ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

膵臓ガンが転移しやすい仕組みを解明

2023-09-30 10:34:03 | 健康・医療
私の歳(76歳)になると周りにガンの発症が増えてきていますが、本当にガンは個人差が大きいようです。

最近も大学時代の友人に肺ガンが見つかりましたが、基礎疾患があり手術が難しいという事で、遺伝子検査を行いそのガンに合った分子標的薬での治療を行いほぼ消えたようでした。

ところが別な場所への転移が見つかり、このガンは検査の結果同じ薬では効果が認められないことから、製薬会社の新薬の臨床試験に参加することになりました。この友人のように最先端技術を使った治療が受けられるというのは、運が良いと言えるのかもしれません。

さて膵ガンが悪性化する仕組みを、京都大学の研究チームがマウス実験で突き止めたと発表しました。「RECK」と呼ばれるタンパク質が膵臓で少なくなると、ガン細胞同士がくっつかずにバラバラになって広がり、肝臓などへの転移も起こりやすくなるようです。

人間でも同様の仕組みが考えられ、このタンパク質を増やす薬剤を与えることで、転移を減らせる可能性があるとしています。膵ガンは国内では年約4万4千人(2019年、国立がんセンター調べ)が診断されます。

大腸ガン胃ガン、肺ガンに比べると発症率は低いのですが、5年生存率は8%台で年約3万8千人(2020年)が亡くなり、臓器別のガン死者数では男性で4位、女性で3位を占めています。

早期発見が難しい他、ガン細胞が「塊」となって膨張するのではなく、周囲の組織に入り込む「浸潤」で広がり転移しやすくなっています。重い膵ガンでは細胞の膜にあるRECKタンパク質が少ないことが知られていたが、仕組みはよく分かっていませんでした。

研究チームは、膵臓の細胞だけRECKタンパク質を作らないように遺伝子操作したマウスを作成したところ、膵ガンの発症率が5倍程度に増え、肝臓への転移も6割以上で起きることを見出しました。

このマウスでは細胞同士の接着に必要な分子が大幅に減り、ガン細胞同士がくっつかずにバラバラになって浸潤しやすくなっており、RECKタンパク質が膵ガンの発症や転移を抑制していることが分かりました。

この研究はまだマウスでの結果ですが、ヒトでも同様の現象が起きている可能性は高く、RECKタンパク質自身が治療薬となることや、このタンパク質を増やす薬剤の開発が望まれているようです。

これは膵ガン自身を治すわけではありませんが、転移しやすいガンを抑える方法として、期待できそうな気がします。

医薬品の副作用とはならない「副作用」その2

2023-09-29 10:32:31 | 
前回は副作用ではなく、研究の進め方で終わってしまいましたのでその続きです。当時は病気に関与する酵素を特定し、その酵素を阻害するなどして症状を抑えるという方法が主流でした。

ここでは時々出していますが、ACE阻害剤という血圧を下げる薬を例に挙げます。ACEはアンジオテンシン変換酵素の略ですが、これを阻害することによって血管収縮作用のあるアンジオテンシンという化合物を作らせないようして血圧を下げる薬です。

この薬は非常に効果が高く、高血圧の治療には欠かせない薬となっています。アンジオテンシンは、例えば急に寒い目に合ったり、恐ろしいことがあると急激に血管が収縮して、いわゆる「鳥肌」が出る作用があります。

それ以外にも血管を収縮させることもあるようで、この物質を作らせなくすると血圧が下がり、副作用も重篤なものはなく非常に使いやすい薬剤として知られています。ですからこの薬を服用しても、日常生活には全く問題がなく、血圧が下がるという理想的な医薬品となっています。

しかし若干の問題があり、この薬を長期服用するとだんだん効かなくなってしまうのです。通常はこの段階で違うメカニズムの薬に変えることによって対処しています。

この効かなくなる原因も分かっており、ヒトの身体はこのACEという酵素を通らないルートで、アンジオテンシンを作り始めてしまうためとされています。

私はこのアンジオテンシンの詳細な生理作用についてはよく分かりませんが、かなり重要な働きをするヒトにとって必須の化合物のような気がします。そのため通常の合成ルートが阻害されてしまうと、別な合成ルートを見つけアンジオテンシンを作るようになるのではないかと考えています。

