万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

集団的自衛権行使問題-米艦護衛=日朝・米中開戦のシナリオ

2014年06月09日 15時31分38秒 | アジア
拉致再調査 特定失踪者リストを北朝鮮に提示、菅官房長官(産経新聞) - goo ニュース
 集団的自衛権とは、国連憲章の第51条に従えば、共同で防衛戦争を遂行することであり、当然に交戦国となることを意味しています。間接同盟に基づく集団的自衛権の行使には、議論すべき点が多々あることは昨日のブログで指摘しましたが、仮に、間接同盟に基づいて集団的自衛権を発動する場合には、第二次朝鮮戦争において、日本国は、北朝鮮と戦争となる可能性は否定できません。

 集団的自衛権行使に関するたたき台として示された15の事例のうち、邦人の救出する米艦に対する海自護衛艦による公海上での護衛が示されておりました。日本国が、この行為を、国連憲章第51条に基づく集団的自衛権の行使として実施する場合、日本国は、国際法上、共同防衛行為を遂行する戦争当事国となります。また、主力軍艦を攻撃しようとすれば、まずは防御に当たっている護衛艦を狙いますので、自衛隊が北朝鮮から直接攻撃を受ける可能性も高まります。読売新聞社の世論調査によりますと、60%以上の国民が米艦の護衛には賛成とのことですが、それが日朝開戦を意味することについては、説明がなかったのではないかと推測します。こうした事例を集団的自衛権にケースに含めたのは、邦人保護=日本国の自衛行為=アメリカとの共同自衛という論理なのでしょうが、国際社会において集団的自衛権の発動を明言した限り、少なくとも北朝鮮は、日本国を敵国と見なして攻撃を仕掛けることは必至です。日本国全土を射程に含めるとされるノドンやテポドンの開発も、日朝開戦を想定してのことなのでしょう。また、悪化しているとはいえ、中朝友好相互援助条約が発動されれば中国の参戦をも招き、本格的な米中戦争へと発展します。しかも、中韓関係の緊密化を考慮すれば、韓国は、戦況次第では中国側に寝返らないとも限らないのです。

 南北統一を戦争事由とした第二次朝鮮戦争を国際法上どのように位置づけるかについては、今後、国際社会における議論を要しますが、日米ともに、このシナリオは、あり得る展開として十分に検討しておく必要があります。米艦護衛のケースの議論は、その先を読んでこそ、と思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-06-09 20:02:59
こんばんは。北朝鮮は現時点においては戦争は出来ません。
戦闘機・戦車を総動員するとなれば、燃料がもって3日くらいでしょう。
張成沢氏を粛清した事で中国からの支援は期待できません。
中国が支援する時は北朝鮮も韓国も属国に戻る時です。
北朝鮮が短距離ミサイルを日本海に打ち込んだのは、米国にかまってほしいというメッセージです。
拉致被害者再調査に合意し特別委員会まで設置したのは経済制裁の最中、張成沢氏を粛清したのは、張成沢氏の得ていた利権を取り上げようとして中国に反旗を翻す結果となったのです。
その為に戦争をしたくても戦費が無い・・・
燃料や食料・医薬品が無い・・・
ないないづくしでは戦争は出来ません。
かと言って資源の開発の為に外資を呼び込めば、中国の開放経済を真似る事になりますので張成沢氏を粛清した意味がなくなり指導者として能力が問われる事になり、身内を粛清したのですから肉親殺しの大罪を犯した者として汚点を残す事になります。
資源開発を外資に頼った結果がブラジルに大混乱を引き起こした原因です。
資源開発に外資を入れれば、どのような結果になるかは明らかです。
韓国も財閥に頼った結果、内需は拡大せず韓国人が国内で使ったお金はサムソンやLG・ヒュンダイを通じて外国の資本家のもとに流出し家計の債務残高は目も当てられないほど酷いものです。
徹底した学歴社会ですので、大学に行くにも多額の資金が必要、無理して借金しても仕事が無い為、生活費をより利息の高いヤミ金で借りる、アルバイトをしても国が定める最低賃金よりはるかに安い時給しか払われない為、更に借金を重ねる。
無理に大学に行かなくともと考えますが、韓国社会では大学を出ていないと人間として扱われない徹底した階級社会が残っているのです。
韓国で「戦争が起きたら祖国を守って戦うか」というアンケートに7割の人間が国外に逃げると回答しています。
韓国と中国で通貨スワップ協定を結んだようですが、元とウォンどちらもハードカレンシーではないので国際取引には使えません。
韓国軍もお粗末で、滑走路の地割れが見つかり離着陸が出来ない状態ですし、新造されたばかりの船が嵐で浸水する、段差を越えられない戦車など、まともに使えるかどうか分からない兵器の山です。
おまけに、空軍のパイロットの資格取得を簡単にした為戦闘行動が取れるかどうか疑問が残ります。
マスコミが絶対に報道しない韓国軍の実情を知れば、時代遅れの兵器が多数を占める北朝鮮の敵ではありません。
またIMFの調査結果を公表しない事で米国に内情がバレて米国を激怒させました。
両国とも戦争どころか戦費がない状態です。
仮に北朝鮮が韓国に戦争を仕掛けても何のメリットもなくデメリットの方が大きくなります。
ソウルや仁川・釜山の街を破壊したとしてもインフラから整備せざるを得ず多額の資金が必要になります。
それよりも朴槿恵政権が最悪である事は周知の知るところですので、次の大統領選くらいから親北朝鮮勢力に政権を取らせ、北の指導者と韓国の大統領が板門店で握手する方が劇的なニュースになり資金援助も得やすくなるというものです。
最悪の場合を想定しておくに越した事はありませんが、邦人が人質となった場合は韓国の宣伝を続けてきたマスコミと親韓政党に全責任を取らせるべきです。
韓国の宣伝期間となり下がったマスコミの人間を変わりの人質として差し出し放っておくのがいいでしょう。
そうでもしないと公的言論には責任が伴う事も理解できないようですので。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-06-09 21:13:30
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 北朝鮮も国家体制が行き詰っており、韓国もまた、表明は取り繕ってはいても、内情がぼろぼろあるならば、朝鮮半島問題は、両国に任せるべきではないかと思うのです。もっとも、弱いふりや被害者ぶるのは朝鮮半島の得意技ですので、これらもまた、国際社会を欺くポーズであるかもしれませんが・・・。朝鮮半島両国とも物資両面において戦争は無理であっても、中国が、国際社会から自国が戦争を仕掛けたと見られないために、両国のどちらかを”鉄砲玉”として使い(戦争を起こすために、敢えて、両国にプロレスを演じさせる可能性も…)、日米を戦争に引き込むかもしれません。やはり、油断は禁物であると思うのです。
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