フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

伝説を作る女・・・

2009年01月25日 | 極めて日常茶飯事
 かつて、紅茶を飲んでいる最中に寝落ちて、肺に入って溺れ死にかけたとゆーあほな失敗談を会社で披露したワタクシ。このたび失敗談その2を話そうとしたら、まだ聞いていなかったらしい同僚が「第2弾?」と首を傾げたので、他の同僚が「紅茶で溺れかけた伝説だよ」とのたもうた・・・。いつの間にか、会社で語り継がれる伝説になりつつあるらしい・・・。なんてこった
 で、失敗談その2。この頃私は寝言を言うらしいのだが(nao.ちゃんの証言によると、寝ながら怒っていたらしい。何の夢を見ていたのか??)、どうもそれだけではないことが判明。
 ある晩のこと。夢の中で私は汽車に乗っており、トンネルに突入しようとしていた。中はなぜかすでに煙が充満しているらしく、「抜けるまで息を止めろ!」と指示された私は「ええっ?!」と深呼吸する暇もなく息を止めた。1、2、3・・・と数えていくが、1分は軽いはずの私が20くらい数えたところでもう我慢できず、苦しい!と息を吸った。・・・吸ったところで目が覚めた私は、現実にも窒息感が残っていて、はあはあとしばらく息を吸いまくった。
 ・・・え?私、実際に息止めちゃってましたか?この苦しさはどう考えても止めてたときと同じだよな・・・?
 ・・・おいっ、夢と同じ行動とるなよなっ!!死ぬだろーがっ目が覚める前に永眠しかねんわっ。
 というわけで、アホな理由で死にかける伝説、再び。
 同僚たちは、「幸田さんが朝、連絡なく出社してこなかったら、死んでると思ってすぐ駆けつけるわ」と決めてくれたようです。ありがたい・・・のか?もし死にかけてもせめて、セOムの緊急ボタンを押す余裕が残されていてほしいものだ・・・

 話は変わって。結局、Dグレのコミックスを全巻購入してしまった・・・(中古本だけど)。ハマると抑制きかないなー。公式ガイドブックも購入したら、ラビの右目が「ブックマンと戦場をめぐっているときに、戦場で流れ弾に当たった」って書いてあったけど、あーん?違うよね、これ??だってさ、小説では「この右目のせいでブック・マンになることになった」みたいなことが書いてあったし(あったよね?ごめん、1度読んだだけで返しちゃったから(←だって、つまんなかったんだもん・・・って、暴言!!)正確な記述わかんない・・・)、マンガでは「誰も知らない事実を知れる、それだけでオレはブックマンになることを受け入れた」ってあって、最初からブックマンになることは血筋で決まってたっぽいよね?それとか、方舟の中で鍵を探すシーンでは「左目だけなんでメッチャ速っ!ってわけにはいかねえけど」ってセリフがあったし。これ、「右目も使えばもっと速い」としか取れないんですけど?やっぱ、右目になんか秘密あるんじゃないのー?という気がするんですが。(とマンガの伏線をいろいろ予想して、いつもはずされるという苦い経験を『輝夜姫』『デーモン聖典』としてきたので、あまり大きな声では言えないんですけどねー・・・)
 というわけで、流れ弾説は無視だ!私は私の妄想設定貫くぜー!!
 おかげさまで、クロスXラビの妄想とどまらず、今の妄想ネタは「潜入捜査で妓楼に潜入したラビ(もちろん女装)。張見世にいるラビを見つけて指名するクロス(もちろん、焦って断ろうとする店側には「仲間のエクソシストだ」と言って入るけど)」でございます・・・。今までいわゆる同人界でいう「花魁ネタ」には食指が動かなかったんですが・・・どうしちゃったのかな、私?!もうこのカップリングに狂ってるとしか言えないな!まあいいや。人生楽しいからさ

 

創作バトン回答補足・・・

2009年01月17日 | オタクな日々
 創作バトンのQ15、なんかそれだけでもないよな~と考えていたのですが、前に自分でも考えたことがあったので、ちょいと補足。
 自分の書くもののテーマ、というか、ふと気がつくとそういう話になっちゃってるな~と以前思ったことがありまして、それは「使命(大義、義務、信念)のために、自分の愛(恋、感情、自分または愛する相手の命)を犠牲にできるか」ということです。やおいだのBLだのエロだのばっか書いてるくせに、な~に言ってるんだ、と突っ込まれるかもしれませんが・・・。できるかどうかは別として、個人的には「しなきゃいけない」というのが私の考え方だけど、他の人が「すべきでない」と思うことは否定しないし、人としてそっちの方が正しいのかな~とは思います。ただ書くときには「犠牲にする」タイプのキャラを出して、「犠牲にする」と決めたその人の苦悩や痛み、後悔を描いていることが多いような気が。
 Q3の「1番気に入っている作品」で挙げた『月蝕の王』も、考えてみるとそう。征士が「自分の手で」阿羅醐を殺したいと思ったのはもちろん自分が彼を愛し、憐れに思っているからだけど、なぜ「殺そう」と決めたかといえば、読者向けには「彼の魂を救いたい」という理由のようなふりをしながら、私自身は「彼を殺さなければ世界が滅びる」「自分は彼を殺すために生まれ、育てられた」という使命感、義務感が少なからずあったと思って書いてました。
 話は飛ぶけど、20年度で放送された深夜アニメの中で、私がはまったのが『喰霊―零―』。黄泉(よみ)という少女が殺生石に精神を乗っ取られて、悪霊と化して殺戮者となってしまったのを、彼女を本当の姉のように慕っていた神楽(かぐら)という少女が殺すまでの話(これ、原作漫画にない話だよなー。原作より前の話という設定なのかな?)で、黄泉の恋人だった紀之は、同僚(あ、黄泉たちは全員退魔師で、環境庁超自然災害対策室に所属しているのだ)の一騎を黄泉が殺そうとする場面で、「彼を死なせたくないなら、私を殺して」と言われても、黄泉を攻撃することができず一騎を死なせちゃうんですな。それに対して、神楽もずーっと何話にもわたって苦しみながら、自分が愛する黄泉(姉妹みたいに、といいながら、もんのすごくレズっぽいんだよな、この2人・・・)を止める、と決意する。黄泉も、最後の最後で神楽を守るために彼女の刃にかかって死ぬ。もちろん神楽は「世界を救うため」よりも、「こんなこと黄泉は望んでいない」「苦しんでいる黄泉を救うには、私が殺すしかない」と愛ゆえにそうするんだけど、同じ黄泉を愛している紀之とは逆の選択をするところが、もんのすごく萌えでした・・・。こういう話が好きでたまらん、というところに私の好みが現れてるよなー、と思うわけです・・・。

長いよ、このバトン・・・

2009年01月17日 | オタクな日々

 後輩のnao.ちゃんからバトンがきたけど、長いっつーの!と文句を垂れたら申し訳なさそーにしていたので、いや、回してくれたのは嬉しいのよ、とこんなところで弁解してみる・・・。最後に質問付け加えろ、なんて条件つけたやつが悪いってことで。しかし、字書き&隠居した身には答えにくい質問ばっかだなー。というわけで、めんどい質問はパスするよーん。もちろん、アンカーで。

【創作バトン】
Question.1 創作暦を教えてください。

(どうでもいいが、ネットでよく「OO暦X年」って記述あるけど、これ「歴」が正しいよな。いつもすごく気になる・・・)
小説らしきものを書いたのは小学4、5年頃かな・・・。読んでおもしろかった児童小説を、「私ならこうするのに!」って書き直したのが最初。パロっつーか、翻案小説?後で思い返すと、すでにアニパロ・マンパロ同人へ進むことは必然だったとしか言いようがない処女作だった;

Question.2 最初に書き(描き)上げた作品はどのようなお話でしたか?

