チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 71

2018年12月20日 17時12分31秒 | 日記
着物の撮影は楽しい昭和40年代50年代には「着物ブック」という本があり
その本に出ている着物をを見て一般の人が着物の注文をしていた
京都を中心に100社くらいあった
つまり着物の見本を天下の女優さんが着て当代きっての売れっ子カメラマンが撮影をする
編集は印刷会社が多かった

撮影は3日で上げるが着物は60枚、一日20枚 女優さん一人5枚着る
女優さん同士スタジオで顔を合わせないように時間をずらせる配慮はスタイリストの私の役目
メイクを全部きちんとして入る人
自分専用のメイクヘアーを連れて入る人(自腹)
単身で入ってくる人(この場合ヘアメイクはこちらで用意する)
お付きをたくさん連れて入ってくる人
女優さんの顔で注文の枚数が決まるので女優さんもプロ意識満載

モデル料は現金決済で女優さんは大喜び
「またよんでね」
天下の女優さんに懇願されると気分もいい
そしてずっと仲良くして逆に舞台や映画、テレビなどの衣裳を担当させてもらったりもしていた

仕事は私自身に来る場合とカメラマンのスタジオが管理している場合がありこちらのほうが多い
着物ブックは春と秋に出るので季節の色や柄の勉強にもなる

当時は本仕立てをしている着物が少なくて
というのは仮り仕立てだと後で糸を抜けばまたもとの反物になり売りやすい
しかし着付けの人は大変だ
襟も袖も身頃もついているが着物になっていないのだ
着付けの人は袖を作り裾を始末して着せていく後ろは縫っていないので絶対に後ろは向けないし前を向いたきりのポーズだ
帯は袋帯は形になるが名古屋帯に至っては前だけをくけて締められないので(布にシワが付く)後ろで洗濯ばさみでとめる(当時は今誰もが使っているクリップなどはない)
そういう半端な形の着物を着てもにっこり笑える女優さんもすごいものだが着付けの人の妙技にはただただ感嘆

しかしそれではみんなが中途半端になるのでスポンサーに掛け合い本仕立てで撮影をしていただくように交渉
そのかわり婦人誌でそれらの着物を撮影するという条件を出した

着物ブックはその姿が見本なので
色も柄も本物通りに仕上げねばならない(カメラマンも印刷会社も真剣)
更にしわがあっては柄がよく見えない(女優さんに息を止めて!なんていうカメラマンもいた)
帯揚げ帯締めも着物や帯を活かすものでなくてはならない(これは私の仕事・帯締めの色が強ーーいと怒鳴られることも)
アイロン掛けも気が抜けない

いろんな制約の中での着物ブックの撮影はプロの仕事のあり方が勉強できた

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