ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

毒蛇ハブの毒の酵素で認知症原因物質を分解

2023-11-29 09:50:28 | 
最近アルツハイマー病の原因物質を除去する薬が承認され、新し治療法として期待が持たれています。

東北大学の研究グループが、毒蛇のハブが持つ毒素から精製したタンパク質分解酵素が、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドベータを分解することを発見しました。

人間のある種の酵素がアミロイドベータを分解することは知られていましたが、生物の毒素も効果的だと分かったのは初めてです。これはアルツハイマー病の新たな治療法の開発につながることが期待されます。

東北大学の研究グループは、ハブ毒から金属イオンとタンパク質との相互作用を利用し、蛇毒メタロプロテアーゼというタンパク質分解酵素を分離・精製しました。ハブは2018年に九州大学などのグループが全ゲノム解読に成功しています。

ハブ毒は11種類のメタロプロテアーゼを含む多くの成分によって構成され、「タンパク質のカクテル」といわれています。メタロプロテアーゼの働きによって、ハブに嚙まれた人は内出血や血液凝固を起こすことが分かっています。

研究グループは、人間の体内の酵素がアミロイドベータを分解していることに着目し、この酵素と構造が似ていて共通の祖先から進化したと考えられる、9種類の蛇毒メタロプロテアーゼを取り出しました。

9種類の蛇毒メタロプロテアーゼが混ざった「カクテル」を、アミロイドベータを分泌する細胞に作用させました。その結果アミロイドベータだけを切断して、無害なアミノ酸が結合したペプチドに分解する様子が観察されました。

ヒト培養細胞からのアミロイドベータの産生が大幅に低下したことも確認されました。9種類の蛇毒メタロプロテアーゼはカクテルのため、効果を発揮した種類が特定できていません。今後どの成分が効いたのかを検証していきたいとしています。

この研究はまだ基礎段階ですので、今後動物実験などで実際に脳内のアミロイドベータが減少するかなどの実験が必要ですが、期待が持てる成果といえるのかもしれません。ただし蛇毒の毒素ですので、どんな副作用があるかなどの詳しい検証も必要でしょう。

ハブ毒は研究室内でDNAを増幅するPCR法や人工遺伝子によって作り出すことができるので、この研究が進めばアルツハイマー病の治療薬に応用できる可能性はあるようです。