フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

ようやく終わりました!

2008年11月30日 | BL小説「遠い伝言―message―」
 ようやく打ち終わりました・・・。これでCDに保存できます(笑)
 この話を書いたのは2002年のこと。もう6年経ったのか!・・・でも、それ以来オリジナルはちゃんとエンドマークつけたの書いていない・・・。2、3年前に「書きかけのオリジナルを終わらせる」という新年の抱負をブログに書いたような気がするが・・・気のせいにしておこう。
 10代の頃からちまちまとオリジナル、パロディとも書いておりましたが、自分の代表作(自信作)をあげろと言われればやはりこれ!と思っております。(次がエスカフローネのパロだなー)しかし、書き始めた動機が「年下攻めが好きだーっ!でもショタも好きなんだーっ!」という腐った嗜好だったとか、テスのモデルは実は「江○川コ○ン」だったとか言ったら、いい話(←自分で言うか!)が台無しですな!(いや、あそこまでチビこくないよ・・・私の下限は小学6年生ですから!・・・などと書くと、またnao.ちゃんから「十二分に犯罪です!」と突っ込まれるんだろーなー
 今読み返すと、思っていたよりエドがヘタレで驚く・・・。そして目まいがするほど楽天家だ・・・。それはアメリカ~ンだから!(←アメリカ人に対する偏見です)だからエドはアメリカ人という設定なの!(←某BL新人賞に応募したとき、「主人公が米国人でなくてもよいのでは」と評されたことを根に持っている・・・。あん?フィンランド人にした方がいいってのか?一応北欧系アメリカ人という設定だ!・・・要するに日本人にしろってことか・・・
 それはともかく、ちょっとだけ反応ほしいなーと思っておりますので、コメントでなくとも直メールで結構ですので「最後まで読んでやったぜ!」でも「長くてちーともエロに突入しないから途中で挫折した」でも構いません、一言くださいませ。「哀れな悪魔・・・じゃない、腐女子に魂の救済を!」つーわけで、よろしくお願い致します
 

『遠い伝言―message―』 18(最終回)

2008年11月30日 | BL小説「遠い伝言―message―」

 傍らの気配とぬくもりの喪失に目を覚ます。真っ暗でほとんど何も見えない。衣擦れの音だけが聞こえた。
「テス……?」
「……起きたのか」
 窓の木戸を閉め忘れていたので、月の光で窓がぼんやり四角い形に暗闇の中に浮き上がっていた。そのかすかな光でかろうじて人影が見える。
「……すっかり眠り込んでしまったみたいだね。もう夜……?」
「それほど遅くはない。が、夕食は食べそこねてしまったな」
「いいよ……とにかく眠くて……」
 まぶたが重く、またとろとろと眠りかける。
「少し出てくる。お前は寝ていろ」
「ん……」
 パタン、と戸の閉まる音をエドは夢うつつに聞いた。しかし、まどろみの途中、階段を踏み外した落下のショックで覚醒した。飛び起きて夢だとわかっても、リアルな感覚に心臓が激しく打っている。
 もう一度寝直そうと目を閉じたが、今ので眠気は吹っ飛んでしまった。動悸もなかなかおさまらない。テスが戻ってきたら、抱きしめて気持ちよく眠れるのに、などと考える。
 そう思って待っていたが、なかなかテスが戻ってくる気配はなかった。もしかしたら体を洗っているのかもしれないと思いつき、自分も汗を流そうと起き上がった。
 電気などないこの世界では、人々の就寝は早い。それでもテスが言ったとおり、まだ廊下にはランプがぽつぽつ灯され、部屋には人が起きている気配があった。
 風呂場には誰もいなかった。どこへ行ったのだろうと屋敷内をうろついてみたが、どこにもいない。首を捻りながら、まさか散歩とか、と渡り廊下から外へ出る。
 屋敷は川と崖の中間の、傾斜地に建っているため、川やその近くの畑や家々が眺められる。その畑の中の道を、光が揺れながら動いていくのが見えた。家々の閉ざされた窓からわずかに明かりが洩れている。人々は寝る前のひとときを過ごしているのだろう。こんな時間にはめったな用事でもなければ出歩くものはいない。
(まさか、テス?)
 半信半疑で、エドはその光を追った。夜風は冷たく、体がぶるっと震えた。マントを持ってくればよかったと思ったが、今更面倒だった。
 灯りは持っていなくとも、月に照らされた砂の道は白く、夜目にもよく見える。光は時々家や木立に遮られたが、見失うことはなかった。
 それは谷の中心部を通り過ぎ、さらに川の上流へと向かっていた。その先は聖地しかない。エドは、姿はまだ見えなかったが、それがテスだと確信した。だが、何のために聖地に向かっているのだろう?
 エドが崖下にたどり着いたときには、とっくに光は穴の中へ入っていた。真っ暗に口を開けた中をのぞきこむと、遠くに小さくランプの光が見えた。
 奥に向かって叫んでみたが、川の轟音にかき消されて届いた様子はなかった。仕方なく、穴の壁にしっかりと手をつけて、中に入っていった。
 昼でも夜でも真っ暗なことに変わりはないが、灯りを持たずに入るのはなんとも心細く、恐怖感を増すものだった。昼間一度来て、壁沿いは浅く危険はないとわかっていても、流れが足を浸すとそのまま足をさらわれ激流に呑み込まれるのではないかという恐怖に捕らえられる。テスはもう聖地に着いたらしく、見えなかった。
 聖地の中には、月光が射し込んでいた。壁面に白い光が映り、昼間とは違う表情を見せている。テスの姿はなかった。エドはさらに奥の岩穴に足を踏み入れた。
 足元に置いたランプに照らされて、テスが立っていた。
「……テス?」
 テスは背を向けたまま、
「なぜ来た?」
「君が戻ってこないから、探して追ってきただけだよ。君こそ、こんな時間にどうしてここに?」
「……確かめに来た」
「何を?」
 エドは、彼の横に並んだ。地下水路が見える穴の際に。
 テスは足元を見つめて微動だにしない。
 静かだった。川の音も遠い。穴の中は真っ暗で、何も見えない。──何も。
「お前の世界へ戻る道が、開いている」
「………」
「感じないか?お前の気も、この中へ引き込まれている」
「……別に、何も……」
「相変わらず、鈍いな」
 テスはくす、と笑った。
「わたしの感情は、ちゃんと感じてくれるのに」
「それは、君だから……」
 エドは頬を赤らめた。
「君の気持ちを知りたいから」
「……」
 テスは彼に向き直った。両手を上に差し伸べる。エドは腰をかがめて彼の背中を抱いて、口づけた。唇を離したときテスはひどく哀しげな瞳をしていたように見えたが、彼はすぐエドの胸に顔を埋めてしまってそれを確かめることはできなかった。
「……時至れば、道が示される……」
「え?」
 エドはテスの呟きがよく聞き取れず聞き返したが、テスは答えなかった。
「……本当に、帰らなくてもいいのか?もう…二度と、この道は開かないかもしれないんだぞ……?」
「帰らない。……今まで、たくさんのことを後悔した。これからも何度だって後悔するだろう。だけど死ぬとき、これでよかったんだって……俺の人生は、そんな数え切れない後悔があっても、それでもこれでよかったと思えれば、それでいいんだ」
「……そうか。……そうだな」
 テスは顔を上げた。彼の黒い瞳がわずかな光を反射して、強い光を放った。
「……わたし、テリアス・エルサイス・ローディアスは、エドワード・ジョハンセンを愛している。永遠に……たとえ……どれほど遠く離れようと……」
「……!?」
 何が起こったのか理解できなかった。仰向けにバランスを崩し、とっさに体をひねって手をつこうとしたが、そこに地面はなかった。光の見えない闇の中に落ちていく。すさまじい落下感。
「I love you……!」
 遠い叫びが聞こえたと思ったとき、彼はそれきり意識を失った。



 

