花には水を、人には愛を、腐女子には萌えを。しかしこの頃萌えっつーともうBLジャンルが出来上がってるので、こう、作者がこっそり紛れ込ませたものを見つけたり、火のないところに無理やり煙をたたせたりする楽しみがないですな・・・。
というわけで、私の萌えネタの1つ、日本古代史。それで萌え作品というと山岸凉子の『日出処の天子』ですが、これはちゃーんと毛人×厩戸王子なので、ここは前に予告した長岡良子の「古代幻想ロマンシリーズ」へレッツ・ゴー!
長岡さんといえば、この古代シリーズを始める前は、大正時代を舞台にした「修一郎と薫」という少年達を中心に、その恋と成長を描いたシリーズ(ファンは「大正ロマンシリーズ」と呼んでいるよう)を何冊も出していて、これは薫の修一郎への片恋がもどかしい(だって修一郎って鈍感でさー)上に、薫は結核に侵されていて、隠していたのに修一郎の前で喀血してしまい、そして・・・おい!未完かよー!
という状態で終わっていて、多分描く気ないだろうなーと思われます・・・。この大正ロマンシリーズの頃はまだ、萩尾望都さんの影響が大きく残ってますね。この修一郎と薫も、エーリクとユーリ(『トーマの心臓』)を連想させます・・・。(私としては、ユーリはトーマが好きだったわけだけど、できればオスカーを好きになってほしかったよ!オスカーはユーリのこと好きだったのにさあ・・・。結局ユーリの中からトーマの影を消すことができなかったって・・・死んじゃった相手には適わないなんて、ベタだけどしょうがないね・・・)
そして長岡さんが「好きが集まってできた作品」(コミックスカバーの見返しのコメント)という古代幻想ロマンシリーズ最初のコミックス『葦の原幻想』。まだこれには「古代幻想ロマンシリーズ」という名はついていません。1冊目ですから!
このシリーズの単行本は『葦の原幻想』を含めて15冊あり、時代的には鎌足の子不比等から平安時代まで。ただし萌え要素があるのは、長岡さんのオリキャラである田辺史(ふひと)が登場する話のみ。鎌足の遺児中臣(後の藤原)不比等とは別人だが、彼を鎌足亡きあと養育した田辺大隈が、もう1人、最初にコマとして利用しようと育てた甥、という設定。このシリーズでは一番出張っている藤原不比等と名前も同じ(史→不比等と改名)で顔もよく似ていてけっこー混乱します・・・。(いやー、大和和紀の『あさきゆめみし』でも思ったけど、現代みたいに髪型や服装がいろいろ個人の好みで違いがあるわけではないので、人物の描き分けが難しいですよね。男性もですが女性なんて性格が似てたりするとますます見分けつかないっつーか・・・特に時代が続いていたり、ある話では主要人物だったのが、ほかの話では脇役で出てきたりすることもあって、余計にややこしい・・・)
『春宵華宴』・・・史15歳の春夏秋冬、そして春までの話。中大兄皇子の意が、弟である大海人皇子よりも息子の大友皇子の上にあることを知っている大隈は、史を大友に仕えさせようとする。しかし大友に反発を感じていた史はそれを拒否する。だが大隈は、大友が史を一目見て気に入ったことを知っており、策をめぐらし、史が拒否できない状況に追い込む・・・のですが、大隈伯父さんってば、甥なのに「無理やり皇子のお手つきにしてしまえ」作戦(爆)を取るんですよー!