患者はACE阻害剤を服用することによって、自覚できるような不調は出ないのですが、何らかの不都合が起きているのではないかと思われます。ヒトの身体は微妙な調整によって恒常性が維持され、健康な状態が保たれています。

この調整役となる重要な化合物を作らせなくすることは、自覚できないとしても何らかの問題が発生しており、これが「見えない副作用」ではないかと思っています。

このようにある程度長期的に服用すると効かなくなるクスリはかなり多く、たとえば高コレステロール治療薬のメバロチンなどがその例です。

生活習慣病といわれる症状は、薬を長期間、場合によっては一生飲み続けるわけですが、これで本当に「見えない副作用」が出ないのかは大いに疑わしいと思っています。

医薬品の副作用とはならない「副作用」

2023-09-28 10:38:09 | 
私は長年新薬の研究をしてきましたが、その研究方法も色々変化していました。その最たるものが、作った化合物に効果があるかどうかを調べるアッセイ法です。

初期のころは、ターゲットとなる病気・症状のマウスを作り、それに投与して効果があるかどうかを見る動物実験でした。この場合投与量が分かりませんので、たとえば10mg、50mg、100mgといったように3点ぐらい取るのが普通でした。

つまり化合物1つに3匹のマウスが必要になり、場合によってはこの3匹の血液検査も必要になるのです。これは手間も時間も大変な作業になり、一般的に新薬開発の確率は1万分の1といわれています。

これは臨床試験なども含めた数ですので、実際は1000個程度で候補化合物が見つかることは多いです。この方法は評価実験が大変なだけでなく、私のように合成する側にも大きな負担が出てきます。

先ほどの例でいえば、合成する化合物は500mg程度必要になってしまいます。こういった候補化合物は10工程程度かかり、収率よく合成する検討はしませんので全工程の収率は1%程度となってしまいます。

すると10化合物作るには、共通の出発原料は500g程度必要となりますが、この量は実験室としては最大量となります。つまりかなり頻繁に原料からの同じ反応が必要となるわけです。こういったことから簡単な方法で1次スクリーニングができるように研究が進みました。

その結果ターゲットにする病気や症状の原因となる酵素が発見されてきました。こういった酵素に対して阻害活性があれば、その病気や症状に効果が出ることが期待できるわけです。

これで1次スクリーニングは、酵素を阻害するかどうかを試験管内で調べる方法に変わり、短時間で少量で簡単に測定できるようになりました。合成する量も構造決定と保存用を含めても、50mg以下で十分足りるようになり、研究は一気に加速しました。

我々が合成したサンプルはすべて一定量保存しており、新たな病気や症状のターゲットが決まると、その関連酵素の阻害活性がないかを必ず調べていました。しかし私が知る限り、この保存サンプルから阻害活性があるものが見つかったことはありませんでした。

こういった研究には研究員の「こういった酵素にはこの構造が良い」といった考えでスタートしますが、こういった研究員のイメージが重要なのかもしれません。

ここでは見つかった医薬品の作用について述べるつもりが、研究の進め方になってしまいましたので、次回に続きます。

増える成人喘息、吸入薬が発達

2023-09-27 10:38:44 | 健康・医療
もう十数年も前の話ですが、朝晩の咳に悩まされて呼吸器科を受診し、気管支喘息と診断されました。

身近なところでは母や従妹が喘息に悩まされており、その発作の様子など見ていましたが、それとは明らかに違っていましたがその診断を受け入れ吸入薬を使っています。

その後タバコを紙巻きタバコから加熱式に変えたところ、この咳が完全に止まってしまいました。悩まされた咳はどうもタバコのせいだったような気がしますが、その後肺気腫になりかかっているという診断があり、吸入薬も両方に有効なものに変わりました。

現在全く咳は出ていないのですが、その吸入薬は時々使っています。喘息は気道が炎症で狭くなることにより、息苦しくなったり咳が止まらなくなったりする病気です。呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音が伴う喘鳴が起きることがあります。

