フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

家も10年経つとガタがくる。その2(涙)

2009年05月30日 | 極めて日常茶飯事
 本日、給湯器とエアコンのサービス会社がやってきた。(なぜエアコン会社まで来たのかというと、至急呼んだ給湯器の会社が点検した結果、釜内部の劣化に加えて、「ガスエアコンのエラー信号を拾ってます。エアコンが悪いのかもしれません」という診断だったからだ)
 まずはそのときの私のキモチ。「不幸だ・・・。私の家電運の悪さは、後輩の不運さ加減といい勝負だよな・・・」(←さりげなく失礼。しかし朝から彼女のケータイからUPされたブログを見て、「やっぱ彼女の方が運悪い・・・?」とか思ったよ。ますます失礼なやっちゃ)
 エアコンはサ○ヨーだ。うちにあるサ○ヨー製品は洗濯機と電子レンジとエネループ(充電式乾電池)だ。そーいや、洗濯機も吸水ポンプがイカレたもんだから、せっせとバケツで風呂の残り湯を運んでるんだよな。哀しい・・・。
 給湯器はノー○ツ。ネットで故障状況の検索かけてたら、このメーカーの相談ばっか出てくるんだけど、もしかして壊れやすいのか、このメーカー
 さて、点検の結果、どっちも「直せるけど、お高くつきます」という結論になった。どちらも使用10年目。丈夫なヤツならまだまだ使えるはずだが、どっちもはっきりいって入居したときから「コイツ・・・初期不良品・・・」という代物なので(こういう「取り付けタイプ」は始末悪いよな!初期不良品だとわかったからといって、取り替えきかねー・・・。それに、そう気がつくのはいい加減使ってからだもんなー)、高額な修理代を払っても、2、3年後にはまた壊れるのは目に見えている。ううむ。
 いちばん安く上げるなら、全部修理で済ますパターン。エアコン2台のうち1台は部品取換えに3万。2台とも壁の中を通っている排水パイプが詰まっている可能性が高いので、壁に穴を開けて新しいパイプを通すしかない。工事費2万×2台。合計7万・・・。だが、そうやって修理したところで、このエアコンは今やほとんど生産していないガスエアコン。なので、給湯器も温水暖房対応タイプでないとだめなので、今のを修理するか、同じ対応タイプに買い替えないといけない。修理は8万かかるといわれた・・・。合計15万。
 いちばん高いのがすべて買い換えパターン。ガスエアコンではなく電気エアコンに変更だ。今日、電気量販店のチラシでチェックしてみた。エアコン2台で26万というところか。給湯器は温水暖房なしなら、ネットで安いところなら25万。合計51万くらいか。げー!
 残りの選択はエアコンを修理して給湯器を買い換えるパターン。給湯器はやや高めで30万くらいか?合計37万。エアコンがいずれ壊れて電気型に変えなくてはいけないことを考えると、ばかばかしいな!逆パターンだと34万。ますますばかばかしい。
 つまり、私には51万払うか、15万で済まして2、3年後にやっぱり51万払う羽目になるかの究極の選択しかないということだ。しえー
 ・・・今年の私の大きな出費予定(支払い済み含む)
1.家の10年目メンテナンス・リフォーム105万。
2.車検8~9万。
3.××××代(ナイショv)48万。
4.住宅ローン繰上げ返済80万。
 もう、これだけですでに250万超えてますがな!これに51万足したら300万!こんな金額、家建てたとき以来の出費だよ!!
 ・・・先日借り換えした信金のにーちゃんの、「リフォームローンもありますよv」というにこやかな顔が目に浮かぶぜ!繰上げ返済するんじゃなかったなー・・・まさかこんなことになるとは思わなかったもんな・・・(遠い目)某社(QPではありません・笑)の株が買値と同じまで戻ったら売りたいけど・・・いつ戻るのかとりあえず株主優待券持って遊びに行っちゃうけどね!

うっそ~ToT

2009年05月27日 | オタクな日々

 栗本薫さん死去!!
 ショックでショックで・・・今は神様を恨む言葉しか出てきません!
 数々のまだ続いている物語が、永遠にもう読めないのだ、登場人物たちの未来を知ることはできないのだ、と思うと・・・。グイン・サーガなんて、せめてスーティ坊やがゴーラ王になるまで(と勝手に決めていた)見守りたかった、とか、イシュトがちょっとは幸せな時間を過ごせたらなあ、あのミロク教徒の女の子(名前出てこん・・・;)とうまくいかねえのかなー、とか、それも全く見ることはできないままなんてー・・・。魔界水滸伝だってまだ終わってないし、伊集院大介の活躍だってもっと見たかったし、六道ケ辻シリーズだって、すごい好きなのに!
 ガンが再発したって聞いたとき、考えたのが「ライブ・ノートってないのかな・・・」ということだった。デス・ノートの逆。名前を書くと、書いた人の寿命の半分が、書かれた人に与えられるっていうの。そしたら私は栗本さんの名前書くよ!と思ったね。そしたら栗本さんに十分小説書いてもらえる!少なくとも私の方が先に死ぬから、同じ「もう読めない~」と悶絶するのでも、あきらめがつくってもんだ。だって、化けて出て、新刊を読むからさ!(←ばか)
 なんか今はほんとに、まだボーゼンという感じだけど、そのうちジワジワと来そうです。残念で残念で悔しくて悲しくて、泣いちゃいそうだ・・・。あとは今までの本を読み返すだけなんて。(今だって新刊出るまで、読み返しまくってるのに!)グインがー、グインがー、あああー、ショック・・・


