フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

「すき間産業」なワタクシ(笑)

2007年06月30日 | オタクな日々

 昨日は本屋に行ったものの買う本がなく(ほとんど姉がネット注文してしまった)、かといって本屋に来たからには手ぶらで帰るのはいやだ!(変な習性・・・)と、気になっていたがいまいち食指が動かなかった「ユリイカ増刊・腐女子マンガ大系」を買ってみた。それをつらつらと読んでいてポン、と手を打ったこと。
 いわゆる「女性向け男と男の恋愛マンガ・小説」が商業ベースに本格的に乗ってから、それはBL(ボーイズ・ラブ)と呼ばれる1ジャンルとなり、私も一般名詞として自分の書くものをそう呼んでいたが、私にとってはBLという名はどうもしっくりこなかった。私にとってその手のモノを表す名詞は、約20年間同人誌におけるアニパロ(マンパロ含む)の中で、ホモ・カプを扱う作品を総称する「やおい」だったからだ。しかしながら今や一般人含め若い人たちには「BL」こそがスタンダードな一般名詞になっており、「やおい」という言葉は使いにくい雰囲気になっていたため(まあ、語源が不明確だしね)、ディープな&30代以上(笑)の同人仲間以外と話すときは、BLという言葉を使うようになっていた。
 しかし、この本の中である人がヤオイについて評する中で、「BLも広義のやおいだが、(特に商業作品、作家を取り上げる場合に混乱するときは)BLプロ作家の作品をBLと表記する」という意味のことを書かれていたので、おお、私の違和感はこれだ!と合点した。
 実は私は出版社から出ているBLマンガ、小説はほとんど読まない。ごく限られた作家──同人誌時代から好きだった人がプロデビューしてしまい、同人誌はほとんど出さなくなった方しか読んでいない。なので私にとってBLとは、自分の趣味のフィールドとは言いがたいのだ。自分の萌えはあくまで「BLではない作品」の中に、隠された関係性を見出すこと、あるいは捏造すること(爆)にあるからだ。(そのような作品の読み込み方法を、腐女子フィルターという・・・)その萌えを形にしたものは、やはりBLではなくやおいと呼ぶのがしっくりする。
 というわけで、これからは自信を持って(?)「趣味:やおいを書く・読むこと」と言おう!・・・もちろん、同じ腐女子仲間に向かってのみ(笑)
 そうそう、1、2週間くらい前だったか、某テレビの夕方のニュース番組で、「BLにはまる腐女子」という小特集をやっていて、(なぜか新田祐克さんの「春抱き」ばっか映る・・・なぜだ・・・絵的に派手だからか?)この手の番組はいつも皮相で一面的で、だから何?何が言いたいの?というものばっかだ。で、おとといGちゃんとしゃべっていたときに「こういうの見たよー」とGちゃんが言い出したのがそのニュース番組だった。Gちゃんは、一応私がマンガとアニメが好きなおたくだということを知っている。が、「男と男の恋愛マンガ・小説」が好きだということは知らない・・・。小説を書いているらしいことも知っているが、「えーと、恋愛ものとか、ファンタジーとか・・・」などとごまかしてある嘘じゃないよな、一部省略してあるだけで(爆)
 「あ、私も見たよ。腐女子ってやつね」
 「マンガとか映ったんだけど、私、どうしても男と男でどうこうって、理解できないわぁ。なんでそういうのがいいのかしらねー」
 「いやー、それはさー・・・」
 というところで電話がかかってきたので話はうやむやになった。ううむ、下手にカミングアウトすると説明が面倒くさそうなので、当分ごまかしておこう・・・。
 話を戻して、やおい歴20年以上の私だが、いつもメジャージャンル・カップリングを書いているわけではない。自分しかいないとか、自分以外1サークルしか見たことないこともあった(作家FC、別カップリング、やおいでない場合除く)。東京探偵団、ライブマン、星のまほろば、輝夜姫、デーモン聖典・・・。同人歴が長いからにしても、多すぎないか・・・?
 やおいというのはマンガや小説の行間、コマとコマの間、あるいは作品上で描かれない時間や出来事を捻り出す、いわば作品中のすき間を埋める、すき間を創造する「すき間産業」(笑)だが、その中でもマイナー嗜好のうちは、二重の「すき間産業」だなぁ、と自嘲含みで自分にエールを送ってみたりして。
 そして私の中で、「このカップリングこそ誰も同志がいないなぁ・・・」と思いつつ、実は密かに胸キュンなカップリングは、吉田秋生「YASHA」の静×茂市。年下攻めで、なおかつ茂市が死んでしまうこと、静は再会したときと、茂市が死んでしまったときの2回、彼を抱きしめただけというプラトニックな関係が幸田のツボど真ん中だ・・・


今週のマガニャン&オタク的日常

2007年06月27日 | オタクな日々
 暑い・・・我が家は西側にな~んにもないので、西日がかんかんに照りつけて室内温度はうなぎ上り。21:00現在、33℃。まだ熱い壁からの輻射熱で、気分は汗蒸幕・・・。息苦しいような気がするくらい蚊が入るから窓は開けられないし(網戸はにゃんこたちに破られて、役に立たないのだ!)今年は4月から蚊が飛んでるは、5月には30度を越すは、6月にはにゃんこのために日中タイマーで冷房入れなくてはならないは、ここは熱帯か
 というわけで、何もする気にならない・・・。あー、今週のマガニャンの『ツバサ』は「もう1つの呪い」。といっても相変わらずその「もう1つの呪い」とは何か明らかにされないまま、来週はお休み。引っ張るなあ。ファイの過去を知った小狼本体がすごくつらそうで、さすがは小狼イイ奴だな!しかしなー、ファイが叶えようとしている願いが「(本当の)ファイを生き返らせること」とは・・・。夜魔の国でアシュラ王も同じことを願っていたけれど、それは決して叶えられないということをファイも見ていたのになー。それとも、今はもうそれを願ってはいないのかしらん?わかりませんねー。

