ごっとさんのブログ

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   薬と猫と時々時事

管理職への昇進はモチベーションとならない

2025-03-04 10:32:48 | その他
私は入社以来研究専門職として過ごしていましたので、管理職にあまり興味はありませんでした。

実際30代半ばで主任研究員という管理職になり、自分の研究室を持つようになりましたが、それほど大きな変化ではありませんでした。近年ジョブ型雇用への移行の気運が急速に高まったのは、少子高齢化に伴い社会構造が変わってきたことが大きな理由とされています。

日本は人手不足やマーケットの縮小が避けられず、その打開策としてDXによる生産性向上や高付加価値のビジネスモデルへの転換に踏み切らざるを得なくなってきています。

DX導入に合わせて新規プロジェクトを立ち上げるには、専門性の高い人材の確保が急務であり、年功序列でゼネラリストを育成するメンバーシップ型雇用ではとても対応できません。勤続年数による技能やノウハウの積み上げでは間に合わないという事のようです。

リクルートキャリアの調査によれば、コロナ禍でジョブ型雇用の議論が進んだ企業は、かなり進んだ5.4%、とある程度進んだ19.4%を合わせて24.8%となっています。5000人以上の大企業に限れば36.4%でした。

導入済みの企業と導入経験のある企業にジョブ型雇用を取り入れた理由を聞いていますが、トップは特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するために職種別報酬の導入が必要になったためが54.3%、次いで労働時間削減のため(業務効率化)が51.2%でした。

DXに伴って事業を売却するケースも増えてくるとみられますが、雇用が職務に付随するジョブ型雇用であれば、そこで働く人を素のまま引き継ぐことも可能となります。雇用を守りやすくすることで、結果として事業売却がスムーズになるという計算もあります。

戦後の日本では、新卒時に就職した企業で定年退職まで勤め上げることが多くの人々の常識でした。就職した企業に合ったスキルを磨き、管理職へ昇進することが仕事のモチベーションともなっていました。

デメリットとして指摘される指示待ちも、それなりのポストを約束されていた時代の従業員にとっては疑問を感じるというより、出世に繋がる切符であり、それが心地よかったという面もありま

しかし少子高齢化の影響もあって社会の閉塞感が強まり、日本企業がかつての勢いを失った今、管理職への昇進はモチベーションとなり得なくなりました。若者にとって企業とは、生涯をかけて勤め上げるの値する魅力ある存在ではなくなりました。

能力の高い新卒者には実現したいことが明確な人も多く、自分が希望する仕事につけなかったり、将来の夢が描けなくなったりすると、転職や起業に打開策求めるでしょう。

ただ能力のある人にとって良い時代になったと言えるかは難しいような気がします。

脳の進化は誤解されるのか

2025-03-03 10:36:27 | その他
脳の解明は非常に進んでおり、その一端をこのブログでも書いていますが、まだまだ俗説がまかり通っているようです。

動物を思い浮かべてくださいと尋ねられたら、イヌやネコ、キツネやリス、ライオンなどが多いようです。これらの動物はみな哺乳類というごく一部のグループに属しています。ヒトも哺乳類であるせいか、動物のイメージは哺乳類に偏ってしまいます。

では生き物の例では、鳥や魚、エビやタコなどさきほどよりは広い範囲から集まるかもしれません。しかしここで挙げた生物はいずれも動物です。ここでも自分たちの属するグループに偏ったイメージを抱いてしまう傾向にあります。

こうした人間を中心として世界や物事を捉える思考様式を人間中心主義と呼んでいます。人間中心主義のバイアスは、これまでの科学思想史にも甚大な景況を及ぼし、現在でも様々な文脈で思考に忍び込んでいます。

人類の宿痾ともいえるその病巣の一端を今回は脳に焦点を当ててみました。脳の進化にまつわる誤解が、専門家たちが再三にわたって否定してきたのにもかかわらず、いまだに巷にはびこっているのです。

その誤解とは、人間の脳が爬虫類脳(反射をつかさどる脳幹)、哺乳類脳(情動をつかさどる大脳周辺系)、人間脳(理性をつかさどる大脳新皮質)という3つの層からできているとする脳の三位一体モデルです。

これは1960年代に提唱され、数々の賞を取り1990年に原著が出版され、1994年に邦訳がなされています。この影響はすさまじく、爬虫類脳に訴求したマーケティング戦略を唱えるビジネス書まで出てくるようになりました。

