チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繫ぐもの 56

2018年11月23日 15時47分39秒 | 日記
着物を着た人たちの着方の取材は非常に有意義だった
芸者、藝妓、舞妓の着方の次は能装束の取材
いろんな役柄によって着方が全く違う
その中でもっとも参考になったのが
裾の合わせ方
そして上前のはね方

着物の着方においては裾はぴっちり 上はゆったりこれが美しい着物姿の基本
このことは文学座の杉村春子さんを取材したときコンコンと説明を受けた
杉村さんの舞台を見たとき
鏡のない舞台上で着物をスルスルと脱ぎまたぱっぱと着ていく
その仕草の素早さと体の動きのしなやかさに見とれた
しかもセリフを言いながらだーーー

そしてすぐ取材を申し込み
鏡のない場所での着付けのコツを教えていただいた
余談だがその時私が着ていた上田縞の着物をいたく気に入ってくれて
「あなたに任せるので私に似合うのを見繕ってきてね」
と言われ小岩井さんのところに行き2本ほど見て文学座に行った

「困ったな両方共捨てがたい、こんな二反ともいいという選び方しちゃあいけないわよ」
と笑いながら何回も肩に反物をあててみていたが
「両方いただくわ、こういう手仕事のものは二度めぐりあうことがないのよね、今までの経験から」
その後ずっと長らく上田縞を愛用していらした
映画に出るときも自前の上田縞を見ることがあった

その時
「自分の体の細部を知っていれば手が自然に動いて着物が勝手に体についてくるものよ」
変に鏡に頼るから手がお留守になって、その上シワが出た、弛んだなど細かいところに目がいき
結局自分らしさの着方になって、着物を着るのが億劫になる

自分の体を知ることは
正しい骨に位値を知ることだとも教えていただいた

舞台上で着るからには見ている人の気持ちも察して美しい動きをしなければ行けない
「練習をするんですか?」
「というよりいつも着物を着ていくとき第三者の目を意識しているということかな」
「特に男の人の目を意識するといいですかね」
「ハハハおっしゃいますわね、それは一番美しく着るコツになるかもね」

能装束では襟を立てて着るというコツを教わった
特に男の人の場合襟を立ててきたほうが男っぽく格好がいい
女の人が着せてしまうとついつい襟を寝せるので男が女っぽくなってしまう
そう着たい人は別だがーー

襟を立てるコツは鎖骨にあった
また上前を美しく跳ね上げる方法は骨盤の位値に布をどう巻きつけるかにあった

着付けは奥が深い (続く)

# 骨盤 #鎖骨 #襟 #杉村春子 #能装束 #上田縞 #文学座

コメント
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