排出権取引については、既にEUが各企業に有償で排出枠を割り当てるキャップ方式の導入を検討しており、各国とも、制度設計に関する議論が活発化してきているようです(本日付日経朝刊「経済教室」)。ところで、このキャップ方式、有償無償にかかわらず、班田収授法と同じような運命を辿るかもしれないと思うのです。
班田収授法とは、646年の大化の改新に際して、各人に一定の口分田を与えた制度です。しかしながら、この制度は、100年あまりで崩壊することになりました。崩壊の原因は、固定的な配分方式では、田畑の開墾などによる農地の変化についてゆけなったからです。このことは、排出権取引の制度でも、キャップ方式による初期配分が、その後の市場の変化に充分に対応できない可能性を示しています。初期配分は、配分時点の実績や状況によって決定されますので、刻一刻と変化する市場にあっては、長期的に初期の配分枠を維持することは困難なのです。市場には、消費者のニーズに合わせて生産規模を拡大させる企業もあれば、縮小させる企業もあります。もし、キャップ制度を公平に保とうとするならば、短期間で配分を常に調整してゆかなくてはならなくなるでしょう。
市場は生き物ですので、時間とともに変化します。変化するものに対して、固定的な枠を設定することは、市場の健全な成長を歪める要因となりそうで、心配なのです。
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