チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 49

2018年11月13日 10時59分47秒 | 日記
「本気で続けるか?ひさこさん」
「うっ」
「本気でずっと着物のことを勉強し研究を続けるのだったら今日からお座敷勉強をしよう」
堀留にある問屋の社長の申し出があった

本気で続けるなんてことは毛頭思ってもいなかった
知らない世界にはいり、次から次に目の前に現れる新鮮な驚きを面白がっていただけだった
日本って愉快着物って奥が深いなあ
と軽い感じであった(とにかく根性がない)

365日着物を着続けると言う実験5年目のことだ
「お座敷で着物を着るプロの人達の立ち居振る舞いを見学するといいと思うんだ」
(お座敷?芸者?)
迷うことなく即答!
「もちろんです!本気で死ぬまで続けますよ着物の研究はーー」
(うわ~言っちゃった!)
「ひさこさんは自分できちんと着物や帯を購入するのでそれのお返しかな」
(当時はその社長だけでなく他にもそう言ってくださる社長達がいて高級料亭でマナーの勉強などさせてもらった。着物や帯はおまけしてもらえなかったがもっと大きなお返しを頂いたことになる)

それからが大変月に一回のお座敷遊びが始まり
その遊びに関連して歌舞伎や文楽長唄の会、地唄の会、お茶会と目白押し
その都度自分が着ていく着物の選択
集まっているご婦人たちの着物や立ち居振る舞いの学び

若い頃古典のお稽古ごとを蹴ってピアノにうつつを抜かしていたことが悔やまれる
幸い長姉がお茶の師匠なので付け焼き刃の稽古をつけてもらう
次姉は書道と琴の腕に長けていたのでここにもにわか入門
お茶の作法や古典芸能の入り口を少しでも見に付けると日本の文化の見方が全く変わる

さらに今まで染織の取材していたことも
古典芸能や古典文学に馴染むことによって理解の奥深さが違ってくる

神田のお座敷に上がったとき
若いきれいな芸者がいきなり私の顔を見るや
「うわー加藤先生?でしょうしばらくです」
つまり母校の教制実習のときの高校生だった
神田生まれと聞いていたがお茶屋の娘だったのか

緊張がにわかに溶けて舞い上がりその芸者と衣装をとっかえ
男シサンに引着を着せてもらいその紐の位置帯の締め具合を身をもって体験した

とっかえたまま「ひさ奴」という名で各お座敷を周り新人芸者として
お姉さんたちにいろいろ作法を教えてもらいながら楽しんだ
なんと言っても後ろ襟に祝儀のお金がザクザク入るのは驚いた

なるほど抜き衣紋はこういうことなのかと変に納得

こうやって育てられたことをひしひしと身に感じ着物の世界で生きていくのが恩返しと思う昨今でもある

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コメント
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