 パリはすっかり冬模様だった。昨日の朝もTシャツにジョギングパンツで公園を5周した身としては、信じられない寒さだった。まだ10月だというのに、人々はウールのコートにマフラーをしている。
 エアポートバスから降りたエドワードは、慌ててボストンバッグから上着を出してシャツの上に着た。衿の中に入ってしまった束ねた髪を、無造作に引っ張り上げる。
 リヨン駅から郊外へ1時間ほどの小さな町で下車し、地図を片手に歩き始める。途中道を尋ねながらたどり着いたのは、小学校だった。夕闇迫る校庭には生徒の姿はない。もうとうに生徒は帰った時刻だった。明かりが点いているのは職員室だけだ。
 彼は守衛に来意を告げて、応接室に通された。
 間もなく、扉がノックされた。エドワードは立ち上がって、待っていた相手を迎えた。入ってきたのは口ひげも巻き毛もごま塩になった初老の、よく太った、人の良さそうな男性だった。
「おお……!あなたが、ジョハンセンさん……!」
「ルコントさん…」
 彼らは初対面だったが、互いに感動して固い握手を交わした。
「お招き、本当にありがとうございます。何とお礼申し上げてよいか…」
「いやいや、こんなところまでやって来させて、こちらこそ申し訳ない。年のせいか飛行機に長く乗るのは体にこたえてね。あなたも長旅で疲れておいででしょう。私の家までもう少し辛抱してください。では行きましょうか」
 ルコントは、小学校の校長を務めるかたわら、詩やこども向けの小説を書いているらしい。エドワードは1冊だけ読んだことがある。1か月前、突然大学に送られてきた国際小包の中身が、彼の詩集だった。中には3つの抒情詩と、1つの叙事詩が収められていた。その叙事詩を読んで、彼は驚いた。詩は、異国に迷い込んだ青年と、異国の王女の冒険と悲恋を描いたもので、題材としてはやや陳腐だが、言葉や表現の巧みさでなかなか格調高く仕上がっていた。だが彼を驚かせたのは内容ではなく、そこに使われていた固有名詞だった。
 王女の名はテス。彼女の祖国はローディア。青年と王女が出会った場所はヴォガ、旅する国々はリベラとミュルディア、とまるでエドワードたちの足跡をたどるようだった。もう一度、その詩の冒頭の献辞を読み直した。詩を読む前には意味を持たなかったそれ。「黒い瞳の美しき王兄へ」。同封されていた手紙には短く、「あなたが私の探しているエドワード・ジョハンセンならば、至急連絡を乞う」
 エドワードはすぐに手紙を書いた。あなたもあの世界に行き、テリアス王子──あなたが会ったときには彼の弟レジオンが王位に就いていたと思われるが──と会ったのか、と。それに対する返答は、書き添えたEメールアドレス宛てに来た。YES──ルコントのメールには、続けて驚くべき事実が打たれていた──私があの世界へ行ったのは、もう20年も前のことだが──。
 よくよく見れば、その詩集の発行日は15年前で、紙も黄ばみがかっていた。
 ルコントはさらに長いメールを送ってきた。20年前、迷い込んだあの世界でテリアスに会ったこと、そして彼が30年前出逢ったという「エドワード・ジョハンセン」への伝言を頼まれたこと、戻ってからすぐに「カリフォルニア大学の卒業生」「考古学関係者」の中にその名前がないかと数年にわたって探し続けたが、全く見つからなかったこと。それでも折に触れ、その名を気にかけて探し、そしてとうとう、インターネットのカリフォルニア大学のホームページ上の、博士論文一覧の中に彼の名を見つけたこと……。
「あまりに時が経ち過ぎていたので、99%別人だと思った」が、こちらの時間と向こうの時間法則がずれているかもしれないという望みを託し、試しに本を送ってみたのだという。20年前、ルコントが55歳のテスと会ったとき、エドワードはまだ5歳だったのだ。見つかるはずがない。
 小学校から10分くらい歩いたところに、ルコントの古い、ツタの絡まる家はあった。溌剌としてよく笑う、こちらも少々ぽっちゃりの夫人に温かく歓迎された。居間には暖炉まであり、今も屋根裏のような狭い下宿暮らしのエドワードにとっては、夢のように居心地のいい家だった。
 話は夕食後にゆっくり、と言うルコントを、早く聞きたいのでと押し切り、荷物を客用寝室に置くなりすぐに彼は居間に戻った。
「……本当に、自分と同じあの信じられない体験をした人に巡り会えるなんて、思ってもみなかったよ」
「私もです。…そういう人間は何人もいたのだと向こうで聞かされてはいましたが、まさかこちらで出会うことができるなんて」
 夫人はコーヒーと菓子を運んでくると、ルコントの横に座った。
「妻には話してある。なにしろ当時、私は半年も行方不明になっていて、妻や家族には大きな心配をかけてしまった。私が向こうで過ごしたのは20日間だけだったというのに」
「私のときは……4か月は経ったはずなのに、戻ってみたら1日しか経っていませんでした」
 エドワードは思い出す。発掘現場の崖下で目が覚めたのは、夜が白み始めた頃だった。あの世界に通じていた岩の割れ目など跡形もなく、ショックで茫然と座り込んでいた彼を、起き出してきた先輩たちが発見した。昼にいなくなって、夜になっても戻ってこないから、その日は町へ戻って捜索隊を依頼しに行くつもりだったそうだ。彼の服装や日焼けした肌、伸びた髪を不思議がられ追求されたが、覚えていないで押し通した。覚えていないのではなく言いたくないのだと彼らにもわかったのだろう。理屈のつかない現象を彼も他の人々も説明できる術はなく、1日だけの行方不明ということで大事にもならなかったので、それはうやむやにされた。
 下宿へ戻ってから1か月は、心は麻痺して淡々とバイトと講義とレポートをこなしていた。じわじわと「二度と会えない」「最愛の人を失った」ということが現実だと実感されてきた次の1か月間は、毎夜泣き暮らした。涙が減り、埋めようのない喪失感を受け入れ、その空虚さに慣れて再び考古学に本気で取り組み始めたときには、帰還から半年近くが過ぎていた。
 あれから5年──たった5年しか経っていないのだ。今でも思う。あのとき、どうしてテスを追いかけてしまったのだろう。あのまま眠ってしまえば、テスにあんな選択をさせずに済んだのに。この世界で生きる未来を失っても、テスのいる世界で生きる未来を失うことはなかったのに──
「……あなたは、テリアスに直に会われたそうですが……どうしてそのような機会を得られたのですか?」
「私は幸運にも、ローディアのある町に出現したのですよ。いったいどうなったんだとパニックしている私を町の人が役所へ連れて行ってくれて、あとはとんとん拍子に王宮へ招かれました。役所には、私のような者が現れたら全面的に助力し、帰れるように支援するよう徹底されているそうです。役人たちも本当にその命令が実行されることがあるとは思っていなかったと驚いていましたよ」
 ルコントはにこにこと笑った。
「それで……テリアスは」
 エドワードは答えを怖れながらも聞かずにはいられなかった。
「あなたが会われたテリアスは……どんな方でしたか……?あの詩には美しい、と献辞がされていましたが……」
「ええ、国王の兄だと聞かされていたので、お会いしたときには国王の息子の間違いじゃないかと思いましたよ。国王は肖像画では壮年でいらしたのに、その兄がせいぜい20代、下手をすると10代でも通るような青年だというのですからね」
「20代の青年?幼い少年ではなく?」
 エドワードの勢いに、ルコントは小さな茶色の目を丸くした。
「そうです。長い髪を水色のリボンで1つに束ねて、少女のように大きな瞳が印象的な、穏やかな口調と物腰の青年でした。彼は特殊な体質の一族の出身で、30年前時からずっとその姿のままだと言っていました」
 30年前、とエドワードは心の中で呟いた。俺と別れてから……すぐ?誰が?誰と?レジオンと?
 彼は胸の痛みを、うつむいた影の中に隠した。
「それから彼は、30年前に、私と同じように異世界から来たエドワードという青年と出会い、旅をして…恋に落ちたことを話してくれました。彼は、向こうに戻ると言ったあなたを、あの穴に突き落としたそうですね」
「ええ……別れを告げることさえできなかった……」
 ルコントは優しい目で彼を見つめた。
「私は彼から、もしあなたに会えたら伝えてほしいと頼まれたことがあります。私が聞きとった内容ですので、正確な言葉ではないかもしれませんが、その時書き留めたメモをそのまま持ち帰ることができました。読み上げてよろしいですか?」
「……お願いします……」
 エドワードはうなずいた。
 ルコントは、今でも白さを保つ、透かしの入った美しい紙を広げた。
「──『エド、この伝言がお前に届いたならば、わたしの望みは叶ったか、かないつつあるということだろう。伝言を託したルコント殿の住むところとお前の住むカリフォルニアは、この大陸の端から端までの倍以上離れているという。わたしの知っていることだけでお前を探し出すのは難しいだろう。しかし、お前が自分の道を歩み続けているならば、不可能ではないと思う。』
 ……私は、生きている限り、あなたをきっと探し続けるとテリアス殿に約束しましたよ。学生名簿は学校が存続する限り残るので、アメリカへ行く機会があれば探せるだろうし、あなたが……考古学者になれば学会の会員にもなるだろうし、論文が雑誌に載るだろうし、そうなれば見つけ出せると思いましたのでね。
 ……『わたしは、お前の夢をかなえてほしかった。お前の世界でしかかなえられない夢であり、お前が自分の世界で果たすべき役割だと思う。わたしも、自分のなすべきことは王族としてローディアの繁栄のため、この大陸全体の安定と発展のために尽くすことだと思っている。この世界に生きる限り、放棄することは許されないわたしの使命だ。それは、この身と心を、国民と国と国王に捧げるということでもある。だからわたしにはお前と共に行くか、お前だけを帰すかの選択肢しかなかった。
 わたしの裏切りがどれほどお前を傷つけたか考えると、許してくれとは言えない。わたしも自分の選択を死ぬほど後悔した。今でも後悔している。だが、間違っていたとは思わない。
 お前は覚えているだろうか。ただ一度、わたしたちの心が溶け合った瞬間を。あの経験が、わたしを年相応の姿まで成長させた。残念ながらそこで止まってしまった原因が、中途半端な交感だったからか、わたしの体質のせいなのかはわからない。
 わたしはすべてをレジオンに話した。それでも彼はわたしを許してくれ、わたしは彼に敬愛と忠誠を捧げている。彼とローディアに捧げられているのは、心の半分だけだが。なぜならわたしの心の半分はお前のもので、お前と共に行ってしまったからだ。
 今でもわたしはお前を、エドワード・ジョハンセンを愛している。
 心よりお前の幸福を願う。テリアス・エルサイス・ローディアス』……彼の直筆の署名です」
 夫人は頬に涙を伝わらせ、両手で鼻を押さえていた。ルコントの目もうるんでいる。
「これはあなたに差し上げましょう」
 ルコントは封筒ごと便箋を彼に渡した。フランス語の少々癖のある字の下に、まだ覚えているむこうの世界の文字。署名なので崩してはあるが、確かにテリアスの正式名が記されていた。
「テス……」
 堪えきれない涙で視界がぼやけ、エドワードは便箋を濡らさぬよう胸に抱いた。
 長い髪を水色のリボンでしばっていたという。テスが贈ってくれた水色のひもは、こちらへ戻ってきたときズボンのポケットに入っていたのを見つけた。それは着ていた服とともに大切に保管してある。自分にとってあのひもがテスとの忘れられない恋の形見であるように、テスにとってもまた、変わらぬ愛の証だったのだ。
 見知らぬ世界で彼を救い、導き、教えてくれたテスが、今また教えてくれる。そばにいて、愛情を与えあい、幸福に浸ることだけが愛することではない。だから間違えずに、自分自身の道を行け、と。
 胸の空虚な穴は埋まることはないだろう。一生後悔し続けるだろう。それらを抱えたまま、自分がこの世界に生まれた意味を確かなものにしていく。それが、テスの示してくれた深い想いに応えるただ一つの方法だった。
「……ありがとうございます、ルコントさん……本当に、感謝します……」
 ありがとう、テス──エドは祈るように胸の奥で囁いた──俺を、俺の未来を信じてくれてありがとう。
 もう君はどこにも存在していないかもしれないけど、今も、これからも、君を愛している。


                                        end


『遠い伝言―message―』 17

2008年11月24日 | BL小説「遠い伝言―message―」
注意!!これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。


 * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 



 族長の屋敷に戻ると、夫人が彼らを出迎えた。
「お帰りなさい。お昼の用意はしてありますけれど、先に砂を落とした方がよろしいわ」
「…族長殿は?」
「村会議に行っております。何かご用事でも?」
「いえ、出かけておられるならいいんです」
 ふたりは砂まみれの体を洗い、軽い食事をとって部屋に戻った。
 まだ濡れている髪を縛っていたひもを解き、タオルで拭き直すエドに、テスは「わたしがやってやる」と言い出した。ベッドに腰かけたエドの後ろにまわり、ひと房ひと房丁寧に水気を取りながら、彼は「金髪の羊がいたら、こんな感じかな」と笑った。「せめて巻き毛の麦の穂と言ってくれよ」とエドは苦笑を返した。
「……テス、昨日聞きそびれたけど」
「なんだ?」
「族長殿と、話はできたのか?」
「……ああ。…予想通りの答えだったがな」
「君の、体のこと?」
「ああ。こうなったのと同じ早さで元に戻すことはできない。再び齢をとるには……一族に与えられた条件と同じだろうと」
 テスの声には落胆も、苦悩も含まれなかった。
「それって……」
 エドは少し頬を熱くして口ごもった。
「本当に心から愛しあうってこと?」
「ああ」
 テスの手が髪から離れ、彼はエドの横に座った。
「……いつか、俺たちそうなれるかな……?」
「…お前は、わたしが大人の姿の方がいいか?」
 真剣な目で問われ、エドは考えてから答えた。
「俺が好きになったのは今の君だから、昔の君がいいとか比較はできないよ。君が苦しむのがいやだから、元に戻れるものならその方がいいとは思うけど……戻ろうと思って戻れるものじゃないんだから、焦ることはないよ。もちろん、君を変える男になりたいとは思っているけれど」
「族長は、体質によっては変化を経験しないまま一生を終える者もいれば、たとえ相手とどれほど心が通じていようが、変化できない者もいると言っていた。世間で信じられているほど、一族の体質は確実なものではないとも……。だとすれば、わたしも一生この姿のままかもしれない」
 テスはエドを見上げた。睦言というにはあまりにも真剣な表情で。
「それでも、いいか?」
「いいよ、テス」
 エドは彼の背に腕をまわした。
「君が好きだ。君がいくつでも、どんな姿でも」
 軽く、テスの唇をついばむ。
「……わたしもだ、エドワード……I love you……」
 エドが驚いてまじまじと見つめると、テスは頬を染めた。
「わたしの発音、おかしいか?」
「全然……。とてもきれいだ。嬉しいよ、テス……テリアス」
 言い直したのは、出会ってすぐにテスが「特別な場合を除いて姓を名乗る習慣はない」と言ったことを思い出したからだった。テスが今までエドを愛称以外で呼ぼうとしなかったのに、初めて今日、「エドワード」と呼んだのも、たぶん同じような意味なのだろう。「特別な場合」──「特別な関係」になったという。
 テスは自ら服を脱ぎ始めた。エドもすべて脱ぎ捨て、彼らはベッドに横たわって抱き合った。乾いた素肌が触れ合う心地良さに、どちらからともなく甘いため息が洩れる。
「……不思議だな。旅の間に川とかで一緒に水浴びして、君の裸は何度も見ているのに、今日ばかりはすごくどきどきして…興奮してる」
「…わたしはいつも、お前の視線が気になって仕方なかったぞ。お前はわたしのことをこどもだと思って、遠慮なしに見ていただろう」
 胸にテスの息がかかってくすぐったかったが、エドのそれが硬度を増したのはそのせいではなかった。
「…そんな前から俺のこと意識してた?」
「ばか。そういう意味じゃ……」
 エドを振り仰いで抗議しかけたテスは、口をつぐんで彼の胸に顔を伏せた。
「……そうかもしれない。最初にお前が気を失っているのを見つけたとき、こんなに優しくて強くて、きれいな気の人間は見たことがないと思った。お前が目覚めて、わたしを見上げたとき……お前がとても……きれいな金の髪と薄い色の瞳をしているのに気づいた……」
「その割には、ずいぶん乱暴な起こし方だったよ」
 エドは嬉しくて、テスをぎゅっと抱きしめた。
「仕方ないだろう。お前に直に触れるのが怖かったんだ」
 くぐもった返事が胸の中から返った。
「お前の気に触れてしまったら、自分がどうかなってしまいそうな気がしたんだ……」
「……!」
 小さな音をたてて胸に触れた感触に、エドは息を呑んだ。彼の胸に口づけたテスは、そのまま舌を這わせ、場所を移してまた肌を吸ってキスをする。
「テ…ス……」
 腕が緩むとテスは体を起こし、エドを仰向けに押し倒した上に乗った。
「テ……」
「じっとしていろ」
 テスはエドの胸に跡を残しながら唇を滑らせ、てのひらで彼の肌をたどっていく。テスの幼い姿とは裏腹の行為に、エドは背徳的な快感を覚えて思わず目を閉じた。だが、
「テス…!だめだ」
 自分のそれが濡れたものに包まれるのを感じて、エドは飛び起きた。彼のものを口に含んだテスの顔を上げさせる。テスは眉をひそめた。
「…お前がさっきしたことではないか」
「だめだよ。俺は君には…誰にも跪いてほしくないんだ。たとえ俺に対しても。君のお父上は除いてね」
 こちらでも同じ意味を持つのかどうかわからなかったが、エドは崇拝の気持ちをこめてテスの手をとり甲に接吻した。ところが、その手を逆にテスに摑まれ、手首にキスをされた。
「……では、お前が跪くのはわたしにだけだ」
 テスに引き寄せられるまま、エドは口づけて横たわった彼の上に体を重ねた。
 テスの髪の先から爪先まであますところなく触れ、舐めて、吸い上げる。「声を聞きたい」と言うとテスは、噛み殺していた声を手で塞ぐのをやめた。我慢できずに上げた彼の喘ぎは、エドの欲望をたまらなく刺激した。
 うつぶせた背筋を舐め上げると、背中が波打った。その下へと視線を動かすと、細く引き締まった彼の体の中で、頬のほかには唯一柔らかな線を描く、白い2つの丘がある。その間の深い影の奥に、さきほどは触れることも見ることもしなかった場所がある。
「……テス、少し恥ずかしいことするけど、我慢して」
「……いちいち言うな……っ」
 かすれた声で返されて、エドは笑みを洩らした。テスの片膝を曲げさせて、谷間を空気にさらさせる。左手の中指を口に入れて湿らせ、それだけでは足りないかと自分のものの先端のぬめりを指先に塗りつけた。
 くぼんだそこに指で触れても、テスは一度肩を揺らしただけで、枕に顔を埋めてじっとしていた。
 ゆっくりと、引くことなくテスの中へ指を挿し入れていく。痛みを与えないように、抵抗する壁を無理に開かず、呑み込むのを待ちながら。
 最初の関門をくぐると、急に指先に伝わる抵抗がなくなった。エドは驚いて動きを止めた。
「……エド……?」
 いつまでも動かないエドに、テスが困惑した声で呼びかける。
「……こんなに」
 エドは怯えたようにテスを見た。
「こんなに柔らかいなんて、思わなかった。ふわふわで、毛足の長い絨緞に包まれているみたいで……下手なことをしたら傷つけてしまいそうで……怖い」
「……」
「君がだんだん慣れてくれたら、それとも成長したら、ここに、俺のを入れて、1つに繋がりたいと思っていたけれど、指どころか……俺のなんか入れたら、ひどいけがをさせてしまいそうだ……」
「……エド」
 体をひねった苦しい姿勢で、テスは精一杯振り返ってエドの腕に触れた。
「わたしも、そうしたいと思っている。そんなに怖がらなくていい。それほど人の体というのは繊細じゃない」
 彼は笑おうとして、あ、と声を上げて枕に突っ伏した。エドはその理由を自分の指に与えられた強い締めつけで知った。慌てて抜こうとしたが抵抗に躊躇する。
「……抜かなくていい…!……大丈夫……初めてじゃないからコツはわかっている。もっと……奥まで……」
 テスは不自由な体勢でエドの手首を?み、導いた。
 エドの指をぴったりと押し包んでいる柔らかな粘膜は、まるで喉が食物を嚥下するように指を奥へと呑み込んでいく。途中で狭い場所があったが、そこに道を作るとあとは難なく付け根まで入った。
 テスは手を離し、緊張を解いて大きく息を吐いた。
「…テス、大丈夫?」
「平気だ……」
 エドは気をつけて自分も横になり、片腕をテスの腰の下にまわして背後から抱きしめた。
「んっ……」
 テスの前をさすってやりながら、指を少しだけ抜き差しする。それだけでも自分の無骨な指が入口に強い摩擦を与えているのを感じて、慎重にならざるを得ない。
 乱れるテスの息づかいに、エドの息も荒くなる。
「……いい、エド……っ」
 腕の中で、若木のような体がしなり、彼の胸に後頭部を押しつけた。なのに、後ろを犯している手を、テスは止めさせた。
「テス?」
「やっぱり……お前のが欲しい……」
 目元を手で隠し、テスはせっぱつまった泣きそうな声で言った。
「……でも、テス……」
「香油を塗れば……」
 香油は、いわゆるハーブオイルのようなものだ。もちろんマッサージや芳香剤にも使うが、こちらでは主に冬に体が濡れて冷えるのを防ぐために漁師が体に塗ったり、沙漠を旅するときに肌の乾燥を防ぐために使われている。実際エドも、ここへ来る旅で、肌が乾燥に慣れるまでの最初の2、3日、頬の皮膚がぼろぼろに剥けてしまったので塗っていた。
「レジーとも……いつも使っていたから……」
「それでも体が小さい分、きついかもしれないよ?」
 答えながらも、エドはこの柔らかいテスの中に自分を打ち込みたい欲望が膨らんでいくのを自覚していた。それはたぶん、テスも感じているだろう。
「……痛くてもいい……」
 テスの声も、欲望にうわずっていた。
「お願いだ……」
 これ以上、エドも自制を続けることはできなかった。
 瓶の香油を自分のものに塗り、テスの入口の壁にも塗りつける。先程と同じ横向きの姿勢がいちばん楽だろうと、折り曲げさせた彼の脚に自分の脚を添えて、腰を引き寄せた。
 テスの狭い器官は、油の助けでエドのものを受け入れていった。さすがに指のときよりも時間がかかった上に、テスが痛みを訴えるときにはエドも苦痛を味わわなければならなかった。
 体勢的にすべてというわけはなかったが、ふたりの腰が密着するぐらい奥までエドのものは収まった。
「痛くない?」
「ああ……」
 テスの中は、呼吸やちょっとした拍子に微妙に締めつけてきて、女性とは全く違う快感をエドにもたらした。激しい動きは無理そうだったし、そんなことをしなくても十分に悦かったので、軽く突きながら揺さぶるだけにする。
「うん……んっ、んっ…」
 動きにあわせて、テスの喉から声が押し出される。
「テス……すごくいいよ……」
「……わ…たしも……っ、だめだ、もう……!」
 かつて体験したことのない強烈な締めつけがエドを襲った。血が止まるんじゃないかと思うくらい強すぎて、快感を通り越して最初は痛みしかわからなかった。収縮の波が何度か訪れて、悲鳴を押し殺したらしいテスの長い呻きが聞こえ、彼が自分に貫かれながらいったのだと実感した。
 外に押し出そうと痙攣する動きとは逆に、内部はエドのものに隙間なく吸いついて離れない。抜き出そうとしてそのことに気づいたときには、テスの抗議が上がっていた。
「動くな…!……力を緩められないんだ。抜かなくていいから、そのまま続けてくれ……」
「……だけど、つらそうだよ」
 エドはテスの濡れたまつげを指でぬぐった。
「無理に抜かれる方が痛い。じきにおさまるから、心配するな」
 言葉とは裏腹に、絶頂の余韻に震えてうわずった声で気丈に答えるテスがけなげでいとおしくて、力一杯抱きしめて口づけたかったが、どちらもできなかったので、まわした腕に力をこめた。
「……エド、続けてかまわないんだぞ?」
 テスが囁く。
「ああ。…でもその前に、君の顔を見て、キスをしたい」
 テスは、自分の腹にあてられたエドの手に、自分の手を重ねた。
「わたしもだ……」
 テスが少し落ちついてから一旦体を離し、仰向いたテスの中に、エドは再び押し入った。
「ああ……エド……」
 体を倒したエドの髪が、テスの顔にかかる。ふたりは互いの背に腕をまわし、情熱的なキスを交わした。身長差のせいで、そのままでは動けないので、仕方なく口づけを解いてテスを胸に抱きこむようにした。
 小刻みに腰を入れ、時に円を描き、テスの快感と同時に自分の快楽を追う。エドの胸にテスの熱い息が当たっていた。それに泣いているような声が交じり、ふたりの間で押し潰されていたテスのものも、硬さを取り戻す。
 エドが欲望の階をのぼりつめるまでに、長くはかからなかった。その兆しを感じて奥を突いたところで動きを止め、テスの深いところに欲望を解放する。自分の精を受け入れてもらった満足感が体を満たしていくとき、テスも達し、なおも絞り出されるようにすべてを放出し尽くした。テスは、胸の下で泣いていた。
「……つらかった?」
「そう…じゃないことぐらい、わかれよ……っ」
 テスは両手で顔を覆って激しく泣き出した。おろおろとエドは彼を胸に抱きしめて、泣き止むのを待った。
 やがて、静かになった胸の中からテスの声が聞こえてきた。
「……離してくれ」
 わかった、とエドは体を起こして、慎重にテスの中から自身を抜き出し、毛布を引き上げて彼の横に寝転んだ。手だけは彼の腕に触れさせて。
「……都に戻ったら」
 テスは寝返りをうってエドに体を寄せ、彼の胸にてのひらを乗せた。
「レジオンにはすべてを話すつもりだ。お前を愛していること……お前と寝たことも」
「テス……」
「彼に隠しておくのは、卑怯だ。わたしは彼に、もう隠しごとはしない」
 テスのてのひらから、切ないほどの幸福感と、哀しみと不安、そして静かな決意が伝わってくる。どうして彼は哀しいのだろう、とエドは思った。さっきも──彼が愛を告げたときも、喜びよりも哀しみを表した。不安ならばエドにもある。この先後悔しないとは言えない。いやきっと、後悔するだろう。けれど向こうに戻ったところで、死ぬほど後悔するだろう。こんなにも愛した人を、愛してくれた人を置いてきたことを。愛する人もなく、自分の夢をかなえたところで、いったいそれに何の意味があるだろう?
「ああ。きっとその方がいいよ。……お父上がおっしゃってくださったように、王家を離れるつもりなのか?」
「……」
 手をそっと離し、テスは仰向けになって天井を見つめた。
「……最初、必ず戻ってこいとおっしゃっていた陛下が、最後には戻るか戻らないか選んでもよいと言われた。戻らないというのは、都や王家に戻らないというだけの意味じゃない……。わたしが……お前について行く…お前の世界へ行くという選択肢もあるということだ」
 エドは驚いてテスの横顔を見つめた。そんなことは一度も思いつかなかった。一瞬その選択もあったか、と興奮しかけたが、すぐにその困難さに思い至った。
「だがそれはできない」
 エドが口を開く前に、テスが冷徹に言った。
「お前の話を聞いて断片的にだが多少は、お前の世界がここより技術も知識も制度も進んでいることは理解しているつもりだ。我々の世界には、少数でしかないネルヴァ族やお前のような存在を受け入れる余地がある。悪く言えば何もかもまだまだいいかげんだから、わたしのようなこどもが各国を渡り歩き、金を稼いで生きていくこともできるし、野盗が勝手に住みつくこともできる。しかし、お前の世界では、いつまでもこどもの姿のままの人間や、どこで生まれたどういう人間なのか証明できない人間は存在を許されない。違うか?」
「……いや」
 国籍はともかく、齢をとらないのはごまかしきれない。一生アメリカ中を転々としなければならないだろう。
「陛下はご存知でなかったからそう仰せられたのだろう。そうでもしない限りわたしが……」
「テス?」
 テスはその先を言わなかった。言いたくないことを言わせる気はなかったし、テスも言わないとわかっていたので、エドは追求しなかった。それに、疲れのせいで強烈な眠気を感じて意識が朦朧とし始めていた。エドは、そのまま眠りに引き込まれてしまった。

