津本 陽 著 「深重の海」を読みました。
節季を控えて、太地村住民三千人は、不漁続きで、正月を無事に迎えられるかどうか不安を感じていた…。
そんな明治11年12月24日、孫才次は、祖父で〝沖合い〟(古式捕鯨船団のリーダー)の近太夫らと、漁に出て、遂に熊野灘で子持ちの背美鯨と出合った。
熊野灘の沖に現われた1頭の巨大な鯨に、300人もの男たちが銛を手に、小舟を操って立ち向かっていった。
これが“背美流れ”と云われた大遭難の発端であり、慶長以来400年もつづいた古式捕鯨の組織“鯨方”壊滅の始まりでもあった・・・。
熊野灘に棲む捕鯨の人々の話。
愛と死が作品の重要なテーマになっている
人間がまだ、自然の中に生きていた明治初期、
”生きる”というものの本質
生き物の中の人間
そして、全てのモノに対する”愛”を感じ
生と死について痛切に実感できる物語。
現代人が忘れがちな自然の雄大さと、人間の非力さをあらためて思い起こさせてくれる
タイトルは、「たとい罪業は深重なりとも必ず弥陀如来はすくいましますべし」という蓮如上人のことばからつけられているそうです。
第79回直木賞受賞作