同人に限るなら、ギャグショートショートを除くと「六神合体ゴッドマーズ」ワール×マーグで、超捏造設定(またか・・・)小説。未発表。アニメだとマーグは死んじゃうんで、死なないように(でもワールにはアニメ通り死んでいただいた。受けを生き残らせるなんて、ひでえなあ)。初めてヤオイを書いた。(男女は書いたことあったけど!)

Question.3 今まで書いた(描いた)作品の中で、一番気に入ってるものは何ですか?

ナルなので(爆)1番って言われると困るなー。オリジナルなら『遠い伝言』、パロなら鎧伝サムライトルーパー『月蝕の王』阿羅醐X征士(ちゃんとHもある;世界で1サークルしかないんじゃないのか、このカップリング;どんだけまた捏造設定なのか;)。最後阿羅醐は征士に殺されて、征士はその前に阿羅醐に負わされた傷のせいで死ぬとゆー、救いようのない話。私の書く話は主役か主役級が死ぬとか、二度と会えないとか、アンハッピーエンドが多いよなあ・・・;

Question.4 創作する上で一番気をつけていることは何ですか?


登場人物の心の動き。なぜそう感じるのか、そう行動するのか、説明できないことは話の都合上させたくてもさせない。どうしてもさせたいなら、その必然性を考え抜く。

Question.5 どんな時にネタを思いつきますか?

その作品を見ていたり読んでいたりするうちにカップリングが決まってきて、「彼らはどうして惹かれあったのかしらっ」と妄想して作り上げるパターンと、作品(マンガ、アニメ、映画、小説)や音楽に触発されていきなり思いつくパターン。

Question.6 ネタが思いついたとき、それをどうやって形にし肉付けしていくか、あなたなりの構成方法を教えてください。

書きたいセリフや場面やキャラを頭の中でとにかく反芻して、何とか前後や最後をひねり出す。でも、たいてい飛び飛びの場面しかない状態でいきなり書き始めるので、果たしてその場面にたどりつくのか、その終わり方をするのか、予想できない・・・。

Question.7 プロットは立てますか?それはどのように書きますか?

たてません。

Question.8 ↑でプロットを立てると書かれた方へ プロット→本番のとき、プロット通りにキャラは動いてくれますか?
Question.9 作画する上でのこだわりは?

パス

Question.10 創作していて一番楽しいことはなんですか?

妄想が形になっていくこと。エンドマークをつけたときの達成感。

Question.11 あなたの創作七つ道具を教えてください。

辞書。原作本や設定本。

Question.12 創作期間中「これだけは欠かせない」というアイテムがあったら教えてください(コーヒー、テレビ、音楽等)

ない。

Question.13 あなたが「影響を受けている」と思う方は誰ですか?

栗本薫。

Question.14 スランプになった時の症状を教えてください。またその脱し方はどうしてますか?

常に年間200枚~400枚(400字詰原稿用紙換算)が限度という遅筆は、単なる遅筆にしか過ぎず、スランプという言葉は当てはまらない・・・。

Question.15 ご自分の作品世界の中、一連の流れの中で共通するテーマがあるとしたら、それは何だと思いますか?

あまり考えたことはないが・・・あるのか?あまり「恋愛」を書いているつもりはなくって、「なぜこの人がこの人に惹かれるのか、その必然性・必要性は何か」を追求しているつもり・・・かなあ。

Question.16 ご自分の作品に対して、客観的な感想をどうぞ。

①カップリングや話の方向性がいつも世間からずれてるよね・・・?
②読み手にわからせようとして、言い回しがくどいよね・・・?
③人物の全体の動きはあまり描写しないのに、視線にこだわるよね・・・?
④すぐに主要人物を殺すよね・・・?

Question.17 ご自分の作品、これから課題があるとしたらそれは何だと思いますか?

まあ、隠居した身なんで・・・。

Question.18 ご自分の作品に愛はありますか?

時々自分の書いたものを読み返して、「いい話だ・・・」と思う。この、ナルめ!・・・つーか、自分が読みたい、自分好みの話を書いてるんだから当然か・・・;

Question.19 あなたの作品が好きだ。という方に一言どうぞ。

過去言ってくださった方々へ。本当にありがたいことです。自分の書くものが一般受けしないことはわかっているので、そう言っていただいたことで、次の本を作ることができました。ありがとうございました。

Question.20 今後どのような作品を書いていきたいですか?

パス

Question.21 今、あなたが読みたいと思う作品があれば

クロス×ラビ(お互い好きなんだけど意思の疎通はない)、アレン×ラビ(クロス×ラビ前提)、ティキXラビ(愛は全くない、ティキがラビをいたぶる痛い話で!)・・・わしってサイテー・・・;

Question.22 創作中BGMは聴きますか?聴かれる方はどの様な音楽を聴いていますか?

たいていその作品の音楽集とかOP/ED集とか、或いは自分で勝手に決めたテーマ曲を、気が狂いそうなくらいエンドレスリピート。

Question.23 完成するまでどのくらいの時間をかけますか?理想と現実を教えてください。


話の長さによる。Q14の通り。理想はせめて月間50枚だったけど・・・今更さっ。

Question.24 舞台設定の特徴、下調べはしますか?

必要なら最低限。あとはまあ、知識より想像力でごまかせ!ということが多い・・・。

Question.25 他人から言われた評価で印象に残っているものがあれば

評価じゃないけど、中学1年生のとき書いた少女小説(女の子2人が主人公で、1人が病気で死ぬ・・・って、またかよ!)を読んだ姉が泣いたこと。
あー、白×社から「商業誌向きじゃない」と言われたこと。じゃあしょうがないな、と思った。あと某社(忘れた)から「めくったらヤッてる、1作品に6回も7回もHシーンがあるくらいの勢いのものを!」そんな作品、私は読みたくもないし書きたくもないね、ケッ、と思った。

Question.26 二次をやっている方へ。あなたはなんのために二次をやっていますか?

妄想しちゃうから仕方がない。それと「こんな妄想、私1人じゃないよねー?!」という主張のため。

Question.27 二次に限り「これと出会って私かわりました」という作品

二次創作を本格的にやり始めた、いう点ではやはり、アニメ「ゴッドマーズ」かな。

Question.28 自分だけが楽しむための妄想ネタを持ってますか?

