる心筋の老化に、細胞内のミトコンドリアの異常分裂が関与していることを突き止めました。
さらに高血圧症治療薬「シルニジピン」に従来の作用とは別に、ミトコンドリアの分裂を阻害する薬理作用があることを発見しました。心筋梗塞状態にしたマウスにシルニジピンを投与したところ、4週間で心筋力の上昇がみられました。
このシルニジピンはカルシウムチャンネルブロッカーという分類の薬で、その構造からジヒドロピリジン系薬剤と呼ばれています。
私の勤務していた会社もこのジヒドロピリジン系薬剤を開発し、降圧剤として市販しています。この開発の過程で私も少し関与したことがあります。
一般にジヒドロピリジン系薬剤は副作用として肝障害が出ることがあると言われていましたが、この副作用は動物実験ではなかなか確認できないもののようです。人間では倦怠感やだるさ、食欲不振といった症状が出るようですが、重篤になると黄疸が出たりして動物でも調べることができるわけです。
しかしこういった強い副作用が出ることはないため、その有無の判定が難しくなっていたようです。そこで開発薬と類似の構造で、より副作用が出る化合物の合成を依頼されました。詳細は私もよく分かりませんが、こういった実験を積み重ねた結果、開発薬には肝機能障害はないという結論に至ったようです。
このジヒドロピリジン系薬剤の肝障害という副作用は、今回見出されたミトコンドリアの分裂阻害といった作用によるのかもしれません。
さて今回の研究では、心筋梗塞になる前に投与すると、機能低下を抑制する薬剤は報告されていますが、一度低下した機能を改善する効果がある薬は珍しいようです。
このシルニジピンでの治療法は今後数年かけて、薬の適用拡大か、似た構造の治療薬開発を目指したいとしています。このように別な薬効で市販されている薬剤を、他の用途に使う試みはいろいろされていますが、安全性が確認されているもののなかなか現実的には難しいようです。
こういった類が臨床試験に入ったという例はあまりありませんが、早く人間での効果を確かめ開発を急いで欲しいものです。
既に安全性が確認されている薬で効果を明らかにしたことで、「ゼロからの創薬よりも費用や時間をかけずに治療薬開発につなげられ、メリットは大きい」としています。
心疾患による死者は年間約20万人で、日本人の死因の2位となっており、そのうち心不全は約4割を占めています。研究グループは心臓の収縮力を低下させる心筋の老化に、細胞内のミトコンドリアの異常分裂が関与していることを突き止めました。
さらに高血圧症治療薬「シルニジピン」に従来の作用とは別に、ミトコンドリアの分裂を阻害する薬理作用があることを発見しました。心筋梗塞状態にしたマウスにシルニジピンを投与したところ、4週間で心筋力の上昇がみられました。
このシルニジピンはカルシウムチャンネルブロッカーという分類の薬で、その構造からジヒドロピリジン系薬剤と呼ばれています。
私の勤務していた会社もこのジヒドロピリジン系薬剤を開発し、降圧剤として市販しています。この開発の過程で私も少し関与したことがあります。
一般にジヒドロピリジン系薬剤は副作用として肝障害が出ることがあると言われていましたが、この副作用は動物実験ではなかなか確認できないもののようです。人間では倦怠感やだるさ、食欲不振といった症状が出るようですが、重篤になると黄疸が出たりして動物でも調べることができるわけです。
しかしこういった強い副作用が出ることはないため、その有無の判定が難しくなっていたようです。そこで開発薬と類似の構造で、より副作用が出る化合物の合成を依頼されました。詳細は私もよく分かりませんが、こういった実験を積み重ねた結果、開発薬には肝機能障害はないという結論に至ったようです。
このジヒドロピリジン系薬剤の肝障害という副作用は、今回見出されたミトコンドリアの分裂阻害といった作用によるのかもしれません。
さて今回の研究では、心筋梗塞になる前に投与すると、機能低下を抑制する薬剤は報告されていますが、一度低下した機能を改善する効果がある薬は珍しいようです。
このシルニジピンでの治療法は今後数年かけて、薬の適用拡大か、似た構造の治療薬開発を目指したいとしています。このように別な薬効で市販されている薬剤を、他の用途に使う試みはいろいろされていますが、安全性が確認されているもののなかなか現実的には難しいようです。
こういった類が臨床試験に入ったという例はあまりありませんが、早く人間での効果を確かめ開発を急いで欲しいものです。