梁石日(ヤン・ソギル)著
「夜を賭けて」 を紹介します。
昭和33年。
かつてアジア最大の兵器工場だった大阪造兵廠は終戦前日の大空襲で壊滅後、10年以上も立入禁止の廃虚として放置されたままでいる。
その廃虚にそって流れる川の向こう岸には、在日コリアンの集落が軒を連ねている。
ある日、集落の住人であるヨドギ婆さんが、造兵廠の近くで鉄屑を拾い大金を手にしたことから集落は大騒ぎとなる。
しかし、大阪造兵廠は国有地。
警備の警察官の目を盗んで鉄屑を運び出すのは至難のわざ。
集落の人々が思案に暮れていた時、かつて集落にいた金義夫が舟に乗って帰ってきた。
「そうや、舟で鉄を運べばええんや!!」後に“アパッチ”と呼ばれる鉄屑窃盗集団がここに誕生した。
“アパッチ”たちは警官隊との死闘の末壊滅する。
そして、長崎の大村収容所(朝鮮人を対象とした不法滞在者の収容施設)に収監された彼らに待ち受けていたのは・・・・。
「在日朝鮮人は日本人から差別され軽蔑されて辛酸を舐めてきた。せやけど、わしらは何とかここまで生きてきたやないか。全部の日本人が悪いわけやない。中には親切なええ人もおる。それはどこの国へ行っても同じことや」
たった49年前の出来事。
日本に生きる日本人として知っておかなければいけないことがあります。
2002年映画化 出演:山本太郎、ユー・ヒョンギン、唐十郎、奥田瑛二、他
映画版はこの小説の前半部分のみとなっている。