家も10年経つとガタがくる。

2009年05月25日 | 極めて日常茶飯事
 先週、先々週と10年目のメンテナンス・リフォーム工事だった。それはいいんだけど、リフォーム中のある日、会社から帰ってきてご飯も食べて、さあ風呂入れるかーとなったとき、給湯器のパネルが消えていることに気づいた。
 なんで?あれ?工事で止めるようなことしたっけ?ないよな??
 ボタンを押してもウンともスンとも言わないので、仕方なくパネルに張ってある、夜間緊急連絡先に電話をかけた。
「あのー、帰ってきたら給湯器のパネルが消えていて、どうも電源が切れているようなのですが、どうしたらいいでしょう?」
「電源ですか。一戸建てですか、集合住宅ですか」
「一戸建てです」
「そうしましたら外に給湯器の本体がありますので、そのコンセントを抜いてもう1度差してみてください。故障の場合でもそれでリセットされることがありますので」
「そ・・・外・・・
 そのとき、すでに外は真っ暗、しかも工事のため足場が組んであり、本体のところにたどり着くのはとてもアクロバティックな技が要求された・・・。
 うえーん、と懐中電灯と電話の子機を持って外に出、とりあえず足場とネット越しに見てみた。
「・・・コンセント、抜けてる・・・」
 なんで抜ける?!コノヤロ!と地面を這って鉄パイプの下をくぐり抜け、乗り越え、本体にたどり着いてコンセントを差した。ぶい~ん、と給湯器は動き出した。
「動き出しました・・・」
「・・・そうですか。また何かありましたらお電話ください」
 ・・・想像するに、その日の工事は外壁の高圧洗浄だった。当然、外で電源が要求される。一応駐車場側に外電源はあるのだが、反対側で電気を取れるところというと、給湯器のコンセントが差してあるところしかない。おそらくここから電源を取ったあと、コンセントを戻すのを忘れたのであろう。・・・コラー!!
 とプリプリしたことがあったのだが、すべての工事は先週金曜に終わり、土日はなんともなかったのに、よりによって今日・・・給湯器が再び変に。
 今度は電源は入っている。その代わり、給湯温度が表示されているはずのパネルは横棒がチカチカしているだけ、給湯スイッチを入れてお湯を出してみると・・・外の給湯器から、地獄の底で洗濯機を回しているような「ぐおん、ぐおん」という不吉な音が。
「や、やべえ・・・」
 うちは電気ではなくガス給湯器だ。何かあったら爆発するかも怖いよ~~と慌てて切る。
 再び夜間緊急連絡先へ。
「あのー、給湯器のパネルに変なエラー表示が出て、お湯を出すと給湯器本体から変な音がします」
「給湯器のメーカーと機器番号わかりますか?」
「・・・パネルには表示がありません」
「本体にありますので、見ていただけますか?」
 私はすでにパジャマ姿だったが、今日は前回のように真っ暗ではなく、とても明るい。・・・このまま出るわけにはいかないか・・・
 慌てて着替えて子機を持って外へ。
「ノー○ツの××××です」
「わかりました。明日、修理会社から連絡を入れますので、今日はお湯はなるべく使わないでください」
 なるべくって・・・なるべくどころか絶対使わねーよ!あんな恐ろしい音がするのに!
 まてよ・・・明日連絡が来たって、私は会社だから明日来てもらうわけにいかないよな。明後日早退か遅刻して修理にきてもらうとして、今日も明日も風呂が使えないってことだよな?
 がちょーん。近所のスーパー銭湯に行くしかないけど、普通の銭湯(そんなもん、この辺にはない)と違って、スーパー銭湯は高いんだよ!ちくしょーっ!
 というわけで、とりあえずスーパー銭湯に行ってきた。750円・・・。高い・・・
 くそう、Mホームから工事代金の請求書が届いたのに、気がつくと通帳の残高が足りなくて払えないし(先月の時点では余裕があったのに、何に使ったのだ・・・)、証券会社に預けてあるやつちょっと解約して振り込んでもらわねばならないし、給湯器の修理にいくらかかるのかわからんし(10年目なので、そろそろ取り替えてもいい時期ではあるが・・・やだよ、めんどくさい。何日か水道使えないじゃん)、これで「給湯器、取り替えた方がいいですよ」なんて言われた日にゃー、金がかかってたまらんな。どうして私は1年おきに百万単位で金を使う羽目になるのだろう・・・。・・・ていうか、
「悪くなるなら他の工事している間に悪くなれよ!いっしょに業者呼べるだろうが!!」
 はー、むかつくわーとりあえず、証券会社にアクセスして解約しよう・・・。しくしく

日本の男って(呆)

2009年05月17日 | 実録!生保でワーキング~

 生保に就職して早19年。かつて営業所の仕事は新規契約にまつわるものが主だったが、次第にオンピュータ化に従って本社の仕事が営業所に下りてきた(普通、逆じゃねえか?)。昔は給付金・保険金の請求は、客から出された書類の中も見ずに本社へ送るだけだったが、10年くらい前からは内容をチェックし、データをPCに入力してから送ることになっている。そういう仕事を始めて気づいたのは、「日本の男ってのは、妻を独立した個人とは見てねえな・・・」ということだ。
 というのは、給付金などの受取人欄の下には、「親権者・後見人」という欄が設けてある。言うまでもなく受取人が未成年の場合は財産管理能力が不足するということで、それを管理する権利を持つ親が代わって手続きをしたり、精神上問題があって判断能力が不足する人(被後見人)に代わって手続きをしたりする場合のためである。一般の成人男女にはそのような人は存在しない。しかし、受取人が妻だった場合、どういうわけかここに名前を書いてくる夫というのは、あきれるくらいごろごろ存在する。(この逆は、私の経験ではこの10年間で1度あっただけだ)
 ・・・これは、親権者や後見人の意味がわかんないのか?いや、わかんないにしたって、少なくとも「親」権者でないことはわかるだろう。じゃあ、後見人の意味がわかんないのか?しかし、私は自分が未成年の頃から禁治産者などを後見する人、くらいの知識はあったぞ?(今は禁治産者という言葉はなくなって、被後見人になったけど)常識だよな?少なくとも社会に出て働いている大人なら・・・。
 よしんば知らないにしても(妻が法律的に「被後見人」であると思ってないにしても)、「後見人」という言葉を見て、「妻の後見人は俺だ」と思っている・・・つまり妻が1人でこういう手続きをするものではない、俺が管理するものだ、という意識があって書いてるってことだよな?
 先週、似たようなことで客と揉めたので、マジで日本の成人男性の意識がこの程度だと実感したわけだ。
 入院給付金の受取人が妻だったので、代理店が妻の名前を書けと指示してくれて、その欄には確かに妻の名前が書いてあった。しかし、印鑑欄には夫の実印(フルネームの印だったのでわかった)が押してあったのだ。そこで「受取人欄は妻の印鑑を押すところなので、別口座振込みの同意印(受取人がお金を自分の口座でなく、他の人の口座に振り込むことに同意する、という欄に押すもの)と同じ印鑑(ここには姓だけの認印が押してあった)を押してくれ」と戻した。すると、私の指示とは逆に、同意印を実印で押し直してきたのだ。「逆だっつーの」とまた戻したら夫から電話がかかってきた。
「実印を押せって書いてあるから実印を押したのに、何がいけないんだ」
 この時点では、私は夫に一般常識がないことに気づかなかった・・・。
「ここは奥様の署名押印が必要ですので、奥様の印が必要なんです」
「でも実印って書いてあるじゃないか」
 請求書には「保険金請求の場合は印鑑証明印を押してください」と書いてあるのだ。一般の人は「保険金」と「給付金」の区別がつかないだろうが、全く別物だ。保険金とは、その保険が終了する(保障が消滅)ときに支払われるもののことで、今回は入院給付金だった。
「ご請求の際は基本は実印を押してもらうものですが、今回は保険金ではなく給付金ですので、簡易扱いとし、認印でも可能な取扱いをしております。奥様の認印でも実印でもかまいません」
「でも、認印でもいいなんて書いてないだろう。だから実印を押したのに、何が文句あるんだ。何回もだめだだめだって戻しやがって」
「ですから、実印なら実印でもよろしいですが、奥様の実印を押していただきたいんです。受取人はあくまで奥様ですので」
「実印と言ったら俺の実印を押すのが当然だろうが」
 ここで私は、夫の頭に「妻の実印」というものが存在しないことに気づいた。おいおい、いい年して一般常識もないのかよ??
「お客様、名前を書いて印鑑を押すときは、どんな書類でも例えば役所でも、名前を書いた人の印鑑を押しますよね?奥様の名前を書いたところに、夫の印を押すのはおかしいですよね?」
 私の口調が冷たくなったとしても、しょうがないよなー。けっ。
「・・・だったら、妻が書類書くたびに、いちいち妻の実印を登録しろというのかよ。実印なんて1家族に1つだろう!」
「実印は、個人個人で登録するものです。私ももちろん市役所に実印登録しておりますし、父も母もそれぞれが登録しております」
「・・・もういい!認印を押せばいいんだろう!」
 ガチャン。
 こいつ、自分が死んだとき、妻がお前の実印押して保険会社に限らず銀行や役所で手続きができるとでも思ってるのかよ。ばっかじゃねーの。
 ま、よーするに妻は自分の付属物で、独立した印鑑持つ権利も必要もないと思ってるわけだよな。実印登録してるってことは、何かの手続きの必要に迫られてだと思うけど(私も家を建てるとき契約書に実印押すことになって慌てて登録に行ったクチだ)、妻にはそんな機会はないと信じている、つまり全部自分がすると思ってるんだよなー。
 まあ、私は親が会社経営してて、母親も保証人になったりして、両親がしょっちゅう実印がどーのとか印鑑証明がどーとか出してきて、暇な大学生だったときは役所に取りに行かされたりして、大人はみんな大事な手続きをするときに役所に登録した実印を持っているもんだと思っていたけど、サラリ-マン家庭だとあんまり目の前でそんなことは起こらないから知らないのかもしれんけど・・・。
 でもさー、「自分のフルネームの実印」が妻の印として通用すると思ってるってことは、妻には個人の印は存在しない、しつこいようだが「夫である自分と同等の権利を、配偶者も持っている」という意識がないってことだとしか思えん。建前では「男女平等」とか言ってもそれは観念でしかなくて、実際には「夫が妻の後見人=妻には財産権、決定権を行使する能力はない」という意識だってことだよな。妻を禁治産者扱いかよ
 妻の後見人に自分の名前を書く夫がごろごろいる日本の成人男性の意識は、この程度でしかない、と日々怒髪天をつき、失望通り越して絶望的な気分になるワタクシである・・・。 


