万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新日鉄住金は狙われたのか?-ポスコ関連株の資産差し押さえ問題

2019年01月09日 14時11分13秒 | 日本政治
韓国政府に協議要請へ 日韓請求権協定で菅官房長官表明
 韓国の最高裁判所が所謂‘元徴用工訴訟’に関する下した新日鉄住金に対する賠償命令は、大邱地裁浦項支部が原告団の申請を受けて同社の資産差し押さえを認めたことで、新たな段階に至ることとなりました。日韓関係のさらなる悪化は不可避であり、日本国政府も具体的な対抗措置の実施に踏み込む模様です。

 ところで、差し押さえの対象となった新日鉄住金の在韓資産とは、同業者である韓国企業、ポスコと共同出資で設立されたPNR(POSCO-NIPPON STEEL RHF Joint Venture,Co.,Ltd.)の株式なそうです。同社は、2009年に新日鉄側30%ポスコ側70%の比率で設立された合弁会社であり、現在、ポスコの浦項・光陽両製鉄所構内でダスト処理能力を行っています。出資比率がポスコ側に偏るのは、ポスコ社による製鉄プロセスで排出されるダストが主たる処理対象であるからなのでしょう。

 新日鉄住金のホームページ上の情報に依れば、新日鉄とポスコの両社は、2000年8月に株式の相互保有を含めた戦略的提携契約を締結しており、PNRの設立も協力関係の一環であったそうです。その一方で、新日鉄とポスコの両社の関係は必ずしも良好ではなく、2012年4月25日には、新日鉄住金がポスコを相手取り、不正競争防止法違反で1000億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしています。この事件は、新日鉄が独自開発した変圧器に使用される「方向性電磁鋼板」の製造技術をポスコ側が不正入手したために発生した事件であり、結局、ポスコ側が300億円の和解金を新日鉄側に支払うことで一先ずは解決しました。しかしながら、日本国の知的財産の韓国への不正流出を象徴する事例として、同事件は記憶されることとなったのです。

 以上の経緯から、新日鉄住金とポスコの関係は、敵味方の両面性を持つ複雑な日韓関係と相似形を成しているのですが、前者から後者への知的財産流出のフローを見出すことができます。そして、上述したPNRもまた、‘新日鉄で確立された技術を基盤’とする再生産・リサイクル事業なのです。今般の差し押さえでは、新日鉄住金が保有する243万株の内の8万1千株に過ぎませんが、今後、同様の訴訟が相次ぐとなりますと、PNRに対するポスコ側の株式保有率は高まり、やがて、新日鉄住金が提供している技術はポスコの手に渡ることになるかもしれません。

所謂‘徴用工訴訟’にまつわる様々なパーツを寄せ集めて再構成しますと、そこには、韓国側の巧妙な戦略が浮かび上がってくるようにも思えます。日本国による朝鮮統治の過去を利用して‘被害者ビジネス’を展開し、知的財産をはじめ、日本国から合法的に奪えるものは全て奪い、利用できるものは全て利用するという…。たとえ、新日鉄住金側が即座に裁判所の命に従わなくとも、日本企業の知的財産権等の在韓財産は、日韓の政府間協議の場にあって(日本国政府は、日韓請求権協定に従い先ずは両国間での協議を提案する方針…)、韓国が自国に有利な解決に導くための‘人質’にされるかもしれません。言い換えますと、韓国の司法は、真偽や正邪を中立的な立場から判断して正義を実現するのではなく、国家戦略の一環として見かけの‘形式的な合法性’を自国の行為に与えているに過ぎないのかもしれません。そしてこの‘歴史認識’を十二分に利用する方法は、米中対立が激化する中、韓国の背後に控える中国によっても、対日簒奪や‘用日’の手段として活用されるかもしれないのです(同リスクを考慮すれば、日本国政府は悪しき前例を作ってはならない…)。

 こうした憶測は杞憂であればよいのですが、現実は、一般の日本国民の想像を越えるスケールとスピードで進んでいるように思えます。日本国の政府も企業も、そして国民も、反日政策を国策としてきた周辺諸国の対日戦略、さらには世界戦略を見抜き(おそらく日本国は利用できる踏み台…)、効果的な封じ込め、あるいは、対抗策の策定を急ぐべきではないかと思うのです。

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