フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

萌え少女漫画回想録:第7回ヨタ話

2008年07月14日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録
 『クィーンズ・ギャンヴィット』で、「チェスは人生に酷似している」と言うチェスマスターのスパイン博士に対し、キラはチェスを何にたとえるのかと訊かれ、「戦争」と答える場面があるんですよ。キラは博士の家に奥様付きの雑用係として出入りしつつ、合い間に博士と交互にチェスの駒を進めて、対戦するんだけど(実はこれもキラの策略で、アレクが編み出した手を使って博士を追いつめていくのだ)、それらを読んで何となく『BANANA FISH』の番外編、アッシュとブランカの出会いを描いた「PRIVATE OPINION」で、ブランカとアッシュが「アルジェの戦い」をシミュレーションして駒をすすめていくところを思い出したですよ・・・。もちろん『KILLA』の方が先なので、今読むと・・・ですが。
 それとかキラの参謀になるルーファスは外人部隊の傭兵出身で、そこからビジネスの世界へ転身したという設定なのですが(だから元傭兵仲間を募って、ムーアの兵器工場に攻撃をかけるということが可能なんですな)、これも私は『YASHA』の静とクロサキを思い出しました・・・。
 だから何?と言われると、ま、連想するっていうだけっつーか、私の好きになる作品って、傾向が似てるなーというか・・・。それだけです・・・。『BANANA FISH』も『YASHA』もめちゃくちゃ私にとっては(多分ほとんどの腐女子にとっても!)萌え作品なんですけど!!キラとアレクの関係とアッシュと英二の関係も、ちょっと似てると思うんだよなー(笑)小さい声でしか言えませんが(ちょっと字を小さくしてみよう。笑)私の中では静と茂市もそうなんだけど。茂市も静の腕の中で死んじゃうしさー

萌え少女漫画回想録:第7回

2008年07月13日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 ・・・ぱらぱらっとオススメシーンだけピックアップするつもりが、一気に5巻読み切ってしまった。やっぱおもしろいわ、大和和紀の『KILLA』!
 どういう話かというと、ちょっと長くなりますが・・・
 娼婦の子として生まれ、孤児院から逃げ出したキラは、かつて陥れられて役者生命を絶たれたフレドに拾われ、彼の復讐の道具として演劇を叩き込まれる。キラはフレドの思い通り演劇界のスターとなり、フレドを罠にかけたサー・ドレイクとフレイザー監督を破滅させる。だが、キラの野望は演劇界になどなかった。彼は自分に恋した、ハリントン鉱業の娘アリスに目をつける。キラが役者に未練がないことに気づいたフレドはそれを阻止しようとするが、キラは彼を殺し、アリスと結婚する。さらに彼女の父を殺し、それに気づいたアリスを自殺に追い込み、ハリントン鉱業社長の地位を手に入れる。しかしキラの危険性に気づいていたムーア自工社長(彼の妻とアリスの母は姉妹で、会社同士も事業提携している)は、ハリントン鉱業へ産業スパイを送り込み、ハリントン鉱業を窮地に追い込み、結果キラは社長を解任される。調査室長顧問に追いやられたキラは、ムーアとの契約が切れたそのスパイ、ルーファスと契約を交わし、ムーアへの反撃を開始する。
 キラ追い落としに協力した重役の汚職やムーアとの裏取引をマスコミに叩かせ、キラは社長の座に返り咲くと、欠陥車疑惑や労働争議など、ムーア自工への攻撃を続ける。だがどうしても追いつめきれずにいたところ、ムーア自工の裏の顔、本当の資金源が兵器工場にあることを知り、そこを破壊することを決める。集めた元兵士ら、ルーファスとともに自ら工場に乗り込むキラ。工場の爆破は成功し、ムーア社長は自殺。娘のマドロンはムーア自工の相続を放棄する。キラはムーア自工をも手に入れ、兵器産業を引き継ぎ、世界を駒にしたチェスゲームを支配する、闇の帝王への道を歩き始める・・・。
 ──と、これだけだと「どこに萌えが?!」って感じですが、これは出来事だけの羅列ですので、キラの内面や彼の周りの人間関係が加わらないと、この作品を語ったことにはならないでしょう!
 全くあらすじには出てこなかったけど、最も重要な人物、盲目の天才チェスマスター、アレク・フリードキン。彼はキラがフレドに拾われてから知り合った幼なじみで、唯一心を許せる相手。そして何も醜いものを見ることもなく、美しい心のままの彼は、今ではキラにとって侵しがたい聖域、自分が闇ならば彼こそは光、とさえ思う、唯一の神聖だった。
 いやはや、キラとアレクの間には肉体的にはなんにもないんですけど、キラのアレクへの執着と、アレクのキラへの絶対的な許容(彼は自分の父親であるフレドを殺したのがキラだと薄々知っていて、キラのアリバイを偽証する)がもう、そんなことはどうでもいい!と思わせるほどなんですよ~!
 キラが兵器工場へ侵入するのを止めようとして工場へやって来て、爆発に巻き込まれかけたアレクを発見し、キラは助けに飛び出すんですが、ルーファスはキラを助けるため彼の脚を撃って止めてしまうんですね。結果としてアレクはキラの腕の中で死んでしまう。何もかも終わった後でキラは、ルーファスをナイフで刺し殺すわけですが・・・「なぜ・・・?」「きみがアレクを殺した」「わたしは・・・まちがってはいなかったはずです・・・」「・・・そうだ。おそらく君は正しかった。もしもあのとき君がやらなければ・・・いずれはわたしが彼を殺すことになったかもしれない。(うぎゃ!これもまた萌えるセリフ~)だが・・・きみは手をくだした。わたしの手の中で彼を死なせた」「・・・おいきなさい・・・あなたにふさわしい道を・・・」ルーファスは、前にもアレクという存在はキラにとって危険すぎると、アレクを殺そうとしたことがあって、このあたりの危険的主従関係とかもおいしいです!
 そもそもフレドとキラとの関係とか(絶対にこの2人はできてます・・・酔ったフレドが無理やりこどものキラにキスして犯しかかる場面もあったり。「フレドはすべてのはけ口をおれをいじめ、侮辱することではらしていた・・・」なーんてありますが、キラにベッドの手ほどきしたのは(キラは舞台の後援を得るために、男爵夫人をたらしこんでいる・・・)フレド以外いないでしょ!お互い歪んだ愛情を持っているようだしさー・・・)、キラはドレイクが男色趣味だと知っていて誘惑して失脚させたりとか、女装は得意(爆)とか、この作品はその手の雰囲気が濃厚です
 そのほかにもキラの母親はムーアの愛人で、キラはムーアの息子だったとか、フレドが役者時代夫ある女性を愛して、その女性が産んだ(母子ともに死んだとフレドは聞かされていた)のがアレクだったとか、そういう血縁間での愛憎っつーのも私の好みで、読んでいて本当に悶々・・・じゃなくて(笑)ワクワクします・・・キラとムーア社長がお互いに親子だと知っても、知ったからこそ「だれにも手出しはさせない。このわたしの手でムーアを破滅させてやる・・・!」「わたしとしたことが甘いまねをしたものだ。(自分の息子だと)知っていれば・・・必ず命を絶っていたものを!」などと思ったりするのもまた萌え~でたまりません!(似たもの父子だよな・・・