オレの話を聞けー!

2009年05月12日 | 極めて日常茶飯事

 昔、「オレの歌を聴けー!」とバルキリーに乗って戦場で自分の曲を流す超ウザい主人公が出てくるアニメがあったな・・・。マク○スなんとかという・・・。
 まあそれはいいんだけど、どうして医者って人種はそろいもそろって人(患者)の話を聞かないのか・・・。それとも私があたる医者がことごとくそうなだけ?・・・多分そうなんだろーな。実家にいた頃は歩いて30秒のところに、私が生まれたときから知っているかかりつけの開業医がいて、なんの病気でも診てくれたんだけど、家を出てからは、「この医者はいい!」と思ったのは、これまた実家の近所の超混雑する耳鼻科と、最寄駅前の耳鼻科(なんで耳鼻科ばっか?)だけだ・・・。(名駅前の耳鼻科なんか、ひでーもんだった・・・。誤診した挙句、うちでは手に負えませんとか言って放り出しおった・・・)
 1か月前に行った医者が私が「こうなんじゃないかと思う」と言ったことに対する検査は全くせず、「そんなわけあるかい」と思ったガンだの炎症だのの検査ばっかしたあげく、「うちの科では異常はありませんね。気になるなら胃腸科へ行ってみてください」とぬかしたので、「気になるからわざわざ休み取って医者なんぞに来てるんだろーがあ!」と怒髪天をつき、もーそのうち自然治癒せんかしらん、と1か月放っておいたが、悪化はしないけど一向に良くもならないので、しょーがなく今日、同じ科の別の医者へ行った。どうしても胃腸科の範囲とは思えなかったからだ・・・。
 昨日予約を入れた限りでは「明日ならいつでも大丈夫ですよ」と言われたので、会社帰りに行ける時間を予約したのだが、・・・1時間半待たされた。もう帰ろうかと思ったが、ここまで待って帰ったら、待った時間がもったいない!と我慢して、ようやく自分の番に。
 問診票を見ながらじーさんの医者が内容を2、3確認して、「それで、腹痛に丸があるけど・・・」と具体的な話に入ったので、早速話し始めようとすると、壁の症状のポスターをポインターで差して、「こういう症状ある?」・・・多分、みんな口に出しにくいので、答えやすいようにという配慮なのだろうが・・・「はあ・・・。ありますね」「これは?」「ありますけど・・・(でも、普通アレのときって、みんな大なり小なりこの症状あるのが普通じゃねえの?)」「じゃあこれはある?」「あ、それです、それ。でも○○のとき痛いわけじゃなくてですねー、××のときにここが激しく痛むんですよ」どうでもいいが、この病院、なんで問診している周りにこんなに人がたくさんいるんだ。話を聞いている看護士が3人、パソコンで記録を打ち込んでいるらしい事務員ぽい女性が1人。これだけで若い女の子なんか、何も話できなくなっちゃうぞ。私だって前回の医者で懲りたから、明け透けにしゃべってるだけでさー、たとえ看護士でも、医者以外にこんな話聞かれたくないぞ。
 と呆れつつ、「症状がこの直後から始まったから、多分これが原因で、こういう疾患になったのではないか」と話そうと口を開きかけたら、「それはコレコレという病気ですね」「・・・は?」全く予想外・・・というか、前から多少それはあるんだろうなーとは思っていたが、今回の症状とは全く関係ないと思っていた病名を言われた。すかさず立っていた看護士さんが、新聞記事の切抜きを机の上へ。・・・このじーさんが載ってるじゃないか。この病気が専門なんだろーな・・・って、ちょっと待て!
「今、あなた全部の症状当てはまったけど、コレコレだとこういう症状が起こるんですよ。ちょっと確認するから診察台に移りましょう」・・・医者に「あなたの病気はこれですね」と言われて、ここで「違う!これじゃなくてあれだ!」と言える人が何人いるだろうか・・・。
 どのみち診察はしなけりゃならんことはわかっているので、釈然としないまま診察台に乗っかる。「ちょっと押さえますよ。ここ痛いですか」「痛くはないです」「ここは?」「いえ、大丈夫です」・・・とはいうものの、そもそも診察自体が痛くないという代物じゃないので、どの程度で痛い、痛くないというべきか、今いちよくわからない私だ・・・。「痛くない?そうかなあ」「いっ・・・ててててててーっっ!!」ちょっと待てー!!じじい、それ普通の力でやってる?!「ああ、ごめんごめん。やっぱりコレコレだよ。はい、降りていいですよ」本当かーッ?!本当にその病気じゃなければ、その押し方でも痛くないんだろうな?!
 そのあとじじいは「これこれこういう仕組みでこういう症状が出て、こういうところにこういうものができちゃうんだね。ここ(例の新聞記事)にも書いてあるけど、いちばんいい治療法は××を注射することだから、今日注射受けて行ってね。次回はいつ頃来て、また注射受けるように」「はあ・・・」もう、何を言う気力もない・・・。
 かくして私は、「・・・オ、オレの話を聞けー!」と心の中で叫びながら、またダメージを受けて(診察で痛い目に遭った上に、採血と注射をされた。・・・何年ぶりかにケツに打たれたぜ・・・)、よろよろと家路に着いたのであった・・・。


