万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

韓国軍の‘竹島軍事演習’-朝鮮半島の平和は‘偽りの平和’

2018年06月18日 13時59分08秒 | 国際政治
韓国軍の竹島訓練に抗議=外務省
6月12日に開催された米朝首脳会談では、米韓合同軍事演習の中止という予期せぬ副産物をもたらしました。同会談への導火線を引いたのが、韓国の文政権による対北融和政策であったことを考慮しますと、演習中止は自然な流れのようにも見えます。しかしながら、朝鮮半島の平和は、真の平和を意味するのでしょうか。

 朝鮮半島の南北両国とも、今般の一連の流れを世界平和への貢献として積極的にアピールしています。米朝首脳会談で合意された共同宣言文も、‘平和条約’の文字は見えないものの、将来的な朝鮮戦争終結を視野に入れていることは確かです。北朝鮮側が非核化を約し、南北間の対立関係も大幅に緩和された以上、トランプ大統領がもはや巨額の軍事予算を費やしてまで米韓合同軍事演習を実施する必要性はない、と判断するのも理解に難くはありません。また、同大統領は、ノーベル平和賞の受賞者候補としてノミネートされるそうですので、平和への貢献という観点から、国際社会の一部からは一定の評価を受けてはいるようです。

 ところが、昨日17日、こうした‘平和’のイメージを覆すニュースが報じられました。それは、韓国軍が竹島において‘防衛’のための軍事訓練を実施する、というものです(マスメディアは‘訓練’と表現していますが、実質的には‘演習’と同義…)。竹島とは、自衛隊が未だに存在していない戦後の混乱期において韓国側が不法に占拠した日本領であり、日本国側から見ますと、‘防衛’のためのではなく、不法占領状態を軍事力で維持するための演習です。韓国によるこの決定は、一体、何を意味するのでしょうか。

 竹島における韓国軍の軍事演習は、今に始まったことではありませんので、韓国側は、年間スケジュール上の日程をこなしているに過ぎない、と説明するかもしれません。しかしながら、時期が時期なだけに、韓国側の決定は、東アジアの将来に極めて深刻な問題を投げかけています。それは、再統一の如何に拘わらず、近い将来、朝鮮半島の融和が現実となった場合、南北は一丸となって日本国に対して敵対的な軍事行動をとるのではないか、とする懸念です。

 そもそも、日本国は、憲法第9条の縛りもあり、竹島問題については、自衛隊による奪還ではなく、司法解決を基本路線としてきました。言い換えますと、日本国は、一貫して平和解決を韓国側に求めてきたのです。それにも拘わらず、韓国側は、日本国の自衛隊による武力奪還を想定した軍事訓練を実施しているのですから、同国が、真に平和を愛する国であるとは思えません。北朝鮮に対しては平和的な手段による南北統一を語りながら、日本国に対しては武力行使を公然と示唆しており、その態度には一貫性が見られないのです。仮に、真に平和を愛する国であるならば、同様に竹島問題に対しても平和的解決手段を追求するはずです(日本国側の提案を受け入れて、ICJでの解決を選択する…)。

 韓国による竹島軍事演習の実施は、韓国の謂う‘平和’とは、所詮は同一民族が居住する地である朝鮮半島限定であり、他の国際問題、特に日本国との紛争についてはその枠外にあることを自らの行動で示すようなものです。そして、この事実は、朝鮮半島の‘平和’が必ずしも東アジアの安定に寄与するとは限らず、今後の展開によっては、中国をバックとした南北両国が(米韓共同軍事演習の中止は習近平主席の要望とも…)、日本国、あるいは、日米両国と軍事的に対峙する構図が出現する可能性をも示唆しているのではないでしょうか。

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