どうでしょう・・・

2008年11月24日 | オタクな日々
 コ○ケ開場10分前に、財布の中に1万円しかないことに気がついて、慌てふためいてATMを探すものの見つからず、パニックになる夢を見た幸田です・・・。ちゃんと前日までに銀行で十分下ろしておかなくては。
 コ○ケ前になると「スペースがジャンル順に並んでいなくて目当てサークルが見つからない」とか、「どこかでやっているのに会場が広すぎて、どこでやっているかわからない」とか、ろくな夢を見ません。夢の中までオタクですな。
 さて、とうとうBL小説のHシーンに突入してしまいましたが、大丈夫でしょうか・・・。ワタクシ的にはまだ全然ぬるいんですけど・・・15禁ですらないと思うんですけど・・・本じゃなくてネット上だととてつもなくヤバく感じるのはなぜでしょう・・・。一応うっかり別のことを検索してたどりついてしまった方のために警告は載せておりますが・・・今のところ何も言われていないので大丈夫かな・・・?今からさらに濃厚なHシーンをアップするので、ドキドキです。
 私信。Sへ。君は日記以外は読むんじゃないぞ!ほぼパンピーの友人に自分のエロ小説を読まれるなんて恥だわ・・・頼むよ!娘さんには・・・うーん、どうせ同人読んでるんなら、漫画と違って直接的ではないので、まあいいか・・・。でも、オリジナルだから読んでないよねー?
 今日アップして、次回11月30日で最終回です。いったい誰が読んでくれているのかいないのか、反応がないのでさっぱりわかりませんが・・・せめて最終回では「読んでました」くらいコメント入れていただけるとありがたいです・・・

ゴダイゴのコンサートに行ってきました

2008年11月23日 | 極めて日常茶飯事

 今週、ゴダイゴのコンサートに行ってきた。再活動を始めて、オリジナルメンバーでのツアーを名古屋でもやるというので、現役(?)のファンだった頃にも行ったことがなかったコンサートだが、今なら行けるなあ、と思ったのだ。
 さすがに来場者の年齢層は高めだが、結構若い子もいた。うーむ、何でゴダイゴを聞こうと思ったのか・・・。EX○LEがカバーして歌っているので知ったのか??
 そもそも私が最初にゴダイゴを知ったのは、『ハウス』というホラー映画(わたなべまさこが漫画化してます。ん?漫画が先だったのか?あ、なんと大林宣彦監督だ・・・)の音楽からだ。というか、映画を観た時点では誰が作曲したかなんて知らなかったが、そのテーマ曲がすごく印象的で、耳に残っていて、後にゴダイゴが『モンキー・マジック』でブレイクしてから、ミッキー吉野が作曲していたと知ったわけだ。
 ステージから遠いので、あまり年とったなあ、とは感じなかった。ミッキーは相変わらず帽子をかぶっているし。タケが高音を出しづらそうだったのがやっぱり年月を感じさせたけど。(若い頃も高音苦手だったけどね!)
 1曲目は知らない曲だったが、あとは全部知っている自分がちょっとマニアックでイヤンだ・・・。2曲目は曲名が思い出せない・・・(老化現象)『キタキツネ物語』から4曲歌って、懐かしかった。一緒に歌う私も歌詞があやしかったが、タケも間違えてたな(笑)
 あとは『男たちの旅路』のテーマ曲とか『Sprinter liftback』とか『Holy&Bright』『Thank you,Baby』、おまちかねの『Monkey Magic』(例のクモの糸をぱーっと飛ばすのもやってくれたよー)『Beautiful  Name』、アンコールで『銀河鉄道999』『君は恋のチェリー』あと1曲なんだっけ・・・『Beautiful  Name』がアンコールだったっけ??忘れっぽいなあ。まだ洩らしたのがあるかもしれない
 しかし!私がゴダイゴで一番好きな曲、『Dead End』はやってくれなかったよーこの曲はマジで名曲なんだがなあ・・・。導入部のミッキーのソロピアノがすっごくいいんですよー!このメロディ、コード、たまらん・・・と思いつつ、実はLPレコードしか持っていないので、もう20年くらい聴いてない・・・。CDで買い直すのも悔しいしさ!
 兄がレコードをCDに直すようにレコードプレイヤーを貸してくれたが、「ソフトは自分で探してダウンロードしろ」と言われたのと、ニャンコがいるためにレコードをかけられない!(CDしか見たことがない若い方は意味がわからんだろーが、レコードはちょっとの振動が命取りなのだよ・・・)というわけで、未だ作り直していない・・・。もうこの際、CD買っちまった方が楽だ・・・と易きに流れるこのめんどくさがりな性格も問題・・・。だが、金の使い道には優先順位というものがあって、過去のレコードの買い直しはとても下の方なのだ・・・。ダウンロードなら安いって?旧人類でコレクター傾向のある私は、「CD」という形がないデータなんぞに金を払う気にならんのだ!!困ったもんだ・・・。