パス

Question.29 創作を行うにおいて最も重要視する要素はなんですか?(これがあれば優れている。なければ駄作と切り分ける判断基準)

自分で駄作と思うなら最初から書きません。

Question.30 あなたが大好きな作家さんに一つ質問を追加して回してください。回す人数は制限なしです。

アンカーで。

Question31 メイキングを載せる予定はありませんか。なければ大まかかもしくは細かに創作の流れを教えてください。

パス

 Q21以外つまらなくてすまんねー、nao.ちゃん


Dグレ「クロスXラビ」小説②

2009年01月12日 | Dグレイマン関連

注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」です。ドSのクロスとドMなラビなので、このカップリングやラビ受けが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は一部無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)
④文章の一部は、うっかり目に入らないように反転させてあります。


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            regret


 ロト一族同士だけが嗅ぎ取れる、一族だけが放つ芳香。子どものうちはわからないが、成長すると感じとれるようになる。それは、例えるなら植物の香りに似ているが、1人1人全く違う。その香りは麻薬のように一族を縛りつけ、村から出て行くものが少ないのも、その結果一族の血が薄まらず受け継がれているのも、そのおかげ──呪いと言うべきかもしれないが──だった。
「こんなに……オレを狂わせるのはあなたの香りだけだ……。師匠の香りはオレを温かく包んで安らかにしてくれる、春の菜の花の匂い。旅の途中で出逢った同族の男は、まだ刈ったばかりの牧草の青い匂いだった。もしこの先同族と出会えなくなって、一生これらの香りを感じることができないとしたら、オレは世界を感じられなくなってしまう。紙に描かれた黒と灰色と白だけの絵にしか見えなくなる。なのに……あなたはどうして、独りでいられるんです?この香りなしでいられるんです?あなた自身はこんなにも甘く、蠱惑的な香りを持っているのに……?」
 そう言う合い間にも、ラビはクロスの手に接吻し、舌を這わせ、その指を1本1本丹念に舐め、口に含んでいく。
 あの夜、クロスがラビを拾ったのは偶然ではない。ある意味では偶然だが、ただの浮浪児ならば見捨てたのにそうしなかったのは、それがラビ──つい先程、一緒に任務をこなしたブックマンに同行しているはずの子供だと、その匂いで気づいたからだった。
 ラビもまた、朝目覚めたときには本能で理解していた。この男は自分が欲する唯一の相手だ。この男ともう一度出会うためには師の元へ戻り、世界中を旅して求め続けるしかないのだと。
 強くなっていくクロスの香りに、ラビは半ば恍惚として彼の指を舐め続ける。それを見ていたクロスの目に、凶暴な光が走った。
 ぐい、とラビの前髪を鷲掴みにして頭を仰け反らさせる。
「……くそガキが……。なんて匂いをさせやがる……」
 クロスの視線には、殺意がこもっていた。しかしそれさえも今のラビには、淫らな欲望を煽るものにしかならなかった。
「だから俺はあのくそったれ一族を捨てたんだ。こんな血なんかに自分の体を自由にされるなんて我慢できるか……!それをてめえは……」
 クロスは、ラビの襟首を掴みベッドへ放り投げると、倒れこんだ彼の横にどかりと座った。
「咥えろ」
 熱に浮かされたまま、ラビは片膝を立てたクロスの足の間に這い寄り、ベルトをはずした。クロスの雄はすでに下着を押し上げ、ラビに──ラビの匂いに欲情していることを示していた。
 出会ってから6年が経っていたが、まだ14歳のラビに経験などあるはずもなく、勃起した大人のものを見るのは初めてで、その形に一瞬ひるんだが、男の命令が彼に意思を縛った。
 おそるおそるそれを両手で支え、口を近づける。経験はなかったが知識だけはあった彼は、単純に咥えるだけでなく、本で読んだことを思い出せるだけ懸命に実行した。
 男のものからは、体臭よりも一層濃密な花の蜜の匂いがした。鈴口から滲み出てくる体液も、本に書いてあったこととは違い、彼には甘い蜜の味にしか感じなかった。口の中で体積を増したそれは、顎が痛くて苦しいほどだったが、彼はその甘い蜜を舐めれば舐めるほどもっと味わいたくてたまらず、夢中で吸った。
 頭の後ろを大きな片手で掴まれ、押さえつけられた。
「うっ……」
 強引に男のものが口腔を何度か往復したあと、どっと口の中に蜜が溢れた。それはアルコールのように熱く喉を焼き、鼻腔を抜けた香りはラビを酩酊させた。
 男の脚の間にうずくまり、ラビは荒い息をつきながら満足感と、収まらない欲望に浸っていた。自分自身から、クロスの香りが立ち上っているのを感じる。体内に取り込んだクロスの体液は吸収されて、その香りは血液に乗って体中をめぐり、彼の細胞一つ一つにまで運ばれていくだろう。だけど、これだけじゃ……足りない。もっと。もっと、この男の精を注がれたい。パンも水も要らない。この空っぽな内臓全部、男の蜜でいっぱいに満たされたい……。
 伏せた顔から、視線だけを上げて男を見つめる。淫蕩な欲望に濡れた瞳を、狂気を秘めた小冥い瞳が見つめ返す。視線を絡めたままラビは男の重量のあるものを手で上向かせ、舌を突き出して舐め始めた。すぐにそれが硬く反り返っても、男の顔を見ていられるよう咥えずに、露がこぼれて伝い落ちていくのを舌ですくい舐め続けた。
 自分の淫らで惨めな様を、彼がどんな表情で見ているのか知りたかった。軽蔑でも嫌悪でもいい。自分が絶望するほど拒絶してくれたなら、この未練を断ち切れる。自分は「ブックマン」という名の、「エクソシスト」という名の道具なのだと思える。この先誰をも何をも求めず、ただこの香りへの飢餓に狂うまでは。
「……服を脱げ。下だけでいい」
 少なからず意外な思いで、ラビはその命令を聞いた。
 元帥の地位にありながらめったに教団の本支部に姿を現さない彼だったが、その噂だけはいやというほど耳に入った。型破りの彼の派手な行動は、本人自身が印象的な容姿であることもあいまって、どこへ行っても人々の注目を集めてしまうからだった。その中で必ず、やっかみ雑じりに囁かれていたのは、どこへ任務や作戦で行こうと、その町の女たちにもてまくり、金を払うどころか引く手あまたでタダで泊まり歩いているとか、必ずその町1番のイイ女を愛人にしてしまうとかいうものだった。とにかく女にもてるし、女好きであることは確かだったので、ラビも、自分が奉仕すること以外のことは望んでいなかったし、そもそもそれ以外思いつきもしなかった。
 ブーツを脱ぎ、隊服のズボンを下着ごと下ろす。羞恥心などは最初から捨てていた。これから何をされるのか知ってはいたが、実際はどうなのか想像もつかず、欲望に浮かされてはいても、恐れを感じずにはいられない。
「四つん這いになれ」
クロスの表情がわからなくなり、不安になる。上着の長い裾を捲り上げられたかと思うと、双丘を左右に押し拡げるように腰を掴まれ、高く持ち上げられた。
「…あっ」
 拡げられた穴に、熱いものが当てられた。慣らされてもおらず、指1本入れられたこともないそこに、容赦なく突き入れられる。
 叫び声は、すぐにラビの後頭部を押さえつけたクロスの手で殺された。力加減もなく枕に顔を押しつけられ、息もできなかったが、それよりも引き裂かれる苦痛にラビは体を痙攣させた。恥も外聞もなく泣き喚いたが、それらの声も涙も枕に吸い取られ、かすかな呻きにしかならない。わずかに肺に入ってきた空気が、刺し貫かれる衝撃で吐き出される。その息にクロスの匂いが混じる。それを感じているうちにまた頭の芯がぼんやりし始め、苦痛が和らいでいった。
 頭を押さえていた手が離れても、顔を上げることはできなかった。男を後孔で受け入れることは苦痛でしかなかったが、かまいはしなかった。自分の息が、汗が、クロスの香りに変わっていく。男の快楽の道具になら、喜んでなろう。この香りを所有するためなら。
 鼻腔が嗅ぎとる花の香りが強まるにつれ、この香りの主である男の快楽も高まっていることを教える。部屋の空気も、自分の体も、とろりと手で掬えそうなほど濃密な花の香りに満たされ、窒息しそうだ。
「あっ、ああっ!」
 野の花々をすべて吹き散らし、さらっていく激しい突風のように、ラビの体の中を芳香が突き抜けていった。自分が花そのものになったような──クロスの生み出した花に──不思議な感覚とともに、ひらひらと飛んでいく蝶の幻を見た。安らかな解放感と、甘やかな充足感。これは自分がエクスタシーに達したからではない。クロスが達したことで、もたらされたものだった……。