Dグレ「クロスXラビ」小説『wish』⑥

2009年05月10日 | Dグレイマン関連

注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」甘々ラブラブで、ややショタ気味です。基本設定は完全ショタです。このカップリングやラビ受けやショタが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は完全無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)また、前回の小説とは全く別設定で(一部同一設定あり)、続きではありません。
④文章の一部は、うっかり目に入らないように反転させることがあります。

  
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 ラビは周囲を見回した。彼らがいる棟と他の3つの棟は、渡り廊下でつながれているが、母屋に繋がっているのは彼らがいる棟だけだ。しかもこの棟の階段は、母屋との連結部分にあったので、1階に降りることもできない。
 他の棟の階段を使えば1階に降りて、母屋に行ける。ラビは渡り廊下を伝って隣りの棟に移動し、足音を忍ばせて端にある階段へと向かった。
 そこにも、予想通りというべきか、壁しかなかった。触ってみても、木の板の感触がある。念のため、その隣りの棟も確認に向かう。
 この棟は、ラビたちのいた建物とは中庭をはさんだ真向かいになる。ラビはちらりとそちらへ目を向けた。クロスの姿が見えて、少しほっとする。クロスは腕を組んで壁にもたれている。動く気はないようだ。当然だ。これはラビの任務なのだから。
 静まり返った空気の中、足元の床のきしむ音にぎくりとする。
 ラビは足を止めた。あれほど人の気配や低い話し声に満ちていた遊郭内は、今、ラビとクロスしか存在しないのではないかというくらの静寂に包まれている。3時4時という時間ならともかく、そんなことはあり得ない。
 ラビは廊下に並んだ引き戸の1つに手をかけ、思い切って引いてみた。が、びくともしない。まるでその戸が紙に書いた絵でしかないように、わずかにガタつくことさえない。
 彼は袖からイノセンスを取り出すと、羽織っていた振袖を脱ぎ捨てた。襦袢の裾を緩めて欄干に足をかけ、下を確認してから中庭に飛び下りる。
「…う、わ……」
 着地の瞬間に痛みが突き抜け、思わず膝をついてしまった。しかも、中に出されたクロスのものが溢れ出る感触があって、しばらく動けなかった。
 なんとか立ち上がって、1階の階段部分を確認しに行ったが、やはりそこも壁になっていた。1階の渡り廊下のところは本来中庭と棟の外回りの庭とをつないで行き来できるようになっていて、そこは開いていたので外へ出ようとしたラビは、見えない壁に鼻と額をぶつける羽目になった。試す気にはなれないが、おそらく2階の渡り廊下も中庭には飛び下りられても、外庭へは出られないだろう。
 つまり、4つの棟と廊下、それ自体を境として、完全に空間が閉じている状態だった。
(あとは……)
 ラビは空を見上げた。月は見えないが、星が瞬く夜空は見えている。彼は円を描いて鉄槌を振った。
 イノセンス第一開放。ラビの中の何かがイノセンスを刺激して目覚めさせ、それに呼応したイノセンスから、その力が流れ込み、五感の位相をずらす。これによって適合者は、常人のレベルを遥かに超えた感覚や運動神経を手に入れ、アクマと対等に戦えるようになる。
 槌を大きくするときに振り回すのは、巨大化させるイメージがし易いからだ。イノセンスをコントロールするのはすべて適合者の意思、イメージだ。イノセンスを発動させる訓練をするときに、動作や言葉をイメージと紐付けさせることが多いのは、細かなコントロールを脳に条件付けてしまうためである。
 ラビは槌を振って扱いやすい大きさにすると、そのヘッド部を地面に突き立てるように逆さまに置いた。両手で柄を持ち、片足を柄にかける。
「伸!」
 ぐん、とラビの体ごと柄の部分が空へ伸びていく。
 「……うへぇ」
 ラビは目に映る光景に目が回りそうになった。遊郭全体を上から見下ろす──はずが、柄が伸びていくにつれて建物の上に建物が積み重なって、無限に増えていったからである。よく見れば、その1つ1つにクロスの姿があって、それがまた気色悪さを倍増させた。
「まるで合わせ鏡みたいさー……」
 ビクンと、ラビは自分の洩らした言葉に心臓の鼓動を速めた。
(……何だ?なんか……ひっかかるっていうか……思い出せそうな……)
 無限に続く同じ像。それは……昼間ささめに見せられた万華鏡のようだ。
(……まさか?!)
 ラビは柄を戻し、地面に降り立った。ささめはここに住み込んでいる。彼女の部屋のある棟へ飛び込むが、やはりどの引き戸もびくともしない。第一、どの部屋が彼女の部屋かわからないので、開いたとしてもほとんど全部の部屋の中を探さなければいけない。客を取っていないで部屋にいる遊女もいるだろうし、見咎められずに済むわけはない。
(いったいどうしたら……)
 とりあえず今はあきらめて、発動が止まるのを待って、ささめに貸してほしいと頼むべきか?それで万華鏡を支部で調べてもらって……
(だけど、それで違っていたら、また発動するまで待たなきゃいけない……)
 だめだ。何としても今夜なんとかしないと、再び発動するとは限らない。──むしろ、二度と発動しないだろう。自分の感が正しければ。
(今までのは違うが、今回の発動は、オレに反応したんだ、多分……。これが起こったときの感覚は……いつもイノセンスを発動させるときと同じだった。だったら、コントロールできるかもしれない。いや、何としてもやらないと、下手をするとずっとこのままだ。なんてったって、適合者が発動させちまってるんだからな……)
 教団内では一般に、1つのイノセンスに1人の適合者しかいないと思われている。だが、例外はある。それは大元帥と室長しか知らない極秘事項となっているが、ブックマン一族の適合者だ。本来の適合者とめぐりあっていないイノセンスに対し、ブックマン一族の血を引く適合者はある程度シンクロできる、つまり基本的にはどのイノセンスも発動させることができる万能の適合者だ。だからこそ適合者だったラビとブックマンは、次の記録地(ログ)を黒の教団と決めたとき、本部に行き、回収されたイノセンスの中からシンクロ率の高いものを選んでエクソシストとなったのだ。
(オレは本当の適合者に比べればシンクロ率は低いだろうけど……)
 ラビは鉄槌の発動を解除した。もう1つのイノセンスに集中するためだ。小さな姿に戻ったそれを腰ひもにはさみ込む。