作品データ(幸田所有本データ)
『KILLA』 大和和紀 1977年週刊少女フレンド第15号~1978年週刊少女フレンド21号 講談社
『クィーンズ・ギャンヴィット』 1979年 単行本用描き下ろし:キラ14歳、アレク10歳のときのエピソード。キラはもう女装してらあ・・・;アレクにチェスを教えるために来たチェスマスターが、自分のような卑しい子どもとはつきあわないことを条件にしたのを知ったキラは、その男を罠にはめて破滅させる話。魔性の美少年ぶり&アレクへの執着ぶりを早くも発揮(笑)

(『KILLA ①~⑤』 1978年1月~1979年3月KCフレンド 講談社)
 


萌え少女漫画回想録:第6回

2008年02月17日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録
 花には水を、人には愛を、腐女子には萌えを。しかしこの頃萌えっつーともうBLジャンルが出来上がってるので、こう、作者がこっそり紛れ込ませたものを見つけたり、火のないところに無理やり煙をたたせたりする楽しみがないですな・・・。
 というわけで、私の萌えネタの1つ、日本古代史。それで萌え作品というと山岸凉子の『日出処の天子』ですが、これはちゃーんと毛人×厩戸王子なので、ここは前に予告した長岡良子の「古代幻想ロマンシリーズ」へレッツ・ゴー!
 長岡さんといえば、この古代シリーズを始める前は、大正時代を舞台にした「修一郎と薫」という少年達を中心に、その恋と成長を描いたシリーズ(ファンは「大正ロマンシリーズ」と呼んでいるよう)を何冊も出していて、これは薫の修一郎への片恋がもどかしい(だって修一郎って鈍感でさー)上に、薫は結核に侵されていて、隠していたのに修一郎の前で喀血してしまい、そして・・・おい!未完かよー!という状態で終わっていて、多分描く気ないだろうなーと思われます・・・。この大正ロマンシリーズの頃はまだ、萩尾望都さんの影響が大きく残ってますね。この修一郎と薫も、エーリクとユーリ(『トーマの心臓』)を連想させます・・・。(私としては、ユーリはトーマが好きだったわけだけど、できればオスカーを好きになってほしかったよ!オスカーはユーリのこと好きだったのにさあ・・・。結局ユーリの中からトーマの影を消すことができなかったって・・・死んじゃった相手には適わないなんて、ベタだけどしょうがないね・・・)
 そして長岡さんが「好きが集まってできた作品」(コミックスカバーの見返しのコメント)という古代幻想ロマンシリーズ最初のコミックス『葦の原幻想』。まだこれには「古代幻想ロマンシリーズ」という名はついていません。1冊目ですから!
 このシリーズの単行本は『葦の原幻想』を含めて15冊あり、時代的には鎌足の子不比等から平安時代まで。ただし萌え要素があるのは、長岡さんのオリキャラである田辺史(ふひと)が登場する話のみ。鎌足の遺児中臣(後の藤原)不比等とは別人だが、彼を鎌足亡きあと養育した田辺大隈が、もう1人、最初にコマとして利用しようと育てた甥、という設定。このシリーズでは一番出張っている藤原不比等と名前も同じ(史→不比等と改名)で顔もよく似ていてけっこー混乱します・・・。(いやー、大和和紀の『あさきゆめみし』でも思ったけど、現代みたいに髪型や服装がいろいろ個人の好みで違いがあるわけではないので、人物の描き分けが難しいですよね。男性もですが女性なんて性格が似てたりするとますます見分けつかないっつーか・・・特に時代が続いていたり、ある話では主要人物だったのが、ほかの話では脇役で出てきたりすることもあって、余計にややこしい・・・)
 『春宵華宴』・・・史15歳の春夏秋冬、そして春までの話。中大兄皇子の意が、弟である大海人皇子よりも息子の大友皇子の上にあることを知っている大隈は、史を大友に仕えさせようとする。しかし大友に反発を感じていた史はそれを拒否する。だが大隈は、大友が史を一目見て気に入ったことを知っており、策をめぐらし、史が拒否できない状況に追い込む・・・のですが、大隈伯父さんってば、甥なのに「無理やり皇子のお手つきにしてしまえ」作戦(爆)を取るんですよー!
 史が親しくしていた間人太后の名前で月見に呼び出されてみれば、いたのは大友皇子だった。大友に「人はそちを秋天に澄む月の光のようだと言っている。私はずっと、地上の月をこの花の中に立たせてみたいと思っていた。史・・・」と口説かれた次のページでは、史が小袖(かな?要するに下着・・・)姿で、後ろには几帳(部屋を仕切ったり、寝所を視線から隠したりするやつ)があって、「私はあなた(大隈)を父とも思ってあなたの手足となって働きたいと思ってきた。でもそれはこんな形ではではなかったはずです!」と独白するのです。
 これはあきらかにナニしたんですな・・・。何しろ大友ってば、その前に花見の宴で史と出会ったとき、帰る史のあとをつけたりしてたんですぜ~。隙があったら物陰に押し倒す気だったんだろうか(笑)(そのときの足音と、月見のときの大友の足音が同じだと史は気づくんですが・・・花見は春、月見は秋、半年前のことよく覚えてるな~なんて突っ込んでみたり。きっとそれくらい身の危険を感じたんだろう・・・笑)
 『孤悲歌』・・・史20歳。「私には皇子様お一人でございます」などと言いながらちゃっかり妻を娶っていたことが皇子にばれた夜、酔った大友を寝所まで連れてきた史は、大友と一緒に寝台に倒れこむ。体を起こそうとする史の腕をつかむ大友。「今宵は帰さぬ」「ご命令とあらば」激怒して史をはねのける大友。・・・愛されている自信のある受ってザンコク・・・;
 雑誌発表順は最初の『葦の原幻想』・・・史22歳、大友が敗れる姿を見る前に死亡するまでの話。この話では、史も伯父の教育よろしくすっかり曲者になっちゃった感があるが、実は弟の首(おびと)が弱点なのは変わらず、そのせいで結局命を落とす。大友との関係は出てこないけど、大友が史の腰にすがりついての科白「私の側を離れるな。私が信じられるのは父上とそなただけだ」が、『春宵華宴』を読んだあとではなるほどねー、と腑に落ちます。攻って、肉体的に上位ではあっても、だからといって精神的に上位だとは限らない、しかも受の心が攻にないときなんか、攻の受への執着が強ければ強いほど、精神的上下関係は反比例するところが「萌え」よねーv
 『月の琴』・・・史17歳。まだ結婚前、ちゃんと「大友一人」の頃(笑)。でも史は逃げ回って、あまり大友に隙を見せないようで、大友は十市皇女との婚儀の仕度が整ったと言いに来た史を無理やり×××・・・「それほどに私が厭わしいか?」「私はそなたを放さぬ、放さぬぞ!たとえ何人女を娶ろうとな!」強○はいかんよ、強○は・・・。それじゃ却って逃げられまっせー・・・というわけで、史は母の雇った百済の楽人、真貴志に惹かれてしまう。真貴志は実は唐の間者で、大隈を暗殺する目的で史に近づいたのだった。しかし真貴志もまた史に惹かれ、史に自分が間者であることを明かす。「君には策謀は似合わない。笑っているほうがずっといい。(おいおい、赤面ものの口説き文句だな!)ずっとそう思っていた。この国を出るときは君を連れて行こう──と。月と琴と君がいれば私は何もいらない。私は君を──」うひゃー!・・・で、真貴志は、最後には自分の仲間の間者に殺されそうになった史をかばって死ぬ。
 『玉響』・・・『葦の原幻想』直前、神人の血を引き、不思議な力を発現させる首を三輪に返すべきか迷う史。ブラコン・・・首のことを考えてぼうっとしていた史を背後から襲う大友皇子(笑)。「油断したそなたが悪い」押し倒されながら史、「お願いがございます」(この頃になると余裕だな!)「何─?」「数日のお暇を──」・・・で、休暇あげちゃうんだ、皇子・・・。惚れた弱み?あと史の回想で、裸で寝台の中にいる史と、半裸でその寝台に腰かけている大友という、モロ「事後」の場面もあります・・・;皇子の「そなたはほかの誰よりも忠実に仕えてくれる。そのうえ心までも望むのは過ぎたことなのだろうか」という科白が切ない・・・。だって史の心を「最も望むもの」とまで言い切っちゃうんですよーっ。
 古代ロマンシリーズは最後の『春宵宴』を除いては割と史実をもとにした話を描かれているので、やはり実在の人物を○モにしちゃいかんと自主規制したのか、そういう要素があるのはオリキャラである史が主人公である作品のみ。(ま、大友は実在だけど、敗者側のせいか史料でも目立たないから割と好きに描けるということで)古代史と主従BLという、私にとって2倍おいしい作品でしたvv

