ごっとさんのブログ

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コロナウイルスのゲノム変異に未知の仕組み

2022-08-31 10:38:19 | 健康・医療
新型コロナは普通のコロナウイルスが変異したものですが、変異するたびに感染拡大が起こっています。

東北大学の研究グループがSARS(重症急性呼吸器症候群)などの関連コロナウイルスどうしのゲノムを比べたところ、特定の領域に未知の仕組みによる可能性がある、長い塩基配列の挿入や欠失などが起きていることを発表しました。

コロナウイルスには風邪の病原体となるタイプや、重篤な肺炎などを引き起こすタイプがあります。後者には2003年に見つかり大流行したSARSや、2012年にみつかったMERS(中東呼吸器症候群)ウイルスなどがあり、新型コロナはSARSウイルスの仲間に分類されています。

ヒトにパンデミックを引き起こす段階のゲノム配列は、その前に別の動物に宿った段階のものと比べ、どこの領域にどんな変異が起きているのでしょうか。

さまざまな動物から採取されたウイルスゲノムを比べることは、今後の変異や進化で新たに起こる感染への対策のために重要です。

研究グループは2003年に中国で採取されたSARSと2013年に東京大学のグループが岩手県の洞窟のコウモリから採取したSARS関連ウイルスのゲノムを比べ、ウイルスの進化の過程でどう変異するのかを探りました。

その結果コウモリから採取したコロナウイルスのゲノムにはSARSに比べ少なくとも30カ所以上の挿入や欠失があり、その多くが10塩基以上、ところにより100塩基をも超える比較的長い配列に及んでいました。

これらはゲノムの2つの領域に集中していることから、単なる偶然ではなく何らかの未知の仕組みによる可能性があるようです。このゲノムに挿入された長い配列の起源を探ろうと、それらすべてをSARSとこのコロナのゲノム中に探しましたが、似たものはありませんでした。

こうしたことから研究チームは、挿入された配列はウイルス自身ではなく、宿主である動物の細胞や別の微生物など、他者の配列に由来すると判断しました。

またこのゲノムの挿入や欠失の大半は、SARSと2019年のSARS-2の間にみられる挿入や欠失には無く、日本のコウモリなど宿主体内で生じたと考えられます。

SARS関連コロナウイルスではこうした比較的長い挿入や欠失が特定のゲノム領域で蓄積し、変異の重要な要素となった可能性があります。今後こうした変異を引き起こす宿主の要因や未知の仕組みを解明できれば、コロナウイルスの変異で起こる問題への対処に役立つ期待があるようです。

ここでは単に変異の現象を発見したにすぎませんが、こういった部分の研究によって今後の変異の動向などが推測できるようになるのかもしれません。また私が最も興味を持っている、なぜ感染が自然に収束していくかなどの説明につながることを祈っています。

熱中症の季節に塩分摂取と身体への影響

2022-08-30 10:29:27 | 健康・医療
今年は異様に早い梅雨明けから猛暑となったと思ったら、豪雨災害が続いたりと自然の天候変動はまだまだ人の力が及ぶところではないようです。

連日熱中症の警戒アラートが発表になっていますが、熱中症を防ぐには水分と塩分補給といわれています。

食塩といえば「高血圧の原因」とか「摂りすぎは身体によくない」と減塩のことが目に付いていますが、熱中症では重要なことが「塩分補給」となっています。食塩の成分のうち、生体に大きく関わるのはナトリウムです。

生体に必要なミネラルは約20種類あり、ナトリウムはカルシウム、リン、カリウムについで体内に多く含まれ、ヒトの体内には約100グラムのナトリウムが存在します。そのうちの約4割は骨の成分として分布しますが、残りのほとんどは細胞外液という部分に存在しています。

細胞外液ではナトリウムは浸透圧の調節、体内の水分量バランスの維持、pH(水素イオン指数)の調節など重要に役割を果たしています。また胆汁や膵液、腸液などの消化液の材料であり、神経興奮の伝達や筋肉の収縮にも重要です。

激しい運動などで大量の汗をかけばナトリウムは失われますが、通常でも体内のナトリウムは尿や便、皮膚から失われており、損失した分を食事から補っています。食事から摂取した塩分は小腸で吸収され、ほとんど(99%)は尿中に排泄されます。

その後腎臓で尿からナトリウムを再吸収することで損失した分が補われ、体内のナトリウムは量が維持されています。通常の食事をしていれば、ナトリウムの摂取が不足することはないとされています。