『遠い伝言―message―』 16

2008年11月23日 | BL小説「遠い伝言―message―」

注意!!これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。


 * * * * * * * * * * * * * * * * *
 



 翌日は朝食が済むなりエドは屋敷を出て、興味津々のこどもたちに村を案内してもらったり遊んだり、畑仕事にいそしむ村人に頼み込んで手伝わせてもらったりして、一日中テスと顔を合わせるのを避けていた。夜も、テスの物言いたげな視線に気づかぬ振りをして、ベッドに入って狸寝入りを決め込んだ。
 その次の日は、ビュイスたちが帰っていく日だった。エドとテスは、村人たちとともに崖下の登り口まで彼らを見送った。三々五々散っていく村人に交じって戻ろうとすると、族長が近寄ってきて耳打ちした。
「今から聖地へご案内します。ついていらしてください」
 村を抜け、川上の崖に近づくと、まだ風化していない崩れ落ちた岩がごろごろと転がっていた。そこを乗り越えて川が流れ出てくる大きな浸食穴にたどり着くと、若者が1人待っていた。
「ご苦労だった」
「お気をつけて行ってください」
 族長は青年が用意していたランプを1つずつ彼らに渡した。
「……わたしも、行ってよいのか?聖域だと言っていたが…」
 明るい陽光の下では点いているのかいないのかわからないランプに目を落とし、テスが呟いた。族長は笑った。
「一族以外にはその存在を口外しない掟はありますが、一族の者が入ることを禁じているわけではありません。ただ、近づきにくい場所ですので、村人がわざわざ訪れることがないだけです。行ってみたところで、地下水を見ることができるだけで何の変哲もない場所ですし」
「そうか……」
 テスはあまり気が進まない様子だった。正直言えば、エドも気が重かった。行きたくないとすら思った。
 水量が多いときはおそらく穴の幅いっぱいに川が流れ、水位も上がるのだろう、砂利だらけの穴の端を、転ばないように族長の背中を頼りに歩いていく。穴の中は水の音が反響し、風が吹きつけてくる。剥き出しのろうそくなどではすぐ消されてしまうだろう。
 ところどころ洞窟の端を水が洗い、足首まで水に浸かって歩かねばならなかった。奥へ行くにつれ入口からの光は届かなくなり、轟々という音や闇に取り囲まれ、閉所恐怖症ではないエドも、ここを1人で歩くのはとても耐えられないだろうと思った。村人が近づかないのも当然だ。行く手にランプ以外の光が見えたときは、心底ほっとした。
 光は、上から川面を照らしていた。彼らは岸に上がった。そこは見上げるとぽっかり丸い穴が開いていたが、内部の空間は逆すり鉢状になっていて、ちょっとした広間のようになっていた。周囲の赤みを帯びた黄色の砂岩の壁は、上部は崩れた痕がごつごつと残っていたが、膝辺りから下は水の浸食を受けてなめらかで、地面にはさらさらとした砂が溜まっていた。
「雨季にはここまで水が上がってきます。その水の一部は、この奥の穴から下の水流に流れ込むのでしょう」
 洞窟の奥の壁に、割れ目が黒々と口を開けていた。ちょうど人が1人通れるほどのそれを見たとき、エドは既視感に襲われた。
「……入ってみますか?」
「え、ええ」
 促されるまま、エドは穴に近づいていく。青褪めたテスが彼を凝視しているのにも気づかずに。
「足元をよく照らして、気をつけてください」
 穴の外から族長が声をかける。
 中は真っ暗で、ランプの光がなければ伸ばした手の先も見えないほどだった。
「……水音は、聞こえますか」
 はるか後ろから聞こえてきた声に、ぼうっとしながら答える。
「はい……ああ、でも川の音が耳についてよくわかりません……」
 そう答えた途端、どうどうと流れる水音が不意に大きくなった。
 足元で、何かが光った。ランプを差し出し、目を凝らす。光ったのは、足元に開いた穴から見える、すさまじい激流の水しぶきだった。
「……すごい……」
 呟いた自分の声も、その音にかき消される。暗いせいですぐ下を流れているように見えるが、実際には水面まで5、6メートルはありそうだ。穴は大人でも跳び越せないほど大きく、これ以上奥へ行くのは無理だ。すると、水音が止むというのはこの穴のことに違いない。しかし、この圧倒的な流れが止まることなどあり得るだろうか?
 彼はよく見ようと、足を進めかけた。
「……エド!」
 急に後ろへ引っぱられ、驚く。振り返ると、テスが立っていた。彼の必死な表情を、不思議に思う。エドを引き戻したのは、彼のシャツの裾を?んだテスの手だった。
「……あ、危ないと思って……わたしは……」
 エドは理解した。テスが彼を、「行くな」と止めたことを。
「テス、待ってくれ!」
 テスはもう踵を返して入口に向かっていた。外へ出ると、明るさに目がくらんだ。ランプを置いて手をかざし、テスの姿を探す。彼は背を向け、広間の中央に立っていた。
「エドワード殿?」
 族長がふたりの様子に不審げに声をかけるが、耳に入らない。
 エドは、拳を握りしめた。
「俺は、ここにいたら君に迷惑をかけてしまうから、帰らなくちゃいけないと思っていた。そうするのがいちばんいいんだと思っていた。だけど…だめだ、俺は……ここに残る。愛してるんだ、テス!君がほしい!」
「………!」
 ゆっくりと、テスは振り向いた。体ごと。その目から静かに涙が流れ落ちた。くいしばった口元以外には感情を出さずに。
「……エドワード……」
 天井から降り注ぐ光が、テスの髪と頬と瞳を金色に染めていた。足元にはくっきりと影が落ちて、エドの目には彼しか映らなかった。彼が、「それ」だと思った。
 ───と出会え。
 そんなものはないと思っていた。そんなものに人間は縛られてなんかいないと思って生きてきた。それに、「彼」はそんな陳腐な言葉で言っていいような存在じゃない。たった一人の、ただひとりの───。なのに、そうとしか言えなかった。
 ───お前の運命と出会え。
 テスが、彼を見つめている。
「お前が……そう言ってくれるのを、ずっと待っていた気がする……」
 彼は哀しい微笑を浮かべた。切なくて、はかなくて、抱きしめずにはいられないような。
 テスの両手が上がるのと同時に駆け出していた。テスが、彼の胸に飛び込んできた。求める腕がエドの首に巻きつき、自ら引き寄せる。
「エド、愛して…んっ……あ…してる……っ、エド……」
 何度も、言葉を綴ろうとする唇をふさぎ、向きを変え、舌を絡め、喘ぎしか洩らせなくなった口を奥まで蹂躙する。
 激しい口づけに夢中のふたりを残して、族長はそっと川へ戻っていった。
 砂の上に膝をつき、互いの背をまさぐり、髪をかき乱す。押しつけあった互いの体の変化を感じる。
「……テス…、触ってもいい……?」
 テスは荒い息をつきながらうなずいた。エドは彼の下穿きを膝まで引き下ろし、露わになった幼い、けれど硬く突き出したそれに指をからめた。テスは真っ赤な顔をうつむけて、両手でエドの肩につかまっていたが、震える肢では支えきれず、次第に腰を落とし座り込んでしまった。
「エ…エド、もう放してくれ……」
 エドは手を引いたが、それは彼の背を支えて横たわらせるためだった。そうして片脚ずつ下穿きを脱がせてしまい、開かせた脚の間に膝をつく。
「……!よせ、エド…っ」
 股間に顔を寄せた彼は、その先端を軽く口に含んで、すぐ離した。
「こうするのは、君たちの禁忌に触れる?」
「……そんなことは……ないと思うが、でも……」
「いや?…俺はしたいけど」
 エドは、安心させようと笑ってみせ、そっと、下の果実を手ですくった。テスが息を詰める。
「俺……同性とは初めてだし、同性趣味もないと思うけど……今まで、どの女性に対しても、その人をかわいいとか愛しいとは思っても、ここそのものにそう感じたことはなかった。それは単なる……快感を得るための場所だとしか思わなかった。なのに……君のこれは、とても可愛らしくて、愛しくて、だからキスしたいし、かわいがりたくてたまらない。だめかな?」
「……おれはこどもだからな。どこもかしこも」
 拗ねた目で睨まれ、彼は苦笑した。
「25の君でも、同じようにできると誓えるよ。たぶん、今の君の体に対してみたいに、こんなことしていいんだろうかとか、ためらわない分、遠慮なしにね」
 エドは痛々しいようなそれをすっぽりと口に含み、舌で愛撫した。とっさに口をふさいだ手の下から、テスがこらえきれない声を洩らす。両脚が硬直する様子に胸が痛まないわけではなかったが、それよりもテスのそこを慈しみ尽くしたい欲望の方が勝った。青い茎に舌を這わせ、まだ熟す前の実を揉みしだき、吸い上げ、甘噛みする。
「んっ──……、ああ……」
 腰が浮くほどテスの背が反り返った。エドの口の中にあったそれからは何も出はしなかったが、それでもテスが彼の愛撫で達したことはわかった。
 手で顔を覆ってしまっているテスの髪を撫で、シャツの裾から手を入れて、激しく上下する白い腹から胸をそっとさすった。
「テス……?」
「……」
 テスは、汗と涙で濡れた顔をのぞかせた。
「……こんな恥ずかしいことをされたのは初めてだぞ……」
「ごめん。でも、もっと恥ずかしいことをするかも……」
 絶句して、テスは小さくため息をついた。
「……お前が、おとなしげに見えても実は自分の意思を押し通す頑固者だってことは、よく知っている……」
 彼は体を起こし、膝立ちでエドにキスをした。
「……テス?」
 きついので前をくつろげていたエドの下腹に、テスが触れてきた。彼はもちろん、テスの息も再び速くなっていく。
「エド……どうしたい……?」
 耳まで赤く染めて、テスがかすれ声で言った。
 自分がどうしたいのかは、エドにはわかっていた。ただ今のテスの体にそんな行為はとても無理に思われた。
「もう一度…そこに寝て」
 少し不安な瞳をしたテスの上に体を重ね、片腕で背を抱いて口づけた。緩く開いた脚を自分の脚ではさみ、閉じさせる。
 熱く脈打つものを太腿に感じたテスは、意図を察して自ら膝に力を入れた。
 最初はゆっくりとそれを、テスの閉じた脚の抵抗を受けながら後ろまで貫き、引き抜いてはまた押し込む。その動きを繰り返し、次第に速め、円を描くような動きを加える。
 エドの反り返ったそれは不意にテスの双丘の間を擦り上げ、入口をかすめ、その手前の皮膚の薄い部分を突く。そのたびにもどかしい快感を与えられたテスは、くいしばった歯の間から声を洩らす。
 荒い息を喉で堰き止め、エドは自分の中で生まれた激しい流れを迸らせた。熱いしぶきがテスの脚を濡らした。
 テスを潰さないよう、かろうじて両肘で上体を支えたエドは、弾む息の下から「ごめん」と呟いた。
「……いちいち謝るな」
 テスは、彼の頬を両手ではさんで引き寄せた。
「忘れるな……お前にされることはなんでも、わたしにとって喜びだということを……」
「テス……」
 ふたりは唇を重ね、快楽の余韻に身を浸した。だが、エドが半ば立ち上がったテスのものに触れようとすると、テスは彼の胸を押しのけた。
「いいかげんに戻らないと。族長にも置いていかれたし。……さぞかし呆れられたことだろう」
「でもテス、そのままじゃ…」
「ばか。お互いきりがないだろう」
 彼はエドの下から抜け出し、起き上がった。
「髪も服の中も砂だらけだ」
 彼は体をはたき、砂で汚れをこすり落とした。それが自分のせいだと思ってエドは赤くなりながら、服を直した。
「行くぞ」
 身支度を整えたテスは、ランプを拾ってもと来た洞窟の中に入って行った。続いてエドが暗い影の中に足を踏み入れるとそこに、テスが待っていた。片手を差し出して。照れ隠しに、怒ったような顔をして。
 エドはその手を握った。先に立って、意地になったように振り返らずにテスはどんどん歩いていく。行きはあれほど不安で恐ろしい感じがした暗闇も轟音も、足を濡らす速い流れも、少しも気にならなかった。長かったはずの道のりも、あっという間に出口にたどり着いてしまった。