作品データ(幸田所有本データ)
『日出処の天子』 山岸凉子 1980年LaLa4月号~1984年LaLa6月号 白泉社
(『日出処の天子①~⑪』 1980年~1984年 花とゆめコミックス 白泉社)
『あさきゆめみし』 大和和紀 1979年mimi12月号
               ~1993年mimi Excellent NO.27 講談社
(『あさきゆめみし①~⑬』 1980年~1993年 KCフレンド 講談社)

以下、長岡良子※すべて秋田書店
『葦の原幻想』 1984年 Let’sボニータNO.1
『春宵華宴』 1984年 Let’sボニータNO.2
『孤悲歌』 1984年 Let’sボニータNO.3
(『葦の原幻想』 1984年初版 ボニータコミックス)
『月の琴』 1988年ボニータ9月号~1989年ボニータ1月号
(『月の琴』 1989年初版 ボニータコミックス)
『玉響』 1985年 ボニータ11・12月号
(『玉響』 1986年初版 ボニータコミックス)  
 

萌え少女漫画回想録:第5回

2008年01月14日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 岩川ひろみは、とても寡作なまま消えていった少女漫画家で、私がのちに思ったのは、「デビュー誌が違っていたら、もっと違う結果になっていたんじゃないか」ということだ。週刊マーガレットは当時、今でいう週刊少年ジャンプの少女漫画版みたいな存在だった。読者層は中高生がターゲットで、人気作家がひしめき、ジャンプと同じ集英社なのでおそらくアンケート重視の編集方針だっただろうことも想像に難くない。同時期の看板連載が有吉京子『SWAN』、山本鈴美香『エースをねらえ!』『7つの黄金郷』で、りぼんほど乙女チック路線ではなく、青春物や少女の成長もの、スポコン(スポーツに限らず、職業ものとか多かったかな・・・。柴田あや子の『まゆ子の季節』という美容師ものはおもしろかったな~・・・。)が中心だったように思う。(そういうところもジャンプを思わせる・・・)
 なので、耽美・BL系の岩川さんは、マーガレットのカラーに合わなかったのではないかと思う。いっそホラー系なら、のちに菊川近子さんが怪奇ものに転向していく(79年頃)ので受け入れる余地があり、生き残れたかもしれない。彼女のデビュー作は『ドラキュラの息子たち』なので(未読のため、ストーリーは不明。ホラーテイストのコメディか、耽美系かどちらかかなあ・・・)、そうしてみると、編集部としては美しい絵柄のホラー・サスペンス系作家として採用したのではないか。そう考えると、デビューしてすぐに横溝正史の『女王蜂』のコミック化、しかも連載をさせていることも納得できる。
 『女王蜂』の金田一耕介はさすがに岩川さんが描くと、たとえフケを飛ばしていても美青年(爆)です!男たちを夢中にさせるヒロイン大道寺智子、ぴったりです・・・美しいです・・・。横溝作品は他の作家さん方も少女漫画化されていますが、(JETさんがたくさん描かれてますよね。JETさんだと、陰影の強い、肉太の線のせいか、割と猟奇部分が前面に出る傾向があるかな・・・。好みが分かれるところです)横溝作品の耽美テイストが強調されて、私は大好きです。
 ちなみに、横溝作品は映画・テレビドラマ化もたくさんされていますが、私がいちばん良い!と今でも思っているのは、古谷一行が金田一耕介を演じた「横溝正史シリーズ」というテレビドラマですね!ちょうど77年~78年ということで、横溝ブーム真っ只中。岩川さんの『女王蜂』漫画化も、それに乗って、ということだったと思う。
 さて、横溝ブームもあって連載は成功したらしく(この作品だけコミックスになっているので・・・)、次の作品は少し自由に描かせてもらったのではないかと思われる。彼女の趣味・嗜好が前面に出た作品で、『魔女幻想』もマーガレットでは異色だったが、それ以上に異色だったのが、週刊マーガレット78年1号掲載の『青い薔薇の夜に』だった。
 手元に作品が残っていないので、私のおぼろげな記憶のみに頼るため、違っていたらお許し願いたい。
 主人公の美少年(16か17歳だったと思う)青樹(セイジュ)は、養父母が死亡したため、実の父に引き取られる。そこには兄たち(3人いたっけなー。2人だったかもしれん・・・。すべてタイプの違う美形だったv)がいた。父は大学で植物学を研究しており、青い薔薇を創り出すのが夢で、息子達にも色にちなんだ名前をつけていた。(ごめん・・・思い出せない。黄と赤と白が名前の一字に使われていたんだっけな・・・。やっぱ兄は3人だったかなあ・・・)だが父は、青樹にはひどくそっけなく、青樹は自分だけ養子にやられていたことといい、自分だけ薔薇にはあり得ない色が名前に使われているし、自分は父に嫌われている・・・と落ち込む。しかしそんな青樹に兄たちは優しく接してくれ、可愛がってくれた。養子先で虐待されていた青樹は(焼け火箸で殴られて、首に火傷のあとがあったりするの・・・。そんな設定にも萌えた、当時のワタクシ・・・)広い家の庭には、父が大切にしている温室があり、そこは息子たちさえ立入禁止になっていた。母親は庭の池に入水自殺したと聞かされており、それが自分を生んだ直後だったことから、自殺の原因は自分で、それで父に自分は嫌われているのではないかと悩み、ある夜、母が愛したという温室に忍び込むが、そこで父に見つかる。