 先週は『ツバサ』をコンビニで立ち読みする夢を見た。(日常じゃん・・・)巻頭見開きカラー扉で、それが2人の(今の姿の)ファイ、つまりユゥイとファイのイラストだったんですな!そのイラストは緑と赤のグラデーションだけ(肌と髪以外ね)で全面塗られていて、あとは輪郭部分とかにホワイトで光を入れてるだけで、すっごいきれいだったんですよーv繊細な線で描かれていて、少女マンガ!て感じで、「CLAMPさん、少年マンガだから線を太く描いてるって言ってたけど、もうこだわるのやめたんだー」と思いつつページをめくると、侑子さんの部屋。といってもいつもの屋敷の一角という感じじゃなく、異次元の空間らしい。その部屋の帳の向こうにある人物がいて、侑子さんはその人を匿っているもよう。「この人がキーパーソンなんだー」と思ったんだけど、過去作品のキャラなのか、ツバサオリジナルキャラなのかがわからん・・・と首を捻っているところで目が覚めた。うーん、実際にはそんなキャラはいそうにありませんけどね!とにかく表紙のイラストが綺麗だったんですよー。私には文章で表現できません。残念!
 で、今週は『デーモン聖典』の夢。「えっ、最終回やったのに、後日話やってくれるんだ!」と読み始めて・・・。さすがに夢だけあって、LaLaを読み始めたはずなのにいつの間にか自分が忍になって話が進んでいく・・・。ま、話はあまりに荒唐無稽なのではぶきますが(笑)目が覚めて気づいたのは、「あ、暑いからあんな話だったんだ・・・」今タオルケット1枚で寝ていますが、それでも暑くて汗だくだくになっていたんですよ。それで夢の中で、火山が噴火するからって避難してたのね(笑)
 それにしても、毎日毎日映画なみにだらだら長い夢を見るので寝た気がしない。おもしろいときもあるけど、もういい加減に勘弁してほしい・・・

「デーモン聖典」最終回感想~~

2007年06月23日 | デーモン聖典関連


「いつか何百年、何千年先 赤龍がここに還ってきて 忍ちゃんの生まれかわりと会うの そんなの夢だよね 都合良すぎる夢だけど」

 え?違う?わし、これだったらまあまあ納得のエンディングよ。
 ・・・って、喝──ッ!えーい、また予想はずれた(少年に見えたのもなだったよ。んもー)し、ミカがこの次元を去ればりなの逆行は直るって、おいそれでいいわけ?!そりゃあんまり都合良すぎるだろう!?それにあっさりさりーと赤龍はK2に負けちゃって(しかもその場面はすっとばし)、K2と赤龍の力の差ってもなの「大好き」って言葉分でしょ。五千年と数千億年の経験の差とか、K2が半分地球の生命体という差は問題にならんのか・・・
 まあ、この結果というのはミカのセリフに尽きるよね。「地球の住民にとってこの奇跡の幸運。もなは小さな優しい幸せだけを望む普通の少女。その彼女が魔王の聖典となった事、この幸運を喜びたまえ」・・・忍の破滅願望に引きずられた赤龍が地球を壊そうとしたこととは正反対。そりゃー「健全な終わり方」つーか「前向きの未来でハッピーエンド」つったら、赤龍と忍のコンビじゃあかんでしょ(爆)基本的に樹さんは健全な思考の方だから!(闇己は死んでも魂はちゃんと七地たちの元に帰ってきたし!19は自殺(?)してムトー×フェリシアだし!──あ、ネイト×24はいいよねー破滅的な愛!!ツボです・・・──「獣王星」はけっこうアレでしたけど、最後は「ティズ」=希望で終わりでしたし。だけどあれは納得の終わり方だったな・・・。あ、1回カタストロフィがあったところが私のツボなのか(爆笑))私ゃ破滅願望強いので(爆)書くものもやおいのくせに好きあっていても別れちゃうわ、すぐ主人公か主要人物殺しちゃうわ、戦闘場面大好きだわ、しょーがねーもんなー
 結末はどうだろうと、少なくとも腐女子の喜ぶ終わり方にはなるわけないので(笑)いいんだけど、せ、せめて赤龍にちょっとはフォローがほしかったよ。死ぬとき何考えたかなー、忍のこと思いながら消滅したのかなーとか考えると、こっちが切なくて泣けてくるよ!!
 あと、これ伏線だろうと思っていたれなの死因&忍の高熱、説明ないままだったな・・・。れなは普通に病気で、忍は自家中毒か?それから忍の自覚のない破滅願望とか、この辺はもっと連載長ければ突っ込んでほしかった。ま、そんなことしてたら脳天気にりなとくっついてられないかそれにしてもなー、ぶつぶつ・・・(と、「輝夜姫」のときも「これ伏線だったろう」と怒った記憶が・・・
 ミカはマスターになっても「クソマジメな赤龍」と違ってマスターの義務なんか果たす気さらさらなさそうだよね(笑)(K2と赤龍のせいでねじれた空間を修復しただけでも大サービスだ)で、この次元から去っていって、れなの転生を待つっていったって、その前に確実に人類は滅びていそうだけどねあ、別に人類じゃなくてもいいのか。じゃ、別の次元の別の生命に生まれかわればOKだから、「滅びそうな地球の面倒なんか見る気ないね」と去っていったというわけで!
 彼がれなの過去を時空を超えて見てきたというのはイイ!いいですな!赤龍も忍がちーとも寄りつかなかった間、過去、現在を覗き見していたに違いない!でなけりゃこんなに離れてなんかいらんないよな!

 はー・・・。それにしてもなー。つくづく、忍って「情けないヤツ」(by香山さん)だよな・・・。いや、そんなところコミで好きなんですけど!(注。赤龍×忍という前提で、しかも私は常に攻目線。つまり赤龍目線で見てますから!女の目では見ていません。女目線から見たら・・・すまん、顔以外で好きなところない・・・←ひでぇ
 自分で妄想話を書いていて、最初そんなこと思っていなかったのにりなのセリフに出て来て、「そ、そういやそうだ・・・」と気づいたのは、結局忍の行動パターンって「逃げる」なんですよねー。だからりなを本気で直そうと思ったら、ちゃんとりなを調べなきゃいけないのに、そんな研究してる様子もなかったし(専門外だしな・・・)、南の島へ行った理由は書かれてないけど、りなが成長しないのでこれ以上人目のある中にいるのが難しいと思ったのか、ちょっと休養か知らないけど、あそこで逆行が再発したのに気づきながらそれでなんとかしようとしていた形跡もないし。最後はミカ頼み。(いや、どうしようもないっちゃないんですけど)・・・本当にりな、この男でいいのか?!・・・ま、りなは母性と包容力の塊のような女の子なので、こういうタイプでいいのかもしれないな・・・

 以上、腐女子視点の連載終了にあたっての感想(欲求不満・・・)でした。一少女マンガ読者、樹さんファンとしては、キャラもアイデアも展開も魅力的でおもしろいし、最後はちゃんとK2ともな、忍とりなでハッピーエンドで、良かったです。樹さんの作品は大好きです!次の作品ももちろんついて行きます!(が、今度は萌えの余地がないのがいい・・・気が休まらねぇ・・・←自業自得じゃ!!


