万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

不正確な統計問題-入管法改正時の‘人手不足’も怪しいのでは?

2019年01月25日 12時48分42秒 | 国際政治
高まる統計不信=相次ぐ不適切事例、背景に「人員不足」
政府が集計した統計とは、政策立案の基礎となりますので、決して誤りがあってはならないはずです。仮に、数字が不正確であれば、同数字に基づいて実施されたあらゆる政策がその合理的な根拠を失うからです。統計とは正確さこそが‘命’ですので、不適切な統計の扱いが厚生労働省に限らず多くの省庁において蔓延していることは、日本国政府の信頼を揺るがしかねない重大な問題です。

 今般の事件は、日本国政府の統計が不正確である実態を明らかにしたのですが、昨年末に行われた入国管理法改正においても、政府が提示した数字については疑って然るべきなのではないでしょうか。何故ならば、政府が公表している数字を並べますと、辻褄が合わないからです。

例えば、生活保護の給付を受けている世帯の総数は、2018年4月の時点で163万5280世帯であり、内、65歳以上の高齢者を除きますと母子家庭8万7464世帯、その他、24万9717万世帯なそうです。この数字から資産を有さないものの、33万7181人は、就業可能な状態にあると推定されます。加えて、失業手当を受給している人の数は、同問題の発端となった毎月勤労統計の不正調査問題に際して、追加給付の対象が凡そ80万人と報じられていますので、現在でも80万人ほどが失業状態にあるのでしょう。若年層になりますと、ハローワークに登録することなく、スマホのアプリ等を使って就職活動を行う傾向にあるそうですので、統計外の失業者数が加算されれば、80万の数字を越えるはずです。

仮に、真に人手不足であれは、生活保護や失業保険から給付を受ける人の数は限りなくゼロに近づくはずですので、これらの高い数字は、‘人手不足説’とは噛みあいません。しかも、これらの受給者の中には、年々増加傾向にあるとされる外国人受給者も含まれているでしょうから、海外から外国人労働者を招き入れながら国内の外国人に手厚い給付政策を行うという、極めて‘ちぐはぐな状況’になりかねないのです。政府は、失業状態にある多くの国民を見捨てて、雇用と社会保障の両面において外国人を特別に優遇するのでしょうか。

月ごとに調査される毎月勤労統計は、いわば、ルーティーン化された作業であり、特別に実施されるわけでもないにもかかわらず、重大な誤りがあったのですから、‘人手不足’に関する調査が厳正、かつ、網羅的に実施されたとも思えません。同法案は、菅官房長官が中心になって取り纏められたと報じられておりますが、政治家レベルの立案であれば、地元の後援者の要望、一部事業者による陳情、及び、ロビー活動の声を拾ったに過ぎないのかもしれません。あるいは、今般の毎月勤労統計と同様に、一部の事業者を抽出して集計した可能性もあります。

政府は、‘人手不足’の深刻さを懸命にアピールし、今後5年間で最大34万人もの外国人労働者を受け入れるとしておりますが、同数字の基礎となるデータが不正確あるとしますと、立法の基礎も揺らぎます。統計問題が浮上した以上、‘人手不足’に関する政府提出のデータについても、再調査すべきなのではないでしょうか(仮に、数字に誤りがあれば、違憲・違法立法として訴訟となる可能性も…)。なお、今般の不正事件の主たる原因が‘人員不足’、すなわち省庁内部の‘人手不足’とされていることは、何とも皮肉なお話ではないかと思うのです。

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コメント (2)
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