2003年の厚生労働省による全国調査では、過去1年に症状があったのは15〜64歳の6%でしたが、2012年の研究報告では20〜44歳の14%としています。ほかにも増加傾向を示す調査が複数公表されています。

日本アレルギー学会の診療ガイドラインによると、喘息は「個体」と「環境」それぞれの要因が互いに影響し合うことによって発症します。個体の要因は、遺伝やアレルギー体質、成人ならば肥満などがあります。

環境の要因として大きいのが、ダニやペットなどアレルギーを引き起こす原因物質「アレルゲン」への暴露です。多くの患者がアレルギーの抗体がつくられているため、暴露によって気道に炎症が起きやすくなります。

帝京大学によると、成人喘息は1)幼少期に発症してそのまま継続、2)思春期に改善して成人期に再発、3)成人期に初めて発症、の3パターンがあり、どの年代で発症してもおかしくないようです。

治療は吸入ステロイドを使い、不十分なら気管支拡張剤を追加します。症状が重ければ生物学的製剤を使い、全身への副作用が出ることがある経口ステロイド薬は、現在は使用を極力避けています。

最近の吸入薬は効果の持続時間が長くなり、8割の人が1日1回の吸入で症状をコントロールできるようになりました。症状が出てほしくないのが深夜なら寝る前に、日中なら朝に吸入するのは良いとしています。

治療目標は、自覚症状や発作(憎悪)がなく、呼吸機能も安定化した「臨床的寛解」と呼ばれる状態です。このように吸入薬などの発達により、喘息も安全にコントロールできる時代になったといえそうです。

ジャニーズ性加害問題が重大な人権問題となったのか

2023-09-26 10:33:35 | 時事
 このところ色々なメディアでジャニー喜多川氏の性加害問題が大きく取り上げられています。

私はジャニーズタレントの誰かのファンでもありませんので、いわば第三者として見ていますが、色々と違和感をもっています。

この問題(事件)は亡くなったジャニー氏が所属する若いタレントたちに性的な暴行を加えていたのに、彼が絶大な権力を持っていたため、それを知っていた事務所やマスコミなどのメディアも知らん顔をしていたという理解で良いのでしょうか。

実際数年前その被害者が声を上げたようですが、それを取り上げるメディアは全くなくいわば無視されてしまったのかもしれません。それでもこの事件の犯人が亡くなってから被害者たちが公表し、それを報道するという事はおかしな気がします。

被害者が男性であっても、性的暴力を振るわれたのはれっきとした犯罪でしょう。しかし加害者である犯人が亡くなっている場合どうなるのか、法律に詳しくないためよく分かりませんが警察も動かないような気もします。

加害者が亡くなっているこの時期に、被害者の団体は何を訴えているのでしょうか。もう犯人は謝罪できませんので、例えば賠償金などを請求するのであれば、加害者の所属団体であるジャニーズ事務所ではなく、遺産の相続人に行うのが筋のような気がします。

現在の報道の主眼は、こういった事件を見逃してきたジャニーズ事務所や、それを報道してこなかったメディアに向けられているようです。しかしこの事件に目をつぶってしまったジャニーズ事務所を非難すべきでしょうか。

創業者であり絶大な権力を持つ上司に、部下が自分の地位やポジションを失うかもしれないのに対処できるとは思えません。確かに未成年男子への性加害という事件を軽く見ていたのかもしれませんし、それで人権問題といったことが出ているのでしょう。

この件が大きく取り上げられるのは、多くの有名タレントを輩出していることが原因です。そうであれば現在活躍しているタレントが、この事務所から脱退してしまえば簡単に解決できそうですが、現実的には難しいのかもしれません。

被害者の方たちは、いまさら何をという感じもするのですが、やはり一番守るべき人たちでしょう。この問題が長引けば、被害者にも迷惑がかかる可能性もあり、一刻も早い鎮静化が必要なのではないでしょうか。

なおジャニーズタレントをCMに積極的に起用する企業があれば、私はその企業を応援します。