万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日韓対立の救い難い特徴-‘事実’を否認する韓国の問題

2019年01月08日 13時50分34秒 | 日本政治
自民、国連安保理に提起を=レーダー照射問題
 韓国海軍艦艇「広開土大王」による自衛隊哨戒機に対するレーダー照射事件は、双方が相手の主張を否定する展開となり、解決の糸口の見えない‘泥沼化’の様相を呈しています。それもそのはず、日韓の対立には、他の国際紛争とは異なる特徴があるからです。

戦争をはじめ、歴史上に起きた国家間の争い事については、当事国双方が異なる‘解釈’を付すことは稀ではありません。歴史的な出来事に対して複数の‘解釈’や‘見方’が提起されることは、むしろ人間の自由な知性からすれば当然であり、絶対的なドグマとして固定化するよりも望ましいことでさえあります。そして、この種の主観的な‘解釈’をめぐる争いは、‘事実’を客観的な‘事実’として双方が認めていれば、決定的な決裂を回避することができます。‘解釈’をめぐる問題は相互理解で解決可能であり、‘事件Xは、A国から見れば○○でも、B国から見れば××である’という共通認識に、一先ずは落ち着き得るのです。

 ‘解釈’をめぐる争いは、双方が自らの立場を述べ合い、かつ、双方が相手方の立場を理解することで、相互承認的な着地点を見出すことができるのですが、‘事実’をめぐる争いは、前者のプロセスを以って解決に至ることは殆ど不可能です。何故ならば、‘事実’は一つであって、複数存在することは天地がひっくり返ってもあり得ないからです。‘事実’については、足して二で割る方式の妥協の余地は皆無なのです。

日韓間の争いを見てみますと、‘事実をめぐる争い’は、今般のレーダー照射事件は氷山の一角に過ぎず、所謂‘慰安婦問題’や‘徴用工問題’に留まらず、朝鮮半島の日本統治時代全般にまで及びます。さらに歴史を遡れば、古代における倭国と百済、新羅、加羅等の関係や豊臣秀吉の朝鮮出兵、並びに、江戸時代の朝鮮通信使の実像についても、両国の間で‘事実’が違っています。日韓間に横たわる諸問題の多くは、解決困難な‘事実’をめぐる争いなのです。

 ‘事実’をめぐる争いの典型的な事例は、‘事実’に基づいて有罪無罪を判断する刑事事件です。刑事事件では、一方が利己的他害性によって他者を侵害した加害者側となり、もう一方は、侵害を受けた被害者の立場となります。言い換えますと、どちらか一方が‘犯罪者’と認定され、被害を受けた相手方に対して絶対的な劣位に置かれるのです(謝罪や賠償責任をも負うことに…)。そして、この有罪無罪の判断を支えるのが事実認定であり、‘事実’を立証し得る客観的な証拠こそ同判断の決め手となります。

 ところが、韓国は、‘事実’を立証する証拠を示されても、‘事実’、即ち、自らの行為を認めようとはしません。今般のレーダー照射事件にあっても、日本国の防衛省が現場映像を搭乗していた自衛隊員の会話録音付きで公表しても、‘客観的な証拠とならない’として、日本国側に対して軍事機密の提示すら求めています。一事が万事であり、それが動かぬ証拠であっても決して‘事実’を認めません。契約に基づいて給与が支払われていた事実を示す当時の記録や文書が物証として多々残されていたとしても、韓国側の‘徴用工’や‘慰安婦’とは、’非道にも日本国によって奴隷待遇で強制労働させられた被害者’であり、近代化のために日本国から朝鮮半島に多額の財政移転が実施されていても、日本統治下の朝鮮半島とは、‘不当な植民地支配によって搾取され、貧困化した被害国’なのです。韓国にとりましては、日韓請求権協定や交渉過程を示す会議録も、‘紙屑’なのかもしれません。

 日韓対立の最大の要因が、韓国側の事実否認にある点を考慮すると、今後、このような問題を外交ルートを通して両国間の話し合いで解決する見込みはありません。確固たる客観的な証拠が示されても、韓国は、主観的な‘韓国の事実’とは異なる事実は決して認めないのですから、議論は平行線を辿るばかりで埒が明かなくなるのです。

もっとも、国際社会の反応を気にしてか、韓国側が、積極的に国際社会に対して自己正当化のためのアピールを開始したことは、日本国側にとりましては有利な展開と言えるかもしれません。何故ならば、喩え事実を頑なに否認したとしても、他の諸国がこれを認めないことには通用しないことを、韓国側が認識し始めた証でもあるからです。つまり、第三者、即ち、法廷であれば中立的な立場にある裁判官の判断こそ重要であって、当事国による一方的かつ主観的な主張を、国際社会、あるいは、海外諸国がそのまま受け入れてくれる時代は過ぎ去りつつあるのです。

日韓対立の特徴に鑑みれば、日本国政府は、まずは当事国として積極的に事実を証明する証拠を国際社会に対して提示すると共に(決定的証拠となり得る電磁波情報の非公開については、軍事機密である旨を丁寧に説明…)、国であれ、個人であれ、誰もが事実が事実として客観的に確認できるよう最大限の努力を払うべきです(自民党内では国連安保理へ提起せよとの声も…)。安易な政治的妥協によってゆめゆめ事実を曲げてはならず、日本国の国家としての信頼性を維持し、国際社会に正義を実現するためにも、常に事実に対しては誠実であるべきと思うのです。

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コメント (2)
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