いつの間にか1周年

2007年06月21日 | オタクな日々
 このブログを開始して、18日に1年が経ちました。その前には別のサービス利用して日記は書いていたんですけど、わりとぬる~くやってまして、ブログに移動してからの勤勉(?)ぶりは我ながらどうしちゃったんでしょうね~。ま、今後はまたまったりペースに戻ります。
 18日には「1周年です」という内容を書き込むつもりだったのですが、その日はPC立ち上げる余裕もなく、必死に「デーモン聖典」の妄想話を書いておりました・・・もう過ぎちゃっていることに気づいたのは⑦をUPしたときでした・・・。
 とりあえず、自分で祝ってみよう!めでたい!ドンドン・パフパフ~
 明日は阿鼻叫喚状態かと思われますので、土曜にじっっっくり「デーモン聖典」最終回について、叫びたいと思います・・・

デーモン聖典最終回前の妄想その⑧(完)

2007年06月21日 | デーモン聖典関連

 3週間後。ウェザーヘッドの戻ることになった忍は、すぐにアメリカ行きの辞令を受け、慌しくニューヨークへ引っ越した。住居はリンデルツ家の別邸を使うことにした。ニューヨーク市中心部から車で1時間、緑豊かな郊外の町に、ウェザーヘッドの本部研究所と、リンデルツ家別邸はあった。その別邸から2キロほどしか離れていない一軒家をもなたちのために借りた。来週には彼女たちもやって来る予定だ。<o:p></o:p>

 窓の外は整えられた庭だったが、わずかな月明かりでは、その美しい花々もほとんど見えない。<o:p></o:p>

 忍は出窓に腰かけて、ぼんやり窓の外に視線を投げていた。<o:p></o:p>

「……忍」<o:p></o:p>

 ドアが開いて、廊下の明かりが暗闇の部屋に射し込む。はっとして忍はドアの方を見やった。<o:p></o:p>

「どうした?明かりもつけないで」<o:p></o:p>

「いえ、なんでも」<o:p></o:p>

 忍が降りようとするのを制して、ヘルムートはやはり電灯はつけないで、彼のもとへやって来た。ヘルムートは忍の横に腰かけた。<o:p></o:p>

「何を悩んでいる?」<o:p></o:p>

「悩んでいるわけでは……。これからどうなっていくのかと…考えていただけです」<o:p></o:p>

「後悔しているのか?」<o:p></o:p>

「……何を?」<o:p></o:p>

 忍は、白く浮かぶヘルムートの顔を見やった。ヘルムートはいつも通りのほのかな微笑みを浮かべている。<o:p></o:p>

「君はりなを愛していたし、りなも君を愛していた。君は私が地球を破壊するのを止めるだけで、私とやり直したいなどと言わなければ、成長し始めた彼女がやがて成人すれば、彼女と結ばれただろうに?」<o:p></o:p>

「………!」<o:p></o:p>

 パン、と思い切りヘルムートの頬を平手打ちして忍は、早足でドアにドアに向かった。<o:p></o:p>

「忍……!」<o:p></o:p>

 ヘルムートに腕を掴まれ、彼の方を向かされる。<o:p></o:p>

「…どうして怒らないんです……!」<o:p></o:p>

「ああ、すまない。痛みは感じないし…君に感情をぶつけられるのは気持ちいいしね。昔の君は、私を嫌うばかりだったから」<o:p></o:p>

「……」<o:p></o:p>

 力を抜いてうつむいた忍を、ヘルムートは抱き寄せた。<o:p></o:p>

「……そんな考えは、浮かびませんでした。確かに僕は、彼女がとても大切だった。愛していた…。だけどあのとき、僕はあなた以外のことは考えられなかったんです。……信じてください。僕はちゃんと、承知の上で、あなたとここにいるんです」<o:p></o:p>

「君にとっては、いろいろな人生や関係を捨てることをね。鎖持ちの我々は、独占欲の塊だから」<o:p></o:p>

 赤龍の結界の中で、赤龍は忍に確認した。K2と彼が戦って彼が喰われれば、忍は彼から解放される。このチャンスは二度とないだろうと。<o:p></o:p>

「私は嫉妬深くて独占欲が強い。私を受け入れれば、私はお前をがんじがらめにするだろう。私以外を愛したり大切に思ってはいけない。つまり恋人を作ることも結婚することも、こどもを持つこともできない。それでもいいのか?」<o:p></o:p>

「……ああ。あなたはりなを殺そうとし、僕を殺そうと思った。でも、そこまであなたを追いつめて苦しめたのは僕だ。だから……覚悟している」<o:p></o:p>

 そう忍は答え、彼らは結界を出て地球に戻ったのだ。<o:p></o:p>

「捨てるのではありません。それらよりもあなたの『聖典』であることを選んだだけです」<o:p></o:p>

「忍……」<o:p></o:p>

 ヘルムートは、忍の頬にキスをして体を離した。<o:p></o:p>

「もう遅いから休みたまえ。ここのところ引越しや雑用で疲れているだろう?明日も仕事だし」<o:p></o:p>

「ええ。あなたは?」<o:p></o:p>

「私は片付けなければならない仕事が残っているので、このまま続けるよ」<o:p></o:p>

 ヘルムートは、結局「ヘルムート」としてリンデルツ・グループ会長職を続けていた。「ヘルムート」がデーモンだったことを知っているのは、リンデルツ・グループの幹部の中でもさらに一握りの者と、SMIC新代表に就任したクロムウェル卿だけだ。<o:p></o:p>

 ゾフィーからの提案は、赤龍には当分「ヘルムート」でいてもらうという、驚くべきものだった。<o:p></o:p>

「とにかく!リンデルツ・グループ主要15社のうち5社の役員を兼務して、グループ会長でもあるヘルムートが急死しましたじゃ、困るのよ!今は病気療養中ってことで私が代行ってことで何とかなってるけど、長引けばコントロールが効かなくなって、後継者争いで業績が落ちるのは目に見えているわ。それも痛手だし、何よりリンデルツ家が経営権を失うことにもなりかねない。それは絶対に阻止しなければ。そのためには、私が家督を継ぐまでの時間が必要なの。能力があるのならデーモンでも使うわよ!言ってる意味、わかるわよね、忍?」<o:p></o:p>

「え……」<o:p></o:p>

 忍は隣りのヘルムートを見やった。ヘルムートは微笑みを崩さず黙って見返す。<o:p></o:p>

「しかし……」<o:p></o:p>

「10年でいいのよ。そうしたら私が引き継ぐわ。忍、あなたからヘルムートに言ってちょうだい。今更放り出すなんて無責任よ!」<o:p></o:p>

 と言われても、行動原理が違うのだからしょうがないじゃないか…と迷う忍に、ヘルムートは言った。<o:p></o:p>

「君が望むのなら、構わないが。もっとも、リンデルツの権力を保持するというのは賛成だ。りなたちのことを考えるとね」<o:p></o:p>

「……いいんですか?」<o:p></o:p>

「退屈しのぎにはなるよ。君といる時間が減るのは不満だが、君が慣れるまでは少し距離をおいたほうがいいだろう」<o:p></o:p>

 そんなわけでSMICの記念式典で代表交代が発表されてから、ヘルムートはまずは病床からのメールや電話により指示というかたちで仕事への復帰を開始した。ヘルムートが完全に会長職に復帰したら、ゾフィーは大学に戻るつもりだという。<o:p></o:p>