腎臓は水分だけでなく、ナトリウムイオンやカリウムイオンも一定の濃度にになるように厳密に調節されています。ナトリウムが多くなれば尿に排泄され、少なくなれば腎臓で再吸収して体内に戻すことで、体内のナトリウム量が調節されているのです。

食塩の摂取量は色々なガイドラインでも6グラム程度とされていますが、最低必要な食塩の量は1日1.5グラムという計算も出ているようです。

この摂取量に関しては、色々と研究されており6グラムでは足りないという結果も出ているようですが、通常の食事をしていれば不足することはないというのは確かなようです。

ナトリウムが体液の浸透圧の調整に関わるミネラルで、身体の機能を正常に保つためにはミネラルバランスが重要なことは確かです。またナトリウムはカルシウムやマグネシウムとも体内で相互に影響し合っていることが示されています。

結局ナトリウムが熱中症とどういう関係があるかはよく分かりませんが、ヒトの身体はちょうど良い濃度になるように細かく調整されていますので、摂取量を気にする必要はあまりないのかもしれません。

世界中の雨水に含まれる永遠に残る化学物質

2022-08-29 10:27:38 | 化学
もう20年も前ぐらいから科学者の間で「分析公害」という言葉が流行っていました。

これは分析機器の精度や感度が飛躍的に向上し、それまで検出されなかったものが見つかるようになってきたのです。

これは例えば排水基準などで、危険性の高い物質などは「検出されてはいけない」というような基準となっていました。ところが最新機器を使うとこれが検出されてしまうのです。そこで「昔の方法(名前はついています)で調べたときに」という注釈が加わったのです。

このため機器分析で簡単に測定できるものを、面倒な手法で調べなければいけないという、ばかばかしいことが生じてしまいました。

さて世界各国の雨水には、飲み水として安全ではないレベルの「永遠に残る化学物質」が含まれていることが示唆されたという記事がありました。

人体への有害性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」は家庭や環境に広がっているようです。環境化学者の研究チームによると、アメリカの汚染ガイドラインに従えば、地球上のどの場所でも安全に飲める雨水はもうないとしています。

このPFASと呼ばれるパーフルオロアルキル化合物は数千種に及ぶとされています。当然人工的に作られたもので、食品包装や撥水加工された服、家具、カーペット、鍋やフライパンの焦げ防止コーティング、消火器の薬剤、電子機器、一部のシャンプーや化粧品などです。

その製造過程や日常的な使用を通して大気に放出されます。また海水に入り込み、波によってエアロゾル化され、大気を介して広がり雨水となって地上に戻ってきます。分解されることなく長時間残存し、人や動物、環境に蓄積していくため「永遠に残る化学物質」とも呼ばれています。

PFASは南極と北極の海氷からも見つかっています。このPFASは一部のガンや生殖能力の低下、ワクチン反応の低下、高コレステロール、子供の発育の遅れに関連があると報告されています。

アメリカの環境保護庁(EPA)は健康への影響に関する新しい証拠に基づき、PFASのガイドラインを強化したようです。この許容範囲は「1兆分の70」を引き上げたのですが、これは驚くべき数字といえます。

従来濃度の単位としてはPPMやPPBが使われていますが、このPPB(10億分の1)程度が検出限界とされていました。その1000分の1以下が測定できるというのは、新たな「分析公害」といえるような気がします。

もともとPFASなどのフッ素化合物は安全とされていましたが、高濃度であれば何らかの作用は出て来るでしょう。その何千億分の1の量が検出できるようになったのは、科学の進歩といえますがそれを問題視するのは分析公害以外の何物でもないような気がします。

PFASのメリットを享受している現在、代替が難しい物質を問題視するのは単なる科学者の自己満足のような気がします。

大腸ガンで有効な内視鏡治療ESDの課題

2022-08-28 10:42:19 | 健康・医療
2022年のガンの罹患数予測では、大腸ガンが男女合わせて15万8200人で1位となっています。

大腸ガンは食の欧米化との関係が強いとされていますが、私は食事内容でガンが増加することはなく、単純に高齢化が原因ではないかと思っています。

国立ガン研究センターなどが、早期の大腸ガンにESD(内視的粘膜下層剥離術)と呼ばれる新しい内視鏡治療の効果を調べた結果、5年生存率が94%に上がったと発表しました。従来の内視鏡治療にとって代わり、標準治療になるかもしれません。

