万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の情報・通信支配は世界支配の道具-『1984年』よりも恐ろしい現実

2019年01月20日 13時57分57秒 | 国際政治
アメリカのトランプ政権は、‘スパイ容疑’で中国系情報・通信機器メーカー大手のファウエイ製品の政府調達からの締め出しを決定しました。ファウエイ排除の動きは同盟国の日本国やファイブ・アイズ諸国をはじめ世界規模での広がりを見せており、中国との間で経済的な結びつきが強く、親中派と目されてきたドイツでさえG5関連のインフラ整備から同社製品の排除を検討していると報じられています。

 カナダ当局によるファウエイ副会長兼CEOの孟晩舟氏の逮捕容疑がイラン関連であったことは、‘火のない処に煙は立たぬ’の諺通り、水面下では同社が習近平政権の世界戦略の一翼を担っている実態を炙り出しています。一向に収まる気配のない中国製品に対する警戒感の高まりに危機感を覚えたのか、ファウエイ側も疑惑を払拭すべく防戦に躍起になっております。‘無実’を訴える新聞広告を掲載したり、同社CEO等のインタヴューに応じて進出先国の法令順守を強調したりと、メディアを駆使した‘潔白キャンペーン’を積極的に展開しているのです。しかしながら、こうした‘正面突破’の作戦に打って出たにも拘わらず、この作戦が成功する見込みは薄そうです。

 その理由は、第一に、ファウエイ側が弁明すればするほど、疑惑が深まっているからです。例えば、1月19日付の日経新聞朝刊の記事によれば、インタヴューに応じた同社の創業者の任正非氏は、中国当局への情報提供義務を定めた「国家情報法」に関連して、中国政府や共産党からの情報提供の要請に対してそれを拒絶する旨の発言をしております。「顧客企業の不利益になるような形でデータを提出するよう求められたとしても拒絶する」と。しかしながら、この発言の裏を読みますと、‘弊社は、既に政府や共産党が入手したい顧客企業の情報を得ている’ことを意味しますし、‘不利益にならない形にすれば提供もあり得る’ことを暗に示しています。そして何よりも、‘顧客企業以外の公的機関、並びに、個人の情報であれば当局に提供する’と述べているに等しいのです。この弁明を以って、ファウエイに対する警戒感を解く人は皆無なことでしょう。

 そして、この懸念は、同日に放送されたNHKスペシャル「アメリカvs.中国」によって疑いから確信へと変わります。同番組では中国の情報・通信分野における世界支配の野望を比較的客観的に描いていましたが、その中で、中国のスマホ配車アプリサービス、滴滴出行によるサービス事業の実態が紹介されていました。その舞台は、あろうことか日本国の大阪です。同社はソフトバンクとの合弁で「DiDi モビリティジャパン」を設立し、2018年9月からタクシー配車の営業を開始しています。そして、同事業において収集されたあらゆる情報が北京のデータセンターに送られており、逐次、大画面においてチェックされているのです。タクシーの位置情報に留まらず、利用者の顔情報から車内での会話まで、様々な情報が収集されていることでしょう。

 配車アプリといったプラットフォーム型のビジネスと情報収集が一体化している現実を目の当たりにすれば、誰もが中国製の情報通信機器の携帯や中国企業のサービスの利用に二の足を踏むはずです。そして、オーウェルの『1984年』よりもさらに発展した監視テクノロジーを駆使して国民を完璧に統制する国家が既に実在している恐ろしさを思い知らされるのです。隣国の魔の手が日本国にも及んでいるのですから、日本国への上陸を許した国土交通省をはじめ、中国系情報・通信サービス事業者、並びに、メーカーに対しては、安全保障や個人情報の保護といった公的観点から日本国内での事業許可を見直すべきではないかと思うのです。

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