 まるで昔に戻ったようだ。リンデルツ当主のヘルムート、学生のゾフィー、ウェザーヘッドに勤める自分──。けれど、まだ2年と経っていないのに、昔とは何もかも違ってしまった。自分はヘルムートが「ヘルムート」でないことを知っている。家族のように愛しく思った少女たちはいない。今、自分の傍らにいるのは、恐ろしくも哀しい生き物である「赤い龍」。<o:p></o:p>

「ヘルムート……?」<o:p></o:p>

 休みたまえ、と言いながら、ヘルムートの両手は忍の肩を掴んだままだった。<o:p></o:p>

「忍……」<o:p></o:p>

 ヘルムートが顔を寄せる。<o:p></o:p>

「……愛してるよ」<o:p></o:p>

 彼は忍の口を唇で塞いだ。<o:p></o:p>

 本当に自分が彼を愛せるのか、どんなふうに愛せるのかはわからない。だけど今、自分の不用意な言葉が彼を殺してしまうのが怖いと思うのは、彼に惹かれ始めている証拠だ。<o:p></o:p>

(忍、私は君が望むなら、君の死の瞬間まで待つと言った。君といる時間は至福の時だ。できる限り多くのこの時間と君の記憶が欲しい。だから君に無理に言わせたりしないから安心したまえ。だが、君が言葉を呑み込むのが苦しいというのなら、こうしてあげるよ)<o:p></o:p>

 ヘルムートはその言葉を守って、愛していると告げても返答を求めない。言葉を封じるためというには長すぎる口づけを受けながら、ずっとこのまま封じられていたいと忍は願った。自分の生の最後の瞬間──死が彼と自分を分かつその時まで。

2007.6.20



 だ…駄作!途中までは良かったんだけど、赤龍と忍の「ずぶ濡れラブラブシーン」を書いたら息切れしてしまった…特にこの最後の章はダメダメだぁ
 うっかり書き始めたこの話、そんなに長くなるとは思わなかったけれど、終わってみれば400字原稿用紙換算で70ページ。ばかか、私は…
「デーモン聖典」最終回を目前に、今は判決を待つ被告か、処刑を待つ受刑者の心境です…読みたいけど読みたくないような…。どっちにしても、妄想する楽しみがひとつ減ってしまうんだよなー


デーモン聖典最終回前の妄想その⑦

2007年06月20日 | デーモン聖典関連

 ベルを鳴らすと、しばらくしてドアが開いた。りなともなは思わずびくりとした。ドアを開けたのはヘルムートだった。
「どうぞ。入りたまえ」
「は、はい…」
 ゾフィーの部屋の隣りのこの部屋も、呆れるほどに広い。だからホテルのようにベルが付けられているのだろう。
 二間続きの奥が寝室で、ベッドの上に半身を起こしていた忍は、顔を綻ばせた。
「ありがとう、りな、もな。さっきはひどい格好を見せてしまったね」
「忍ちゃん…、体、大丈夫なの?」
 ふたりは忍の枕元に行った。
「大丈夫だ。本当に、たいしたことないんだ」
 パジャマに着替えた忍は、髪も乾き、シャワーを浴びたらしく顔色も戻っていた。
「忍ちゃん、雑炊とハチミツ入りレモンティーなの。食べられる?」
「ああ。ありがとう、りな。いただくよ」
 忍はトレーを膝の上において、レンゲを手にした。
「……ッ」
「忍ちゃん?おいしくない?」
 一瞬忍が顔をしかめたのに、りなが気づいた。
「あ、いや…少し喉が痛くて…」
「喉と肺が、ガスで炎症を起こしているんだ」
 ベッドの足元に立っていたヘルムートが言った。彼は忍の近くに寄った。
「できれば治療を受けたほうがいいのだが」
 忍は苦笑した。
「原因を医者に説明できないよ。それに、そんなにひどく痛むわけじゃない。時間が経てば直るよ」
 忍はさっきよりも少量をすくって口に入れた。
「……忍。私は数日ここを離れる。だが、何かあればすぐに戻るから安心しろ」
「赤龍?どこへ行くんだ?」
 忍はとまどったように彼を見た。
「今の霊力では、この姿でしかいられないからな。狩りをしてくる」
「この姿しかって…また『ヘルムート』の姿をとるということか?僕は今のままで構わないが……」
「人間社会で生活するなら、不便だからな。それに、お前にこども扱いされるのも困る」
「……こども扱いなどしていないし…僕は……本当は、あなたの本来の姿がいちばん……」
 視線を落として呟いた忍を見て、ヘルムートは満足した猫のように笑った。
「では忍、お前とふたりきりのときには、お前が望めば元の姿になろう。私も、お前に撫でられるのはとても気持ちがいい」
「……そ……そうなのか?それなら……良かった……」
 忍は何となく赤くなって、黙々と食事を続けた。
「…ごちそうさま。りな、おいしかったよ。ありがとう」
 珍しく忍が全部食べきったので、りなはほっとした。
「忍、私は行くが、その間にお前がどうしたいのか、何がしたいのか、はっきりさせておけ。私はお前の望みを拒まない。どんなことであろうと。SMICは私の手を離れたので解散させることはできないが、どのみち方針は変更されるだろう。私はこの先人類の運命に関与するつもりはない。マスターとしての使命には反するが、お前の望みの方が優先だ。私はお前のそばにいられるのなら、あとはどうでもいい」
「赤龍……」
 忍の目は、傍らのもなとりなへと向けられた。赤龍のもとへ行こうと思ったときには、その先のことなんて考えられなかった。赤龍が自分から憎しみの言葉を引き出すためにとった方法が残酷であるほど、彼の絶望がそれほど深かったのだと気づかずにはいられなかった。
「どう手を尽くしてもお前の心の氷は融けない」──赤龍の残酷な言葉や仕打ちは偽りで、「愛を求める“デーモン”、そんなものが私だと!?」という血を吐くような絶望の言葉が物語るように、彼は出会ってから──いや、数千億年もの間、自分の心と愛を求め、渇望していたと思い知らされた。だからこそ、彼の心に応えたいと思った。
 しかし……だからといって今更リンデルツ家に戻ることも、もなとりなと別れることもできない。りなの逆行症候群も解決していない。そのことを考えると、本当はSMICからウェザーヘッドに戻って研究を続けた方がいい……。
「『ヘルムート』をどうするかは、ゾフィーの意向も聞かなくてはならないしな。もし連絡を取るなら事情を説明しておいてくれ。それから……」
 ヘルムートはベッドから少し離れて立った。ゆらり、と空気が歪む。
「りなのことだが。K2が成熟して霊力が私と同程度にまで上がったこと、もなが『聖典』となったことで、"妖怪"との接触で起こった逆行よりも、もなを通じたK2の影響の方が上回るようになった。もなとの年齢差は縮まらないだろうが、時間の進行は始まった。数ヵ月後に計測してみれば、はっきり結果が出るだろう」
「何だって!」
 ヘルムートは消えた。
 3人は顔を見合わせた。
「うそ……本当に…?……りなちゃん!!」
 わっ、ともなはりなを抱きしめて号泣した。りなは茫然と、もなの背に腕をまわした。
「……私……大人になれるの……?」
「そうよ!…そうよね、忍ちゃん!」
 もなは腕をゆるめて忍を振り返った。忍もまだ実感できず、茫然としていた。
「ああ……。赤龍は、今更こんなことで嘘はつかないと思う……。りなが成長し始めたと彼が言うなら……」
 ようやくその言葉が、目の前の少女と結びついた。
「……りな……っ」
 忍は両腕を伸ばして、りなを抱き寄せた。
「良かった……!とにかく、今は前へ進み始めたんだ……!根本的な解決ではないけれど、それはいつか見つけてみせるから……!」
「忍ちゃん……」
 あれほど望んでいた「大人になれる」ことは嬉しかった。なのに、一抹の哀しみを感じるのは、こうして忍に抱きしめられることがなくなることだとわかっていたからだ。忍が自分を抱きしめたり手をつないだりしてくれるのは、自分がこどもだからだとわかっていた。現に、もなが少女らしくなるのと同時に、忍は自分からもなに触れることはしなくなった。いつか成長した自分が忍の横に並び、彼に女性として見られる日を夢見ていたことも、叶うことはない。忍の隣りは、赤龍のものとなったのだから。
 忍に抱きしめられながら、りなはそっと涙をこぼした。