 目を閉じて、漆喰の壁に両手をつく。感触はただの壁だが、もしこれを物理的に壊そうとしても小さな穴ひとつ開けられない、イノセンスの結界でもある。これは、自分がそうさせた。なぜ?
(行かせたくない)
 あのとき、そう思った。その彼の強い想いに触発され、この空間を閉じてしまったのだろうか。クロスを中に閉じ込めて。
 ──今でも彼のことを夢に見るのよ。行かないで、戻ってきてほしいって……
 ささめの言葉を思い出す。夢を見て、蘇った彼女の過去の想いに、イノセンスは反応したのではないか?そして、夢の終わりとともに、結界も消える……。
 彼女の想いは過去のもので、今の彼女はそれがすでに叶わないことだと知っている。だが、今、イノセンスを発動させているラビの想いは、消せるものではない。
 ラビは壁に額を当てて、自嘲した。
(自分じゃちゃんと納得して、あきらめてるつもりだったのに……少なくともそう見えるようにしていたつもりなのにさ、これじゃ未練たらたらな本音が、クロスにばれちまったかもなー……)
 だったら、とラビはぐっと歯をかみしめた。
(オレは、自分の力でこのイノセンスを支配してやる。一族の血と、訓練して身につけた技とで)
 深呼吸して、意識を肉体の感覚から徐々に遠ざけていく。何かあればすぐさま反応できるように、完全に遮断はせず、ぎりぎりの糸は残しておく。
 次第に感じ始める、イノセンスの気配。まずは最もなじんだ、自分の持つイノセンス。次に、これも見知ったクロスの「断罪者」が、遠いぼやけた光として感じた。意識を向けるとその光が明るく、はっきりする。もう1つあるはずの「聖母の柩」の存在がまったく感じ取れないのは、クロスの魔術で別次元に隠されてしまっているからだ。
 すでにその固有の波長を記憶しているものは容易に見つけられるが、イノセンスを見つけるにはその波長に自分の意識を一致させなければならないが、全く未知のものは難しい。暗闇で一粒の砂を探すようなものだ。それでもラビは手探りで探し続ける。
 ふと、頭の上で──もちろん比喩で、ラビにはそんなふうに感じられたということだが──淡く光るものが見えた気がした。そちらに意識を向けると、消えてしまう。ゆっくりと、慎重に、意識をシンクロさせていく。少しずつ、ぼんやりとした光が見えてくる。その輪郭が鮮明に、鋭く、そして眩しいほどになっていく。光の中に、また光で縁取られた何かの形が見えてくる。それに向かって意識の手を伸ばし……そっと、手のひらの中に、包みこみ……
(つかまえた!)
「イノセンス発動……解除!」
 自分の支配下に入れば、あとの手順は同じだ。無制御に発動されたその力を、意思の力で収束させる。一瞬、建物の像がぶれ、目眩の感覚が起こったが、すぐにそれは治まった。
 どこか落ちつかない気配、ひそやかな声、虫の音、そして秋の気配を含んだ肌寒い風が戻ってくる。
 ラビは、廊下に座り込んでいた。左手に何かを握りしめているのに気づき、手を開く。薄暗い行灯の光で見たのは、きらきらと星のような光が中で飛び交っている、黒い透明な石の欠片だった。3つあわせても小石程度の小ささだ。
 それらを落とさないようもう一度握りしめて、立ち上がる。振り返れば2階の回廊にまだクロスの姿はあった。
 彼が戻ると、クロスはかすかに笑んで迎えた。
「良くやった、ひよっこ」
 大きな手で、ぐしゃぐしゃと髪を掻きまわされる。なつかしい呼び方、なつかしい仕草に不覚にも涙が滲んでくる。それを振り払うように、
「これ、さ」
 握っていたイノセンスを見せる。万華鏡がイノセンスではないかと予想していたのに、まさか中の石の方だとは思わなかった。
「こんな割れてるし、少なくねえ?」
「割れているのは、本部の科学班の連中ならなんとかするだろう。だが、確かに小さすぎるな。残りはまだどこかにあるんだろう」
「残り……」
 あるとすれば、ささめが拾ったという海岸に残されている可能性が高い。そうなると、今制御している自分が探しに行かされるのは必至だ。いくら波長を覚えたからといって、マジで砂の中から砂粒探しをさせられるのかと思うと、さすがにげんなりする。
「とりあえず、ここでの任務は完了だな」
 クロスは拾っておいた着物を、ラビの肩に羽織らせた。
「じゃあな」
「え……」
 踵を返したクロスを茫然と見送り、慌てて追いかけて渡り廊下の途中で腕をつかむ。
「なんで……朝までいてくれないんだよ……?」
「………」
「オレ、仕事終わったんだから、あんたが帰る必要なんてないじゃん?」
「……」
「アンタがもし、今日はもう……3回もしたから、オレとする気になれないっていうんなら、一緒に眠るだけでもいいからさ……」
 こんなにぐずぐずと引き止めてしまうのは、このイノセンスのせいで、今さらながら離れたくない気持ちを確認してしまったからだ。イノセンスがラビに気持ちに反応してしまったのは、むしろ気持ちを抑えこんでしまったからのような気がしたが、今はどちらにしろイノセンスは彼の制御下にあるので、発動する心配はない。
 クロスは、大げさなため息をついた。
「……ホントにおまえは、鈍い上にガキのまんまだな」
「何だよ、それ。オレ、もう16で、ガキじゃないだろ」
「ガキでないなら、ひよこだ」
 唇をとがらせたラビの頭に手を載せて押しながら、クロスは廊下を引き返した。
 部屋に戻ると、ラビはイノセンスを懐紙に包んで、自分のイノセンスとともに袖に入れ、着物は几帳に掛けた。
 上着だけを脱いだクロスは、ごろりと布団の上に寝転がり、手招きしてラビを自分の横に寝させ、腕枕をするように抱きこんだ。そのまま動かないクロスを見上げると、彼は目を閉じていた。
 本当に一緒に眠るだけのために戻ってくれたのだ、とラビは嬉しさ半分、切なさ半分でクロスの肩に頭を擦りつけた。幼い頃は、師匠に叱られた日や人恋しいとき、或いは冬の寒い夜などは、よくクロスのベッドにもぐりこんで眠った。クロスは最初のうち「狭い」だの「うっとおしい」だの文句を言っていたが、そのうち黙って入れてくれるようになり、やがて腕枕をしてくれるようになった。好きだと告白してからは、かえってそんなことをしづらくなってしまったし、もうそうしてふたりで眠るには抱き合うしかないほどベッドが狭くなったので、しなくなってしまったが。
 クロスの体温と華やかなフレグランスの香りのまじった体臭を感じていると、条件反射のようにラビはその頃のように手放しで安心しきってしまう。心地良い眠りの波にたゆとい始めたときに、クロスの唇を──顎ひげも当たるのでそれとわかる──額に、頬に、唇に感じたが、ラビは目を開けることができず、そのまま深い眠りの中に沈んでいった。

