チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

#着物が繫ぐもの 42

2018年11月02日 11時26分19秒 | 日記
斎服

明治維新以来本物の斎服が作られていなかった

今回来年の大嘗祭に絡んで斎服を調達することになりあらゆる資料を調べ
また装束の研究家や仕立ての方々に取材してわかったことだ
本物ん斎服を作っていない!
しかも着ている方たちはそれに何の疑問を持っていない!

ひょんなことから女気(男気より向こう見ず)を出し
「私が作りますわよ」
と後先考えず宣言してしまった。
それからが大変

わからない方たちはそこらへんにある白生地を調達して作ればそれで事足りると思っている
そうではない!
こういうことは一生にめぐりあうかどうか女気出さないで女がすたる(バカだねえ)

というわけで現実の斎服の様子を調べた
広幅で袍は50尺 袴は40尺 白衣は33尺
しかも袍や袴はパリッといていないといけないので糊付けをするという

「なぬ?糊付け?」
ここからチャコちゃん先生深みにはまる
糊付けってどれくらいと糊付けされた布を手に取ると
「糸にセリシンがついたままでいいではないの!」と思った
そして過去の資料を調べたらなんと江戸時代前にできたものはセリシン付きであった

そうか
明治維新の富国強兵制度で大量の繭を生産し輸出できる生糸を作るには動力機を動かさなければならない

糸を攝るのも動力機その動力機にはセリシンがついていると糸の通りが悪い
だったらそのセリシンを取ってしまわなければならない
そのため薬品を使ってタンパク質であるセリシンを取り去る
糸のパリ感はなくなる
(このパリ感を着やすいようにする丈布を砧で叩いて調整する、砧っている町名だけが今は残る)

その為新たに張を持たせるために糊付けをする(おかしいよね)
なるほどこれか

「斎服を着る人のためではなく、日本国本来の蚕の育て方糸の作り方布の織方を残そう!」
と丹田に力が入った
「そんなことをしたらいくらお金がかかるのか見当もつかない、馬鹿なことはやめなさい」
と諭されたが、思い立ったらあとに惹かないチャコちゃん先生
死んでもいいという覚悟で突き進んでいる

蚕の種類を決め在来種の桑の葉も定め
更に芽吹きの桑の木を一握りしその下の桑の葉16枚しか蚕に与えないという仲間の力を得て
真っ白い繭ができゆっくりと糸を引き輝くような経糸緯糸を機にかけて無心で降り続けている

今この国に二人といない人との巡り合いは35年の月日を数える
その間の彼の仕事ぶり思考すべてがこれからの日本つないでいかねばならないと思う
その手仕事の尊さが「斎服」という形で未来永劫残ることになった

その橋渡しができることを幸せと思う

#斎服 #繭 #桑の葉 #セリシン #装束 #砧


コメント
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