彼を見つけた父の様子は明らかにおかしく、母の思い出や、どんなに自分が彼女を愛していたかを語り、「おまえに母親が死んだ本当の理由を教えてやろう」と池のほとりへ連れ出す。「こうしてみると、お前は本当に彼女にそっくりだ・・・」と父は青樹に口づける。(うきゃー!)「あんなに愛したのに、おまえは他の男と・・・!」他の男と恋仲になった母は、父から逃げ、駆け落ちしようとしたのだ。青樹はその男の子どもだったのだ。「だからあの夜、私は彼女を私から逃げられないようにこうして・・・」父は彼の首を絞め、池の中に頭を沈める。窒息して意識を失う青樹。そこへ兄たちがやって来て、父は逃げる。水の中の青樹を見つけてうろたえる長兄に、次兄は「貸せ!人工呼吸くらい習ってる!」と叫んで抱き上げる。(じ、じんこーこきゅーっすかー!とここでまた萌えるワタクシ・・・。もちろんそれはマウスツーマウスでございますね!しかし、その場面は飛ばされて←オイッ)目を覚ました青樹。「良かった・・・」と彼を抱きしめる次兄(確か彼の名に黄色の字がついていたような・・・。どんな名前じゃ!)。その背中越しに青樹が見たのは、燃え上がる温室だった。その中からは笑う、狂った父の声が。温室はなぜか、青い炎に包まれ、さながら父が心血を注いで生み出そうとしていた、青い薔薇のようだった・・・。
 という話だった。細かいところは本当にうろ覚え。父に会ったのは温室でじゃなくて庭でだったかもしれない。長兄と次兄も逆だったかも?まさに耽美JUNE・・・(BLって感じじゃないよね・・・)。
 この主人公青樹が、美少年で!さらさらストレートヘアが肩までのおかっぱで、白いシャツが良く似合う、暗い翳を背負った正統派美少年でした・・・。
 やおいで私のツボの1つに肉親・血縁ネタ(別にカップリングとか恋愛関係でなくても、そういうトラウマがあったり、ややこしい血縁関係があったりとか)があって、この作品はそのツボに当てはまったんですな・・・。父の歪んだ愛憎、兄たち(主に次兄)とのほのかな愛とか!それに絵が私の好みだったんだと思う。多分、池田理代子さんにいちばん影響受けてるかなーという感じです。
 ともかく、この「父親にキスされて殺されかける、不幸な生い立ちの」美少年が、それ以後、私にとって「理想の美少年」になっていくわけです。たくさんの美少年をそれまでもその後も見てきたわけですが、世間が認める美少年のジルベールもエドアルドもアランもトーマも、その他私が書き散らしてきたアニパロ・マンパロのキャラクターたちも、私にとっての「理想の美少年」とは言えず、このたった数十ページの短編の主人公、どマイナー作家のどマイナー作品のキャラクターが、なぜそこまで私の心をとらえてしまったのか、分析はしてみれど、「これだ!」という確定的理由は自分でも見つけられません・・・。逆にたった一度読んだきりで、情報量の少なさ故にその後自分の中でキャラクターを作り上げ、「理想」にしていったのかもしれない。それでも、そこまで執着させたこの作品、この作家を、私は今でも大変愛しています。できればもう一度読みたい。読んだら「記憶と違う」とがっかりするのかもしれませんが、だからといって青樹が(しかしこのネーミングもすごいっす・・・。おかげでアニメにおける「理想の美少年」をオリジナルに転換するときにアレンジして使っちゃったよ(笑))私の「永遠の理想の美少年」であることに変わりはないでしょう。
 岩川ひろみさんの作品は今まで紹介した他に、調べた限りでは
 77年『Nocturne~夜想曲~』
 78年『青春綺想曲(ラプソディ)』(この話も結構それっぽい。ある音楽学校のライバル同士の男子生徒2人の話で、片方が病気で死んじゃうんだけど、どう読んでもそいつは、もう一人のことが好きだったとしか思えん・・・)『6月の雨の森』『イザベラ』
 79年『人形の城』
 となっています。連載含めてたった9作(推定)。本当に、せめて「少女コミック」か「花とゆめ」でデビューしていたらなあ!と思わずにはいられません・・・。


岩川ひろみ作品データ(すべて集英社)※は幸田未読
『ドラキュラの息子たち』※(デビュー作) 1976年 週刊マーガレット52号
『Nocturne~夜想曲~』※ 1977年 プチマーガレット春の号
『女王蜂』 1977年 週刊マーガレット15~23号
『魔女幻想』 1977年 週刊マーガレット45号
『青い薔薇の夜に』 1978年 週刊マーガレット1号
『青春綺想曲』 1978年 週刊マーガレット11号
『6月の雨の森』※ 1978年 プチマーガレット夏の号
『イザベラ』※ 1978年 週刊マーガレット増刊11月号
『人形の城』※ 1979年 週刊マーガレット増刊11月号
このデータに関しましては主に
こちら(リンクあり。別ウィンドウ開きます)と古書店のデータを参考にさせていただきました。

 うーん、『青春綺想曲』、一方が金髪のお坊ちゃん(名前なんだったかなー、ハンスだったか・・・?)、もう一方が黒髪のチョイ悪風(全く名前覚えてない・・・すまぬ)で、チョイ悪の方がお坊ちゃんを好きだったんだけど、お坊ちゃんはぜーんぜんそれに気づかず、「君(つきあってた彼女だったか婚約者だったか)のために弾くよ」なーんて、悲惨・・・。チョイ悪の方は最後死ななかったかも。病気でもうピアノを弾くことができず、退学したんだったかもしれない・・・。ほんと記憶力ナッシングだなー。

