万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

大麻解禁は人類劣化への道

2018年06月22日 11時09分13秒 | 国際政治
参院議員会館で大麻栽培? 記者の通報で現場は一時騒然
今年の10月17日からカナダでは大麻が解禁され、同国では大麻の栽培から使用に至るまで、合法化されると報じられております。その一方で、日本国内では、昨日、参院議員会館の敷地内で大麻草が発見され、一時、蜂の巣をつついたような騒ぎとなったそうです。日加両国では、大麻に対して正反対の現象が起きているのですが、大麻解禁は、一体、人類の未来にどのような影響を与えるのでしょうか。

 カナダが大麻解禁に踏み切った理由は、現実問題として、大麻の密売が犯罪組織の莫大な収入源となっているからです。禁制品ほど売買価格が釣りあがるのは世の常であり、その合法化は、犯罪組織の資金源を断つための有効な手法ではあります。もはや、高値では取引できなくなるからです。従来穀物を栽培してきた農家の中にも、政府の許可を経て‘大麻農家’への転身を図る者も現れ、人々は、商品作物として栽培された大麻を購入することでしょう。また、解禁日以降、カナダでは、苗木の4本までは栽培が許されるらしく、自宅で大麻を栽培し、自ら嗜好品として自宅で楽しむ、という人々が増えることでしょう。あるいは、成人は凡そ30グラムまでは公共の場での所持が許されるそうですので、多くの人々が集まって大麻を吸引する‘大麻パーティー’もあり得るのかもしれません。何れにしましても、制限付きとはいえ、大麻が一般商品化されることで、犯罪組織は有力な資金源の一つを失うのです(現在、カナダでは凡そ5000億円規模の闇市場が形成されているらしい…)。カナダが唯一の解禁国ではないものの、その国際大麻市場への波及的影響も予測され、同国における大規模栽培による大麻価格の下落により、ミャンマー、ラオス、タイ、あるいは、メキシコ、ブラジルといった‘麻薬地帯’の国際密売組織にも収入の減少という打撃を与えるかもしれません。

 犯罪組織対策としての大麻解禁には、確かに一定の効果は認められるのですが、その一方で、それと引き換えに失うもの決して小さくはないように思えます。大麻解禁に反対する人々は大麻使用の一般化を懸念しており、同法案が「カナダの次世代に破滅的なものになる」として危惧する声もあります。それもそのはず、医療における有効性が証明される一方で、大麻が及ぼす健康被害については各国で研究が為されており、WHO(世界保健機構)の2016年の報告書でも、「精神病と知能低下との関係について妥当性がある」と認めているのですから。つまり、健康な一般の人々が大麻を吸引すると、中枢部である脳にダメージを受けるのです。

 大麻が有する脳の能力低下作用に対しては、アルコールにも認められる同程度のマイナス作用を取り上げて反論する人もおります。しかしながら、アルコールは肝臓等で分解することができますが(分解能力を超えると健康被害が発生…)、大麻成分が体内で無害化されるという説は聞いたことがありません。しかも、合法化されれば、犯罪組織の資金源が断てるとも限らず、むしろ、密売業者が合法的な‘大麻事業者’に衣替えするに過ぎない可能性もあります(犯罪ビジネスの合法化?)。大麻そのものの単価は下がっても、消費者が増えれば収益も維持できますし、大麻以外の別の収入源を見つけ出すかもしれません。また、大麻によって国民の知的レベルが全般的に低下した場合、常識的な判断力も損なわれ、犯罪組織からの入会の勧誘に負けてしまったり、猟奇的犯罪や‘一匹狼’的な犯罪が増加したり、個人間のトラブルの頻発も予測されます。結果として、治安の悪化が加速され、社会が不安定化すると共に、犯罪組織対策という当初の目的も翳んでしまうかもしれないのです。治安維持費や増大する大麻中毒患者への医療や収容施設などにかかる社会福祉費の増加も懸念されるでしょう。

上記の‘破滅的’とする表現は、まさに大麻の人に対する破壊作用を意味しており、社会とは人によって構成されているが故に、脳にダメージを受けた人が多くなるほど、その社会全体が健全性を失い、常識が通用しない世界へと変貌してゆきます。政治家は、先の先を読み、人類の未来に対しても責任を負うべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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