チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 94

2019年02月14日 11時34分57秒 | 日記
着物ブックのことを更に伝えようと思う
「悉皆屋」「洗張屋」「京染め屋」とか言う間口一軒ぐらいのお店が各町内に一軒はあった
それは昭和50年代まで
もちろん地域によっては今も残っているお店がある

呉服屋とは違い
お手入れと染かえが専門お店によっては仕立てもしてくれる
着物ブックはそういうお店の店頭に置かれていた

つまり
派手になった着物をを染め替えしたいというお客さん
白生地(その頃は出産祝いとか、婚約祝、などめでたいときに白生地に紅白の糸を付けて贈る習わしがあった)を頂いたので着物化羽織に染めたいというお客さん
そういうお客さんが店においてある着物ブックを見て
「あらこれがいいわ」
と決めていく

この店は着物を解いたり洗濯したりシミ落としをしたりと着物のお医者さんみたいな役割だあった
チャコちゃん先生が住んだ大久保にもあったし引っ越してきた淀橋にもあった
お世話になったのは「古渡屋」という悉皆屋

きものの解き方は襟から解くと簡単
とっさのシミはとにかく水で叩くといい
家に帰ったら真綿で表面を拭いておくと汚れが取れる
着物についたタバコの臭いはまず風を通し蒸氣アイロンをかけるといい
「焼き肉の匂いはどうやったらいいの?」
「お召し物のときは焼き肉はいただかないように」笑いながら注意をされた
「ハイソウシます」

ここのご主人はもちろん江戸っ子淀橋の店はどうも江戸時代から続いていたらしい
店の主は足が不自由だが奥方(女将さんという雰囲気ではない)がまた垢抜けて美しい当時お二人とも60は過ぎていたが主も美男だしーー
淀橋といえばご近所が十二社の花街
芸者さんたちの着物の手入れをする傍ら相談にも乗っていただろうきっとそこで相思相愛になり
お座敷をやめた姐さんは悉皆屋の奥方になったのだろうか

などなど
店先に座わりこんで細かい着物の手入れなど教えていただいている時
ただ静かに座って、主と私の話のやり取りをほほ笑みを浮かべ客の着物を解きながら聞いている奥方の仕草を観察、想像力をたくましくする若いヒサコサン

お茶もお花も踊りも習得したであろう指先の動きの美しさ
お盆にお茶とお菓子をてはのせて差し出す肘の動きがまた優しく優雅
にこっとわらって「どうぞ」という時腰から顔が動いて目を覗く(ゾクッとするよ)
もちろん着物姿だ

ある時着物ブックの企画編集者の名前に中谷比佐子とあったといって二人が大喜び
そのひはお薄を頂いた
それがまた美味しくつい「奥さんは昔芸者さんだったのですか?」
黙ってうなずき二人して顔を見合わせ微笑んでいた

バブル経済の頃地上げ屋にあっても店を守っていたけど
ある時から着物を着る客が少なくなり跡取りは出来たが店を畳んでしまった

#着物 #悉皆屋 #中谷比佐子

コメント
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