 朝、予想通り、クロスはすでに去っていた。身支度をして店の玄関へ向かう間に、ささめと顔を合わせることはなかった。会ったとしても、何も言うことはできないだろうと思い、探そうとはせずに、番頭から花代を受け取って外へ出た。
 昨日より倍も支払われた代金を見て、昨日の分も渡し忘れたことを思い出し、くくっと笑う。
(もしかしてオレ、あんたに借金を作った最初のヤツ?)
 棟の欠落感はどうしようもないけれど、再会する前とは違った気持ちでいられた。お互いずっと一緒にいられる立場ではないことはわかっている。だが願っていれば、自分が愛し続けていれば、二度と会えないわけではない。生きている限り。だったら、せめてこの次に会えたときは、彼に一方的に助けられたり労わられたりされるこどもではなくて、身も心も大人になっていたい。幸い、「この未熟者!」と叱ってくれる師匠もいる。
(また……必ず会えるから……)
 ラビは、きっとやきもきしながら待っているだろう師の元へ、再び旅立つために歩いていった。

 

「ところで師匠、どうすればここから出られるんです?」
「あ?おまえがソイツを弾きゃいいだろうが」
 アレンのこめかみに青筋が浮かぶ。
「…前から思ってたんですけど、あなたってほんっっとーに、説明が足りないですよね?」
「さっき教えてやっただろうが。おまえが望んで弾けば箱舟は動く。『江戸接続』を切れ」
 クロスはどかりと椅子に座った。
「言ってる意味がわかりませんケドー」
 仲の良さそうな師弟の会話を聞きながらラビは、少し離れたところに立ってクロスを見つめていた。千年伯爵の方舟で、戦いの最中に再会してから、まだ一度も口をきいてもいない。それに、自分たちが知り合いだということさえ公にしていないのに、こんな人目がある中で、私的な会話などできるはずもなかった。
 けれど、この部屋に来てからずっと、気になっていたのだ。黒い手袋のせいで誰も気づいていないし、クロス自身も気にしてはいないだろう。だけど……
 ラビは、思い切ってクロスに近寄った。
 クロスは表情を動かさずに彼を見上げた。
「あの……手を……左手、血が乾くと手袋が張り付いてしまいますから、拭いてもよろしいでしょうか……?」
「……」
 その場の者たちは皆──意識のないクロウリーは除いて──、驚いて彼らを振り返った。
 クロスは、黙って左手を差し出した。
 ラビは跪いて、クロスの手から手袋を取った。白い手は血塗れで、革の手袋は血を吸って、重かった。拭くのに使えるようなきれいな布は、上着の下に着ていたシャツくらいしかない。ラビはシャツの裾を引っ張り出して、生乾きの血をぬぐった。乾いてしまったところは擦っても取れず、ラビは舐めて湿してから、またシャツで拭く。それを繰り返すうち、知らず涙が滲んでくる。
「……無茶するなって言ったのに……」
 ポツリと、ラビは呟いた。
「別にこれくらい、無茶のうちに入らんさ。おまえこそ、人の目の前で死にかけやがって、あのじじいなら修行が足りんと張り飛ばすところだぞ」
「……ごめん…なさい……」
 クロスは右の手袋も外して投げ捨てると、両手でラビの頬をはさんで上向かせた。
「……背が伸びたな。顔つきも、大人っぽくなった。…だが、泣き虫なのは変わらんな……」
「クロス……元帥……」
 ふっ、とクロスは笑った。
「どうした?ずいぶん遠慮してるじゃないか。飛びついてくるぐらいはするかと思っていたのに」
「だって……あんたさっき、汚いから寄るなって……」
 ラビは、上目使いに口を尖らせる。
「ああ、悪ィ。戦闘モードのときの言動なんぞ気にするな。…来いよ」
「……クロス……!」
 ラビはクロスの首に抱きついた。
「会いたかった……!」
 オレもだ、とクロスは他には聞こえないように小声で囁いて、抱え込んだラビの顎を、強引に上げさせた。そして…
 ラビは泣き笑いしながら、目を閉じた。


  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

 やっとこさ、ENDです。お疲れ様でしたー!
 やっと、と言っても、6回しかありませんでしたけどね・・・。物足りない、もっと読みたいと言っていただければ書いた甲斐があるというものですが、しつこいようですが、このカップリング、どんだけ需要があるんだろ・・・
 最後の再会の場面は書き終わってから付け足したんですが、ない方がいいのかな、どうかな?クロスの手を拭く場面は、今書いてる話の方に入れたかったけどちょい入れられそうにないので(いや、まだ全然そんなとこまで書き進んでないけど、その辺はもう頭の中にあるので)、ラブラブ仕様に直して入れてみました。単なる私の願望です・・・。
 誰も気づかないけど、クロスのケガに気づいてるラビ!こっちの甘々バージョンのラビは言えるけど、殺伐エロバージョンのラビは言えなくって(オレなんかが心配する権利ないよな、とか、オレなんかに触られたら嫌だろうとか、拒否されそうで言えない、とか、うじうじしてるの)、でも気になってちらちら目がいっちゃう。それにクロスも気づいてるけど、何も言わない。内心ではそういうラビの自信のないとことか卑屈さ加減にいらいらしてんの!だってもうこの時点で、クロスはラビのこと愛してる(きゃ)からさー、なんでそれがわかんねーんだ、このドアホウ!とか思ってるわけよ。てへへ。
 あ、またうっかり自分の妄想に浸りこんでしまった!引かないで~
 というわけで、できましたらご感想&私もクロス×ラビ好きです!というカミングアウト(笑)、いただけましたら大変嬉しいです。ではでは、次は夏(って、大丈夫か・・・このトロいペースで・・・。プロット立てずに書くからいちいち行き詰るんじゃ!)に上げられたらいいなーってことで!


お祭り終えて

2009年05月05日 | オタクな日々

 昨日はスパコミに参加しておりました。後輩のスペースはほぼ姉に店番を任せ(私が店番をしていると、あまり客が来ない・・・。なぜだ・・・。何か変なオーラが出ているのか?!なので、スペースに戻っても姉が買い物に行っているとき以外は、ほとんど姉に売り子してもらっていた)、午前中は買い物に走っておりました。
 ・・・わかっちゃいたけど、ラビ受けは少ない・・・。6か7サークルくらい?もちろん、クロス×ラビなんぞ1つもないわこの際ティキ×ラビでもアレ×ラビでも文句は言うまい・・・と見に行ったのだが、・・・だ、だめだ!受けを好きになった場合はたいて総受けOK!な私なのに、ラビに限ってはクロス攻め以外受け付けられない~しくしくしくと回れ右して、代わりになぜか日番谷受けに走る・・・。
 うーむ、シロちゃんと合う攻めがいないんだよな~。試しで買ってみるか!と冬コミで買った白哉攻めに加えて、恋次攻めと藍染攻めを買いまくる。・・・その結果・・・。ううむ、やっぱもともとわたしゃ恋白だからな~、白哉おにーさまに一途な恋次以外は無理だわ~・・・。そして藍染×日番谷。・・・イイ!白哉だと、ちょっと線が細いし、無理やりHができないけど、その点、藍染だと敵だかんね!優しー口調で優しくするもよし、逆に優しー口調でいたぶるも良し!ギンまで加わって、ス・テ・キ・・・とってもナイスな藍染×日番谷サークルさんがあったので、ここはマストバイだ!
 と、ブリーチに関してはすてきな出会いがあったんだけど、Dグレがなー・・・クロス攻めでも買うか・・・と試しにクロス×コムイなど買ってみたんだけど・・・あああ、やっぱだめだー!
 不思議ですよねーっ。例えば私は鋼だとロイ×エド好きなんだけど、そうするとそのカップリングを書(描)いているどのサークルさんのロイもいい!と思うんだけど、ロイ×アイとか、ロイ×ハボとかのロイは好きになれないんですよねー。つまり、誰が書(描)こうと、「エドを好きになるロイ」には、ちゃんと共通項があるっていうか、「それがロイ×エドにおけるロイなんだ!」っていく核があるんだろうなーと思う。「エドを好きになる理由・内的要因があるロイ」っていう・・・(それをどう設定するかは、各書き手さんによっていろいろだけど、でもやっぱり共通するものがあるような気がするなあ)。だから「エドを好きじゃない(他のキャラを好きな)ロイ」は、私にとってはロイじゃないんだろーな、と思う。(あ、でも私ってばヒュー×ロイでもあるんだけど、それはまた次元が違っちゃうので矛盾しないところがまたミソですな!)
 同様に、「ラビを好きじゃない(他のカップリングの)クロス」は私にとって「クロスじゃない」んですなー・・・。だから読んでてものすっっごい違和感・・・だめだ・・・耐えられん・・・
 それにしても、ううう、どうしてアレ×ラビやティキ×ラビもだめなんだろう・・・(女体化ラビなら全然構わないんだけど!)自分の設定がものすごく狭量だったからかなー。ラビを「受け」というより、「ただ1人の運命の相手に出会ってしまった」設定にしてしまったからかなー・・・。これじゃ、本当に何にも読めない!このカップリング、世界でただ2人しか書き手がいないんだもん!(うち1人が自分って・・・悲しすぎる・・・)(私、自分以外に1人しか知らないんだけど、他に知っている方がいたら教えてくださーい!!切実)「うわーん、クロス×ラビが読みたいよー!」と姉に愚痴ったら、「自分で読みたいものを書くしかないじゃん?」と言われてしまった。・・・ごもっとも。
 というわけで、書くとも。誰も(いやいや、少なくとも数人はいるみたいだけど・・・)読んでくれなくてもさー!自分が読みたいから書くよ!うわーん、孤独だーっ


