昨日長野県岡谷蚕糸博物館で開かれている「信州の型染・中島久雄展」にお邪魔した
からりと晴れた青空の下信州の山にはもう雪が冠っていて諏訪湖の水面は波一つ立たず静か
岡谷駅には中島夫妻、博物館の館長高林さんと学芸員の林さん
「うわー総出のお出迎え恐縮です」
4人ともなんだかやけに嬉しそうでそわそわしてる
「なに?」
「江戸時代の型紙が見つかったんですよ!」
「えっ見たいみたい」
1000枚くらいはある型紙を一枚一枚1時間かけてゆっくり見る
これ以上小さくは彫れないと思える小紋柄、えええと驚く横文字デザインの型紙、二枚の型紙を使う「追っかけ」という型紙、驚くほど細い筋(縞)、蝙蝠柄の面白さ、(こうもおりという鳥は漢字になると福という字が重なるので昔は縁起物、蝙蝠)とにかくすべての型紙に躍動感があり、メリハリがあって、鼻筋がきりりと通っている感じ。
江戸も慶応年間の物が多く、明治の初めの物もある
「どういうおうちにあったの?」
聞けば今はサラーリーマン、しかし昔はといっても明治までは型染職人の家
その方が、中島久雄さんの型染を博物館で見て、うちにあるものと同じだ!ということで整理してお持ちになったという
しかしその整理が、クリアフアイルに収まるようにと耳を切ってしまっていた
「ああーご存じないということはこういうことね、仕事続けていれば何代目になるお宅?」
「五代目までは続けていたらしい」
中島久雄さんは江戸小紋を染めて二代目、飯田市で仕事をそしている
この度リニアカーが飯田を通ることになって、中島さんの仕事場がリニアカーのためにとられることになっている
小紋型は7メートルの板をはり、蒸し小屋、水洗などなどすべてその仕事場で行う。仕事は一貫性のあるものなので、その仕事場で完結するのだ。それだけに広い空間が必要。さらに天日で乾かす庭もある
仕事場を訪ねたこともあるのでその地で仕事出来なくなる苦痛はどんなものだろうと想像に難くない
「代替え地なんておいそれとあるものではないし、もうこれを機会にやめようかと思っている」
という言葉を聞き、国はいったい何を考えているのかと心底怒りが込み上げてきていた
今回の博物館での展示会は中島さんの心に火が付いた
それはこの江戸時代の型紙の存在であり、またコロナにめげず博物館に訪れる人たちの感嘆の声だ
久しぶりにお会いした中島さんの顔が笑顔に満ち満ちていて、機敏に動き回り声も弾んでいた
駅でのみんなのあの笑顔は中島さんにスイッチが入ったからだ
「ライフワークとして楽しんで仕事をしますよ、本当に自分の染めたい型紙を使って」
との決意思わずうれし涙が出てしまった
耳が切られた江戸時代の型紙を使って楽しい着物を染めていくという。楽しみ
これからの時代リニアカーなんてもう必要ない
自然とともに生きることが人間の生活になる。嬉しさの興奮で岡谷と新宿あっという間であった
展示会は1月17日まで 信州の誇り
先日は蚕糸博物館にお出で頂きありがとうございました。本日は新刊のご著書を頂き重ね重ねありがとうございます。これから読ませて頂きます。ファクトリーショップでも販売させて頂きたいと話しております。どうかご自愛頂き、今後も宜しくお願い致します。
宮坂製糸所 高橋栄子