 その後K2が戻り、事の顛末を聞いて「何だよそれーッ!?オレ、喰われ損?!」とひとしきり拗ねていた。
 忍は翌日熱を出して寝込み、ベッドの中からゾフィに電話をかけた。忍の説明に「何ですってー?!」と怒りながらもゾフィーは一度日本に寄ることを約束した。
 SMICによるデーモン接触被害者数の統計は、毎日発表される。その数がいきなり減り、3日後にはひと桁にまでなった。この現象についてSMICは「調査中」「一時的なもの」とコメントしていたが、
「赤龍が喰っちまったんだな」
 K2は、忍たちの推測を肯定した。
「今、この地球がいちばんデーモンの密度が濃いからな。別次元へ狩りに行くより効率いいじゃん。それにしても…多少残しておいてくれりゃあいいのに全部喰っちまうなんて、勝手なヤツだよなー」
 ゾフィーは1人で──もちろんSPはついているが──東京の別邸を訪れた。
「肝心の赤龍がまだ戻ってないってどういうことっ」
 と文句を垂れつつ、K2を思うさま構って鬱憤を晴らした。その夜こどもたちが寝静まり、自室に引き取ったゾフィー以外がリビングでほっとくつろいでいたところへ、赤龍は現れた。
 少年の姿の赤龍は、ケーキにかぶりつくK2と目が合ったが、かすかに片眉を上げただけですぐに向きを変えた。
「忍」
 にっこりと微笑んで、自分より背が高い忍を抱きしめる。
「そばを離れて悪かった。体は平気か?」
「あ、はい。…あなたは?その……」
「霊力なら充分に戻った。必要なときに大人の姿もとれる。…ゾフィーが来ているのだったな。彼女の前では前の姿をとった方がいいだろう。考えはまとまったか?さっそくゾフィーを呼んで話をしよう」
 赤龍が戻ったと知らされたゾフィーは、すぐにリビングへやって来た。
「……ヘルムート!!」
「やあ、ゾフィー。久しぶりだね」
 思わず兄の名で呼びかけた彼女は、困惑気味に『ヘルムート』を見つめた。彼が実はデーモンだったと教えられても、目の前で変わるさまを見たわけでもなく、まして17年も「兄」と呼んできた相手である。以前と寸分違わぬ美貌と、内心を読ませない微笑を浮かべた『ヘルムート』がヘルムートではないと言われても、実感は湧かなかった。
「このたびのことでは私が勝手をして、君に苦労をかけてしまった。許して欲しい」
 優雅な仕草で胸に手を当てて頭を下げたヘルムートに、ゾフィーは気圧される。
「それは……あなたがデーモンだっていうのなら、そんなこと今更だけど……」
 彼女は、心配そうな忍をちらりと見た。
「忍があなたの『聖典』だなんて信じられないわ。だってあなたは忍の言うことなんて、何一つ聞きはしなかったじゃない?」
「違うよ、ゾフィー。忍は何一つ、私に望んでくれなかった。私から離れたい、それ以外はね。ただ、その望みだけは私が叶えてあげられないものだったというだけだ」
 ヘルムートは可笑しそうに笑った。ゾフィーはため息をついてどさりとソファーに腰をおろした。
「それで?!忍、これからどうしたいの?」
「ああ……」
ヘルムートに促され、忍は座った。その隣りにヘルムートも腰かける。
「電話で…少し話したが、やはりSMICにはいられない。そうすると研究を続けるにはやはりウェザーヘッドに戻るのがいちばんいいと思う」
「だったら、言ったでしょう、ウェザーヘッドはリンデルツ傘下なんだから、仕える権力は使いなさい。SMICへの出向を取り下げさせれば済むことよ。ついでに断り続けていた本社への異動も自分から希望を出せばすぐに通るわよ。本当はそうしたかったんでしょう?」
「……もな、りな」
 忍は、身を寄せ合って彼らの話を聞いていた少女たちに向き直った。
「君たちが嫌でなければ、アメリカへ行かないか。そこでりなを直す方法を探したいんだ。研究所のあるところは都会から少し離れていて、そこなら大きめの一軒家を借りることもできる。そこでみんなで暮らさないか?」
「私は、いいと思うよ。今は学校にも通えなくて…だったらどこに住んだって同じだもん。K2やミカが一緒にいられるなら、それでいいよ。ね、りなちゃん」
「………」
 りなは顔を伏せた。
「りなちゃん?」
「……私……」
 りなは、顔を上げた。
「アメリカへ行くのは構わない。だけど、お願いがあるの。忍ちゃんたちとは、住む家を別にしてほしいの」
「ええ?!なんで!?」
「それから、もしウェザーヘッドが必要なら、研究対象として協力したい。実験とかにも参加します。ただ、その研究のメンバーに、忍ちゃんは加わらないでほしいの」
「……りな……?」
 りなは、信じられないように茫然としている忍を見つめた。
「私、考えたの。本当に逆行症候群を治したいなら、自分も協力しなきゃだめだって。だって、デーモンと接触した人はみんな消えてしまって、研究するも何もどうしようもない。鎖でもないのに生き延びているのは私だけ。だったら、私を調べるのが一番の手懸かりになるはず。……忍ちゃんだって、わかっていたはず。でも、研究体になれなんて言えなかったのよね。優しすぎて……本当にすべきことに、目をつむってしまった」
「りな!!」
 忍は思わず立ち上がった。
「忍ちゃんは、いつも私たちのためにいろいろしてくれた。ウェザーヘッドに就職したのだって、通うのにぎりぎりの距離の遠い住居を選んで、本当にやりたい研究はあきらめて。でももう……それはやめて。忍ちゃんは、自分のために、自分の幸せのために、自分の人生を生きて。私たちはこどもで…忍ちゃんにとっては被保護者で、家族だけれど、一生忍ちゃんと一緒にいることはできないの」
(一生、彼のそばにいたかった……。だけど、忍ちゃんはその相手を選んでしまった)
 今やりなには、なぜ自分が彼に愛されたのに、それ以上には愛されず、選ばれなかったのかわかっていた。決して心変わりしない、彼だけを愛して、決して死んだり去っていったりしない相手。そんな相手でなければだめなほど、彼の心の傷は深く、暗い。
「でもね、忍ちゃん。私たちは家族だし、忍ちゃんは放っておくとまたちゃんと食事をとらないから、せめて夕ご飯は一緒に食べようね。だから『スープの冷めない距離』に住むのが希望よ」
 りなは明るく付け加えた。涙の代わりに忍のための笑顔を浮かべて。
 忍は、力なくソファに座り込んだ。そして両手で顔を覆った。
「……りな……」
 痛ましく、りなは彼を見つめた。
「……すまない……」
 忍はうつむいたまま、呟いた。
「……忍ちゃんは、悪くないわ」
 りなは心の中で、今度こそこの恋は終わったのだと、自分に告げた。