明日からスパコミ行ってきます

2009年05月02日 | オタクな日々
 明日からスパコミですが、今年はアニメ系はブッチして、まんがFC系のみ行くということで、明日ちんたら出発します。後輩のnao.ちゃんと行く予定でしたが、彼女の旦那さんが負傷のためキャンセルということで、急遽姉を店番に連れて行くことにしました。
 自分のスペースなら買い物中閉めといても構わないけど、人様のスペース閉めるのはなあ・・・特に自分のサークルなんぞそうそう買いに来てくださる方がいたわけじゃないけど、nao.ちゃんはファンが多い・・・。閉めちゃいかんだろ!しかし、買い物には行きたいぞ!搬入量も多い(1冊1冊が分厚いしな・・・)ので、私1人じゃキツい・・・。つー訳で、姉を巻き込むことに。彼女はきっと、20年以上ぶりのイベント参加・・・。しかもサークル参加は初めてか。ひえー。
 ま、そういうわけなので、nao.ちゃんは自分のブログで「11時~13時くらいは開いてます」なーんて書いてましたが、ちゃんと10時~14時半まで開いてますよ!・・・って、ここで書いても重複して読んでいる方がいるとは思えないけど(爆)ただしワタクシは午前中は心置きなく買い物に走り回っております(爆)(爆)
 しかし、自分がサークル参加するわけじゃない、とのんびりしていたら、急に慌しくなってきたぞ。姉に猫の面倒見てもらえなくなったから、餌をタイマーの自動給餌器で用意しなきゃいけないし、トイレももう1個出すか・・・。久々にキャリーを持っていかねば。あと事務用品、ガムテープ、おつり箱、机に敷く布・・・。日曜は暑そうだけど、月曜は曇りでにわか雨もあるかもということは、寒いかも。かといって会場では力仕事だから暑いときもあるだろうし、服装が難しいな。あ、スーパーに買出しに行って、郵便局に書留取りに行かないと。なんだかバタバタだあ!なのに、今日は友人から知り合いからチケットまわってきた、とかいってポル○グラフィティのライブに行くことになるし!予習する(CDを聴く)暇もないな・・・

Dグレ「クロスXラビ」小説『wish』⑤

2009年05月02日 | Dグレイマン関連

注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」甘々ラブラブで、ややショタ気味です。基本設定は完全ショタです。このカップリングやラビ受けやショタが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は完全無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)また、前回の小説とは全く別設定で(一部同一設定あり)、続きではありません。
④文章の一部は、うっかり目に入らないように反転させることがあります。

