チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繫ぐもの 102

2019年02月26日 11時14分58秒 | 日記
男が家で着物を着なくなって「男の権威」が落ちたように思う
男はもともと弱いから「権威」を持っていないと生きていけない
家で着物を着てどっかり座っているだけで家長としての貫禄と信頼感を得ていた
昔の女は賢いので子どもたちにそういう姿の父親を崇拝させるように仕向けていたようにも思う
男の着物姿が家から街から姿を消したのは昭和50年に入ってであろうか

こういう話もあった
昭和40年代だ
国政の選挙があると一気に大島紬が売れた
お金を配るわけにはゆかず大島紬を票を集めてくれる有権者に配っていたのだ
その桐箱の下にお金が並べてあったかどうかは知らない

先日その時に配られた大島紬の桐箱を見る機会があり「噂だけではなかったのだ」と思ったものだ
桐箱に収まっているのでカビも出ていないし新品のママ
「反物の下に紙幣が入っていない?」
流石になかった!

大島紬の亀甲絣が主流でだいたい藍大島
これはまた婚礼衣装の中に新婦側が花婿に贈呈するしきたりもあった
ずいぶん婚礼支度を見たが必ず大島紬が入っていた
この企画を考えた人はすごいマーケッターだ

その頃大島では生産が間に合わず韓国での生産もありそれは韓国大島と呼ばれていた
泥染めが出来ないので形だけは似てもペラペラだった

余談だが時を同じくして私は韓国絞りのお帯揚げや組紐の色出しを十日町のメーカーに仰せつかって韓国に度々行った
どうして度々行ったかといえば
色出しをしたときは、出した色と同じ色を染めてくれるのだが
そのままほっておくといわゆる「韓国色」に染めてしまい奥行きのない色となって日本では売れない
そのため毎回染出しに行くことになった

(その頃韓国に行く男たちの目的を目の当たりにみてショックを感じたけど今は書かないー苦笑ー)

さて本題
とにかく売れに売れた大島紬大体一疋(着物と羽織)が単位
だから必ず羽織を着るその羽織の裏に男たちは凝った
十二支、富士山、春画、浮世絵、能、スカーフなどなど
そして今その大島紬がリサイクルショップに山と積まれている

韓国大島も純然たる大島もほとんど同じ値段というのも本物の価値がわからない時代になっているからであろう

しかしながら喜ぶべき風潮もある
ある若手経営者(40代が中心)たちが着物に興味を持ち始め
自分の体が本物を求めていることに気がついた模様
頭での判断ではなく着てみて「本物は着心地が良いし着崩れない」ということを覚えた
なんと喜ばしい

彼らが海外で着物姿でビジネスをする日も近いような盛り上がりを感じる

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コメント
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