 ……くん、と強い刺激臭が鼻腔を刺し、ラビははっと目の焦点をあわせた。眠っていたわけでも、気を失っていたわけでもない。男の苦々しげな呟きも聞こえていたし──何を言っているのかまではわからなかったが──、いつ毛布をかけてくれたかも知っている。ただ体が麻痺したように指一本動かせなかったのだ。
 じわじわと、疼痛が背筋を這いのぼってくる。どうしたんだろう、と体を起こしかけると、脳天まで痛みが突き抜けた。歯を食いしばってそれをやり過ごし、タバコの煙の漂ってくる方を振り返った。
 ベッドの足側に、長い脚を立てて壁にもたれて座るクロスがいた。タバコを咥えた右の横顔は、右半分を覆い隠す白いマスクのせいで表情がわからない。起き上がったラビの方をちらとも振り返る気がないことくらいはわかるが。
 強いタバコの香りは、クロスの香りを消すことはできないが、嗅ぎ分ける邪魔にはなる。だから彼はいつもタバコを吸っているのだろうか、と思う。普通の人間にはこれこそが「彼の香り」なのだろうが、一族にとっては余計な匂いでしかない。それに、アルコールは感覚を鈍らせる。タバコも酒も彼自身の香りをわかりにくくするとともに、他の一族の香りを感じることを拒むためのものなのかもしれない……。
 ラビはそっと床に足を下ろし、服を拾おうと身をかがめた。脚を何かが伝っていく感触がした。見ると、太腿の内側を血が流れ落ちていくところだった。床を汚してしまう、と急いで下着とズボンを穿き、服を整えた。
 彼は自分を叱咤しながらぐっと奥歯を噛みしめ、顔を上げた。クロスに真正面から向き直る。
「お時間を取らせまして、申し訳ありませんでした」
 一度姿勢を正してから、腰を折って深々と頭を下げる。3つ数えて頭を上げようとすると、
「これに懲りたら、二度と俺に近づくな」
 ラビは一瞬息を呑んだが、意を決して口を開いた。
「…できません」
 彼は目に力をこめて、クロスを見た。
「先程言ったはずです。オレはあなたが欲しい。心まで欲しいとは言わない。あなたの……都合のいい、ただの捌け口でかまわない」
「……てめえ……殺されたいか……?」
 苛立ちを立ち上らせたクロスに、むしろラビは反抗心のようなものが湧き上がるのを感じ、昂然と言った。
「殺してください。あなたなしでは、オレは狂うしかない。それぐらいなら殺してください。……一族の誰もがこんなふうになってしまうかどうか、オレは知らない。だから、とっくにオレは狂ってしまっているのかもしれませんが」
「…………」
 彼らは、これから戦いあう敵同士のように、睨み合った。これが戦いなら、何が勝利だというのだろう?──ラビは思った。自分に爪の先ほどの関心も持たない男を愛した時点で、自分は全面降伏したも同然なのに。
「………いいだろう。今度会ったらてめえを使ってやる。何か月、何年後かは知らないがな」
 白刃を首筋に当てられたような、冷ややかな怒りに、ラビはぞくっと背を震わせた。
「……望むところです、元帥殿」
 ラビは一礼して、背を向けた。
 部屋を出て、自分の部屋へ戻ろうとしたが、気が緩んだのか痛みがぶり返し、異物感も加わって、壁に縋らないと歩けない。やって来る人影に気づいて足を止め、彼らに背を向けて窓にもたれて外を眺めるふりをしてやり過ごす。川面に映る月よりも、窓に映った自分の顔しか見てはいなかったが。
 充血してうるんだ目、明らかに泣いたとわかる腫れたまぶたと青黒い隈。こんな顔を師匠に見られたら……いや、たとえ顔を見られなくたって、彼にはラビが何をしてきたかわかってしまうだろう。彼の体に染み付いたクロスの匂いで。
 彼には自分自身の匂いはわからない。師匠に、自分がどういう匂いがするのか訊くのは気が引けた。第一無駄といえば無駄だった。彼らの匂いは、相手によって感じ方が違う。だから師匠が知るラビの匂いと、クロスが感じるラビの匂いは、全く別物だ。同様にラビはクロスの匂いを甘い花の香りだと思うが、ブックマンには違うように感じられているはずだ。だが、今のラビからラビとクロス両方の匂いを嗅ぎ取ることは容易なことだ。そして、これだけ他人の匂いを強くまとっていることが何を意味するか、気づくだろう。
 激怒するか、蔑まれるか、それとも無視されるか……どちらにせよ、師が深く落胆するのは目に見えている。厳しくも愛情を持って自分を育ててくれた師に、彼も今では深い情を感じている。それだけに、これまで自分が何のためにつらい訓練や旅に耐えてきたのか知られるのはつらい。すべては……あの男に、クロス・マリアンに会うためだった。
 6年前のあの日、あの男だけでなく、ブックマンからも同じように花の匂いがすることに気づいたとき、わかった。あの男もロト一族で、あの眼帯の下には、自分と同じ「ロトの印」があるのだろうと。
 しばらくして、ラビが一族の匂いがわかっていることに気づいたブックマンは、一族のみが持つその体質のことを教えてくれた。数年後、あの男がクロス・マリアンであることを知り、さりげなくクロス元帥の話に水を向けたときには、彼が実は一族の出身で、本当はブックマン候補だったが、エクソシストとなると後継を拒否し、本名を名乗り、一族との縁を切ったことを話してくれた。
 月日が流れ、体が成長し、世間を知るにつれ、ラビはあの夜の出来事の意味を理解するようになった。自分の身に起きたあの変化も、男に興味を持ってもらえなかったことがひどく悲しかった理由も。
 彼にどうやったら近づけるだろう。ただの子供で、駆け出しのエクソシストの自分が、どうやったら彼の関心──なんだっていい。エクソシストでもブックマン候補としてでもなく、彼個人へのものならば──を引けるだろう。そう考えて出した結論が、彼が拒絶した一族の血そのものを利用することだった。それ以外、彼には他に何もなかった。
 結果は……予想以上の結果で、ラビは幸福だった。彼の雄を口で味わい、彼の吐精を注がれた。愛されることなんて、心なんて望んでいない。嫌われたってかまわない。無関心よりどれだけかマシだ。彼のあの香りさえ──どんな女たちも、他の一族でさえ誰も知らないあの甘く苦しい蜜の香りさえ手に入るならば。そう思っていたし、今、その喜びを手に入れた。
 なのに……なぜこんなに哀しいのだろう。苦しくてたまらないのだろう?自分は何か間違っていたのだろうか。
 大声を上げて泣きたいのに、ここには何処にもそんな場所はない。自分の部屋へ帰るしかない。師匠が待つ部屋へと。彼の前で泣けば、きっと彼を悲しませる。弟子として失望させ、家族として悲しませ……。そんなことはできない。決して、泣くわけにはいかない。
 苦しくて痛くて……胸が痛くて、喘ぎながら歩き始める。今さら後悔なんてしない。自分はあの日、選んでしまったのだから。もう一度彼に会い、彼を手に入れるためならどんなことでもすると。そのためなら「ブックマン」にでも「エクソシスト」にでもなろう。
 だから、生き続ける。次はいつなのかわからない。数年後かそれとももっと先か、彼に再び会うために、人々の血と悲しみに塗れた道を傍観者として踏みにじり、その血の匂いの中に、花の香りを求めながら。