  
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 日本酒の香り混じりの口づけでラビを酔わせ、クロスは彼を抱き上げて几帳の裏の布団に下ろした。ラビの腰から解けかけた帯を引き抜き、振袖を脱がせ、几帳に掛ける。ドレスシャツを脱ぎ始めたクロスの正面にいざり寄ったラビは、彼のズボンと下着を下げて、彼の雄に舌を這わせた。
だが、いくらもしないうちに「もういい」と止められた。なんで、と見上げたラビの頭を包み込むように支えたクロスの手が、彼の頭に巻かれた布を解いていき、現れた眼帯にも指をかける。反射的に身を引こうとしたラビを、クロスの大きな手は逃さずに、それを取り去った。
 周囲に思わせているように、ラビの右目には事故による傷などありはしない。あるのは、「ブックマン」となることを定められて生まれた証である「眼」だった。
 長い前髪で隠すように顔を伏せたラビは、下を脱ぎ捨てたクロスがその服の上に白い仮面を落としたのを見て、はっと顔を上げた。彼よりも少し暗褐色がかった髪の陰に、クロスの右目の光を見つけ、甘く胸をしめつけられる。
 互いの双眸を見つめながら、膝立ちで抱きしめあい、情熱的に唇を重ね、舌を絡めあう。
 布団に横たえたラビの長襦袢の前を広げ、クロスは日に焼けていない白い肌に唇を這わせ、赤い痕を残していく。彼の長い髪が肌を滑っていく感触がじれったい愛撫のようで、ラビは身を粟立たせた。
「んっ」
 緩く立ち上がったものを口に含まれた。直接的な刺激はキスや肌への愛撫とは比べものにならないほど強烈すぎて、たちまちラビのものは硬く反り返り、クロスの口の中でびくびくと跳ねる。
「……やだ……!出ちゃう…出ちゃうから……!」
 クロスが放してくれたのでほっとしたのもつかの間、ラビは引っくり返されて尻を上げさせられた。谷間を両手で広げられたと思ったら、そこに濡れたものが触れた。
「いや…!」
 あまりの恥ずかしさに前へ逃げようとするが、がっちりと掴まれていて叶わず、引き戻され、舌をねじ込まれた。
「!!」
 ラビは両手で顔を覆った。恥ずかしいのに感じてしまう自分が泣きたいくらい恥ずかしくて、膝が震えた。
「イキそうか?」
 ラビは必死にうなずいた。
「まだ我慢しろ。根元を手で押さえてろ。できるな?」
 荒い息をつきながらラビは右手を伸ばし、言われるがまま自分のものを握った。左肩と肘に上半身の重みがかかり、クロスが片腕をラビの腰にまわして支えていなければ崩れ落ちてしまいそうだった。
 抗う筋肉を無理やり開かれる圧迫感を、ラビを浅く息をついて耐えた。1年以上ぶりに呑みこまされたクロスの長い指。2本の指をゆっくりと一旦奥まで入れられたあと、慣らすように抜き差しされる。
「……も……いい……早く…!もう入れて……!」
 これ以上手に力を入れたら逆にいってしまいそうで、かといってこのままではいかされてしまう。それだけはいやだった。
「ばか。まだ全然開いてねえぞ」
「だってオレ、もう……っ」
 指が抜かれ、再度引っくり返される。両脚でクロスの体をはさむように、腰から下を彼の膝の上に乗せられた。
 ラビは欲に潤んだ目で、同じく欲と理性とがせめぎ合う、クロスのいっそ険しい表情を見上げた。クロスは片手でラビの腰を支え、もう一方で天を向いた自分のものをラビの後ろにあてがった。
「……っ」
 クロスはためらうことなく押し入ってくる。ラビは両手で口を塞いだが、意思とは関係なくそうしても呻き声が洩れてしまう。
「ああっ」
 肌がぶつかる衝撃とともに、ラビは達した。自分の胸と腹に放ったものが降りかかる。
「い……痛…!」
「ウッ」
 涙目になりながら、ラビはなんとか目を開けた。クロスは唇をゆがめて笑った。
「ちぎれるかと思ったぜ」
「ご……ごめん……」
 目を移せば、結合部はクロスの繁みに隠れるくらい、隙間なくはまっている。そこから体の中を侵されている、息苦しいくらいの異物感があったが、同時に自分の中にあったそれだけの空間が充たされた安堵も感じた。
「……クロス……?」
 じっと、確認するかのように自分を見つめて動かないクロスに、ラビは少し首を傾げた。
「いや……」
 彼はラビに覆い被さり、片手でラビの頬に包むように触れた。
「この1年間、オレはおまえが欠けたままで過ごしていたことを、おまえを抱いて、今さら感じてな……」
 ラビは目を瞠った。
「離れている間は、そんなこと感じたりしなかったのにな」
「……オレも、今、同じこと感じてた……」
 苦しいのと嬉しいのとが同時にこみあげてきて、せっかくこらえていた涙がこぼれる。
「ずっとあんたに捨てられたって、それをつらいとばかり思ってて、気づかなかった……。いつの間にか、オレの中に空洞があってさ…それを充たせるのはあんただけで……あんたを失ったら、オレは一生この穴を抱えていかなきゃならないんだなって。……この穴は、生まれたときからあるのかな?ただ気づかなかっただけで、あんたを好きになったから気がついたのかな…?でも……だったら、なんであんた以外じゃだめなんだろう……他の誰かで埋めたっていいはずなのに……。それとも……あんたを好きになった瞬間に、開いちまったのかな。そんな変なのって……オレだけなのかな……?」
「………」
 クロスはラビの涙を手で拭った。
「……おまえ、ばかだばかだと思っていたが、時々そうでもないな」
「なんだよそれ!」
 状況を忘れて体を起こしかけたラビは、痛みにまた呻いて倒れた。
「……もう……あんたもじじいも、いつも人のことばかだのくそガキだのひよこだのばっか言って……」
「本当のことじゃねえか」
 クロスが楽しげな笑みを浮かべる。ラビは不意に突かれて声もなくのけぞった。先に達してしまったラビが落ち着くのを待っていたクロスは、腰を動かし始めた。
「あっ、あっ、クロス……」
 揺さぶられながら両手を彼へと伸ばす。クロスは体を支える代わりに両腕でラビを抱きしめ、彼に重みを預けた。
「すき……好きだよ……」
「オレもだ。……」
 今では呼ばれることのない本当の名前を耳に囁かれる。体だけでなく、ラビの心の中の空洞にも、クロスの存在が満ちていく。名前のない、どこにも存在しない彼を、その名を呼び、その素顔を知っている、唯一人、彼を彼自身として見つめてくれる人。彼こそがラビにとって、ほとんど全世界といってもよかった。

 
 目が覚めると、視界は暗く物の形がぼんやり黒く見えるだけだった。クロスとしているときにはまだ薄暗くなり始めたところだったが、あれから何時間経ったのだろう……
 ラビは衣擦れの音に寝返りをうって目をこらした。暗闇の中に、白いシャツがひらりと翻った。
「クロス……?もう朝なん……?」
「さっき店が閉まったところだ」
 店が客の受け入れをするのは12時まで。すると、まだ1時にはなっていないくらいだ。
「なんでもう服着てんのさ?」
「……オレは帰る。おまえは今から仕事だろう」
 ラビは、のろのろと身を起こした。一動作ごとに体内の鈍痛が、先程の行為を思い出させる。正直言うと、12のときに初めてクロスのものを受け入れて以来、快感と苦痛とどちらが大きいかと問われれば、肉体的には苦痛の方が大きいとしか言えない。経験や慣れの前に、身長で30センチ、体重でも30キロ近く違う、いかんともし難い体格差が原因だろう。
 それでも入れてほしいと思うのは、クロスとの一体感が嬉しいのと、何よりクロスが口でするより好むからだ。
「……うん……。やらないとな……」
 わかってはいても、こんなに幸福な時間を過ごしてしまったあとでは任務のみならず、あっさり帰ろうとするクロスまでもうらめしくなる。
 クロスが几帳の向こうに回ったので、ラビは慌てて眼帯をはめ、襦袢をいい加減にかき合わせて着物を羽織って追った。
 団服を着、マスクをつけたクロスが、戸口で待っていた。
「じゃあな、ジュニア」
 その言葉で、クロスがこの地を去るのだとわかった。
「……今度はどこ行くんだ?」
「南の方、だな」
 答えてくれると思っていたわけではなかったが、そう返ってくるとやはり寂しさを感じずにはいられない。
「あんま、無茶すんなよ」
「おまえも、オレ以外のために泣くんじゃねえぞ」
「ひっでーの……」
 クロスはラビを抱き寄せた。ラビは泣きたくなりながら目を閉じた。
 軽く舌を吸って、クロスはすぐに体ごとラビを放した。戸をくぐったクロスのあとに、ラビも続いて部屋を出た。
 廊下にはところどころに行灯が置かれ、歩くのに支障がないようになっている。ずらりと並んだ部屋はすっかり灯りが落とされていたが、人々のうごめく気配は消えてはおらず、時折女の嬌声が聞こえてラビをいたたまれない気分にさせた。
 決まりでは、仲見世のある母屋との境の踊り場まで客を見送ることになっている。逆に言えば、そこから先へは行ってはいけない。そこにクロスが差し掛かり、ラビは足を止めた。クロスの振り向かない背中を見つめながら。
(行くなよ……)
 死んでも口に出せない言葉。クロスの愛人たちなら、そう言ってすがることも許されるだろう。だけど自分は男で、ブックマン後継者で、エクソシストだ。クロスに煩がられるより何より、自分の矜持が許さない。
 けれども、ただ思うだけなら許されるだろう。
(オレを置いて……行っちまうなよ……)
「……え?」
 ラビは目眩のような視界の揺らぎをおぼえ、思わず両足に力を入れた。
(この感覚……)
 体の中から、何かが引き出され、流れ込む、何度も経験した、よく知っている感覚。
(なぜだ?)
 着物の袂に目をやるが、イノセンスに変化はない。
「……おい」
 クロスが、ラビの方を向いていた。
「廊下がなくなっちまったぞ」
 クロスは彼の目の前の壁を、手の甲でコンコンと叩いてみせた。


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 ハイ、残りあと1回でございます。次回はいつも通り日曜にアップ。このさきHはありません(笑)