万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

封建制の歴史の有無が日韓の違いを説明する-中国と親和性の高い韓国

2014年07月03日 15時24分49秒 | アジア
 日本国と韓国は、アメリカと軍事同盟を締結している点において共通しています。しかしながら、軍事同盟に対する姿勢については、両国の間で著しい違いを見出すことができます。この違い、封建制の歴史の有無によって、ある程度、説明できるのではないかと思うのです。

 日本国では、平安末期から武士の台頭が顕著となり、鎌倉幕府の成立を以って封建制が成立しています。封建制の基本的な特徴とは、西欧の封建制と同じく上位者による下位者の領地保障にあり、”本領安堵”こそが幕府に期待された最も重要な役割でした。つまり、他者の権利保障こそが、幕府の政権の正当性や将軍の公的地位を支える一方で、武士の主君に対する忠誠と軍事的奉仕は、主君の権利保障と一対の関係となるのです。つまり、封建制とは、主君が家臣の領地を保障する一方で家臣は主君の統治を認める非対称関係ではありながら、相互保障体制と言っても過言ではないのです。そこには、明白な国民に対する権利の承認と保障を確認することができます(日本国では、経済においても契約が重んじられた…)。一方、中国の属国であった歴史が長く、日本国よりも遥かに中華帝国の中央集権体制の影響を受けた朝鮮半島では、封建時代が見当たりません。特に李朝ともなりますと、全土が国王によって事実上”私物化”され、両班と呼ばれた特権階級にのみ、土地が官職に付随する形で下付されていたようです。この体制には、国民に対する権利承認や保障はなく、国王の一方的な采配によって国民の地位や財産が左右されます(むしろ、共産主義体制に近い…)。今日でも、韓国には、権利保障の原則でもある法の支配が根付かず、”親日財産没収法”といった近代国家らしからぬ法律が出現するのも、生殺与奪の権を権力者が握っていた過去の歴史に由来するのかもしれません(この点は、北朝鮮も同じ…)。そして、米韓同盟がありながら、米中を天秤にかけて中国に接近する”日和見主義的”態度は、誠実なる同盟の維持の重要性に関する感覚が抜け落ちているからなのでしょう。封建制にあっては、一方的な裏切りは相手国に破滅をもたらすため、極めて不名誉な行為と見なされていました。

 本日、中国の習近平主席が韓国を訪問したそうですので、両国の関係は、今後、さらに強化されることでしょう。近い将来、中韓同盟が成立するとの憶測がある一方で、封建制を経験した日本国には、日中同盟を予測する声はほとんどありません。史実としての歴史こそ、中国や朝鮮半島の行動を理解する鍵となるのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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