 さあ、次こそ終わるはず!終わらないとも、もうだめ・・・。思考停止中しかし、雑炊とハチミツレモンティーという組み合わせはどうなの私が冬に食いたいもの並べただけじゃん・・・


見、見てしまった・・・;デーモン聖典最終回下書き!

2007年06月19日 | デーモン聖典関連
 うぎゃ!我慢しきれずうっかり「デーモン聖典」最終回下書きを見てしまった!
 うわ~~、やっぱ「忍×りな」か!そして・・・走り去っていくのはヘルムート少年(赤龍)?多分赤龍がりなの逆行症候群をどうにかしてくれたんじゃないか・・・?うう、そうだったら予想通りだけどー!そこは別に(どうでも)いいんだけどー!忍×りなで終わるのだけは勘弁してほしかったよー!!

 えーと、妄想話、まだ下書き終わってません・・・。もー、どこで切ればいいんだ・・・。おセンチに終わってしまっていいのかな!リリカルだ・・・。エロなしは厳しーッ!!

デーモン聖典最終回前の妄想その⑥

2007年06月17日 | デーモン聖典関連

 うひゃ~今度で最後とか言っておきながら、終わってません平日に何も書けなかったのが敗因です・・・。あと、もっと軽くまとめるつもりが例によってうだうだと長くなってしまったことと。なんか、どうやってまとめて終わらせたらいいのか難しくなってきて(要するにどこでぶっちぎるか!)、焦っております・・・。LaLa発売前には何とか!
 なのに、これから家族サービスに出かけなければならない・・・(父の日だからさー)。うわーん、メシなんか食いに行ってる場合じゃないっての!!



「……戻ってきた」
「え?」
 ミカは、読んでいた雑誌をソファの上に置いた。それと同時に空中からいきなり2つの人影が出現した。
「…忍ちゃん!」
「忍ちゃん……!」
 床に下り立ったときにふらついた忍を支えたのは、少年の姿をしたヘルムートだった。その存在が、りなともなが忍のそばに行くのを押し止めた。
 忍の肩より少し上くらいの背で、まだ頬の線に甘さの残る中性的な美貌のヘルムートが、忍の腕にしっかりと腕をからませ、寄り添っている。
 忍は眼鏡も靴もない上に髪から服からびしょ濡れというひどい有様で、顔にはやけどしたような赤い斑点がいくつかあり、顔色も良くない。
「……りな、もな、ただいま。心配かけて、済まなかった…」
「そんなこと……。どうしたの?何があったの?」
 もなたちは、帰ってきたミカからK2と赤龍の争いはほぼ互角で、赤龍は一旦逃亡し、K2は霊力の補給に行ったこと、そこへ獏と忍がやって来て、忍の存在に気づいた赤龍が彼をさらって別次元へ移動したことを聞かされてはいた。
 それでは忍はもう戻ってこないのかとショックを受けた彼女たちに、
「忍は赤龍を説得して地球を滅ぼすのを止めるつもりだった。だったら説得し終わったら戻ってくるだろう」
 とミカは言ったが、りなは首を振った。
「戻ってくるとは限らないわ。だって忍ちゃん、帰ってこない覚悟をしてた。……赤龍にとって、私たちは邪魔者だもの。赤龍がしちゃんと別次元にいることを望んだら、忍ちゃんは拒まないかもしれない……!」
 けれども、忍は戻ってきた。赤龍を伴って。それは喜んでいいはずのことだったが、K2が好きだと自覚したもなと違い、りなには手放しで喜べなかった。なぜなら忍の横には、艶然と微笑む赤龍がいた。ふたりが何を話し、何を決めて戻ってきたのかはまだわからない。ただ言えるのは、忍はやり直したいと求め──つまり侑と萩のような、或いはもなとK2のような関係になりたいと言い、赤龍は憎しみではなく「愛」を得られる希望を見出し、地球を滅ぼすことをやめたのだ。
(……言わなければよかった。ミカは、忍ちゃんが私のことをいちばん愛していると言ったけれど、女性として愛してくれていたわけじゃない……。なのに、私が恋愛感情をぶつけてしまったから、忍ちゃんはむしろ、迷いを捨ててしまった。私たちへの気持ちを引きずったままだったら、戻ってきた忍ちゃんは、もっと悩んだ表情をしていたはず。でも今は……忍ちゃんとの間に見えない壁を感じる……)
「大丈夫だ。獏、手間をかけさせて済まなかった。ありがとう。……K2は戻っていないのか?」
「まだ狩りをしているのだろう。霊力が戻ればここに帰ってくるだろう」
 ミカが答える。
「そうか…。戻ってきたら、伝えてくれ。もう赤龍と戦う理由はなくなったと。赤龍も、K2とミカと獏には手を出さないと約束してくれた」
「そういうわけで、残念ながら私はおまえを喰ってしまうことができない。命拾いしたな、“妖怪”。本当は私の忍をこんな目に遭わせた罪で死なない程度に喰って、回復できないように結界に閉じ込めてやるところだ」
 ヘルムートが氷のような微笑を浮かべて、ミカに視線の刃を投げつけた。対して、ミカも冷笑を返した。
「私はお前を呼び出す手伝いをしただけだ。感謝してほしいね」
「貴様……」
 一気に部屋の空気が重くなったような気がした。
「だめだ、赤龍!ミカも、挑発するのはやめてくれ。僕は何とも思っていない」
 ミカは軽く肩をすくめる。ヘルムートの腕を掴んで止めた忍は、そのまま咳き込んで膝をついた。ヘルムートも膝をついて、忍の背を抱えるようにのぞき込む。
「忍…もういいだろう。おまえには休養が必要だ。……もな、りな、何か喉を通りやすい食事と飲み物を30分後に持ってきてくれないか。2階の私の部屋へ。どこかわかるか?」
 もなたちは頷いた。
「忍、行くぞ」
 忍は口元を押さえながら顔を上げて少女たちを見た。
「ごめん……心配しなくていいから」
 安心させるようにかすかに笑ってみせたところで、彼らは消えた。
 もなは、はーっと息を吐いた。
「侑くんたちがもう寝ていて良かったわ。むちゃくちゃ怖いんだもの、赤龍。忍ちゃんはよく平気だよぉ。……りなちゃん?」
 はっと我に返ったりなは、心配そうに自分を見守るもなに、笑顔で取り繕った。
「あ、うん……。とにかく、忍ちゃんが無事に戻ってきてくれて良かったわ」
「そうよ、りなちゃん!忍ちゃんはちゃんと戻ってきてくれたんだよ。忍ちゃんが赤龍の『聖典』だからって、私たちが遠慮する必要なんてないんだから」
「……そうね……」
 忍は優しいから、今までと変わらない態度で接してくれるだろう。けれどこの先、自分たちと何をしていても何を話していても、忍は常に赤龍のことが頭にあるだろう。今まで忍が、就職するときも引っ越すときも、いつも自分たちのことを考えてくれたように、記念日やイベント、一緒に食事をすること、興味がないのにいつも自分たちに合わせてくれたように、これから彼は、何かをするときに意識せず赤龍のことを思うのだろう。それが彼が大切に思う相手への優しさで、彼の習性なのだ。
「そうだ…!ミカってば、いったい忍ちゃんに何したの?あんなずぶ濡れで、具合悪そうだし、赤龍は怒ってるし!……もう、笑ってごまかさないで。いいわ、"お兄さん"に聞くから!」
「……私、キッチンに行くね。忍ちゃんの食べられそうなもの作らないと」
「あ、待って、りなちゃん!」
 りなはリビングのドアを閉めた。