萌え少女漫画回想録:第3回訂正&追記

2008年01月12日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 処分したと思っていた上杉可南子さんのコミックスが出てきまして、さっそく読んだところ、あいたた・・・『魚鱗』の美少年は不破万作でした!不破万作は豊臣秀次が失脚して切腹するのに殉じた小姓です。享年17歳。も、もったいない・・・。しかしだからこそ、人々の心に残ったんでしょーなあ・・・。とりあえず鬼夜叉ではなく、不破万作に訂正いたします。
 ついでに上杉さんの作品の『逆光の頃』。主人公は優秀で美貌の兄へのコンプレックスで萎縮する弟だが、はっきり言ってこの作品は、兄にまつわる数々のエピソード以外どーでもよく、成長した弟がコンプレックスから解放されたというエンディングはとてもとても「とってつけた」感がある・・・。そのおかげで魔性の(爆)美少年だった兄が最後はただのいい人になっていたのがとても残念だ・・・(←腐女子の勝手な言い分ですな!)。
 優等生だった兄が、思春期には父親にことごとく反発するようになっていった頃を主人公が思い出すかたちで描かれるのだが、その中の1つに、父親の秘書の男と実はできていたというものがあるのだ!幼い頃には美少年の兄を秘書が押し倒したようだが、今ではすっかり立場が逆転して、「あなたに見限られては一日も生きてはいけない」などと秘書が兄にひざまずいて懇願し、その後はなし崩しにH・・・という場面を目撃するのである。
 兄は後に、父親と政治家の汚職の証拠を盗んで逃げるのだが、そんな悪い美少年だった彼が、どうしていつの間にかひょうひょうとした「いい人」になって弟の前に現れるのだ!・・・納得いかん・・・。魔性の美少年は「破滅型」であってほしいぞ!断じて「普通の大人(おっさん)」になどなってはいかーん!


作品データ(幸田所有本データ)
『魚鱗』 上杉可南子 1988年 小学館 プチフラワー4月号
(『うすげしょう』 1988年初版 1989年2刷 小学館プチフラワーコミックス)
『逆光の頃』 上杉可南子 1990年 小学館 プチフラワー1月号
(『飛天の舞』 1990年初版 小学館プチフラワーコミックス)


萌え少女漫画回想録:第4回

2008年01月06日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 誰でもこどもの頃は(大人になってもだが)眠りにつく前、布団の中で空想に耽った記憶があるだろうと思うが、私の場合は腐女子であるからして、もっぱら今で言うやおい話を空想していた(何しろ空想なので、好きなシーンだけ作ってにやにやしてりゃーいいので、こんな楽しいことはない・・・)。オリジナルで、というのは難しいので、だいたい好きなマンガやアニメのパロというか、勝手に捏造だ。それが後々アニパロ、マンパロやおい小説を書いていく萌芽となっていたわけだ。
 その頃私は、あるマンガのキャラを最も好んで動かしていた。そのキャラを好みの別のマンガの中に突っ込んで、その別のマンガのキャラたちとの話を創作することが、毎夜の日課となっていた。そのキャラクターは、私にとって永遠の理想の美少年だったのだ。
 といっても実はそのキャラが出てくるマンガは単行本にもならず、週刊誌で読んだきりで(その週刊誌はちり紙交換に出されていった・・・。はっ、若い子にはちり紙交換なんてわかんないか?!昔は行政による資源収集なんてものはなく、もっぱら古新聞古雑誌はトラックで回ってくる流しの廃品回収業者に渡し、トイレットペーパーと交換してもらっていたのだ)、フルネームすら覚えておらず(空想する都合上、別の名前をつけてしまっていたから余計にかもしれない)、おそらく実際に描かれたキャラより美化しているに違いないとは思う。
 その作者の他の作品も好きだったのだが、何しろ1冊しか単行本化(しかも原作付き※データ参照)されていないので、全くデータがない状態で語ることになる。ボケが進んでいるワタクシのことなので、記憶もあいまい。なので、語るというよりほとんど私の妄想の記録(爆)としかならないかと思うが、お許し願いたい。この作品、このキャラを語りたい──自分の同人活動の原点はこれだー!と叫ぶことが、この「萌え少女漫画」を書き始めたいちばん大きな動機だからだ。
 あまりに手持ちのデータがないため、情報はこれまで以上にネットに頼ることになったので、自分で正誤は確認できないが、古本屋や実際に切り抜き等を保管している方々のデータなので、間違いは少ないと思う。日本中のマンガマニアの皆さまに感謝。


 初めて彼女の作品を読んだのは1977年週刊マーガレット45号掲載の『魔女幻想』。作者は岩川ひろみ。表紙には「奇才が放つ悪と背徳の異色作」というあおり文句が・・・。
 自分が魔女であるという妄想に取りつかれた姉のベレニスに幼い頃からいじめられていたニコラス・マグナスは、ある日姉に氷の張った湖に突き落とされる。それを助けてくれた小説家のウィリアムは、それが縁でマグナス家に出入りするようになり、小説家志望だったニコラスは彼になつく。しかし母が変死し、それが姉のせいではないかと怯えたニコラスはウィリアムのつてを頼って家を離れる。それ以後もウィリアムはマグナス家に出入りし続け、3年後、ウィリアムとベレニスが結婚することになり、ニコラスは故郷に帰ってきた。その晩、ベレニスは自分から逃げたニコラスを鞭打つが、ニコラスは姉への恐怖とともに愛着を抱いている自分に気づき、口づけを交わす。しかし「永遠に生き続ける」と告げた姉の背後に悪魔の姿を見、彼は気を失う。
 ウィリアムと結婚した姉は娘を産んで死ぬ。その5年後、ウィリアムからの奇妙な手紙を受け取ったニコラスは、彼のもとを訪れた。そこにはベレニスの遺言により「ベレニス」と名付けられた、姉そっくりの少女がいた・・・。
 少々あらすじにもまとめにくい話なのですが・・・耽美なストーリーと雰囲気と絵柄、姉と弟の禁断の愛、おそらく作者が書きたかったのはこっちだろーなーと思われるニコラスのウィリアムへの片思いに、当時小学生だった私はものすごく心惹かれた。
 今読むと(この雑誌のみ、まんだらけで入手)、同性同士よりもまだ「姉と弟の禁断の愛」の方が編集部に受け入れられやすかったのだろーなー、それでこういう展開なんだろーなー、という気が・・・(爆)さらっと読むとニコラスもベレニスを愛しているようですが、ウィリアムに惹かれているニコラスの恋を邪魔するため、ウィリアムを誘惑したベレニスと違って、ニコラスの方は恋愛じゃないな、という印象。
 結局ニコラスとウィリアムと「ベレニス」は共に暮らし、「もはや何ものもぼくらの桃源郷へ足をふみいれることはできなかった」というモノローグで終わるのだが、その前に「ぼくらは世の常識を逸脱し、道徳の数々を軽蔑した」と言っていて、今なら「あっ、そーか、3ピ・・・(こらこら、レッドカード!)」と呟くところです・・・。多分編集部は気づいていない・・・(笑)
 そうして気になる作家となった岩川さんの作品を次に読んだのは、78年週刊マーガレット1号。いよいよ今も私の心の中に焼きついている美少年との出会いです・・・。(次回に続く!)