2009.1.11

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 ・・・妄想追加です・・・
1.ワタクシ、基本はブックマンXラビ(プラトニック)なんスよ・・・。
2.エクソシストは教団本部に自室をもらえるみたいだけど、どうしてブックマンとラビは同室なのかねー?18歳の健全な男の子がこれじゃーナニもできやしないじゃん?夜中にオOってるラビに気づかないふりするブックマン・・・。ラビの下半身事情も把握しているブックマン・・・。オメーら、どういう関係じゃ!
3.捏造設定いっぱいですが、世の中にはクロス&ラビ親子ネタもあることだし・・・。これぐらいいいよねーっ。
4.ただ赤毛で右目隠してるという共通項だけでここまで捏造するとは・・・。自分の妄想っぷりに呆れちゃうよ!
5.だけどさー、クロスが悪魔の改造ができることを、「ワシだけが知っている」とかブックマンが言ってたのが引っかかるんだよね。なんでブックマンだけ?そんなに親しいの?まあ、じじいだからクロスが駆け出しエクソシストの頃から知ってるという理由かもしれんけど・・・。あ、今、新人クロスの教育をしたのがじじいだったという妄想が・・・!アリかもしれん・・・。
6.私の妄想では、クロスの悪魔改造能力の秘密は右目にあって、まだ全然隠してる理由が出てこない(たぶん・・・。小説版とかで出てたらごめんなさい。読んでないです。・・・それ言ったら、アニメも3分の1くらいしか見ていないし、コミックスも後輩から10巻あたりまで借りて読んだだけだ・・・。だから勝手に捏造しまくってるんだけど!)ラビの右目も、同じ能力がある・・・ということになっております。まだ本人自覚なし。元帥の方々程度までイノセントを使いこなせないと使えねーってことで。
7.タイトルの「regret」はエンディング曲から。『たった一言「行かないで」が言えなかった。あなたが幸せならそれでいいなんて、絶対に言えない」というフレーズがすっごい好きです。ラビの気持ちにピッタリー!と決定。
8.この話は殺伐とした関係で終わりましたが、希望としては、このあとクロスはアレンを育てて、多少は変わるんじゃないかなー。その間2、3回ラビとは会ってる。会ううちに逆にラビの「心まで望まない」という頑なな心に苛立つようになってきて、で、江戸で再会してなんとか箱舟の破壊に成功したあと、ゴニョゴニョ・・・とかなるといいなーっっ
9.・・・そんならぶらぶHも書きたいよ・・・。リクもらえたら書こうかな・・・。その前にもうちょっと原作ちゃんと読まないといかんと思うけど・・・。ところでコミックスではどこまで話が進んでるのかねえ?
10.しつこいようですけど、99%捏造設定ですので!ラビの名前もわかんないからてきとーにつけた。どうせラビだって偽名だからいいじゃん。あ、ブックマン一族(なんてあるんだったっけ?記憶に自信ない・・・)に「ロト一族」と勝手に名前付けましたが、ロトというのは旧約聖書に出てきます。娘たちとともにソドムの滅亡から逃れた男ですが、なにしろみんな滅びちゃったから、娘たちと交わって、子孫を残すんですねー。そういう近親相姦からの連想で・・・村中みんな親戚。だからクロスとラビもけっこー近い血縁ってことで。またいとこくらいかなー。
 ・・・以上、妄想を垂れ流してみました!この小説はそのうちサイトに上げときます。

 携帯から見てくださってる方も結構いらっしゃるようですが、反転してると読むの不可能ですね~。でも、PCより携帯の方のほうが年齢層低いような気がするので・・・お許しくださいませ。
 
 昨日この書き込みを見てくださった方は気づかないだろうなー、と思いつつ、こっそり本日(1/13)追加のたわごと。
11.書きながらどうしても、紫の照明で薔薇をくわえて登場し、女性たちを落としまくるセクスィ~部長※1姿のクロス元帥が頭から離れませんでした・・・
※1.NOKのコメディ番組「サラOーマンNEO」に登場する、そのムンムンフェロモンだけでばったばったと女性たちを失神させる部長。どんな会社だ・・・
12.ま、クロス元帥はもともと女性限定フェロモン撒き散らしですけどね!男向けはラビ限定で(笑)
13.実はこの話もワタクシ的にはショタだ・・・。私のショタ定義は上限15歳なのさ!16歳だと国家公認で結婚できちゃうからさ~(女の子だけだけど!)