『遠い伝言―message―』 15

2008年11月15日 | BL小説「遠い伝言―message―」

 2人はテスの前まで来ると、両膝を折って深く頭を垂れた。
「殿下のご来訪を心より歓迎申し上げます。陛下の親書には使者の方々が帰都されるまでご身分を明かされてはならないとございましたが、ともかくもご挨拶のみでもと参上いたしました」
「…わたしの方こそ、突然このような面倒を持ち込み、心苦しく思っています。どうかお力添えいただきたい」
「私どもでお役に立てるのでしたら喜んでお力になりましょう」
「ありがとうございます、族長殿。……どうかお立ちください。あちらで話しましょう」
 部屋の角には、毛足の長い絨緞が敷かれ、クッションが置いてある。その接客用スペースに彼らを案内し、テスはエドを手招きした。
 4人は向かい合って座った。
 族長の深い皺の刻まれた口元は穏やかだが、若い頃はそうでもなかっただろうと思われた。その力のある目は思慮深く、2人を見つめる。伏目がちに控えている夫人は、言われてみればテスにどことなく面差しが似ていた。テスの祖母としてはとても若い。まだ40代にしか見えず、控えめだが凛とした雰囲気のある美しい女性だった。
「紹介が遅れました。こちらはエドワード・ジョハンセン。…他の世界から迷い込んでしまったため、帰る方法を探しています」
「初めまして。お世話をおかけします」
 と挨拶を返しながら、エドは改めて自分の境遇の奇妙さを認識した。こんな話をあっさり信じる人間がそうそういるとは思えない。すぐに信じた──というよりは、テスがそう判断したのだが、そういう発想ができ、かつ受け入れるテスは、この世界でももとの世界ででも、極めて稀な思考の持ち主なのだと感嘆する。
「……わかります」
 族長は、目を細めてエドを観察して呟いた。
「彼の気は大変特異です。普通の人間が持つものとしては強すぎますし、何というか…この世界全体の気の波長とは違っています」
「わたしにもそう見える。そのおかげで、彼を見つけることができたのだが……」
 テスもエドを見やる。
「……殿下は、一族の血を強く受け継いでおられる」
 テスの顔が強張った。族長は静かに続ける。
「一族の者でも、気を視る能力には差があります。殿下は高い能力をお持ちのようです。体の変化が極端だったのは、一族の血の影響が強すぎたためでしょう」
「……」
 彼は居住まいを正し、目を落とした。
「……ずっと、お訊きしたいと思っていました」
 意を決したように、族長と目を合わせる。
「わたしの存在は、一族の恥ですか。母が…一族の掟を破った罪は、許されないものですか」
「殿下……?」
 横顔の顎が震えていた。
「一族のために差し出された身でありながら、その相手を愛してしまい、一族の誇りを傷つけたと、母は死ぬまで自分を責め続けていました。両親にも許してもらえないだろうと……。わたしが一族の力を受け継いだことも、母にとっては嘆きの対象でした。確かに、今の私のありさまでは、一族からもそれ以外の人々からも、忌避されても仕方がありません。ですが……母は、ただ父を愛してしまっただけです。それは一族にとってどうあっても許されぬ罪なのでしょうか?」
 テスは必死に感情を抑えようとしていたが、最後まで保つことはできなかった。言い終えた途端に彼は、堪え切れずうつむいた。
「許すも許さないも……!」
 悲痛な叫びが夫人の口から迸った。
「愛しい娘が真に人を愛し、愛されたと知って、むしろ喜んでいたのに、どうしてあの子はそんなことを……!」
 彼女は泣き崩れた。その背に手を当てた族長も、苦悩に顔を歪めた。
「……掟は、余計な苦しみを背負って生まれてくる子をなくすためのもの。そして我々のささやかな抵抗の証でもありました。…しかしながら、我々にとって最大の悲劇は、真に愛しあえる相手とめぐり逢えないことです。私たちがセイファを手放したとき、あの子は若すぎて、十分にそのことを教えられないままだった。私たちは、ファビウス殿がセイファの後見人に立ってくださったと聞き、あの子の立場が宮廷で不利にならぬよう差し出たことはするまい、今や妃でありファビウス殿の養女となった娘に、実の親だからと会ったり手紙を出してはいらぬ憶測を呼んで、一族にとっても良くないだろうと我慢することを決めた。……それがあの子を、追いつめていたとは……」
 彼はクッションをはずし、両膝両拳を床についた。
「殿下、我々一族には、セイファと殿下が一族の名誉を傷つけたと思うものは誰一人としておりません。どうかご自身を卑下なさらないでください。我々は殿下がローディアに必要な方として活躍することを期待しております」
「殿下……」
 夫人はスカートの端で涙をぬぐいながら、唇を噛みしめるテスに呼びかけた。
「どんなことがあろうと、あなたは私たちの可愛い孫です。どんなにかお会いしたかったか…抱きしめたかったことか!愛する娘の忘れ形見を、愛さないわけがありましょうか。愛しい大事なテリアス!私にあなたを抱きしめさせてちょうだい……!」
 差し伸べられた腕を前に、テスはためらった。が、夫人の彼を見つめる強い、慈しみに満ちた瞳に、彼の心の堰が切れた。
「……!」
 なおも嗚咽を噛み殺して夫人の膝に顔を埋めたテスを、彼女は優しくその背を撫で、滂沱の涙を流した。
「……ああ、テリアス……かわいそうに。どうか愚かな私たちを許してちょうだい。ずっとひとりで、母親の分まで苦しんできたのね……」
「……おばあさま……」
 抱き起こした彼の頬を両手で包んで、涙に濡れた顔をのぞきこむ。
「……もうちゃんとした大人だとわかってはいるけど、こうして私の胸に抱きしめることができるなんて、こどもの頃にできなかった分を取り戻せるような気がするわ……」
 そう言って彼女はテスをしっかりと抱きしめた。そのふたりを抱きこむように、族長も両腕を彼らの背にまわした。
「すまなかった、テリアス。セイファにも、何の力にもなれず、悔やんでも悔やみきれない。せめてお前には、できる限り力になろう。さあ……ふたりとも、これからのことを話そう」
「……ええ、あなた」
 夫人は名残惜しげに腕を解いた。
 頬をぐい、とこぶしで拭ったテスは、エドを振り返って驚きと困惑をその表情に浮かべた。
「エド……?」
「ご、ごめん、俺ってば……」
 エドは拭いても拭いても溢れてくる涙と格闘していた。当事者でもないのに当事者たち以上に泣いている自分が恥ずかしくて、なんとか止めようと思うのだが、どうしても止まらない。悲しいのではない。その逆で、ほっとして、嬉しくて、テスを力一杯抱きしめて笑いたいような気持ちだった。
「良かった、テス…。俺、嬉しくて……本当に、良かった……」
「エド……ありがとう」
 彼が笑ってみせると、テスも微笑み返した。まだその陰は完全に払拭されてはいなかったけれど。
 彼はつと立ち上がり、タオルを手に戻ってきた。
「これで顔を拭け。袖がぐしょ濡れだ」
「あ、ありがとう」
 こすり過ぎて鼻の頭と目の周りを赤くしたエドは、照れ隠しに顔をタオルで覆った。だが、話が始まらないのでどうしたのかと顔を出すと、テスが彼を見つめていた。
 かつて、これほど熱く、いとしくてたまらないという瞳で彼を見つめてくれた人がいただろうか?
 今まで幾人かの女性とつきあったことがあったが、最初の、ハイスクールでよく授業が一緒になり、親しくなってなんとなくステディな関係になった少女以外は、相手からアプローチされてのことだった。好意は持っていたし欲望も感じたし、自分は情熱的に相手を好きになるタイプではなかったから、お互いに一緒にいるのがいやでない関係であればいいと思っていた。たぶんそのせいでいつも自然消滅してしまった。相手をこんなふうに見つめたことも、見つめたいと思ったこともなかったことは認めるが、相手に見つめられたこともなかった。セックスの最中でさえ、決してなかった。
 視線が合っただけで、心も体も磁石のように彼に吸い寄せられていく気がする。まして見つめられれば、心臓を手で摑まれ、血液さえも混じりあい互いの体を巡っていくような感覚を覚える。
 気づかぬうちに、彼らの距離が縮まっていた。しかしテスは取り上げたタオルで乱暴にエドの顔をぬぐった。
「もう、止まったな?」
 一見したところ不機嫌そうな顔は、内心を隠すためのいつものことだが、それがエドに対してではないことに気づいた。
 族長と夫人が、複雑な表情で彼らを見ていた。強い危惧と懸念がそこに読み取れた。エドは、申し訳ないような肩身の狭い心地がした。自分がテスに相応しくもなければ、プラスにもならない人間だとは、いやというほど承知している。
「……わたしは、母からも誰からも、一族のことを詳しく教わらなかった。母の話や本からの知識だけで……だが、信憑性はあると思った。ネルヴァ族の祖がこの世界以外のどこかから来たという伝説は、一族の特殊な能力から作り出された空想ではなく、そう信じさせる出来事が実際にあったのではないか。記録に残されているわけでもなく、それでも数百年にもわたって伝えられてきたのは、それも遠い昔に一度だけあった…最初にやって来た祖先だけの話ではなく、その後も同じような人々がいたからではないのか。……わたしは彼と出会って、その考えを強めました。外で育ったわたしの知らない、一族の間では当然の、何かがあるのではないかと。…ですから、彼をここへ連れて来たのです。
 族長殿、どうか教えてください。彼を、彼の世界へ帰す手がかりはここに、或いは一族の知識の中にあるのではないですか?」
 なぜネルヴァ族の(最初はその名を知らなかったが)村を訪ねるのかとかつて訊いたとき、テスは母の一族の祖先が他の世界から来たという伝説があると答えた。そのときは手がかりが皆無ではないと知って慰められもしたが、雲を?むような話だと半信半疑どころか八割方あてにせずにいた。だがテスには決して一時しのぎや慰めのつもりなどなかったのだと、エドは初めて知った。
 いつもテスは彼を驚かせる。その考えの深さ、物事を洞察する能力、現実に立ち向かい、乗り越えていく勇気と行動力。彼の本当の年齢を知ったところで、それらへの感嘆と尊敬は変わらない。自分が25歳になったとき、彼のようになれるとは、とても思えなかった。
(俺はほんとうに……いつも、君の考えがわからなくて、ただついて来ただけで、情けない。内心呆れていただろう。俺は君よりも先に帰れないとあきらめてしまって、どんなに歯がゆく思っていただろうね。ごめんよ、テス……君は俺よりも帰れる方法があると信じてくれていたのに……)
「一般に記されている一族についての記述は、ほとんどが推測や伝聞、思い込みや偏見によるもので占められていて、客観的に、学術的に記録されているものはないに等しい。殿下はその中から真実と思われるものを拾い出し、組み立て、推測し、そう思われたと…」
 族長は、テスを見つめて話し始めた。
「この谷は、大陸のほぼ中央にあります。我々にとって聖地として、たとえどこの国の虜囚となろうと、どの土地を放浪していようと、その位置と意味を次の世代へ伝え続けてきました。沙漠の中に隠されたオアシスだからではありません。ここは確かに水に恵まれた場所ではありますが、あまりに他の集落から離れすぎ、かといって一族全員を自給自足で養えるほど広くもない。しかし、ここは我々にとって、この大陸でたった1か所しかない、特別な土地なのです。
 大沙漠の地下には無数の水路が走っています。この谷を流れる川は、その中でも最も大きく豊かなものの1つでしょう。そしてその水量のために岩盤を削り、とうとう上が崩れて地表に露出した。この谷の周囲には、いくつか同じような地形が見られます。ただし、皆とても小さい。中には、地面に井戸くらいの穴が開いていて、暗い底から水音が聞こえるだけのものもあります。地下にはその穴の何十倍の空洞が広がっており、それらはすべて、水路で繋がっています」
 テスは目を伏せて聞き入っている。
「この谷は絶壁に囲まれており、川もその崖に開いた穴から流れ出ていますが、水量の少ないときには穴を通り、隣の空洞へ行くことができます。その空洞の壁にはまた割れ目があり、中へ入っていくと地面に穴が口を開け、更に下層を流れる水脈の流れる音を聞くことができます。だが……その水音が止むときがあります。…いえ、あると、伝え聞いています」
 言葉が途切れた。テスが目を上げる。
「……私の両親も、実際に体験したことはないと申しておりました。父の代には誰も…『故郷』から、エドワード殿の世界から来た者はいなかったからです」
 テスの呼吸が早まった。
「異世界の人間が来たときだけ水音が止まる。それはその穴が異世界につながったことを意味する。そういうことか?」
 族長はうなずく。
「我々の祖先たちが『故郷』からやって来て、何代か後にここを発見し、そしてエドワード殿のように幾人も迷い人が現れては、ある者は残り、ある者は去っていった。長い長い伝承が口伝えられておりますが、今はお話しする必要はないでしょう。けれども『故郷』よりやって来た人々を受け入れ、望むならば聖地へ案内することは、我々の役目です。時至れば、その人の前で水音は止み、帰るべき道が示される。そう聞いています。ただ……それが本当に元の世界への道なのかどうかは、私たちには断言できません。帰っていった者で、再びここへやって来た者は1人もいないのですから」
「……時至れば、道が示される……」
 テスは口の中で呟いた。
 エドは喜びよりも途惑いの方が大きかった。本当に帰る方法が見つかるとは思っていなかった。ここで無理だとはっきりさせて、この世界で生きていくスタートを切るつもりだった。まさか、帰るか残るかの選択を本当にすることになるとは、思ってはいなかったのだ。
「幸い今は乾季で行くことができます。明後日、ビュイス殿たちが出発されたらご案内いたしましょう」
「は、はい。ありがとうございます」
 エドは慌てて答える。ちらりとテスを見ると、彼は暗い表情で床を見つめ、振り向いてはくれなかった。
「すっかり夜も更けてしまいました。今宵はもうお休みいただいた方がよろしいでしょう。殿下、もう1つの件につきましてはまた明日、お話しいたしましょう」
「……すまぬ。そなたの都合のいいときでかまわない」
「かしこまりました。では、お休みなさいませ」
 族長たちは深々と頭を下げた。
 エドは彼らを廊下まで出て見送り、手に提げた手燭の明かりがゆらゆらと角を曲がるのを見届けてから、部屋に戻った。
 テスはもう、寝台にもぐりこんで頭の先しか出していなかった。
「……灯り、消すよ」
「ああ」
 壁のランプとサイドテーブルの燭台の火を消す。窓は板戸を閉めてしまっているので、部屋の中は月明かりも入らない暗闇になり、手探りでベッドに入った。
「……テス、少しいいかい?」
 横になる前に、並んだベッドの方に向かい話しかける。
「……何だ」
「言いそびれてごめん。ここまで連れてきてくれて、ありがとう。本当に帰る方法が見つかるなんて、君のおかげだ。心から感謝してる」
「……まだ確かなわけじゃない。それに、族長も言っていただろう。お前のような者をここへ連れてくるのが、一族の役目だと。だったらおれは、すべきことを果たしただけだ。それにもともとおれはここに来ようとしていたのだし」
「そうだね……君も、お祖父さんお祖母さんと和解できてよかったね。お祖母さまもとても喜んでいらしたし…」
 それに、テスも泣くことができた。父親との対面に続いて2度目の涙。旅の間中、後悔と自責に苦しんで、自分を許す涙を流せなかったテスは、父の許しに涙し、祖父母に彼ら母子に罪はないと告げられ泣いた。そうして彼の負った重荷が減っていくところに立ち会えて、自分は幸福だと思う。たぶん、最後の1つ──レジオンとの行き違い──だけは、見ることはできないだろうが、代わりに彼が喜びの涙を流すところが見られたら、それを流させるのが自分ならばどんなに幸せだろうか。
(俺が……残ると言ったら、君は嬉しい?それとも……迷惑?)
 テスは、今のこどもの自分を愛せるのかとレジオンを突っぱねたが、あれは今の自分でも愛してほしいという気持ちの裏返しかもしれない。テスが自分を愛してくれていることは疑っていない。ただそれでも……レジオンをより愛していて、彼のもとへ戻りたいのではないかとは思う。そうだとしたら、自分が残ったらテスに余計な迷いと苦悩を与えてしまう。
(言えないよな……。残るしかなければ俺がプロポーズしたってテスは断ることができる。だけどテスのために俺が残るなんて言ったら……彼は俺にそんな選択をさせたことにも、レジオンを選ぶことにも罪悪感を持ってしまうだろう。そんなこと……できやしないよ……)
「ああ……おまえのおかげだ……」
「俺は何も……」
 胸が痛い。息が苦しい。エドは毛布を被ってテスに背を向け、体を丸めた。今更ながらに、どうして自分はこんなに愚かなのだろうと思った。
 わかっていたはずなのに。「誰も好きになってはいけない」。絶望的にその事実がのしかかってくる。どんなに好きでも、愛していても、残ることは許されない。
「……エド?」
 どんなに教えられても意識的に他人の感情を読み取ったり、気を視ることも下手だった彼と違い、テスにはこの感情が伝わってしまっているかもしれないが、隠す術などエドは持っていなかった。
「なんでもない。おやすみ」
 本当につらくて絶望にかられたときには涙など出ないということを、エドは知った。テスが夜中に、乾いた瞳で膝をかかえていた姿が目蓋の裏に浮かぶ。元の世界に戻れたなら、きっと自分も毎夜ああするだろう。それでも、テスのそんな姿を見るよりずっといい。
 彼らは、互いの寝息が聞こえてこないのを知りながら、背を向け合って夜明けを待ち続けた。


 * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 あと3回で終わります~!というか、切りにくいので長めに3回に分けるつもりです。次と次は7割方ラブシーンが続くので、やばいなー


気のせいだと思いたい・・・;

2008年11月15日 | 極めて日常茶飯事

 夏の終わりに兄貴から大量に借りた怖い本を少しずつ読み進め、今週ようやく新しい本は読み終わって、さて、「新耳袋」を読み直すかー!とページを開いた夜。BGMはDグレ。数ページ読み進んだところでだんだんと物音が気になり始めた。最初はお湯が沸いたときに湯気が噴き出すときのようなボーッという音だったので、外で工事でもしているか(近所を走る鉄道が夜でも工事をすることがあるので)、車のエンジン音かなんかだと思って無視していた。しかし、ボーッからウォーンみたいな電気音っぽいものに変わり、だんだんその音は大きくなりCDの音も聞き取りにくいくらいになったため、いったいなんだ?!と窓を開けたが、外は静か・・・。あれ?反対側かな?と向かい側の窓を開けても全くそんな音はしない。幹線道路の車の音がかすかに聞こえるくらい。家の中から?しかしどこからするんだ?テレビは消してるし、空気清浄機でも冷蔵庫でもない。どうも上からする・・・。この間作った猫部屋には確かテレビ配線の点検口を設けておいたが、なにか電気に異常でも?と猫トイレの掃除がてら見に行くか・・・と道具を取りに行って戻ってきたら、音はやんだ。
 なんだったんだ、いったい・・・と猫部屋に上がって掃除を始めると、いきなりまたその音が始まった。こんどははっきりと点検口か、それがある壁側(この壁は外に接している)からするのがわかった。しかし、点検口の蓋を開けようとしたらマイナスドライバーがないと開かない仕掛け。仕方ない・・・とまた下に下りている間に音はやんだ。どうにも気味が悪かったが、漏電でもしていたら大変だと思い、開けてみたら・・・テレビの分配器(マンションだと見えるところにないと思うけど、一軒家の人は屋根裏とかにあります・・・)と、猫部屋の電灯用のコンセントしかない。分配器というのはアンテナから拾ったテレビ電波をUHFとVHFとBS(CS)に分けるだけの装置。音の出るような要素は全くない。モーターとか動くものは使ってないんだからあたりまえだが。コンセントだって、音など出ようがない・・・。そのほかにはもう、びっしり張られている断熱材が見えるだけだ。
 私は黙って蓋を閉めた。確かにここからしていた・・・つーか、ここというか壁からしていたというべきか。いったい何だったんだ・・・何か物理的な異常なのかそうじゃないのか(そんな本を読んでいたのでナニカが寄ってきたのか!)わかる現象にしろよ!(それはそれで嫌だが・・・)とその日は本を読むのをやめて寝た。
 それきり夜中にその音がするでもなく過ぎ、翌日会社から帰ってきた私は夜、猫部屋のトイレ掃除をしようと階段の下から見上げて気がついた。・・・開けっ放しのはずの戸が閉まっている。猫部屋は階段を登っていって、もと壁だったところに穴を開けて戸をつけてある。猫が出ないようにするためだ。戸は部屋側に開く。階段側に開いたら私が落ちるからな(笑)つまり階段側からは引いて閉めるのだ。・・・猫がドアノブを引いて閉めるわきゃないな。中にいてうっかり押して閉めたとか・・・?そうしたら閉じ込められるはずだが、どう見ても猫は全部外にいる。・・・可能性としては、まだ小さいウリならリビング側に設けたすきまから抜けられるから、押して閉めちゃったあと、隙間からリビングに飛び降りて出たとか・・・?しかし、もらってきた初日こそパニクってそこから落ちたウリだが、自ら飛び降りるかなあ?床まで3mあるんだが・・・。
 いや、しかしそれ以外考えられない・・・つか、考えたくないわ!ああ、やだやだ・・・と黙っているのもヤなのでこれらの怪現象を兄貴にメールで訴えたら、「部屋に塩盛っておけ。湿ったら換えないと効果ないぞ」と返ってきた。そんなもんが部屋にある方が怖いわ(だいたい、猫が蹴り飛ばして終わりだ・・・


模様替え

2008年11月09日 | 極めて日常茶飯事
 今日、もうこたつを出してしまった・・・。ああ、これで猫も私もこたつから動かなくなる・・・。ただ子猫はこたつを初めて見るせいか、警戒して中に入ろうとしない。ま、もっと寒くなれば入るだろー。
 ついでではないが、カーテンも冬用にチェンジ。メインのカーテンは緑のドレープカーテンに透け感のあるボイルカーテンという二重になっているタイプ。ドレープカーテンだけ、あるいはボイルカーテンだけタッセルで端に寄せるという2通りのアレンジができる・・・その代わり、値段も倍じゃ!ただ、木製ブラインドのある窓につけたら暗くなりすぎるので、昼間はブラインドは上げておくことに。夜は関係ないから防寒のため下ろす。一気に部屋のメインカラーが青から緑に変わったなー。
 それはともかく、はずした大量のカーテンを洗わなければならない・・・。毎日少しずつ洗って朝干して出かけるしかないか・・・。日が暮れるのが早いので、帰ってくるころには湿気ちゃうんじゃないかという気もするが。ふう。