 データ
『女王蜂』 岩川ひろみ 1978年 集英社 週刊マーガレット
(『女王蜂』 1979年2版 集英社漫画文庫)


萌え少女漫画回想録:第3回

2007年11月17日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 今回はファンタジー、SF少女マンガの描き手としても、私が愛してやまない作家、今は亡き花郁悠紀子(かいゆきこ)さん。『雨柳堂シリーズ』の波津彬子さんは彼女の妹です。
 妖精や魔法が出てくるファンタジーの描き手では、めるへんめーかーや中山星香(『妖精国の騎士』の前まで・・・『ファンタムーシュ』とか『はい、どうぞ!』みたいなのが好きなんだ・・・)も好きですが、その中でBL要素のあるのは彼女だけ。
 1976年にデビューし、1980年にガンで亡くなったため活動期間は短く、コミックス10冊(1冊は波津さんのセレクトによる作品集なので、実質9冊)と作品数は少ないが、萌え作品は多い(笑)
 『秋の時うつり』は10年も離れて暮らしていた兄と弟の「危険的兄弟愛」(爆)と、弟と馬の異種族間禁断愛(爆・爆)の話。多分『遠野物語』のオシラサマの話が念頭にあったんじゃないかな。ま、この話では兄の弟への愛の強さに(きゃ☆)、馬は弟をあきらめるのですが。
 『幻の花恋』・・・これはですねー、一応オチは少年と少女の純愛話なのですが、裏にはBL話が隠されているのだ!
 戦後間もない時代が舞台。山村に引っ越した司は、そこで鬼姫と呼ばれている美しくりりしい(笑)少女すずかと、彼女にそっくりな双子の弟夜叉と出会う。彼らは父親がアメリカ人だったため、村人たちから孤立し、ふたりきりで身を寄せ合って生きていた。すずかと司は互いに惹かれあうが、すずかは結核に冒されていた。司と、ふたりの恋を認めない夜叉は諍いを起こし、はずみで司は夜叉を滝に突き落としてしまう。彼が死んでしまったと思い込んだ司は、その罪の意識ですずかに会えないままでいるうち、母の死により東京へ戻ることになってしまった。出発の前夜、すずかが司に会いにくる。「私はもう行かねばならぬ。(この言葉で、司はすずかが自分の死を覚悟していることを知る)けれどかならずおまえに会いにゆく」そうしてすずかは司に口づけをして去っていく。20年後、司は夜叉の消息と、あの時すずかは既に死んでいて、会いに来たのは実は夜叉だったと気づく。
 ・・・この世にお互いだけを頼りに生きていた姉弟だから、弟は死んでしまった姉の代わりに姉の想いを伝えてやろうとしたと一応解釈されますが、しかし、なんでキスする必要があったんだ?!しかも、司からしたならともかく、夜叉の方から!!もちろん彼は姉を愛していたので(この辺もけっこー危険的姉弟愛v)姉をとられそうになって司に突っかかったりしたが、偏見にとらわれず「鬼なら鬼でもいい。すずかが好きだ」と言う司に、彼もまた惹かれていたのでは?自分が姉だったなら、自分が司に愛されたのかもしれない、という思いもあったのではないか、というのが私の解釈です。
 次に具体的に何かあるわけではないが、全編耽美な雰囲気の漂う『カルキのくる日』。事の発端は、弟のダナエが父ラムファードに犯されたことを知った異母兄のジュノーが父を殺そうとし、銃の暴発で死んだことだった。彼の代わりに父と、そして自分を含めて父の血を引く者すべてを滅ぼすことを決意した、ダナエの復讐劇。
 その舞台であるラムファードの城へ、刑事のステファンが、ラムファードと結婚した直後に死んだ恋人ディアナの死の真相を求めてやって来て、それに巻き込まれる。ダナエがステファンに急速に惹かれた(勝手に決めつけてる・・・が、そうとしか思えん)理由は、きっと呪われた血と運命を受け継ぐ自分とは全く違う明るさ、健全さ、未来と同時に、無意識に彼が自分のやろうとしていることに気づいて、止めてくれることを願っていたからだろう。
 城の夜の中庭で、「この花(蓮)は朝にしか咲かない。ぼくには見られない」と言うダナエに、ステファンはなぜ、と問う。「蓮は聖なる花です。ぼくには見られない」と答え、ダナエは彼にすがりつく。(このすぐあとのコマが、離れて背を向けるダナエとそれを横目に見るステファンという構図なのだが、ほんとはステファンがどういう反応をしたのか、体を離すときのダナエの表情とかのコマがあったら良いのですが!この作品全体展開が早いし、コマもキツキツに詰め込んでいて、明らかにページ足りなくて省いているのが惜しい!!)
 口論して出ていけ、とダナエはステファンに怒鳴るが、去ろうとした彼にダナエは一転「行かないでください!」と叫ぶシーンとか。ダナエが父や姉妹を殺したことを知ったステファンに「あなたと一緒に、ここを出て行きたかった・・・」と告げ、城もろとも自殺するシーンとか!
 どろどろした設定、人間関係にも関わらず、西洋と東洋の融合したモチーフ使いと繊細で美しい絵とがあいまって、とても耽美でミステリアスな雰囲気の作品。
 『不死の花』・・・能のシテ方の家に生まれた主人公が、次に舞う作品「藤」の舞台を訪ねる旅で見た過去の物語。世阿弥に命を救われた申楽一座の侍童、藤若(世阿弥が自分の名を与えた)の、世阿弥への一途なプラトニックラブ(と書くと軽くなってしまうのですが!)がたまりません。ワタクシ、結構おっさん×美少年、好きです
 おっさん×美少年で思い出した。このカップリングの私にとっての最高傑作は、上杉可南子の『魚鱗』(多分・・・)という作品。後に彼女が描く鬼夜叉──言わずと知れた世阿弥──ではないかと思われる美童に惚れた初老の武士が、一夜だけでもと望むが、すでに身分高い方(やっぱ足利義満でしょう!)の寵愛を受ける身であるのに、お前のような者など相手にするわけがない、と少年の従者たちに嘲られる。それでも彼のあとを追い、山中の小屋で夜を明かしていた男のもとに、その童が現れる。少年は「私はお前が想っているその小姓ではない」と否定し、男と契りを交わす。翌朝出て行った童を見送り、男は「私のためを思って身を偽ってくださったが、私にはもう思い残すことはない」と自害する、という話。ひえーっ、胸きゅんですな!(初期の上杉さんは日本の古典文学とか能とかを題材にして、和テイストの美しい、実に雅で色っぽい雰囲気の作品を描かれる方で(世阿弥の少年時代の話『飛花落葉』では、魔性の美少年っぷりがしんぼうたまらん!)、大好きな作家さんだったのですが、途中からレディコミに移って作風が変わってしまったのが残念です・・・)世阿弥は義満の稚児だったという史実があるので、腐女子には格好の妄想材料。木原敏江の『夢幻花伝』にはしっかりHシーンもありますv・・・でも、ちゃんと少女マンガなので、世阿弥(藤若)は幼なじみの少女と最後まで相思相愛ですが。
 『平家物語』の『敦盛』も私のツボなおっさん×美少年話ですが、古典の教科書でこれを読んだときは、「教科書にこんなホモを載せていいのか?!」と思いました。もちろん直接的なBLシーンはないけど、男と男の恋とゆーか、おっさんの純愛だよねぇ?
 さらに古典といえば『源氏物語』。これも教科書で、確か須磨の話だったと思うけど、突然の雨に源氏が神に嵐を治めてくれるよう祈る場面で、源氏の手が白くて女のように美しい、と男たちが見蕩れるという描写があり(あれ?これ、私の頭の中の妄想?源氏の原本も翻訳本も持ってないので確認できません・・・)、「源氏の従者にはホモしかおらんのか・・・?それとも源氏が魔性の受けなのか?」と思ったっけ。日本の古典文学は楽しいな・・・。(←腐女子限定)
 話がすっかり横道に逸れてしまいましたが、花郁さんのここで取り上げなかった作品でも、性がなかったり(『フェネラ』)、女性が男装していたり(「男装は萌えねー」とか言っていた私でも、最後がどーしても男と男がフォーマル着てワルツ踊っているようにしか見えない『踊って死神さん』。ネタ明かしのドレス姿こそ、実は女装だったというオチはないのか・・・?)、みなどこかしら腐女子の感性を刺激します。特に彼女の描かれる東洋系美青年は絶品です本当に、もっとたくさん作品を読みたかった・・・。


