無尽蔵 ふん尿でクリ-ン発電
「この地域にはエネルギ-資源が無尽蔵にあると いうことです」。十勝管内鹿追町環境保全センタ -の職員リ-ダ-の植松武泰さん(68)は、刻々 と発電量を上積みするメ-タ-を頼もしげに見つ めた。同センタ-の中核は、メタンガスを燃料として発電するバイオガ スプラント。ガスの原料は周辺酪農家から出る乳牛のふん尿だ。ガス 燃焼による1日の最大発電能力は、一般家庭460戸分に相当する 4千㌔㍗時。家畜排せつ物を利用するプラントとしては全国最大級の 規模を誇る。プラントは、道営事業として2006年に総工費約8億35 00万円で建設。同年12月からの試験運転を経て町に移管され、昨 年10月に本格稼動した。町とセンタ-周辺の酪農家11戸による組 合方式で運営し、毎日約60㌧の乳牛のふん尿を受け入れ、密閉槽 内でメタン発酵させて、順調にガスを取り出している。発電で施設す べての電力をまかない、余剰分を売電し、運営費の一部にあてる。 町職員時代から事業計画にかかわった植松さんは「ふん尿が凍る冬 場も大きなトラブルなく発電できた。今後、各組合員が牛の数を増や すことを見込んでいるため今の稼働率は70%。それでも昨年度は収 支目標をクリアできた」と胸を張る。施設運営費2500万円のうち売電 分は350万円で、計画を達成した。家畜ふん尿を取り出した跡の消化 液は肥料として牧草地に散布するため、廃棄物は発生しない。ガス燃 焼による二酸化炭素(CO2)からは、もともとは牧草など植物が大気中 から取り込んだものなので、電力は大気中のCO2総量を変えない「カ- ボンニュ-トラル」などクリ-ンエネルギ-だ。北海道洞爺湖サミットで大 きな議題となったCO2削減に、人口6千人に満たない鹿追町の貢献は 小さくはない。北海道バイオマス研究会の副会長で、鹿追町のプラント 建設にもかかわった帯畜産大大学院の梅津一孝教授は「CO2削減ば かりでなく、最近の原油や肥料の高騰などから、自然な形で資源循環 ができるバイオガスプラントの利用価値は一層高まっている」と注目す る。