このモデルの最大の問題点は、爬虫類→哺乳類→人間と、直線的に脳が進歩したかのような図式になっているところです。その背後には人間は特別であるという人間中心主義的な価値観が潜んでいます。

つまり進化の頂点としてのヒトに至るまでの進歩という進化観が反映されているのです。三位一体モデルでは、爬虫類の脳には哺乳類脳とされる部分や人間脳とされる部分が、全くないかのように扱われています。

しかし実際には爬虫類の脳にもこれらの部分に相当する脳領域が存在することは分かっています。大脳新皮質の起源は爬虫類よりもはるか以前、脊椎動物そのものの誕生にまで遡るかもしれないことが、ヤツメウナギを用いた最新の研究から示唆されています。

ヤツメウナギは魚類よりもはるか以前、軟骨魚類よりも前に分岐した系統です。この様に未だにこの三位一体モデルが幅を利かせているようですが、脳の本質は非常に奥深くなにが本質かはなかなかわからないようです。

そういう状態ではこういったモデルがあることはやむを得ないような気がします。

介護される側になったらと考える人が知らない事実

2025-03-02 10:34:28 | その他
私も78歳となりましたので、介護を必要とする時期が近付いているような気がします。もし必要になったらすぐそれなりの施設に入るつもりですが、ここでは介護の実態について紹介します。

令和4年版高齢者白書より、介護が必要になった原因についてみてみると、最多は認知症18.1%、脳血管疾患(脳卒中)15.0%、高齢による衰弱13.3%、骨折・転倒13.0%と続きます。男女別に見ると、男性は脳血管疾患24.5%、女性は認知症19.9%が多くなっています。

この調査で55歳以上の人に介護頼みたい人について尋ねたところ、男性の場合は配偶者が56.9%と最多でした。ついでヘルパーなど介護サービスの人22%、子供12.2%と続きます。一方女性の場合は、最多となったのはヘルパーなど介護サービスの人39.5%、子供31.7%、配偶者19.3%と続いており、男女差が際立つ結果となっています。

では実際の数値を厚生労働省の調査結果では、介護者は被介護者の配偶者が一番多く22.9%、次に被介護者の子供16.2%、事業者15.7%、別居も家族など11.8%、子供配偶者5.4%となっています。

介護にかける時間はほとんど終日が19.0%、半日程度が11.1%、2〜3時間程度が10.9%です。また要介護4では41.2%、要介護5では63.1%がほとんど終日と回答しています。これでは介護者は仕事を続けることすら難しくなってしまいます。

次に費用面ですが、55歳以上の人に介護費用について尋ねた内閣府の調査によると、要介護になった場合年金などの収入で賄うと答えた人が63.7%、貯蓄で賄う20.5%、資産を売却するなどして自分で賄う4%、特に考えていない8.1%と続きます。

別な調査によると、公的介護保険の範囲外の費用に対して必要と考える月々の費用の平均は15.8万円となっています。現状厚生年金の平均額(夫婦2人分)が22万円、国民年金の平均額が6万6千円といったところですから、その他の生活費を考えると厳しい数字であることは否定できません。

また特養などの人気施設では、入所までに長い待機時間が必要とされています。厚生労働省の特別養護老人ホームの入所申込者の状況によれば、全国で29.2万人が入所を希望しているにもかかわらず、すぐに入所できない状態が続いています。

特に要介護度が高い場合や認知症を患っている場合、待機時間がさらに伸びることがあります。私も要介護になったら施設に等と考えていますが、それほど簡単なことではなく事前の情報収集が必要になっているのかもしれません。

認知症患者増加で日本はこれからどうなるのか

2025-03-01 10:32:46 | その他
私の身近なところでも認知症はかなり一般的でした。私の母や女房の両親は皆認知症を発症してしまいました。

母は80歳になるころから軽度の認知症となり、徐々に進行していきましたが、89歳で亡くなるまでそれほど重症化はしませんでした。それでもしっかりしていた母が徐々に壊れていくのを見るのは辛いものがありました。

最後は急な発熱などがあり、医師も自宅では危険という事で入院しましたが、認知症患者を自宅でというのは難しいのかもしれません。

さて日本は人口減少が進む中で、認知症患者は増加しています。これにどう対処すればよいのかは難しい問題といえるようです。身体機能や認知機能の低下が現れ始める状態を示すフレイル(虚弱)の増加が懸念されています。