Dグレ「クロスXラビ」小説①

2009年01月10日 | Dグレイマン関連

注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、
そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」です。ドSのクロスとドMなラビなので、このカップリングやラビ受けが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は一部無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)


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            regret


 硬い木の扉をノックする。が、返事はない。彼はさっきよりも強くこぶしでドアを叩いた。
「クロス元帥殿、部下のラビであります」
 扉に耳をくっつけると、入れ、と唸るような声が聞こえた。
「失礼いたします」
 鍵はかかっていなかった。ラビは細く開けた扉の隙間から、身を滑り込ませた。
 隊服の上着を脱ぎ、だらしなくシャツの前をはだけた姿で椅子に座り、両脚をテーブルの上に投げ出したクロスは、長い前髪の下から不機嫌さも露わにラビへと視線を向けた。
「てめえを呼んだ覚えはないぞ」
 そんな視線も蛙の面になんとやらの見本のように、ラビはへらっと笑って返した。
「この機を逃すと、着任のご挨拶もできないうちに、また異動になる可能性もあるかと思いまして。初めてお目にかかります、クロス元帥殿。2年前に閣下の部隊に配属されました、ラビ・ファーガソンです。お見知りおきを」
「……お前らのことはコムイに任せてある。お前だってわかっているんだろう。どこの部隊も引き受けないはみだし者が突っ込まれるのが俺の部隊だ。俺からして教団の鼻つまみ者だからな。俺の好きなようにやれるように元帥なんてもんになっただけだ。お前らの面倒を見る気なんぞねえ。お前らも好きにしろ。下っ端のやれる範囲でな」
「ありがとうございます。私も、コムイ室長からの命令遂行以外のときは自由にやらせていただいております」
 ラビは笑みを顔に貼り付かせたまま答えた。
「そうかい」
 もういいだろう、とばかりにクロスはテーブルの酒瓶を取ると、直接口をつけてあおった。ラビはそれを笑みを消してじっと見つめる。
「……まだ何か用か」
「……お噂では、元帥殿は赴いた先々に愛人がいらっしゃるとか」
「それが何だ」
「支部内へは団員以外立入禁止ですから、お慰め申し上げようかと思いまして」
 クロスは、胡乱な者を見る目つきでラビを見た。
「ヤローに用はない。失せろ」
「………」
 ラビはバンダナを解いた。すると上げられていた髪が落ち、意外と長い髪が肩にかかる。
「……あの時はお役に立てませんでしたが、今ならご満足いただけると思いますよ?」
「……」
 クロスは白く光る眼でラビを見据える。ラビは彼の足元に片膝をついた。
「あなたは覚えていらっしゃらないかもしれませんが、オレは覚えています。……忘れられるわけがない。あの日以来オレは……あなた以外ほしくない……あなただけが欲しくてたまらない体になってしまったんですから……」
 クロスを見上げるラビの目は、すでに欲望に潤んでいる。それを見てもクロスは心を動かされた様子もなく、無表情にそれを見返していた。ただ無言で。──出ていけとも、黙れとも言うことなく、恭しく彼の手を取ったラビの手を振り払うこともなく──



