チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

#着物が繋ぐもの 41

2018年11月01日 13時40分01秒 | 日記
姑の話の話の続き
「ヒサ子さん今度の悉皆屋さんは伸子張り使ってないわ」
「どういうことですか?」
「アイロンで生地を伸ばしているようなのよ」
「いけないのですか?」
「いけなくはないけど縫いづらい」
「ほおー」

着物は汚れると全部解いて洗う
袖、身頃、衽、襟と端縫いしてもとの一反の布にして洗う
洗ったあと伸子張り(細い丸い竹の先に針をつけその針で反物をを横に伸ばしていく)
この作業はよく母がやっていて近所の子供達とかくれんぼするのにちょうどよい隠れ場だった

洗って12メートルの布を引っ張り横幅を統一するために伸子張りで幅を固定し
そこにふのりという海藻をとかしたもので糊付けして干す
ちょうど今頃の季節は乾燥しているので母は忙しかった家族の着物を洗っていたのだ
普段着は解いて端縫いはせずふのりで洗い洗濯板に貼り付ける
それも近所の子どもたちは面白がって小さい手で手伝う

姑の話から幼少の頃の庭の風景を思い出していた

「伸子張りで仕上げると布の目が平均していて針の通りがいい、しかしアイロンだと目が詰まっているところとそうでないところがあり縫いにくい」
「わかりますなるほどですね、前の悉皆屋さんにします」

芭蕉布を渡したときだった
「ヒサ子さんこれ産まれて初めて触るけどヘラは効かないしチャコもつかない、仕方がないからしつけ糸で仮縫いして本縫いに入るわね、時間がかかりますよ。
それにしてもこの布は普通の本仕立ての着物できるものではないのではないかしら」
「お母さんそのとおりです沖縄では琉装と言って半分引っ掛けたような形の伴天みたいに着ていました」
「そうすると出来上がっても着方が難しいかもねでもヒサ子さんはなんとかするでしょうけどねふふふ」
お見通しだ

「ヒサ子さんこの紬打ち込みが足りないわ、打ち込みがしっかりしたほうを後ろ身頃にするので、柄がいびつになるけどいい?」
「エッそれって人間国宝になろうとする人のものですよ」
「そうなの?結城紬のほうがよほどしっかりしてるわ、この方の膝も出るかもね}
案の定膝は出るわお尻はたるむわ、姑の慧眼恐れ入る

流石に姑のかけるアイロンは素晴らしく図々しく半襟はもちろん下着までアイロンを頼んでしまう
外出から帰ったら必ず着物にアイロンを掛けてくれるだからいつも着物がピンピン
「脱いだときにきちんとアイロンを掛けておくと汚れも一緒に取れるのでねこれ常識」
「テヘッ夕飯の支度します」
いつの間にか姑は私の着物の手入れ番、私は食事係と言う役割分担が決まって
着物にまつわる裏側の知恵をたくさん教えてもらった

#着物 #洗い張り #伸子張り #悉皆屋 #芭蕉布 #姑 #結城紬 #へら #端縫い#身頃
#衽

(つづく)
コメント
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