万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自民党の総裁選挙は政治の末期症状を映し出す鏡

2024年08月20日 12時00分34秒 | 日本政治
 戦後を通して日本国では、他党と連立を組んだり、一時的に下野することはあっても、自民党による一党優位体制が続いてきました。議院内閣制を採用しているため、このことは、国会における最大与党である自民党の総裁選挙は、事実上、日本国の首相が選出される場となることを意味します。首相の選出と凡そ同義という側面からすれば、総裁選挙にあって最も国民から注目されるべきは、総裁選挙への立候補者の各々が掲げる国政上の政策となるはずなのですが、今日の自民党総裁選挙は、まるで日本政治の混迷を映し出す鏡であるかのようです。

 それでは、自民党総裁選挙に立候補した政治家の人々は、選挙戦に打って出ることを自ら決断したのでしょうか。また、政治家としての能力や力量に基づく評価によって、20名とされる推薦人を集めると共に、党員票を獲得しようとしているのでしょうか。一般的には、総裁の椅子は、派閥間のパワー・バランスや妥協によって決まるものと見なされてきました。‘総裁の椅子は○○派に譲るとしても、△□大臣の椅子は我が方に’というように・・・。

しかしながら、おそらく、自民党結党以来、総裁の椅子に座るには、外部からの強力な後押しが必要であったことは想像に難くありません。しばしば指摘されているのが、サンフランシスコ講和条約の発効によって日本国が主権を回復した後にあっても、アメリカ、あるいは、米軍が影響力、否、‘支配力’を残すために、‘自民党はアメリカが造った’とする説です。日米合同委員会も実在することから、この説は、まことしやかに囁かれてきました。因みに、日米合同会議とは、1960年に締結された日米地位協定の第25条に基づいて設立さていますので、GHQの後身という訳ではないものの、議事録も公開されない秘密会合ですので(同委員会で合意があった場合のみ公表されることもある・・・)、アメリカが密約によって日本国を水面下でコントロールするための手段と疑われるだけの理由はあります。

 日米同盟締結の経緯からしましても、自民党の総裁ポストに関する外部からの介入は今に始まったことではないようなのですが、グローバル化時代を迎えた今日の総裁選挙の様子を見ますと、より複雑さが増しているようにも見えます。アメリカのみならず、立候補者の背後には、様々な外部勢力が見え隠れしているからです。これらを整理してみますと、(1)グローバリスト、(2)アメリカ、(3)中国、(4)宗教・新興宗教団体などに凡そ分類することが出来ましょう。例えば、(1)のグローバリスト系候補者としては、ダボス詣でに事欠かない河野太郎氏や民営化推進路線の小泉進次郎氏などを挙げることが出来ますし、保守系かつ日米同盟重視の高市早苗氏は(2)のアメリカ系候補者であるかもしれず、中国寄りの発言で知られる石破茂氏は(3)の中国系かもしれません。

 もっとも、立候補者の各々を上記の区分に沿ってきれいに分類できるわけではなく、支持団体の重複や内外の支持団体の違いによる差異も見られます。例えば、同じくグローバリスト色の強い候補者であっても、河野太郎氏が麻生派に属している点を考慮しますと、イエズス会の支持を取り付けているとも推測され、小泉氏とは支持母体が違うのでしょう。また、その姿が見えにくい宗教・新興宗教団体については、自ら特定の候補者を擁立するのではなく、巧妙なバーゲニングによって‘キング・メーカー’の立場にありたいようです。各候補者とも、とりわけ創価学会と元統一教会の支持は是非とも得たいところなのでしょう(創価学会も、海外での布教活動を見れば外部勢力の一つでは・・・)。

 かくして、自民党の総裁選挙は党外勢力をバックとした混戦状態となるのですが、さらに背後の暗闇に目を凝らしますと、これらの勢力の奥に‘総元締め’が潜んでいるとも推測されます。‘総元締め’とは、全世界に支配のネットワークを張り巡らせている金融・経済財閥を中心とした利益団体であり、世界権力と目される極少数の人々です。同権力は、何れの立候補者が総裁選挙に勝利を収めたとしましても、その結果に満足することでしょう。国家レベルであれ、政党レベルであれ、何れのレベルでも、多頭作戦が展開されているからです。結局、誰が自民党総裁の椅子に座ったとしても、同ポストが世界権力の代理人の席に過ぎないのであれば、国内の支援団体等の違いによる程度の差こそあれ、日本国の政治は、何らの変わりはないこととなりましょう(つづく)。
 


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