今週のツバサ「不幸の始まり」

2007年06月13日 | ツバサ・クロニクル関連
 ふたごのリ○~ズ~と歌いたくなるのは、私が年寄りだという証拠でしょうか・・・。表紙のユゥイ&ファイの愛らしさに鼻息が荒くなってしまう、オヤジなワタクシです。
 先週から引き続き悲惨な双子ですが、ユゥイは最初から最後までず~っと壁登りしてるんですよ。それだけで数年経っちゃってるんですから!というわけで、話が進んでいるようないないような。次回はもう少し話が進むかな・・・。

 昨日今日と、ニャンコがベランダで狩りをして、迷惑・・・。してもいいけど、獲物を家の中に持ってくるなっつーの獲物は虫。餌やってるんだから、そんなもん食べないでほしい半分食べて、半分残すのはもっとやめてくれ!!

デーモン聖典最終回前の妄想その⑤

2007年06月11日 | デーモン聖典関連

 誰か助けを呼ぶべきだと頭の隅では考えているのに、体が動かない。
 血溜まりの中で、ヘルムートの体が痙攣している。痛いのだろう。苦しいのだろう。かすかに胸が上下するたびに、ごぼごぼと血を吐く音がする。
 これが、死ぬということなんだ。ジュニアもこんなふうに切り刻まれ、たくさん血を流して死んだんだ。
 母も、死んだ。いつまでたっても帰ってこない母の代わりに、突然母の仕事先の店主だという男と警官たちがやって来て、警察署に連れて行かれた。大勢の大人たちが行き来するフロアの隅に座らされ、頭の上で会話が交わされるのを聞いていた。その内容から、母が仕事中に倒れ、死んだことを知った。
 保護施設で何日か過ごす間に母が亡くなったことを説明されたが、母の遺体と対面することも、埋葬に立ち会うこともなかったため、死を実感しないまま、アーミテージハウスに引き取られることになった。
 脳内出血で倒れた母は、わずかな間に意識を失ってそれほど苦しまなかっただろうが、働きづめに働いて、いつも妊娠した自分を捨てた父を憎み、その血を引いた、足手まといでしかない僕を疎ましく思いながら貧困の中で死んでいった。
 みんなこうして、死んでしまう。自分の周りから、みんないなくなってしまう。自分もいつか、こんなふうに死ぬんだ。……だけど…どうして、今じゃないんだろう。どうして僕が先じゃないんだろう。僕が……僕こそが、いなくてもいい存在なのに。いなくなるべきなのに。
 僕のせいでジュニアは殺された。目障りな僕のせいでヘルムートは自分自身を殺した。母だって、僕がいなければもっと違う人生を生きられたはずだ。アーミテージハウスも、僕がいたからこそ取り壊され、僕がいたことも、僕の存在ごと抹消するように、跡形もなく消えてしまった。
 僕がいなければ…そんなことにはならなかったのに。僕の方がいなくなるべきなのに、どうして僕はまだ、ここにいるんだろう?
 ……僕はもう、見たくない。僕の前から消えていく大切なものを。自分の罪を。自分が生まれてくるべきではなかったという事実を、もう見たくない。
 僕は……消えてしまいたい……!

「あなたは、鎖である僕を見つけてあの場に現れた。あなたには、ヘルムートではなく僕が鎖だとわかっていたが、ヘルムートに接触して彼を消滅させることにした。なぜなら僕の精神が壊れかかっていたことに気づいたからだ。だから一刻も早く死にかけている彼を僕の前から取り除くべきだと判断した。そうだろう?」
“………”
 忍は意識せず、赤龍の背を手で撫でていた。赤龍は半眼でその感触に身を任せている。
「あなたはその時には僕に接触するつもりはなかった。そんな精神状態の僕に接触したら望ましくない結果になることは目に見えていたからだ。あなたはヘルムートの肉体を消滅させたあと、そのまま一旦立ち去ろうとした。なのに、僕はそれを引き止めた」
 手を止め、忍は伏せていた目を赤龍へと向けた。赤龍もうっそりと目蓋を上げ、忍を見つめ返した。
「僕はあなたがヘルムートを消滅させたのを見て、あなたが僕の望みを叶えてくれると思った。あなたなら…神様でないことはわかっている、悪魔でも怪物でも何でもいい、あなたなら僕をこの世界から消してくれる、そう思ったんだ……」