『遠い伝言―message―』 14

2008年11月09日 | BL小説「遠い伝言―message―」

 5日後、ネルヴァ族の長へ宛てた国王の親書を携えた使節の一行に交じり、テスとエドは旅立った。それが公式ではなくあくまで国王の私信扱いであることを示すように、任命式も見送りの行事もない、ひっそりとした出発だった。一行は彼らを除いてたった5名だった。役人が2名、道案内と馬の世話係が1名、食事や身の回りの世話をする者が2名。役人以外は兵士で、護衛を兼ねていた。
 宿に泊まることができたのは最初の3日だけだった。そこから先は大陸の大部分を占める大沙漠地帯で、あとはオアシスと井戸伝いに村を目指す。途中で西に方向を変えればネルヴァ族の村だが、真っ直ぐ北上すればノードン、アーナムにたどり着く。それがローディアと北の国々との交易路でもあった。何年か経つとオアシスなどは枯れたり位置を変えたりするが、それにも関わらずその交易路が確保できているのは、ネルヴァ族の協力によるものだった。
 沙漠だから暑いことは暑いが、予想していたほど酷くはなかった。彼が発掘調査をしていたコロラドとあまり変わりはなく、植物も結構多い。最も暑くなる真昼こそ体力の消耗を防ぐためにテントを張って昼寝をするが、それ以外は日中に移動した。それも地図と磁石があるおかげだろう。
 移動の間はそれぞれの馬に乗っているため内緒話ができないので、夜、あてがわれたテントの中で、ふたりは話をした。
「一族が迫害されたことは話したな。だから彼らはしょっちゅう住処を追われ、ばらばらになり、住むには条件の悪い場所を転々としていた。だが30年前、ローディア王は彼らと協定を結び、自国内での保護を約束する代わりに、交易路の水源の探索と保全を依頼した。もちろん、彼らの能力を知ってのことだ」
 野営となった最初の夜、まだその辺りは草地で、テントの中に寝転がるとかすかに虫の音が聞こえてきた。
「それで、彼らは沙漠に住んでいるんだ」
「ああ。交易路からはずれたオアシスに村を作って住んでいる。ただしその場所は一般の地図には載っていない。おれも機密になっている地図を一度見たことがあるだけだ。今回の出発前に見た以外はな」
 虫の音が聞こえるくらい、彼らは小声で会話した。他の一行には彼らの正体は知らされておらず、「他国で見つかったネルヴァ族の遺児を、一族のもとに送り届ける」という偽の任務が与えられているのだ。
 旅の間、昼間は必要以外の口をきくことができない分、彼らはテントに入ってから寝るまでの時間、今までのように──出会って、ともに旅をし始めた頃のように、エドが質問し、テスが答え、エドがたわいもない話をし、テスはそれに耳を傾けて過ごした。
 1本のろうそくの灯りの中、身を寄せ合って話しながらも、エドが性急なせっぱ詰まった衝動に駆られずに済んだのは、すべては到着してからだという思いがあったからだろう。柔らかな揺れる灯りに照らされたテスの穏やかな表情を見て、なんてきれいなんだろうと見惚れ、これから先のすべての夜が、こんなふうに彼と共にあればいいと願った。
 お互いのこどもの頃の話もした。
 テスが話してくれたのは、モスカーティ家で過ごしたときのことだった。幼い頃から週の半分は、彼の母の親代わりを引き受けていたファビウスの屋敷で、遊び相手のルキスと一緒に勉強したり、武術を習ったりしていた。母の死後は完全にモスカーティ家に住むようになって、ふたりでよく街へ出かけて遊んだ。わずかな小遣いをもらって買い物したり、屋敷では絶対出されないようなものを屋台で飲み食いするのが楽しみだった。しかし15歳になると父の命で公務に就くようになり、めったに王宮を出ることができなくなってしまった……。
「おれは、父や家臣たちの前ではいい子だったから」
 テスはいたずらっぽく笑った。
「ファビウスのところにいたときのように、こっそり抜け出すなんてことは、もちろんしなかったぞ?」
 エドは苦笑した。国王の前での、気品と知性に溢れ、なおかつ少女のようにたおやかな態度と、自分と旅していたときの、ぶっきらぼうで少々足癖の悪い、外見通りの少年の顔との落差を思い返して。
 エドは、養護院での生活や、学校のことを話した。年長の男の子たちとはけんかばかりしていた。一度などは寝ている間に髪をめちゃくちゃに切られ、丸坊主にしなければならなかったこと。中学生のときはちょっとぐれていたが(ぐれる、の意味がテスにうまく伝わらず、説明に苦労した)、考古学に興味を持ってからは必死に勉強して何度か学校で優等賞をもらい、養子の話もまとまったこと。
「お前がけんかっ早かったなんて、今では想像できないな」
「こどもだったんだよ。自分は不幸だと思い込んでいた」
 テスの目が今は?と訊いていた。
「両親や、俺を目の敵にしていた彼らの仕打ちを許せるようになったってことは、今が不幸じゃない証拠だと思うんだ。それどころか、いつも幸運に恵まれていた気さえする」
 父親は少なくとも自分を養護院に連れて行ってくれたし、新しい家族もできたし、好きなものに出会えて、大学では好きなだけ学べるし……と数えていると、テスが彼を見て微笑んでいた。その瞳があまりに優しくて、エドは鼻の奥がつんとなった。
「……も、もう寝ようか?」
 彼はそれをごまかそうとして体を起こして、吊るしたろうそくを吹き消した。
「…そうだな。おやすみ」
「おやすみ、テス」
 本当は、幸運の中にテスと出会えたことが入っていたのだが、それは言わずにおいた。旅の間は、その話題──互いの気持ちや、レジオンのこと──は、お互いに慎重に避けていたからだ。エドにとって人生最大の幸運は、テスと出会ったことだと思っていたが、今はまだ、そう伝えることはできなかった。
 

テスに言わせれば「役人に合わせた牛より遅いペース」で進み、サーランを発って15日目、岩と砂と枯れた草だけの大地の様子が変わった。黄土色の乾いた地面の色は濃くなり、ところどころに生えた草も緑の色を取り戻した。案内の兵は「今日中に着く」と言ったが、地平線まで岩の平野が続くばかりで、何も見えなかった。
「……大規模な水源が近い」
 馬を寄せてきたテスが呟いた。
「見えるの?」
「ああ」
 テスは遠く目をやった。
「しかも、地表に出ている。緩やかな流れと速い流れ……池と川がある。だが……変だな。高さが……地平より低い……?」
 テスの疑問は、日が傾く前に解けた。
 彼らの前に唐突に広がった緑の谷。深い谷底には滔々たる流れがあり、その両岸は青々とした畑と果樹園となっている。川の一部は細い支流に分かれて小さな池に流れ込み、池の上では舟が網を引いている。広大な沙漠を渡って来た目には、まさに別天地と映る豊かな光景だった。
「あそこから降りられそうです」
 地層の露出した崖をジグザグに降りていく細い道があった。小さな荷馬車がやっと通れるほどの幅しかなく、馬の扱いを間違えればたちまち道を踏み外して命を結びつけ、エドの馬に乗り込んで代わりに手綱を握った。
 下から彼らの姿を見つけたらしい人々がわらわらと動き回るのが見えた。その中から1頭の馬が男を乗せて、道を駆け上り始めた。さすがに慣れた様子で馬を操り、彼らが3分の1も降りないところで出会った。
 彼らの先頭の兵は使者を意味する青い帯を結んだローディア候国の旗を掲げている。それと一行を一瞥して、青年は下馬した。
「ローディア候国の方々とお見受けする」
「いかにも。ローディア候王陛下よりネルヴァの族長殿への親書を持参申し上げた。私は内務省地方部のビュイス二等官と申す者。お取次ぎをお願いしたい」
「歓迎いたします、ビュイス殿。私は族長に先触れしてまいりますので、代わりに案内するものを寄こします」
 青年は再び坂道を駆け下りていった。
 一行は、木々に囲まれた族長の館に案内された。物珍しそうにそのあとをこどもたちがついて来る。特にエドの髪は注目の的らしかった。それも無理はない。ここの住民たちに金髪の者は1人も見当たらなかった。そして、確かにテスとの共通の血を感じさせた。黒い髪に黒い大きな目、エキゾティックな、美しい顔立ち。しかし、その中に交じってもおそらく、テスは誰よりも一目を引くだろう。その圧倒的な存在感と美貌で。
 館の前では、族長らしい痩せた老人と、村の主な顔役らしい者たちが待っていた。
 彼らは馬から降りた。ただ1人、ずっと日除けのフードをかぶっていたテスは、ようやくそれをはずした。
 集まった人々の間にざわめきが起こった。その理由に気づいてエドははっとテスを見た。うつむいたままのテスの表情は見えなかった。
 族長の目も、テスに釘付けになっていた。が、それをもぎはなして儀礼的な笑顔を彼らに向けた。
「よくおいでくださいました、ビュイス殿。私が族長のエルサイです。長旅でお疲れでしょう。どうぞおくつろぎください」
「お気遣いありがとうございます。しかしながら、陛下より早急にお返事をいただいて帰るようにとの厳命でございますゆえ、まずは親書をご覧いただきたく存じます」
「それでは早速拝読することにいたしましょう。ともかくお入りください」
 周りの土と同じ色の壁でできた館の内部は、沙漠の中だというのに開口部が大きくとってあり、川からの風が入るようになっていた。よく見れば、夜は閉め切ってしまうらしく、すべての窓や出入口に木の戸が付いていた。それによって砂と冷気の侵入を防ぐのだろう。
 廊下でつながれた各部屋は、廊下よりも一段高くなっており、床には絨緞が敷きつめられ、靴を脱いで上がるようになっている。彼らが通されたのは、様々な会合や宴会に使われるのだろう広い部屋だった。床に置かれた厚いクッションの上にあぐらをかいて座るところが、他の国々との文化の違いを強く感じさせた。
 ビュイスが膝行して両手で捧げ持った書状を、族長は一礼し、受け取った。
 彼は書状を読み終えると、元通りに折り畳んだ。
「陛下よりの御文、しかと承りました。返書は明日中にお渡しできますが、ビュイス殿はいつのお発ちを希望されますか。旅の疲れを癒されてからご出立されたがよろしいかと存じますが…」
「いえ、陛下のご命令ですので、ご返書をいただければすぐにでも」
「では、明日中に食料などを準備いたしますので、明後日でいかがですか」
「かたじけない」
「そちらのおふたりは……」
 エドは顔を上げた。だがテスは、顔を伏せたままだった。族長の目は、まっすぐにテスに注がれていた。
「陛下のお考えに従い、私が責任を持ってお預かりしましょう」
「ありがとうございます」
 ふたりは頭を下げた。
 会見は終わり、彼らは与えられた部屋に入った。夕食前に久しぶりにたっぷりの水を使って体を洗い、髪の中まで入り込んだ砂を落として、新しい服に着替えた。
 歓迎の夕食会には族長夫妻と村の主だった人々が出席し、賑やかではないが終始和やかだった。表向きの主役は内務省の役人2人だったため、村側の出席者は彼らとばかり話していて、無表情に機械的に食事を口に運ぶテスにはらはらしていたエドは、ほっと胸を撫で下ろした。
「……テス、着替えて寝ないの?」
 部屋に戻り、何を食べたかろくに覚えていないなどとため息をつきつつ、夜着に着替えかけたエドは、ベッドの端に腰かけているテスに声をかけた。
「ああ。……族長に、会いに行こうかと思って……でも…」
 エドは、テスがためらっている理由を知っていた。テスの母親は、一族の掟に反して一族以外の者と子をもうけた。その子である自分がこの村に来ることが許されるのか、話をしてもらえるのか、不安なのだ。それでも一縷の望みをかけて、ここまでやって来たのだ。
 エドは、彼の隣りに腰かけた。
「君のお母さんのご両親は、この村にいらっしゃるんだろう?きっと君の味方になってくれると思うよ。孫がかわいくない祖父母なんていないよ……」
「…今日、お前も会っただろう」
 そう言われて、思い当たる人物は1組しかいなかった。
「……族長と、奥方?」
 テスはうなずいた。
 国王からの手紙で、少なくとも族長はテスが孫のテリアス王子だと知ったはずだ。だが、それらしい態度を表すことはなかったように思う。テスが会うのをためらうのも無理はなかった。
「……ばかだな、おれは。はなから覚悟の上のことだったのに」
「テス……」
 ノックの音に、彼らは顔を見合わせた。エドが戸口に近づき、耳を澄ます。
「どなたですか?」
「夜分、大変恐れ入ります。エルサイと妻でございます。是非殿下にお目通りをお願い申し上げます」
 振り返ると、テスは硬い表情でうなずいて立ち上がった。
 エドは、戸を開けた。