ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

源氏物語 <帚木1>

2008-08-26 | 源氏物語覚書

        『源氏物語 巻一』
         瀬戸内 寂聴 訳


『源氏物語』のレビューを書こうと思い立ってから、
早速壁にぶち当たっています(泣)

読みながらメモはとっていたものの、いざ書き始めると・・・、
もう一度読み直さないと、とてもじゃないけど書けない。
とにかく長~い物語なので、細かいところはわすれちゃうわけですよ。
(細かいところだけじゃないけど・・・爆)

で、もう一度読み直すのなら、と、図書館で
瀬戸内寂聴さんの訳を借りてきました。
以前手にとったことはあったのですが、
今回読んでみると、なんと読みやすい!
訳というより、現代作家が書いた平安時代の物語、という感じです。
それでいて、文章に流れるような美しさがありました。
やはりブームになっただけのことはありますね。



    *    *    *



「雨夜の品定め」で有名なこの巻では、源氏は17歳になっています。

五月雨の降る夜、源氏の君は宮中で
物忌み(ものいみ)のため宿直(とのい)しています。
*物忌み・・・凶事を避けるため、家にこもって慎むこと
*宿直・・・宮中などで、宿泊して勤務すること

そこへやって来たのが友人の頭の中将(とうのちゅうじょう)。
この頭の中将というのは、左大臣の嫡男で(つまり葵の上の兄弟)、
源氏とは友人であり、よきライバル。
退屈しのぎに、源氏の恋文をあれこれ見たがります。
それから話が恋愛談義になってきたところへ、
左馬の頭(さまのかみ)と藤式部丞もやってきます。
いずれも好色者で、男同士の遠慮のない女性論が弾むわけですね。

青二才たちが、あんな女性がいいとか、
こんな女性には困ったとか、
まあ、いろいろ好き勝手言ってくれてます(笑)
女性である紫式部が、こういうことを書けるというのも驚きです。

そして、それらの話の中に、ちゃんと次の伏線がはってあるわけですね。
頭の中将の、姿をくらました女性の話は「夕顔」へ、
中流の女性がいいという話は「空蝉」へ。
紫式部という人は、けっして行き当たりばったりで
この小説を書いていたのではなく、
きちんと構想を練って書いていたということがよくわかります。
まだ小説の手本もそれほどなかったであろう時代に、
すごいことだなあ、と思います。

彼らがいろいろ話している中、当の源氏は話を聞きながら
物思いにふけったりしています。
実はここが怪しいのですね。

「桐壺」の最後に、義母である藤壺への憧れが書いてありましたが、
なんと源氏の君は帝の妃であるこの藤壺のところへ忍んで行き、
一夜を過ごしてしまうのです。
ところが『源氏物語』の作品の中には、その部分の描写がありません。
「若紫」の巻で二度目の逢瀬が描かれているだけです。

だから読者は想像するのみなのですが、この巻の冒頭に、
源氏の君は苦しい恋から抜け出せない困った癖があり、
怪しからぬ振舞いに及ぶことがある、という描写があったり、
頭の中将が恋文をあさっているところで、
高貴な方からの文は深くしまってあるに違いない、という描写で、
このときすでに藤壺と関係があったあとなんだなあ、
と思うわけです。

また一説には、「かがやく日の宮」という巻が
この「帚木」(ははきぎ)の前にあって、
そこに描かれていたのではないか、
その巻は(意図的に?)失われたのではないか、
とも言われているそうです。

確かに、藤壺との関係もですが、
重要人物である六条御息所との出会いは書いてないし、
朝顔の姫君の名前なども突然出てくるし、
そういう巻があったと思われるのもうなづけます。

でもないからこそ、かえって読者の想像力(妄想?)を
かきたてているのかもしれませんね。



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