 目の前にいるこれは……何?赤い……ドラゴン…?
 ベリンダ先生が言っていた。悪魔はいろいろな姿で現れる。ドラゴンは、悪魔が空を飛ぶときに変身した姿だと。そしたらこれは……赤い悪魔なんだろうか。それとも、ただの怪物なんだろうか…。
 だけど、何だっていい。こいつは触っただけでヘルムートを消してしまった。次は…僕の番だ。僕も、やっと消えることができる。何もかも、終わりになるんだ…。
 赤いドラゴンは、翼を広げた。消えるときは、どんな感じだろう。痛いのかな。…でももう、ヘルムートは苦しくないよね……もう楽になれたんだよね……。
「……待って……!?」
 叫んだつもりだったけれど、自分の耳にも届かないような、かすれた声しか出なかった。けれども、ドラゴンは飛び立とうとするのをやめ、僕をじっと見つめた。
「……お願い……僕も…僕も消してください……」
 僕は、ずるずると這っていって、必死に手を差しのべた。なぜだか、ドラゴンは逃げるように後じさった。
「……僕に、触れて……お願い……」
 はるか頭上にあったドラゴンの頭が、長い首をくねらせて下りてきた。口元からは大きな牙がはみ出し、金色の目が爛々と光っているのに、少しも怖くなかった。赤いガラスのような鱗が、きれいだった。
 近づいてくる鼻先に、僕は手を伸ばした。
 その瞬間、目の前で爆発が起こった。
 真っ白な光の渦に巻き込まれる。金色の火花がきらきらと飛び散る。「自分」の輪郭が消えて、光の中に溶けていく浮遊感と恍惚。
 その光の中に、金色のものが浮かび上がる。それは、ドラゴンの瞳ではなく……
「……ヘルムート……」
 その青い瞳が開いて僕を捕らえたところで、意識が途切れた。

「…あなたはこうなることを怖れていたのに、僕のせいであなたはヘルムートの姿を取らざるを得なくなった。僕たちの関係がこんなによじれてしまったのは、僕の責任だ…」
“……お前の願いを拒むことは、私にはできなかったのだ、私の『聖典』よ。だからこそ接触する前からわかったのだ。お前が私の『聖典』だと。我々は『鎖』を求め、『聖典』を求める。いつも我々が一方的に求めるだけだ。なのにお前は、私を求めた。死を望んでのことではあったが、愛する者の姿をした都合のいい身代わりではなく、この姿の私自身を求めてくれた。その瞬間にわかったのだ。
 お前に求められることは、どれほど私に喜びをもたらしてくれただろう。私に触れたいというお前の切なる望みを、どうして私に拒めよう。…だが、私には本当にお前が望んだ消滅を与えることだけはできなかった。『聖典』の望みを叶えたいのに叶えられないという葛藤の末、私が選んだのは、お前の記憶を封じることだった。私と出会ったこと、私がヘルムートを消したこと、私に死を与えてくれと望んだこと、私がヘルムートの姿に受肉したこと…。私はヘルムートとして、お前が求めてやまなかった肉親の愛や、お前はここに存在することを望まれているのだという自信を与えてやろうとした。
 しかし、それは間違っていた。そもそもお前が私の『聖典』となったのは、私を身代わりではなく、私自身を求めたからだったのだ。グリフィンが『聖典』の愛を得たときに、気づくべきだった。あの少年は兄の姿をしていても兄ではないと知っていて、グリフィン自身を愛したからこそ、あれは「真実の愛」だったのだと”
「……赤龍……っ」
 忍は地面に手をついて身を乗り出した。
「どうか、僕の過ちを許してくれ…。もしあなたが望んでくれるのなら…やり直したい。ヘルムートとしてではなく、あなたともう一度やり直したいんだ……」
“忍……”
 赤龍は、頭をもたげた。
“それがどういう意味なのか、わかっているのか?”
「わかっている……つもりだ」
 忍の脳裏を、置いてきた人々が過ぎった。りなともな。K2とミカ。ゾフィー、香山、ソールズベリィ。…父には、別れの挨拶を済ませてきた。死の迫った父親へのではなく、この世界から去ることになるかもしれない息子からの。
「…正直言って、まだ、あなたとどんな関係を築けばいいのかわからない。あなたを愛するということが、どういうことか…。それに、もしあなたを大切に思ったら、僕にはあなたを失うとわかっていて、あなたに死を与えるなんて嫌だ。…さっきでさえ、あなたを失ったかもしれないと思ったら、あんなにも絶望的な気持ちになったのに…。
 …僕の方こそ、あなたの望みを叶えたくても叶えられなくなってしまう。そんな『聖典』なんて、あなたは必要ないだろう……?」
“………”
 パアッ…と赤龍の体から光が迸ったかと思うと、白いもやをまとわりつかせながら、ヘルムートが現れた。十二歳のヘルムートの姿の、赤龍が。
「忍。私はもう待たない。転生したお前が『聖典』となるかどうかなどわからないし、なるとしても、私が欲しいのは今のお前からの言葉だけだ。だが、お前が望むのならば、叶えよう。お前が私を愛してくれたとしても、その寿命が尽きるときまで、その言葉は言わなくていい。お前が死ぬ一瞬前に、ただ一言、『愛している』と言ってくれ。それまで私は、お前と共にあると誓う。…そう、こう言うのだったな」
 ヘルムートは、座り込んで見上げる忍の左手を取った。
「……死がふたりを分かつまで」
「ヘル……」
 ヘルムートは、忍の手の甲に口づけた。忍は驚いたが、嫌ではなかった。ヘルムートに触れられただけで体が硬直した以前が嘘のようだった。
 唇を離して、ヘルムートは忍と目を合わせた。近づいてくるヘルムートを、忍は目を閉じて待った……。

 

 ぎゃああ!悶絶!!自分で書いておいて、「あんた頭おかしいよ!」と叫びたくなるような場面ですな!赤龍は「霊的存在」だから、「結婚」つーのは純粋に「契約」という意識なんだな、きっと。だからあんなクサい科白でさらりとプロポーズしたに違いない!・・・そ、そう思ってくださ・・・い・・・(でないと怖い考えになってしまいそうだ・・・
 おかしいなーこの話はやおいには持ち込まないぞー(とりあえず、書く範囲内では!)と思っていたのですが、なんか、勢いで・・・
 それでもちゅー2回のところを、1回は手に変更してみましたが、単に余計にぶっ飛んだ場面にしてしまっただけという気が・・・
 あ、ワードではなくテキストからコピーしたら、余分なデータがくっついてなかったらしくいっぱい文が詰め込めましたので、分割せずに済みました。というわけで、次の妄想話は週末くらい・・・?今度で完結です。今、普通に地球で暮らすか赤龍の結界内で暮らすか(どっちにしても新婚生活・・・?)、この期に及んでまだ悩み中・・・(オイ