 寒い夜だった。雪こそ降ってはいないが、それだけに乾いた風が身を切るようだった。こんな日は、さすがの色街も、外に立って客を引く女の姿はなかった。男たちは早々に女を置いている宿に逃げ込み、立ちんぼうの女たちは今夜の収入をあきらめ、自分のベッドでありったけの服をかきよせて寒さをしのいでいた。
 飲み屋からは明かりと酔客たちの声が洩れていたが、街の通りは人影もまばらで、たまに道を行く者も、コートと帽子に顔を埋め、早く暖かな部屋にたどり着こうと、周りも見ずに足早に通り過ぎていくだけだ。
 そんな凍える夜の街に、細い路地に身を隠すように座り込んでいる子供がいた。
 建物の壁にくっついてしゃがみこみ、分厚いマントですっぽり体を包んで膝の上に顔を伏せて、まるで傍らに積み上げられた木箱や麻袋などと同じに見せかけようとでもしているようだった。けれどその子供の特徴が、それを裏切っていた。
 鮮やかな赤い髪が、そこにあるのはゴミではなく、人だと教えていた。
 子供は、うとうとと眠りかけていた。行くあてもなく逃げてきて、せめて少しでも風を避けようと建物と建物の間の、人1人通るのがやっとのこの路に入り込み、疲れたのと寒いのとで震えながら体を縮めて休んでいたのだが、夜も更けて、睡魔に襲われ始めていた。
 眠ったら凍死するだろうと、年齢よりもはるかに賢い子供にはわかっていたが、それに抵抗する気力は湧いてこなかった。
 8歳になった彼は、父から引き離され、「教団」とやらに連れて行かれるところだった。彼は特殊な能力と役目を持つ一族に生まれた。その中でも彼は生まれながらにその右目に「ロトの印(しるし)」を持っていて、当然その役目を継ぐ者として育てられ、教育されてきた。
 一族は一般人に比して際立って「適合者」が現れる確立が高く、イノセンスが見つかったときは、「教団」はまず彼の村の中から「適合者」を探す。それが「ロト一族」と「教団」とのはるか昔からの約束であり、契約だった。特にごく稀に生まれる「ロトの印」の所有者はほとんどが「適合者」なので、彼も「適合者」かどうか調べるために、現役「ブックマン」に、「ブックマン」(それが役目を継ぐ者のことだ)となる訓練を受けながら「教団」へ向かう途中だった。
 母は彼を産むときに亡くなった。一族の役目に忠実だった父は、「印」を持つ彼を息子としてではなく、次期「ブックマン」として接し、教育することにのみ熱心だった。その教えにもかかわらず、それともそうだったからこそかもしれないが、彼は物心がつくにつれ「ブックマン」になどなりたくないと願うようになっていた。「適合者」だったなら、「エクソシスト」にもならねばならない。そうなれば彼は「一族」のみならず「教団」にも縛られ、生き方を定められ、何一つ彼の自由は許されなくなってしまう。かといって、村に帰りたくもなかった。帰ったところで彼を待っている者は誰もいないし、「ブックマン」にならなかったところで、村にいれば「書記者」として世界中から集められた膨大な記録を書き記し、整理し続ける生活が待っているだけだ。それが、村での唯一の生き方なのだから。
 だから、彼は「ブックマン」であり「エクソシスト」である男が、「教団」から悪魔退治の命令を受けて、数日宿に彼を置いて任務に出かけなければならなくなった隙に、逃げ出したのだ。行くあてなどない。帰るところもない。逃げたところで浮浪児となるか野垂れ死ぬかだとわかっていたが、そうせずにはいられなかった。
どうだっていい。彼がいなくなったところで、村には同じように「ブックマン」となるべく教育されている子供が何人かいる。彼よりずっと年上の子供もいた。彼らのうちの誰かが選ばれて、現「ブックマン」とのマンツーマンの訓練を受ける旅に出ることだろう……。
「……おい。起きろ、ガキ」
 彼はのろのろと顔を上げた。幻聴だと思っていたが、何度も呼ばれていたらしい。
 路地の入口に、背の高い男が立っていた。顔は陰になっていてよく見えないが、帽子の下で長い髪が大きく跳ねているシルエットが印象的だった。
「ついてこい」
 どうした、とも訊かず、彼が立ち上がるかどうかも確かめず、男は身を翻して路地から出て行った。それを見送って彼はしばらくぼんやりとしていた。
 全く知らない男だったし、こんな色街で野垂れ死に寸前の子供に声をかけてくるのだから、どんな目的があるかわからない。それでも死にたくないと思う子供ならついていくだろう。だが、彼は別に死んだってかまやしないと思っていた。
 ──なのに立ち上がり、男のあとを追ったのは、なぜだったのか。
 街灯に照らされた男の髪が、彼と同じ赤毛だったからか。それとも他に理由があったのか。
 彼はかじかんで感覚のない足でよろよろと、足の速い男を見失わないようについていった。
 男は一軒の宿に入っていった。そこはこの辺りの宿の例に洩れず、置いている女を呼ぶことを前提として部屋を提供するところだった。
 受付の男は、あとからふらふらと入ってきた子供にちらりと目を向けたが、客には愛想良い顔を向け続けた。
 男は鍵を受け取り、階段を上っていく。遅れて2階にたどり着いた彼は、開け放したドアを見つけてそこへ向かった。
 入口からのぞくと、男はすでに帽子もマントも脱ぎ、ベッドに寝転んでタバコに火をつけたところだった。
「閉めろ」
 彼は慌てて中に入り、ドアを閉めた。
 男の髪は、彼のものほど明るくはなかったが、混じりけのない見事な赤毛だった。しかしそれより彼の目を引いたのは……
「風呂に入ってこい。お前が寝るのはそこのソファだ」
 男は彼に目を向けもせず言うだけ言うと、目を閉じてタバコの煙をふーっと吐き出した。とりつく島もない男の態度に、彼はおどおどしながらバスルームに入った。
 服を脱いだところで、鏡の中の自分が目に入った。鏡に映った彼の右目は、黒い眼帯に覆われている。「印」を隠すためのものだ。
 あの男も、長い前髪に隠れてはいたが、右目に眼帯をつけていた。それを除けば切れ長の目も高い鼻梁も、口角の引き締まった厚い唇も、初めて見るほど秀麗で男らしい美貌の持ち主だった。
 彼は眼帯を外した自分から目を逸らした。シャワーの湯は冷え切った体に飛び上がるほど熱く感じたが、やがてそれが心地良いものに変わってから、ようやく彼は風呂から上がった。髪は濡れたままだったが眼帯をしっかりと結び、服を着てマントを手にバスルームを出る。
 一歩出た途端、彼は固まった。
 男の上に女が跨り、はだけられた胸に唇を這わせていた。赤い爪の白い指が、幾筋も傷痕の走る、筋肉の盛り上がった胸を、愛しげに撫で回している。
 茫然と立ち竦む彼を、じろりと男はねめつけた。
「ガキはさっさと寝ろ」
 弾かれたように彼はソファに飛び込み、マントを頭から引っ被った。そのまま体を縮め、息を殺す。
 幼い彼にはその行為の名前も意味もわからなかったが、ただ見てはいけないとだけ感じた。自分はまだ知らない。だが知らないことは知ろうとしなければならない。すべてを知り、記憶すること。それが我々の役目だと、旅立つ日にブックマンから言われた。そして知ったことに心を乱されてはならない。押し潰されてはならない。そのために心を剛くしなければならないと。
 それでも、今は知りたいと思わなかった。それはまだ自分には早い。大人になってからでいいと自分に言い聞かせ、狭い部屋なのでベッドからそう距離があるわけはなく、何がどうなっているのかわからないが、聞こえてくる彼らの睦みあう音から耳を塞ぐ。
 ふと、彼は気づいた。いつの間にか、甘い花の香りに包まれていた。さっき使った石鹸の匂いではない。女のつけている香水だろうか?まるで部屋中に花が敷きつめられているかと思うほど、窒息しそうなくらい濃密で、クラクラしてくる。
彼の体は、抗いようもなくその香りに寄った。見も心も痺れさせるほど甘く、心を奪っていく。体から力が抜ける。半ば夢うつつで、時折こみ上げる甘い疼きに洩れ出る声を、両手で塞ぐ。それは、甘やかな拷問だった。
 ──どれくらい経ったのか、もう女の嬌声もベッドがきしむ音も聞こえなくなっていた。聞こえてくるのは、ガラスの触れあう音と、液体が注がれる音……。
 彼は、そっとマントから顔を出した。
 女の姿はなかった。男はベッドの背にもたれ、ひとり琥珀色の酒を飲んでいる。
 彼は、ひどく喉が渇いているのに気づいた。気づいてしまうといっそうその乾きは耐え難く感じた。
 サイドテーブルの水差しが目に入った。水割り用のものだろう。彼はほんの2、3歩をよろめき歩いて、テーブルに掴まった。グラスが見当たらなかったので、水差しを両手で抱え持つと直接口をつけ、こぼれた水が喉を伝い落ちるのも構わず貪り飲んだ。
 はあ、と息をついで水差しを置く。香りはまだ宙を漂っている。それは残り香ではなく……今、目の前にいる男から発していることが、彼にはわかった。その香りをかいでいるだけで体が熱くなり、惹きつけられる。ひたひたと足元から満ちてくる、陶酔感。
「……ずいぶんと早熟なガキだな」
 男は、まだ頭の芯が痺れてトロンとしている彼を見て、片頬を歪めた。
「だが……それも当然か」
 グラスを置き、男は彼に背を向けて横になり、毛布を引き上げた。
「俺はガキをどうこうする趣味はねえ。そっちに戻って寝ろ」
 男の言う「どうこう」がどういう意味かわからなかったが、男が自分に興味がないのはわかった。だったらなぜ彼を拾ったのか、単に気まぐれを起こして凍死しそうな子供を助けてくれただけなのかと疑問に思いながら、彼はソファに戻り、熱い体とは裏腹に冷えた心を温めるように、マントを体に巻きつけ手足を縮めて横になった。
 翌朝、「義理は果たしたからな。あとは勝手にしろ」という科白を残して宿の前で別れた男を見送り、彼は逃げてきたはずの自分の宿に戻った。宿には、任務から戻ったブックマンが、一睡もせずに待っていた。彼は少年を叱責することも、どこへ行っていたのかと問うこともせず、何もなかったように「行くぞ」と荷物を担いだ。少年も、自分のバッグを背負った。
 前を歩く師からは、以前はわからなかった、かすかな花の香りがした……。

②に続く・・・


新年早々・・・;