作品データ(幸田所有本データ)
『魚鱗』 上杉可南子 1988年 小学館 プチフラワー4月号
(『うすげしょう』 1988年 初版 小学館 プチフラワーコミックス)
『飛花落葉』 上杉可南子 1988年 小学館 プチフラワー8月号
(『飛天の舞』 1990年 初版 小学館 プチフラワーコミックス)
『夢幻花伝』 木原敏江 1979年 白泉社 LaLa9・10月号
(『夢幻花伝』 1980年 初版 白泉社 花とゆめコミックス)
以下、すべて花郁悠紀子(秋田書店 プリンセスコミックス)
『秋の時うつり』 1976年 秋田書店 ビバ・プリンセス秋季号
(『四季つづり』 1979年 初版)  
『幻の花恋』 1977年 秋田書店 ビバ・プリンセス春季号
『不死の花』 1979年 秋田書店 プリンセス8月号
(『幻の花恋』 1981年 初版)
『フェネラ』 1977年 秋田書店 プリンセス7~9月号
(『フェネラ』 1977年 初版)
『カルキのくる日』 1978年 秋田書店 プリンセス11~12月号
(『カルキのくる日』 1981年 初版)
『踊って死神さん』 1979年 秋田書店 ボニータ秋季号
(『踊って死神さん』 1981年 初版)



萌え少女漫画回想録:第2回一部修正しました

2007年10月29日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録
 やっぱりというか、大島弓子の作品がどうも間違っているようなので、作品名削除しました。あと『ジョカへ・・・』も少年は死んだことにされたらしいので、ここも修正。私の記憶ではほかの作品とごっちゃになっているらしく、高校生くらいで再会したと思っていたが、どうも少女が結婚することになったのを知って会いに来たらしい。うーん、やっぱ記憶力皆無なので、本が手元にないとだめだなー
 第2回を書いて、『イズァローン伝説』みたいに最初から両性具有を前面に出してる作品は、おもしろくはあってもやっぱあまり萌えはなかったなーと思った。最後の逆転ホームラン(笑)で「うおーっ!カウスおめでとー!!」と燃え(笑)はしたけどねー。その点、『スター・レッド』は「ええっ?」とときめき&萌えたよ(笑)