身体を動かす機会が減ることで、徐々に歩行が困難となり階段を少し上がるだけで息切れしたり、靴下を自分ではけなくなったりします。他人と会話する機会が激減することで物忘れが激しくなるケースもあります。

こうなると外出する意欲そのものがなくなり、ますます状態が悪化していきます。スポーツ庁の体力・運動能力調査(2020年度)によれば、体力の向上が続いていた高齢者(65~79歳)の平均値はすべての年齢階層で前年度より低下しました。

東京大学高齢社会総合研究機構のデータによれば、外出自粛生活の長期化で加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)が進行します。緊急事態宣言に伴う外出自粛要請の前後で比較すると、筋肉量が低下した高齢者は24.3%、歩行速度が低下した高齢者は27.3%でした。

日本認知症学会が2020年5〜6月に専門医を対象に実施したアンケート調査によれば、認知症の症状悪化を多く認めるが8%、少数認めるが32%で、何らかの悪化が認められた患者が4割を占めました。

症状としては認知機能の悪化が47%、BPSD(行動・心理症状)の悪化が46%、合併症の悪化が34%でした。認知症の患者数は、コロナ禍とは関係なく高齢者数の増加に伴って増えると予想されています。

厚生労働省の資料によれば、糖尿病の有病率が上昇した場合、団塊世代が75歳以上となる2025年に730万人で65歳以上の5人に1人(20.6%)、2040年には953万人で4人に1人(25.4%)が該当すると推計しています。

認知症患者の想定以上の増加は、社会保障費の増大につながります。内閣官房などの推計によれば、2025年度に最大140兆6000億円、2040年度には190兆円に膨らむとしています。

これに対処する方法はありませんので、事実を受け入れるしかないのかもしれません。

AIは人の知能になれるのか

2025-02-22 10:32:49 | その他
昨年のノーベル賞は、私のわかる分野でなかったためほとんど気にしていませんでした。この物理学賞の受賞者が、いつの日かAIは自我を持ち、人間を排除するのではないかという警告を出しているようです。

ただ現在ではほとんどの専門家がこの警告を否定しています。その理由は人工知能(AI)と人間の知能は本質的に異なるためとしています。しかし知能とは何なのか、その概念を再定義し、人間とAIの知能の違いを探求する必要があるようです。

またチャットGPTの基礎技術となる深層学習の生みの親でありAIの父と呼ばれる受賞者もインタビューで同様な懸念を示しています。さまざまな悪影響が制御不能に陥るという驚異も心配しなくてはならない。人間より賢いシステムが生まれ、支配するのではないかとしています。

彼はインタビューにこう答えています。私は50年もの間、AIを人間の脳に近づけようとして開発を重ねてきた。脳の方が機械的に優れていると信じていたからだが、2023年に感を改めた。現在対話型AIは人間の脳の100分の1の規模でも数千倍の知識がある。

おそらく大規模言語モデルは、脳よりも効率的に学習できる、というものです。チャットGPTに代表される生成AIは、機能を限定されることなく、幅広い学習ができる汎用性を持っており、AIが何を学ぶかを人間が制御できなくなってしまう懸念は理解できます。

囲碁や将棋に強いAIをトレーニングしたつもりが同時に暗殺プランを計画するのにも優れてしまったら、恐ろしいことといえるでしょう。

ここでは曖昧模糊とした知能を再定義し、AIと人類が持つ脳という臓器が生み出すヒトの知能との共通点と相違点を整理したうえで、自立的なAIが自己フィードバックにより改良を繰り返すことによって、人間を上回る知能が誕生するというシンギュラリティに達するという仮説の妥当性を考えてみます。

この著者は粉粒体の動力学などの分野で物理シミュレーションを行う研究を行い、近年は生命情報学を用いたゲノム解析を行っている物理学者です。

チャットGPTに代表される大規模言語モデルは、その構造を見る限り物理学の非線形非平衡多自由度系と何ら変わりがないとしています。これから知能と呼べるものは、生成AIであれ人の知能であれ、現実世界のシミュレーターであるという点で共通しているそうです。

結論としてはAIが人類のような知能を獲得することは非常に難しいものであり、シンギュラリティを否定しています。

この物理学的知能の話はよく理解できないので省略しますが、知能とはなかなか難しいものであることは確かなようです。