2009年01月06日 | 極めて日常茶飯事
 駅のお土産物屋で帰省の手土産を買おうとのぞいたところ、おいしそうなイチゴのロールケーキがあったので買おうとしたら、「申し訳ございません、あいにく売り切れておりまして、代わりにこちらの青汁入りロールケーキはいかがでしょうか?」と言われ、青汁?!そんなんいらん!と、何も買わずに終わってしまった・・・。
 という夢を見た幸田です。なぜ、青汁・・・?テレビで「冬はホット青汁」などというCMを見たせいだろうか・・・?スティック入り粉日本茶を飲もうとして、うっかりサンプルの粉青汁を湯飲みに入れ、お湯を注いでから間違いに気づいたものの、もったいないので飲んだら、青汁くささが倍増して、「ううう、まずい・・・」と涙目になりながら飲んだこともありましたっけ。(だったら飲むなよ・・・。でも、もったいないんだもーん!)
 新年早々、フライパンでやけどするわ、先月上旬に悩まされて、その後止まっていた怪音も再開するわ、女性専用車両で痴漢(痴女?)に遭うわ(痴漢に遭うなんて10年以上ぶり・・・?それが女とはな・・・)、なんだか幸先悪いですなー
 それはおいといて、現在久しぶりに妄想やおい小説など書いております。た、楽しい・・・楽しいけど、エロに四苦八苦現役だった頃もHシーンにはいつも苦しんでおりましたが、なんかもーめんどーで、「XXX」と直接名詞を書いてしまいたい!いや、しかし、それでは下品すぎる・・・と、どう言い換えるかで悩んで、Hシーンに入った途端、スピードが落ちてしまっております。ともあれ、やっと山を越えたので、スパートかけて下書き終わったら、少しずつ(相変わらず、打つの遅い・・・すみませんね、アナログで!小説はノートに手書きさっ)UP致します。・・・が、需要はあるのだろうか・・・?
 Dグレの「クロス×ラビ」です・・・とだけ、言っておこうきっと皆さまにドン引きされること請け合い愛はないけどエロはある・・・。(おいおい!)初回は3連休中にはUPできるかな・・・?

私信:お問合せくださった方へ

2009年01月04日 | お知らせ
 こちらは見ていただいていないかもしれませんが・・・。
 本日1月4日に、サイトのパスワードをお問合せくださったS様、返信致しましたが「送信先のメールボックスが一杯で送信できません。」というメッセージが返ってきました。年末年始の間に届いたメールで、メールボックスの容量がオーバーしていると思われます。まずは迷惑メールフォルダー内の削除と、できれば受信フォルダー内の不要メールも削除してください。よろしくお願いいたします。
 2、3日後に再送信いたします。
 

あけおめ!

2009年01月02日 | オタクな日々

 明けましておめでとうございます・・・。と尋常な挨拶をするのはちと気恥ずかしいのですが(いつもおちゃらけてるか、腐れ発言しかしないので・爆)、とりあえず今年も・・・つーか、今年はますますこのブログも放置プレイが多くなりそうですが、腐女子フィルターは健在なので、ちんたら更新していきたいと思いますので、思い出した頃に見に来てやってください・・・。
 まあ、実際のところ同人活動していないとあんまり書くこともないわけで!萌えに燃料注いでくれる作品がないと、クサレな感想もかくことないですしねーっ。あとは会社のこととか猫のこととかしか書くこともない・・・。しかし会社なんて、私はあんまり動きがないというか、後輩のように()ネタになるようなトンデモな上司や同僚にも恵まれて(?)いないので、特筆すべきことはあまり起こらない・・・。せいぜい今年1月からの給与がほんっとーに昇給ゼロに決定して、今までは例え評価B=普通でも、500円とか1000円くらい(月給ベースですよ・・・日給じゃありませんよ・・・)は昇給してたんだけど、ショックだったことくらい・・・。そもそもこれで何年連続で2次評価まではA評価なのに、最終決定でBに落とされているのか・・・。もういっそ、「儲かってないので、A評価をつけても昇給はゼロです」と言ってくれた方が納得するわ!
 いやいや、不景気な話はこれくらいにして(そんなもん、テレビや新聞でいやというほどやっている)、腐女子な話題を。
 さて、年末はコミケに行ってきました。今回は後輩nao.ちゃんのスペースの店番。彼女はサークルでは初参加だと言っていたので、参加に必要なものを念のため前日にメールしたら、「なんすか、それ?」と返ってきたので、メールしといてほんとーに良かった・・・(ばらしてもうた。ネタにしてすまん、nao.ちゃん
 出発の朝までコピー本を作成していた彼女は、「落とした・・・。代わりにチラシ作る」と紙と道具持参。ホテルで作成する予定だったが、しかし結局それも作れず。コピー本を落とした原因といい、チラシを作る時間もなくなった理由といい、その顛末を聞いたり、その現場に遭遇して「なんで君はー!」お人よし過ぎる!自分の都合も優先させなよ!等々と怒ってばっかの私だった・・・。人様の人間関係に口出しするのは好ましくないんだろうけど、nao.ちゃんは私にとっても可愛い後輩で友人だ。友人が他人の都合に振り回されていたら、そりゃ怒らない方がどうかしてるってもんだ・・・。
 翌29日は8:30前に会場に到着し、わたわたと準備・・・。最初にnao.ちゃんに買い物に行ってもらったが、30分くらいで戻ってきてしまった。「もう終わったの?」「うん、目当ては全部買ったし、あとは大阪でもっと並ばずに買えるだろうし」ううむ、またたいして店番ができなかった・・・。
 リボーンの外周スペースは信じられんほどの列で、どれがどれやら最後尾がわからん・・・。しょうがないので、先に島スペースを回る。早く戻ろう、とチェックしたサークルのみ見て回り、その後外並びへ。なんとか買い終わって戻ったのは、1時頃。す、済まん・・・「3時まで戻らないかと思ってました」だ、だから、それを避けようと、目当てカップリングの全サークルチェックなんてあほな真似は止めたよー!!
 その甲斐(?)あってか、家に帰ってから財布の残額を数えたら、本代3万くらいしか使ってなかった・・・。道理でキャリーバッグとはいえ、お持ち帰りできたわけだよ!だって夏はそのバッグにぎっちり詰まっていたのに、今回は半分空いてたもんね!
 スペースは私が留守の間大盛況だったようで、よく売れていて万々歳。忙しかったみたいなのに、肝心のときに不在で済まぬ・・・今回の新刊は、途中まで誤字チェックをしたので読ませてもらったが、カカイルでない(しかも登場人物がよくわからない)私が読んでも面白かったので、当然だな!と関係ないのにご満悦なワタクシ・・・。おもしろいものはパロだろうとオリジナルだろうと関係ないね
 その日は東日本の新幹線が止まったり遅れたりしていたけれど、東海道新幹線は関係なく無事帰宅。翌日は東海道が飛び込みで遅れたり、名鉄が脱線事故で止まったりしたので、日程的にうま~く避けられてラッキーこれで2008年の運は使い果たして、年越しだな・・・と購入した本を読みつつ、30日をまったり過ごしました・・・。(その日に読み終わっちまって、31日はDVDに溜まりまくったテレビ番組を見て哀しく過ごしたさ・・・次回はやっぱり自制を吹っ飛ばして、買いまくろう・・・
 こうして2009年を迎えましたが、「3つ子の魂、百まで」というとおり、腐女子は何十年か経ったらただの老女になるんじゃない、腐老女になるだけさ!と開き直り、今年も貴腐人で参ります!(そんな決意をするな!)