万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国は核武装・中立政策へ転換を-「日・ウクライナ支援協力アコード」のリスク

2024年06月14日 09時35分57秒 | 日本政治
 今般、イタリア南部のプーリア州で開催されるG7サミットは、あたかも次なる世界大戦に向けた体制造りを目的としているかのようです。同会議の主役は、ウクライナのゼレンスキー大統領であり、この場を利用して積極的に同国への支援を訴えています。もちろん、その背後には、アメリカのバイデン大統領、そして、さらにその奥には第三次世界大戦に向けて策略を巡らす世界権力が潜んでいるのでしょうが、このままでは、人類は、なすすべもなく三度目の世界大戦への道を歩かされることでしょう。

 日本国も例外ではなく、G7サミットの開催を前にして、岸田文雄首相とゼレンスキー大統領との間で首脳会談の場が設けられ、両首脳が「日・ウクライナ支援協力アコード(日本国政府とウクライナとの間のウクライナへの支援及び協力に関するアコード)」に署名したと報じられています。そして、目下、同二国間協定は、日本国内に衝撃を与えています。何故ならば、同協定のⅢとして「将来の武力攻撃の際の協力」が置かれ、その第1項に「ウクライナに対する将来のロシアの武力攻撃の際、両当事者は、両当事者のいずれかの要請により、適切な次の行動を決定するために、二国間又は両当事者が適切と考えるその他の経路を通じて、24時間以内に協議を行う。」と明記されているからです。

 この内容は、事実上の軍事同盟を意味しかねません。第2項以降は、対ロ制裁の強化について失しているのですが、ロシアという‘共通の敵’を設定したことになりますので、日本国とウクライナとの間には、対ロ共闘関係が成立し、しかも、攻撃時から24時間以内での対応という大幅に踏み込んだ内容となっているのです。

 日本国並びに日本国民にとりまして、この一文が、極めて危険であることは、一読しただけでおよそ理解されます。そもそも、ウクライナとロシアとの間では既に戦争状態にありますので、同協定で記されている‘将来の武力攻撃’における‘将来’を協定への署名時から先とすれば、6月13日○○時以降のロシアからの対ウクライナ攻撃から適用されることとなります。実際に、同協定の「Ⅹタイムフレームとその他の事項」の第1項では、「このアコードは、署名の日から10年間有効である。」と記されていますので。すなわち、将来とは、即、‘現在’を意味してしまうのです。

 ‘将来’という曖昧な表現が使用されている上に、発行時が協定署名時となっている点において、同協定は危険極まりないのですが、内容そのものが事実上の軍事同盟とも解されるのですから、同協定を、政府が国会での事後承認を要しない「行政取極」として扱ったこと事態が、岸田首相による権力濫用とも言えましょう。「国会承認条約」と「行政取極」との区別については「大平三原則」が慣行として儲けられており、前者については、(1)法律事項を含む国際約束、(2)財政事項を含む国際約束、(3)③日本と相手国との間、あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに発効のために批准が要件とされているものとされています。その一方で、後者については、(1)国会の承認済み条約の範囲内、(2)国会の議決済み予算の範囲内、(3)国内法の範囲内で実施可能の三者が挙げられています。これらの原則に照らしましても、今般の「日・ウクライナ支援協力アコード」は、「国会承認条約」とすべきです。同アコードが定める24時間以内に決定される‘行動’が、法律事項や財政事項を全く含まないとは考えられませんし、何よりも、同決定は、日本国の安全保障政策上の重大なる決定であるからです。第三次世界大戦への参戦への導火線ともなりかねないのですから。

 日本国憲法は、その第9条にあって軍隊の不保持を定めている故に、防衛や安全保障における決定権の所在や決定手続きについて空白部分や曖昧な部分があるという問題があります。戦前の明治憲法にあっては、軍隊が統帥権を有する天皇に直属していたために軍部の暴走が起きたと指摘されていますが、今日では、軍隊が存在しないとする前提から生じた曖昧性が悪用され、岸田首相、ないしは、その背後の戦争推進勢力に独断的な権力行使を許しているとも言えましょう。平和憲法が、むしろ、仇となっているのです。

 こうした岸田首相による過度のウクライナへの肩入れが齎す危険性を考慮しますと、何故、野党が、これを問題としないのか、不思議で成りません(おそらく、野党側も世界権力の傀儡・・・)。日本国は、民主主義国家なのですから、日本国の安全保障政策については、先ずもって国会を含む国民的な議論に付すべきです。また、今般の「日・ウクライナ支援協力アコード」についても「国会承認条約」とすべきよう、政府に対して要求すべきですし、民意を問うための衆議院解散・総選挙が実施されて然るべきです。第三次世界大戦計画が存在する可能性の高さを考慮しますと、深みに嵌まる前に脱出策を考えるべきであり、核武装・中立政策への転換こそ、日本国が、三度目の世界大戦から逃れる道なのではないかと思うのです。

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