従来の内視鏡治療は、ガンやポリープの根元に直径2〜3センチのスネアという金属製の輪をかけて切除します。スネアの大きさに制限されるため、従来の治療対象は「最大径が2センチ未満」が原則でした。治療の安全性が高く、短時間で治療できるため外来で行うことができます。

内視鏡検査でポリープなどが見つかると、2センチ未満であればその場で切除することが可能です。私の友人も大腸内視鏡検査でポリープが見つかり、何個か切除したといっていました。

これが従来の内視鏡による切除ですが、大きさによってはガンの取り残しのリスクがあり、再発率が10%以上と高いことが課題といえます。ESDは内視鏡に装着した高周波ナイフでガンの周りの粘膜を切り、その下部にある粘膜下層を薄くはぎとることでガンを切除します。

内視鏡を扱う医師が、切除する範囲や形を思い通り決められるため、2センチ以上の病変を切除することができるのです。国立ガンセンターなどのグループは2013年から2年間ESDを受けた1883人を登録し、その結果5年生存率は93.6%となりました。

8人(0.5%)に再発が認められましたが、いずれも内視鏡で切除できています。従来の内視鏡に比べてESDはガンの取り残しが少なく、再発リスクも低いことが明らかになりました。

ただし大腸の壁は2〜3ミリと胃の半分ぐらいの薄さで、ちょっとした操作ミスが出血やせん孔に繋がりますので、ここを薄くはぐのは高い技術が必要なようです。

今回の研究ではせん孔が2.9%、出血が2.6%に認められたものの、多くはその時の追加処置で対処できていて、外科手術が必要だったのは0.5%でした。

このようにESDは外科手術より肉体的負担が少なく、患者にとっても期待される治療法ですが、医師の技術によるところが大きいことが課題かもしれません。

それでも早期発見ができれば、少ない負担で切除できる可能性が高まっていますので、便潜血検査などを心掛けることが大切といえます。このESDが今後どの程度普及するのかも課題のひとつといえますが、早く標準治療になることを願っています。

ベビーパウダーが発ガン性のために販売中止か

2022-08-27 10:39:12 | その他
私の家族はもう孫も大きくなっていますので、ベビーパウダーに関与することはなくなったのですが、これが発ガン性のために発売中止になるかもしれないという報道がありました。

この発端はアメリカの訴訟にあるようです。2020年6月にJ&J社のベビーパウダーが卵巣がんの原因になった可能性があるとして、賠償金の支払いが命じられたという事例がありました。この時期にJ&J社はタルクを原料としたベビーパウダーを米国とカナダで販売を中止しました。

これが今回世界でタルクを原料としたベビーパウダーの販売が2023年には中止になることにつながるということです。

このタルクとは滑石ともいう鉱物の一種で、爪よりも柔らかくチョークなどの原料にもなっています。そしてタルクに不純物としてアスベストが含まれる場合があるようです。このアスベストが中皮腫という例えば卵巣がんなどのリスクになるのではないかという裁判が起こったのです。

現在の日本におけるベビーパウダーは、タルクを使用した製品は少なく、コーンスターチというトウモロコシのデンプンを原料として使われる製品が多くなっているようです。

つまり日本では多くのベビーパウダーは、今回の「ベビーパウダー訴訟」とは関係のない物質が原材料ということになります。しかもこの訴訟がどの程度科学的なものなのかは怪しい気がしています。

最近行われた検討では市販のタルクを原料とした製品に、アスベストはほぼ含まれていないという結果が出ています。また最近米国における25万人以上の女性に関するデータからの研究報告もあり、ベビーパウダーを長期間・頻回使用しても、卵巣がんの発症リスクに関連しなかったという結果も出ています。

私はこのベビーパウダーが赤ちゃんを育てるうえで、どの程度必須なものかはもう忘れましたが、おむつかぶれの予防などによく使うものかもしれません。

こういった重要なアイテムが、たった一つの訴訟結果により、しかもあまり科学的ではないことで使用禁止に動くというのはありそうでなことではあるのですが、好ましいことではないでしょう。

どうもアメリカでは訴訟社会ですので、裁判結果が科学的研究結果よりも優先されるという傾向があるようです。これが日本にどの程度影響があるか分かりませんが、タルク原料のベビーパウダーは前述のように販売中止になるのかもしれません。

対象が赤ちゃんですので、ごく僅かのリスクも避け安全性を追求するのは当然ですが、ベビーパウダー全体に影響が出ないことを願っています。

それにしてもひとつの訴訟結果が、使い慣れた便利な製品の流れを左右してしまうのは、おかしな社会といえるのかもしれません。