史が親しくしていた間人太后の名前で月見に呼び出されてみれば、いたのは大友皇子だった。大友に「人はそちを秋天に澄む月の光のようだと言っている。私はずっと、地上の月をこの花の中に立たせてみたいと思っていた。史・・・」と口説かれた次のページでは、史が小袖(かな?要するに下着・・・)姿で、後ろには几帳(部屋を仕切ったり、寝所を視線から隠したりするやつ)があって、「私はあなた(大隈)を父とも思ってあなたの手足となって働きたいと思ってきた。でもそれはこんな形ではではなかったはずです!」と独白するのです。
これはあきらかにナニしたんですな・・・。何しろ大友ってば、その前に花見の宴で史と出会ったとき、帰る史のあとをつけたりしてたんですぜ~。隙があったら物陰に押し倒す気だったんだろうか(笑)(そのときの足音と、月見のときの大友の足音が同じだと史は気づくんですが・・・花見は春、月見は秋、半年前のことよく覚えてるな~なんて突っ込んでみたり。きっとそれくらい身の危険を感じたんだろう・・・笑)
『孤悲歌』・・・史20歳。「私には皇子様お一人でございます」などと言いながらちゃっかり妻を娶っていたことが皇子にばれた夜、酔った大友を寝所まで連れてきた史は、大友と一緒に寝台に倒れこむ。体を起こそうとする史の腕をつかむ大友。「今宵は帰さぬ」「ご命令とあらば」激怒して史をはねのける大友。・・・愛されている自信のある受ってザンコク・・・;
雑誌発表順は最初の『葦の原幻想』・・・史22歳、大友が敗れる姿を見る前に死亡するまでの話。この話では、史も伯父の教育よろしくすっかり曲者になっちゃった感があるが、実は弟の首(おびと)が弱点なのは変わらず、そのせいで結局命を落とす。大友との関係は出てこないけど、大友が史の腰にすがりついての科白「私の側を離れるな。私が信じられるのは父上とそなただけだ」が、『春宵華宴』を読んだあとではなるほどねー、と腑に落ちます。攻って、肉体的に上位ではあっても、だからといって精神的に上位だとは限らない、しかも受の心が攻にないときなんか、攻の受への執着が強ければ強いほど、精神的上下関係は反比例するところが「萌え」よねーv
『月の琴』・・・史17歳。まだ結婚前、ちゃんと「大友一人」の頃(笑)。でも史は逃げ回って、あまり大友に隙を見せないようで、大友は十市皇女との婚儀の仕度が整ったと言いに来た史を無理やり×××・・・
「それほどに私が厭わしいか?」「私はそなたを放さぬ、放さぬぞ!たとえ何人女を娶ろうとな!」強○はいかんよ、強○は・・・。それじゃ却って逃げられまっせー・・・というわけで、史は母の雇った百済の楽人、真貴志に惹かれてしまう。真貴志は実は唐の間者で、大隈を暗殺する目的で史に近づいたのだった。しかし真貴志もまた史に惹かれ、史に自分が間者であることを明かす。「君には策謀は似合わない。笑っているほうがずっといい。(おいおい、赤面ものの口説き文句だな!)ずっとそう思っていた。この国を出るときは君を連れて行こう──と。月と琴と君がいれば私は何もいらない。私は君を──」うひゃー!・・・で、真貴志は、最後には自分の仲間の間者に殺されそうになった史をかばって死ぬ。
『玉響』・・・『葦の原幻想』直前、神人の血を引き、不思議な力を発現させる首を三輪に返すべきか迷う史。ブラコン・・・
首のことを考えてぼうっとしていた史を背後から襲う大友皇子(笑)。「油断したそなたが悪い」押し倒されながら史、「お願いがございます」(この頃になると余裕だな!)「何─?」「数日のお暇を──」・・・で、休暇あげちゃうんだ、皇子・・・。惚れた弱み?あと史の回想で、裸で寝台の中にいる史と、半裸でその寝台に腰かけている大友という、モロ「事後」の場面もあります・・・;皇子の「そなたはほかの誰よりも忠実に仕えてくれる。そのうえ心までも望むのは過ぎたことなのだろうか」という科白が切ない・・・。だって史の心を「最も望むもの」とまで言い切っちゃうんですよーっ。
古代ロマンシリーズは最後の『春宵宴』を除いては割と史実をもとにした話を描かれているので、やはり実在の人物を○モにしちゃいかんと自主規制したのか、そういう要素があるのはオリキャラである史が主人公である作品のみ。(ま、大友は実在だけど、敗者側のせいか史料でも目立たないから割と好きに描けるということで)古代史と主従BLという、私にとって2倍おいしい作品でしたvv
作品データ(幸田所有本データ)
『日出処の天子』 山岸凉子 1980年LaLa4月号~1984年LaLa6月号 白泉社
(『日出処の天子①~⑪』 1980年~1984年 花とゆめコミックス 白泉社)
『あさきゆめみし』 大和和紀 1979年mimi12月号
~1993年mimi Excellent NO.27 講談社
(『あさきゆめみし①~⑬』 1980年~1993年 KCフレンド 講談社)
以下、長岡良子※すべて秋田書店
『葦の原幻想』 1984年 Let’sボニータNO.1
『春宵華宴』 1984年 Let’sボニータNO.2
『孤悲歌』 1984年 Let’sボニータNO.3
(『葦の原幻想』 1984年初版 ボニータコミックス)
『月の琴』 1988年ボニータ9月号~1989年ボニータ1月号
(『月の琴』 1989年初版 ボニータコミックス)
『玉響』 1985年 ボニータ11・12月号
(『玉響』 1986年初版 ボニータコミックス)