萌え少女漫画回想録:第2回

2007年10月28日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録

 次は私の理想の「永遠の美少年」をやろうかと浮き浮きしていたが(笑)、その前に、第1回で出た「女性化」についてもう少し追加。
 嫌いな人と好きな人が分かれる、女性化とか両性具有とか、私は結構好きなネタです。これが逆に男性化(見たことないので男装も含む)、両性具有でも本人の自己認識が女性が本位だと、興味があまりなくなってしまうのはどういうわけなのか・・・。『リボンの騎士』(アニメでしか見てない)も『ベルばら』も『BASARA』も、作品としておもしろいと思うけど、萌えはない。
 男装で思い出した。大島弓子の作品なんだけど、こんなマイナー作品、誰も感想も書いちゃいねえ・・・ので、ネットでも詳細が見つからず、タイトル不明。子持ちのやもめに惚れた青年が女装して、おしかけ女房して、でも幼かった娘は大きくなるまで本当の母親だと信じていた。ただ時々母が夜中に、近くの池で泳いでいたのを見て、「見てはいけないものを見てしまった」(←いや、別にヌードを見たからってわけじゃなくて(笑))、という気がしたと述懐する場面があって、なんとなく、鶴女房とか雪女とか、異種婚姻譚の民話的情緒があって、切なかった。あと、同じく大島弓子の『ジョカへ・・・』だったかな(←はっきりしなくてすみません。大島さんはあまり好きな作家ではなく、コミックスは全部売ってしまったのでわからん!)、主人公の少女は幼馴染の少年が好きだったが、彼は突然死んでしまう。その後成長した少女の前に、不思議な魅力を持った少女が現れる。実はその少女こそ、死んだはずの少年で、彼はこどもの時病気に罹ってそのとき染色体を調べて女性だとわかり、女性となる手術を受けるために姿を消したのだ。そして少女のことが好きだった少年は、正体を隠して少女の前に現れたのだった、という話もあったな。・・・長い脱線だ。
 とはいえ、女装ものはともかく、実際に女性化する話は少ない。私が知らないだけかもしれないが、私がいい!と思ったのは、萩尾望都『11人いる!』(有名すぎるので、これについては省く)『スター・レッド』と竹宮恵子『イズァローン伝説』、小説でアーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』くらい。
 『スター・レッド』では、異次元に捕らわれてしまった火星人の少女セイと、同じく意識が肉体に戻れなくなっていた火星人の少年ヨダカとが再会し、肉体を失ったセイのためにヨダカは自分の体を女性に変化させてセイを子宮に宿し、目覚める。その後ヨダカはESP研究所から逃れるために、以前に知り合った貿易商のラバーバと結婚するのだが、これが案外偽装結婚でもない節があるのですよ!まず、ヨダカが意識不明のときのラバーバの独白「なぜこの火星人と気が合うと思えるのだろう。息子などいないが(注※ラバーバとヨダカは親子ほど年が離れている)息子の代用と思ってるのだろうか」・・・息子の代用じゃなくて、それは「恋」です(笑)。「地球に帰ってヨダカが目を覚ますとすぐ(注※結婚の)届けを出した」ラバーバ。躊躇なしかよ!と突っ込みたくなります。一方ヨダカも、「とまどうことがいろいろある。(略)ラバーバが助けてくれる」だと。のろけか?!
 この文を書くためにコミックスをパラパラと読み返したのだが、自分の記憶の鮮明度が、ヨダカが女性になってラバーバとくっついたことに偏っていたことを自覚しました。主人公セイと、異星人エルグとの恋については割とどーでもよかったらしい・・・。
 『イズァローン伝説』では、最後の最後でずーっと脇役だと思っていたカウス・レーゼンが、主人公の両性体の王子ティオキアと相思相愛(といっても、ティオキアは肉体を失い、「はるか先の国で(略)再びお前と出会えたら、おまえにこの身を──」と言い残し、自分ごと魔王を結界に閉じ込めて去ってしまうのだけれど)になったのが驚きでしたよ。だって本命は絶対ルキシュ王子に見えたし、カウス・レーゼンなんて最終巻近くまで脇役扱いだったし、ティオキアも、そんな気のある様子は全く見えなかったので、まさに逆転ホームランでした・・・。ちなみにカウス・レーゼンは『風と木の詩』で私好みの性格の悪い(爆)黒髪長髪の美形、ジュール・ド・フェリイに似ていると思う。あ、性格は全然違って、カウスは口は悪いけど相手に尽くす下僕タイプです!
 話は戻って、どうして女性化とか両性具有に惹かれるのか、私個人に限って言えば、攻めである(攻めを選択できる)者が、受けにスタンスをひっくり返されるという、世界の反転、力関係の逆転に萌えを感じるからとしか言いようがない。普通の少年、男という本来攻めの属性を持つ者が、受属性にもなる可能性(まあ、BLややおいだと、可能性どころか必然で、ほとんどの場合どのキャラが攻めか受けかは決まっているけどね)が垣間見えるから、性の逆転や、同性愛やそれを匂わせるマンガが好きなんだな・・・。恋愛そのものに萌えはないが、スタンスの逆転、世界の反転、支配と被支配の力関係(しかも必ずしも攻めが支配権を握るとは限らない)に萌えはある!と思うワタクシです。


データ (幸田所有本)

『リボンの騎士』 手塚治虫 1953年
『ベルサイユのばら』 池田理代子 1972~73年 集英社 週刊少女マーガレット
『BASARA』 田村由美 1990~98年 小学館 別冊少女コミック
『ジョカへ・・・』 大島弓子 1973年 小学館 別冊少女コミック
『11人いる!』 萩尾望都 1975年 小学館 別冊少女コミック
(『11人いる!』 1976年 小学館文庫)
『スター・レッド』 萩尾望都 1978~79 小学館 週刊少女コミック
(『スター・レッド①~③』 1980年 小学館 フラワー・コミックス)
『イズァローン伝説』 竹宮恵子 1982~87年 小学館 週刊少女コミック
(『イズァローン伝説①~⑫』 1982~87年 小学館 フラワーコミックス)
『闇の左手』 A・K・ル・グィン 1969年
(『闇の左手』 1977年 ハヤカワ文庫 1979年第5刷)


萌え少女漫画回想録:第1回

2007年10月21日 | 行き当たりばったり的萌え少女漫画回想録
 さて、最初はやはり「私の記憶の中で最も古い萌え作品」を書くことにしよう。
 その作品は、別に男と男の熱すぎる友情とか(笑)、主従関係とか(幸田は下克上が大好きだ・・・)があるわけではない、普通の少女マンガだ。1つだけ変なところは、「男が女に変身してしまう」ことだけだ・・・。
 ほんっとーに記憶がおぼろげで、掲載雑誌も作家も主人公の名前も結末も覚えちゃいないが、どこかで偶然見つけた香水の匂いをかいだ主人公(男)が、女の身体になってしまう(しかも、主人公限定で。ん?主人公が男だというのは、当時としてはイレギュラーか)という話だった。主人公は金髪グラマーな美女に変身して、最初はおもしろがっていたがそのうち元にもどれなくなって、親友の男が元に戻す薬だか香水だかを作ろうとしてくれていたんだけど、そのとき、「戻れなかったらどうしよう」と弱音を吐く主人公に、「お前が元に戻れなかったら、俺がお前を嫁にもらってやるよ」みたいなセリフを言うのですよ!(・・・と、私の記憶ではなっているが、もしかしたら私の捏造か?!いや、そんなこどもの頃から妄想していたはずは・・・!!)
 当時の私はこの作家が特に好きだったわけでもなく、他の作品も全く読んだ記憶がないほどですが、この作品だけはしつこくタイトルを覚えていて、もちろん「ホモ」とか「同性愛」という言葉どころか存在も知らず、自分が「腐女子」だという自覚もなく(あるか!)、ただ何となく「どうしてこの話に心惹かれるのかなあ・・・」と疑問に思っておりました。その「どうして」がわかったのはその後、竹宮恵子の『変奏曲』を読み(雑誌掲載時に読んだのか、単行本で読んだのかは記憶なし)、エドアルド・ソルティがホルバート・メチェックに無理やりキスされて、写真をネタに脅される場面で、胸が「ズキューン!!」(笑)となったときでした・・・。
 「わ、わたし、こういう(男と男がナニする)のが好きなんだ・・・」
 腐女子の自覚が生まれた瞬間でした・・・。
 その最初の萌え経験作品とは、『ムッシューシンデレラ』。
 結局主人公は男に戻れて、親友とくっつかなかったのが、返す返すも残念です・・・。今BL雑誌に掲載されたら(いやBL雑誌じゃなくても「FL○WERS」でも「少女コ○ック」でもいいんだけど・・・って、なぜ両方とも小○館・・・?)、戻ったところで「男でもいい、お前が好きだと気がついたんだ・・・!」と親友に迫られるところから話が発展するのになあ・・・!(ばか・・・)

データ:作品名、作者、初出年、出版社、初出誌
    (幸田が所有する単行本のデータ)
『ムッシュー・シンデレラ』 沢美智子 1975年 講談社 週刊少女フレンド
『変奏曲』 竹宮恵子 1976年 小学館 別冊少女コミック
(『変奏曲①~③』1980~1983年すべて初版 朝日ソノラマ)